衆議院

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昭和六十一年十二月十六日提出
質問第二九号

 公有水面埋め立ての問題点に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十一年十二月十六日

提出者  草川昭三

          衆議院議長 原 健三郎 殿




公有水面埋め立ての問題点に関する質問主意書


 私は、昭和六十年四月十六日と六月十四日の二回にわたり衆議院環境委員会において、名古屋港内高潮防波堤内側の公有水面埋立問題を採り上げた。これは、第六次港湾整備五ヵ年計画に基づき運輸省第五港湾建設局が出願人となり、約百七十億円の工費と六年三ヵ月の歳月をかける第二ポートアイランド計画と呼ばれるものである。
 私が、二回にわたつて国会質問を行つた主旨は、埋め立てに関する事前協議、意見照会等の手続に瑕疵があること、浚渫、埋立工法の安全性・汚染対策に問題があることであつた。しかし、その後の推移を見ると私の指摘した安全・環境上の疑問点の解明がなされないまま、あらかじめ予定された工法で、一日二百六十艘から二百七十艘の船舶が通航する航路を横切つて排砂管を敷設する工事が行われようとしている。私はこの現状に強い不満と危機感を持つものである。航路の安全確保・環境保全の立場から次の質問を行うものである。

一 まず、公有水面埋立法第三条第一項の「地元市町村長の意見聴取の運用」に関して、何故、名古屋市を除外したかについて質問する。昭和六十年六月十四日の衆議院環境委員会において、運輸省港湾局小池管理課長は、「確かに名古屋港は名古屋市を含みまして三市一町一村にまたがる港になろうかと思います。しかしながら、埋立法でいきますと、その地元市町村ということになつておりまして、この地元市町村と申しますのは、出願されました埋立区域につきまして最短距離にありまして、通常その埋立区域が将来その市町村の行政区域に編入される、そういうことが予定される市町村、このように理解しているわけでございます。それで、そう考えますと、この埋立地につきまして、名古屋市につきましては他の二市一町一村、これと比較して距離が離れておりまして、かつ、現在の市町村境界、これの延長線、こういうものを考慮いたしましても名古屋市に編入されることは考えられないということから除いたものでございます」との答弁を行つている。
  一方、第七十一回国会の衆議院建設委員会(昭和四十八年六月二十七日)で建設省河川局川田陽吉次長は、「地元市町村長は、最小限度埋め立てを施行する区域の市町村長を意味しております。埋め立ての区域と、それから埋め立てに関する工事の施行区域を含めまして、そこにひつかかります市町村長という意味でございます」と答弁している。埋立区域と埋め立てに関する工事の施行区域を含めこれらに係る市町村(長)とする見解である。
  昭和五十九年五月二日、運輸省第五港湾建設局長が公有水面埋立承認願書を出しているが、その記載事項の中の埋め立てに関する工事の施行区域として、名古屋市港区空見町四十一番地(その他略)先公有水面と明記されている上、環境影響に関するシュミレーションの結果を見ても、名古屋市の区域にも環境上の悪影響が及ぶことが認められている。名古屋市を除くとした運輸省の国会答弁は、右の点をどのように踏まえて行つたものかその根拠を明らかにされたい。
  また、埋め立てに関する工事の施行区域内の公有水面とは、埋め立てを行おうとする公有水面よりは広いと解される。すなわち、埋め立てに関する工事とは埋立工事より広い意味であり、埋め立てに関連して行われる付帯工事をも含むものであり、埋立工事は埋め立てられる公有水面だけで行うことはできないからその範囲を超えることがあるのは当然であろう。埋め立てに係る「地元市町村」の範囲について、運輸省と建設省の解釈が異なつているのは問題であり、政府の統一見解を明らかにされたい。
二 地方自治法においては、市町村の境界が判明できない場合において、その境界に関し争論がないときは、都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてこれを決定することとされ、その境界に関し争論があるときは都道府県知事が関係市町村の申請に基づき、自治紛争調停委員の調停に付し、又は、すべての関係市町村の申請に基づき、裁定を行う等により境界が定められることとなつている。市町村の境界について自治紛争調停委員が調停を行い、又は、都道府県知事が決定等を行う場合の基準については、地方自治法には規定がないが、現実には区域の変動に関する沿革、経緯、自然的条件、関係市町村の従前の行政権行使の実状、都道府県又は国の行政機関の事務処理の実状、行政権行使の便益、住民の社会・経済上の便益等種々の事情が考慮されて調停決定等が行われてきているものと考える。地方自治協会の「全国の境界紛争解決事例」によれば、埋立地に関し関係市町村の間で、境界上の紛争が生じる事例が多いことが記載されている。このような点を踏まえるならば、運輸省港湾局小池管理課長が計画段階で「現在の市町村境界、これらの延長線を考慮しても名古屋市に編入されることは考えられないことから除外した」(要旨)と答弁を行つたことに疑問を持つものである。地方公共団体の区域について、埋立工事を担当する運輸省港湾局が断定的な見解を述べることができるのかどうか政府の統一見解を求める。
