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昭和六十二年三月九日提出
質問第一一号

 米軍ハリアー訓練基地建設に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十二年三月九日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 原 健三郎 殿




米軍ハリアー訓練基地建設に関する質問主意書


 米軍は、沖縄県国頭村安波地区の安波ダム付近に、垂直離着陸機ハリアーの訓練基地を建設しようとしている。
 当該地域は、安波ダムの貯水池からわずか二〇〇メートルしか離れていなく、安波部落も近く、周辺では土地改良事業も進められている。更に周辺の山林は、国指定の特別天然記念物ノグチゲラや天然記念物ヤンバルクイナ等の貴重な動物の生息地でもあり、安波ダム、普久川ダム等県民生活に不可欠の水源地もある。
 このような地域にハリアーの訓練基地が建設されるならば、自然環境が破壊され、ダム汚染、爆音等による生活環境の悪化は必至である。
 こうした米軍の暴挙に対し、沖縄県議会や国頭村議会をはじめ県下の市町村議会が相次いで抗議の決議を行うとともに、建設計画の即時撤回を求める県民ぐるみの基地反対運動が急速に高まつているのは当然のことである。
 現在、建設工事は地元安波区民、国頭村民をはじめ多くの県民の反対にあい一時的に中断されているものの、米軍は「北部訓練場にハリアー施設は必要であり、現在地が最良である」(二月二十日、米海兵隊報道部発表)として、建設計画を決して断念していない。
 しかも重大なことは、政府自身が米軍のこうした態度に同調して、事態の鎮静化待ちの姿勢をとりつづけながら、三月六日には、米軍の要請で「赤土流失防止対策のための測量」すら始めていることである。
 政府は基地建設反対の県民の声に真剣に耳を傾け、米軍に対し建設計画の撤回を直ちに求めるべきである。
 以上の立場から、これまで明らかにされていることを含め、改めて次の点について政府に質問する。

