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昭和六十一年十一月二十日提出質問第一三号
過度の円高是正と企業の海外流出の急増制御に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和六十一年十一月二十日
提出者 春日一幸
衆議院議長 原 健三郎 殿
過度の円高是正と企業の海外流出の急増制御に関する質問主意書
昨年九月のG5以後、急激な円高の衝撃を受け企業の倒産や雇用不安が深刻化して、日本経済はさながら恐慌前夜の状態にある。
殊に、造船、鉄鋼、非鉄金属、セメント等の企業には致命的な打撃を与え、一方において自動車、電機、ハイテク等の企業には海外への進出を加速させている。
そもそも、この急激な円高こそは、政府が参加したあのG5の合意による為替市場への協調介入に端を発し、その後における政府の対応が当を得ずしてこれを激化させたものであり、政府の責任は極めて重大である。
かくて企業は今や事業の転換、新分野の開拓、海外進出等、自主防衛の戦略に汲々として腐心せざるを得なくなつている。
ところで、このような自主防衛の戦略の一つである企業の海外進出は、当面貿易黒字の縮小の一助にはかない、受け入れ国の生産性向上や雇用の創出に寄与する反面、国内産業をそれだけ空洞化し、雇用を減少させるのみならず、更に将来は日本の輸出市場を蚕食し、ついにはブーメラン現象で国内への逆輸入を招くなど、その逆作用もまた大きい。
三菱銀行試算によれば、このようにハイペースで企業の海外進出が行われると、五年後には六十年度五百五十億ドルの貿易黒字は二百二十億ドルほど減少するが、その一方でそれだけ国内生産が低下するので、六十年度失業率三パーセント弱は五年後には一躍七パーセント近くに激増するとある。これはこれプラス、マイナス両面に切り込む両刃の剣と言える。
かくの如く、加速する企業の海外流出は、産業の空洞化と雇用の減少によつて日本経済に自ら痛棒を加えるだけでなく、受け入れ国との間に新しく投資摩擦、文化摩擦を生ずる懸念なしとせず、その及ぼす影響ははかり知れない。
よつて、政府は、G5による合議が契機となつて円高不況を触発させた責任を痛感し、この際、過度の円高の是正、即ち円為替レートの適正化、安定化を図るためG5に対し改めて協力を求めるとともに、また、企業本意の海外流出の急増制御について、速やかに適切な内政、外交上の措置を講ずべきであると思うが、政府の見解並びにその方針を伺いたい。
右質問する。