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昭和六十一年十月二十四日提出
質問第八号

 沖縄の振興開発に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十一年十月二十四日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 原 健三郎 殿




沖縄の振興開発に関する質問主意書


 今年は、沖縄が日本に復帰して、また、沖縄振興開発特別措置法(以下「沖振法」という。)が制定されてから十五周年に当たる。同法に基づく振興開発計画も、第一次(昭和四十七〜五十六年度)を経て、第二次計画期間(昭和五十七〜六十六年度)前半の最終年度でもある。
 戦争と米占領軍支配のもと、沖縄県民は、「人間らしいくらしを自らの力でかちとる」との決意に燃えて、祖国復帰運動へ立ち上がつた。経済を立て直し、基地のない、平和で豊かな沖縄を実現することは、祖国復帰の原点であり、「県民への償いの心をもつて事にあたるべき」(昭和四十六年十一月十日、衆院沖縄及び北方問題特別委員会における政府提案理由の説明)政府の当然の責務である。
 ところが現実はどうか。復帰後十四年間の沖縄振興開発は、県民総生産の実に四分の一が県外へ流失するという経済構造には手をつけず、政府の財政投資の多くは本土企業へ還流、本土大企業による“食い荒らし”ともいうべき状態が続いてきた。加えて、核・軍拡政策と財界主導の行財政「改革」のもと、沖縄への財政投資は減らされ、立ち後れた沖縄経済は一層破局に直面している。米軍基地・施設の返還と県民本位の跡地利用は遅々として進展せず、依然として最大の障害となつている。
 沖縄の振興開発は、@本土企業の誘致だけをあてにした経済再建策でなく、沖縄の地場産業、農業、漁業を育成し発展させる、A大企業本位、大規模プロジェクト中心の産業基盤づくりの公共事業でなく、後れた生活環境を改善し、県民のくらしや福祉・教育を支える公共事業を進める、B平和の問題をはじめ、経済・くらしの障害となつている米軍基地・施設を撤去すること、などを基本としなければならない。
 「各面にわたる本土との格差の是正を図り、自立的発展の基礎条件を整備し」「平和で明るい活力ある沖縄県を実現する」とした第二次沖縄振興開発計画(以下「二次振計」という。)の目標を、残された五年間で達成するためにも、復帰後十五年目に当たる今日、現在の振興開発の問題点を改めて明らかにし、その抜本的転換を図る必要があると考える。
 従つて、以下の事項について質問する。