三 また、水上の境界を定めるに当たつては、@陸上境界延長主義、A垂線主義、B見通し線主義、Cみお・浅瀬・タールヴェーク主義、D平行線主義、E中点連結主義、F等距離線主義、G面積衡平主義等があるといわれている。港湾局管理課長はどの考えを根拠に答弁をしたのか明らかにされたい。また、その根拠は、政府の統一した見解なのか併せて質問する。
四 環境庁は本件について昭和五十九年十二月、意見照会の回答を行つている。昭和六十年六月十四日の衆議院環境委員会において、「地元での調査をしたか」との私の質問に対して、環境庁山崎企画調整局長は「私どもがみずから調査をしたことはございません」との答弁を行つている。浚渫区域には、海底部に堆積した浮泥が浚渫部に堆積・流入するおそれがあるが、これらに対する事前調査及び二次公害対策を関係機関を含めどのように行つたかこの際明らかにされたい。
五 排砂管設置工事について質問する。私は、さきにふれた六月十四日の衆議院環境委員会で膨大な量の船舶が通航する伊勢湾の航路を横断する排砂管設置工事の危険性を指摘した。その際、運輸省港湾局森平建設課長は「航路を横断して排砂管を敷設した事例をたくさん持つており、特段の支障を全く生じていない」(要旨)、また「航路を横切つて排砂管を埋設する、これは(略)私どもいろんな経験を持つておりますのでこれは簡単にできます」との答弁を行つている。しかるにその後の工事状況を見ると航路部(約五百七十メートル)の排砂管敷設の押さえ盛土は、両サイドと中央一ヵ所それぞれ四十メートルにすぎない。簡単にできると答弁しているのだから、安全性の上から航路横断部分すべてに押さえ盛土をすべきでないか。何故一部だけなのか、その理由を明らかにされたい。
六 また、並行する予備管は全く押さえ盛土の計画がなされていない。これでは航行船舶の緊急投錨の際、大事故が発生することになるが、どのように考えているのか明らかにされたい。
七 排砂管敷設検討のため、学識経験者等からなる委員会が設置されたというが、「簡単にできるもの」(前記答弁)に何故わざわざ委員会の設置を行つたのか、その理由を明らかにされたい。
八 昭和六十一年八月「排砂管布設工事に関する連絡調整会」が開かれたが「押え盛土は、港湾機能がストップする期間を極力少なくし、必要最小限とする」(昭和六十一年十一月六日運輸省港湾局作成の資料原文のまま)との結果をまとめている。押さえ盛土を最小限にする意味ならば、安全に対する配慮を無視したことになる。どのような考えか明らかにされたい。
九 昭和四十九年十二月十二日、中央合同庁舎三号館共用大会議室で開かれた第二十回全国港湾工事報告会の報告概要(運輸省港湾局監修)を見ると、水島港海底パイプライン工事埋設管の土被り厚の事例報告が述べられている。これによると、「海底配管の土被り厚は、その上を通過する最大船舶が万一錨を落下しても安全であるように決定しなければならない。そこで本工事においては、陸上において実物大の落錘実験を実施した。これにより埋設管の土被りは三メートルあれば十分であることが確認されたが、より安全を考えて五〜六メートルとした」(要旨)と報告している。この安全性を重視した報告を考慮して名古屋港排砂管設置工事の施行を考えたのかどうか答えられたい。
十 燃料配管と排砂管との違いはあつたとしても、水島港の例にならつて陸上における落錘実験は行うべきであると思うが見解を明らかにされたい。
十一 航路横断部以外の海域部における排砂管は混気ジェットで海底現地盤に沈設するというが、これには疑問がある。何故ならば、敷設延長二千四百十メートルもの長い排砂管を、大小の凸凹(不陸)がある海底にすべて沈設させることは不可能と思われ、露出箇所が出ることは十分予想されるからである。泊地を南北に縦断する排砂管に船舶の錨が接触することが考えられるが、安全上の不安は絶対にないのか明らかにされたい。
十二 この工事によつて水質汚濁が生じ、関係者に被害が発生した場合、どこの省庁が対応をするのか明らかにされたい。
十三 私が、これだけ本件排砂管工事の危険性を指摘していたにもかかわらず、台風その他の強風に煽られて錨泊船が走錨(走錨事故は、船舶交通が輻輳し、また錨泊船の多い伊勢湾にあつては、他の船舶、施設への影響が極めて大であり、大災害を引き起こす危険な要因である)し、排砂管を切断し、汚泥が付近に拡散して、関係者に被害が発生した場合、国家賠償法第二条にいう「営造物の設置又は管理に瑕疵があつた」ことに該当し、国が賠償の責任を負うことになるのではないか。一般論として質問する。

 右質問する。



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