一 いうまでもなく沖縄経済の最大の問題は、食料、生活必需品、生産資材、飼料、観光消費材などの多くが県外からの移輸入で占められ、五十八年度でみても、県民総生産の二四・四%に当たる四千五百六十六億円という膨大な移輸入超過となつている。
  沖縄経済の自立を図るためには、政府の財政投資が、経済構造を転換する方向で、確実に地元に還元される必要がある。
 1 沖縄開発庁予算に一括計上されている沖縄開発公共事業関係費だけで、昭和四十七年度以降六十年度まで、累計一兆八千十五億円(補正後ベース)が投入された。
   ところが、沖縄総合事務局が昭和五十九年度に発注した公共事業費(決算ベース)は、総額三百四十一億千万円、そのうち県内企業への発注は四四・四%、残りの五五・六%は県外企業への発注である。
   このような状態では、地場産業の振興や中小企業の発展など、経済の自立は図れない。軍事優先・県外大手企業優先の財政投資ではなく、生活道路の整備や公立学校・福祉施設整備など、県民の生活関連公共投資を飛躍的に増やし、県内建設業者への発注や県内産品の積極的使用などで投資効果を高めることが必要と考えるが、現在の公共投資をそのように転換するつもりはないか。
 2 産業振興のひとつの柱とされる観光業にしても、年間二百万人の観光客が訪れるといわれるが、その観光収入の多く(沖縄地域科学研究所の調査では二七・七%)は県外へ流失している。
   こうして沖縄経済は「投下された財政資金が最終的には県外に漏出し県内に止まらない資金構造になつている」(琉球銀行調査部「金融経済」No.二二一)。
   復帰十四年たつても依然として解決されていないこのような構造を、県民本位に転換する必要があると思うが、政府の見解を具体的に説明されたい。
 3 政府は、「新規企業の導入育成の促進」等を図り「産業の振興開発を進め」、「経済の自立的発展を目指す」(二次振計)として、工業開発地区の指定に基づき、糸満工業団地、中城湾港新港地区工業団地の造成などを産業振興の目玉としてきた。これら企業の誘致による産業振興は、二次振計前半でどれだけ達成され、また、計画最終年度の六十六年にはどうなるのか。
   その見通しを具体的に明らかにされたい。
二 昭和四十六年十一月十五日、復帰を前にしたいわゆる“沖縄国会”の衆院沖縄及び北方問題特別委員会で、山中貞則総理府総務長官(当時)は、沖振法にいう振興開発計画の実施について、
  「これはやはりきつちりその時期においては十ヵ年後に到達すべき目標、それへの到達する過程、そういうものが予算においてもあるいはまた政府の全体のそれに対する姿勢においても、明確に示されていかなければなりません」と述べた。
  また、二次振計に、「政府は、計画の推進状況及びその成果を的確に把握しつつ」と明記し、施策の計画的推進を政府自ら義務付けた。
  ところが政府は、二次振計の期間だけをみても、財政援助を強めるどころか、逆に、六十年度八十六億八千六百万円、六十一年度七十億千五百万円(いずれも五十九年度ベース)もの補助金を削減した。沖縄開発庁に一括計上されている振興開発予算は、二次振計に入つてから横ばい、五十九年度からは減額予算とさえなつている。
  このように、県民生活への財政支出は容赦なく削減したが、米軍への“思いやり予算”は、一四三・六%(六十一年度当初予算、五十七年度比)と突出させてきた。
 1 政府のこうした態度は、「県民への償いの気持ち」どころか、沖縄を二十七年間米軍政下に放置した責任を放棄するものと考えざるを得ない。このように、振興開発の目標と現実はますますかけ離れ、沖縄経済を一層破局に導いてきている。この現実をどう考えるのか、明確に示されたい。
 2 こうした状態で、二次振計を残された五年間で達成できると考えているのか。達成できるとすれば、具体的な計画はあるのか。また、達成できないとすれば、三次振計を考えているのか。
 3 二次振計の現状と後期の課題について審議をしている沖縄開発審議会の答申が、当初九月の予定が来年六月以降に延期されるということだが、沖縄の危機的現状からすればとうてい許されない。四全総の審議とは切り離し、計画の推進状況とともに、二次振計後期の課題を早急に明らかにすべきであると考えるがどうか。
三 失業率は依然として全国平均の二倍、とりわけ若年労働者の失業率は三倍を超え、中小企業の倒産は全国一高い水準で推移、県民のくらしは、復帰後十四年たつても、深刻な事態が一向に改善されていない。逆に、六十一年度に入つてからの完全失業率は急増し、特に三月以降六%〜五%後半で推移し、八月分でみるとそのうち五七%は二十九歳未満の若年労働者が占めている(県統計課調べ)。人口の推移は、二次振計当初の見込みを上回り、最終年度の昭和六十六年には、人口百二十四万人、労働力人口五十五万人(二次振計の当初見込みは、それぞれ百二十万人、約五十三万人)を超えるといわれる(沖縄県「沖縄振興開発の課題と展望」、昭和六十一年九月)。
  失業者の就労促進に努めるといいながら、沖振法第三十八条に規定された就労事業など、その気になりさえすればできることも実施せず、沖縄県の失業対策事業費は九州全体平均のわずか二・五%、一人当たり五十円(五十七年度決算、自治省調べ)という驚ぐべき実態である。政府が沖縄の失業問題を軽視どころか無視しているとさえいうべきものである。
  いつたい政府は、沖縄の失業が今後どうなるのか、その見通しについて明らかにされたい。
  また、いかにして失業、中小企業の倒産を防止するのか、具体的方法を今こそ県民の前に明らかにすべきである。具体的に示されたい。
四 一人当たりの県民所得は、全国平均の七割程度、農家所得(一戸当たり)の全国平均との格差は、二次振計が始まつてからむしろ拡大の傾向をたどつている。沖縄の農業粗生産額の三分の一以上を占めるさとうきびの生産者手取り価格は、生産費を大幅に下回つているばかりか、五十八年度以降三年間据え置かれている。その結果、農林水産省の調査でも、昭和五十八年度以降三年間に、生産費は七・五%、一万四千九百四十三円上昇、逆に農家所得は五・七%、七千百十八円(いずれも十アール当たり)減少している。
 1 二次振計の目標として県民所得向上を目指している中で、さとうきび農家の所得は減少の一途をたどつている。これをどのように認識しているのか。
 2 政府は、「再生産を確保することを旨として(生産者価格を)定める」(砂糖の価格安定等に関する法律第二十一条)との規定に反し、自らの調査による生産費でさえ下回る生産者価格を決定してきた。「生産費を償うさとうきび価格を」というのは生産農民の最低限の要求であり、政府の責務であると考えるがどうか。
五 二次振計においても、「土地利用上大きな制約となつている米軍施設・区域をできるだけ早期に縮小し、産業の振興、生活環境の整備に資するよう跡地の有効利用を図る」必要が明記されているように、米軍基地・施設の存在は「平和で明るい活力ある沖縄県を実現する」(二次振計)上で重大な障害となつている。
  ところが、実態は、「整理縮小」とは逆に在沖縄米軍基地の機能は一段と強化されてきている。すなわち、米陸軍特殊部隊(いわゆるグリーン・ベレー)の再配備や、B52爆撃機に核攻撃命令を伝達するジャイアント・トーク・ステーション、核戦争の指令通信システムであるアフサットコム・ターミナル(嘉手納)の建設、さらに、日本への返還合意がされている那覇軍港は、米海洋戦略の中で逆に強化、事前集積艦の母港化が進められている。
  去る十月三日には、住民や自治体の強い抗議の中、グアム・アンダーソン基地所属のB52G型核戦略爆撃機十機が嘉手納基地に飛来、沖縄がグアムと不離一体の関係で、アメリカの核戦略体制に深く組み込まれていることを改めて示した。
  日米安保条約・米軍基地存続を最優先課題とする政府は、憲法に違反して、米軍基地のために県民から強奪し続けてきた土地を、引き続き二十年間も強制使用しようとしている。
  沖縄の空も、嘉手納ラプコンの存在により管制権は依然として米軍の手に委ねられ、米軍と自衛隊の使用が優先される中で、極めて危険な状態にある。
  また、沖縄の玄関である那覇空港をはじめ、宮古などの民間空港の軍事利用や、米軍演習による山林破壊、住宅地への被害なども深刻である。
 1 日米安全保障協議委員会の場で返還の合意がされている五千七百四十二ヘクタールのうち、六十年四月一日現在、返還されたのは二千三ヘクタールにすぎない。残りの三千七百三十九ヘクタールについて、返還計画を具体的に明らかにされたい。
 2 返還合意がなされているのは、在沖縄米軍施設・区域のわずか二〇%にすぎない(復帰時の防衛庁告示第十二号による告示面積比)。二次振計が、解決すべき基本的課題とする土地利用上の制限、すなわち広大な米軍施設・区域の整理縮小をどのようにして実現していくのか、具体的に示されたい。
 3 広大な米軍基地や嘉手納ラプコンの存在に加え、民間空港の軍民共用化、基地機能の強化は、二次振計の目標達成の重大な障害となつており、県民の願いにそむくものである。直ちにやめるべきと考えるがどうか。
 4 軍用地の二十年強制使用は、「財産権はこれを侵してはならない」とした憲法に明確に違反するものである。昨年十二月十日の衆院内閣委員会における私の質問に対し、加藤紘一防衛庁長官(当時)は、安保条約と我が国憲法との関係について「有権的に述べる立場にない」として、明確な答弁を避けている。
   米軍基地確保を目的とした土地強奪は、安保条約を日本国憲法に優先させるものであり、断じて許されないと考えるがどうか。

 右質問する。





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