一 去る一月九日の那覇防衛施設局に対する私の抗議に際し、当局の弘法堂那覇防衛施設局長は、「米軍は数年前からハリアー・パッドを作りたいと言つており、要請を受け、数ヵ所のうちから、昨年一月、安波ダム付近を検討した」と述べた。
  また、一月二十一日外務省に対する日本共産党国会議員団の申入れに際し、外務省の藤井北米局長は、「外務省としては事前の通報を受けていた。米軍と防衛施設庁が共同で調査をしたはずである」と述べた。
 1 ハリアー訓練基地の建設について、米軍当局からいつ、どのような要請があつたのか。那覇防衛施設局が「検討した」とされている「数ヵ所」とはどこか、その中で安波ダム付近を最良の場所として選定した理由は何か。
 2 米軍と防衛施設庁が共同で調査したというが、いつ、どこで、どのような調査を実施したのか。また、その結果はどうか。
 3 今回の建設地域が安波部落や県民の水ガメである安波ダムの貯水池の近くで、周辺の山林は貴重な動物の生息地となつている。
   水道法第二条では、国及び地方公共団体は、「水源及び水道施設並びにこれらの周辺の清潔保持のため必要な施策を講じなければならない」としている。
   こうした水源地の清潔保持の問題をはじめ、騒音問題や自然破壊等について政府はどのように考えるのか。
 4 一九七九年十月十九日、米軍キャンプ富士で台風による強風のため、移動式燃料タンク(ゴム製)が崩壊、大量のガソリンが流失し多数の死傷者がでる事故が起きたことがある。
   米軍の発表によれば、今回建設しようとしている訓練基地にも移動式燃料補給用ゴム袋を設置するとされているが、万が一当時のような事故が起きれば、県民の水ガメである安波ダムの汚染をはじめ、周辺の水源かん養林の火災など多大な被害が予想される。政府はこうした危険を承知のうえで、なお現在地が最も適していると考えているのか。
二 一月二十一日防衛庁に対する日本共産党国会議員団の申入れに際し、防衛施設庁は、新たなハリアー訓練基地をつくる理由として、米軍は「@海兵隊地上部隊との連携訓練を実施するため、A短距離離着陸のできる長いパットが必要、B一ヵ所のパットだけに負担がかからないようにする」と述べていることを明らかにした。また、米海兵隊報道部の発表によれば、「ハリアー・パッドは、縦約二七〇メートル横約二三メートルの四方形の金属マット、その周りには縦約四九メートル、横約一八メートルの金属マットを三ヵ所に敷き、駐機場にする。さらに、野戦用の移動式燃料補給用ゴム袋を設置する場所を確保する」(一月十二日付沖縄タイムス)としている。
  そこで政府に改めて伺いたい。
 1 米軍が新たなハリアー訓練基地を北部訓練場に建設しようとする理由は何か。
 2 建設されるハリアー訓練基地の滑走路、駐機場などの規模及び設備(付属設備を含む)の内容はどうか。滑走路にはランプ(ジャンプ台)を設置するのか、駐機場は最大何機駐機できるのか等具体的に明らかにされたい。
 3 野戦用の移動式燃料補給用ゴム袋の使用目的は何か。それにはどれだけの燃料をどこに設置するのか。それは常設の設備になるのか。その管理をどうするのか。
 4 新しいハリアー訓練基地を使つて訓練しようというハリアー部隊の所属及び部隊名とその規模について明らかにされたい。
 5 ハリアー機はどのような訓練をするのか、複数機以上の同時離着陸訓練もやるのか。更には、海兵隊地上部隊との連携訓練とはどういう訓練をするのか、安波海岸からの上陸訓練や付近の安波ダムを使つた訓練との連携訓練等もあるのか。それぞれ具体的に明らかにされたい。
 6 言うまでもなくダムを使つての訓練は、県民の大切な水ガメを汚染するとして、県民が強く反対している。
   にもかかわらず、米軍は「五・一五メモ」を根拠に、渡河訓練など八項目の演習の実施権限を保留しながら、特に、@小型舟艇操作訓練、A水質浄化訓練、Bヘリによる消火訓練の三種類は、「絶対やらないとは言えない」(五十八年十一月の三者連絡協議会)と訓練を行う意向を表明しつづけてきた。
   今回のハリアー訓練基地建設は、米軍のダムを使つた訓練に公然と道を開くものになると言わざるを得ない。政府は、これまで県民が強く反対してきたダムの訓練までも認めようということか、明確にされたい。
三 米海兵隊は、「最新鋭のAV8BハリアーIIが、一九八九年に岩国基地に配備され、沖縄はその訓練基地になる」ことを明らかにしている。
 1 配備が計画されているハリアー部隊の所属、部隊名、人数及びハリアー機数等を具体的に明らかにされたい。
 2 岩国基地にハリアー部隊が配備されていた五十二年当時、運営効率化を理由にその分遣隊が沖縄の嘉手納基地に配備され、事故も多発したことがある。
   今回岩国基地配備にともない、再びその分遣隊が嘉手納基地など沖縄の米軍基地に配備される可能性があると考えられるがどうか。
 3 新型のAV8BハリアーIIは、飛行能力、電子装備の性能も人幅にアップし、核攻撃能力も与えられている。これは当然岩国、沖縄基地の核攻撃機能が強化され、同基地の危険性を一層高めるものとなる。
   政府は米軍基地のこうした危険な事態の進行についてどのように考えるのか。
四 那覇防衛施設局の弘法堂局長は、体をはつてでも建設を阻止しようとする県民の真剣な運動を「感情的な反対運動をやめ、冷静になつてほしい」と愚弄するような言い方をして、「訓練は、年二回程度だからあまり影響はない」と述べ、その場しのぎの言い方に終始している。
  ところが米軍は、「既存のハリアー・パッドを含め、あちこちで訓練をやるだろう」とか、「新しいハリアー訓練場の完成にともない、沖縄近海を航行するハリアー機が訓練することもある」と述べ、沖縄のハリアー訓練基地が、米軍の訓練のために今後頻繁に使用される可能性を示唆している。
 1 「既存の基地も使用する」と言うが、どこの基地を使うのか。一回の訓練で複数以上の基地を同時的に使用することもあるのか、明確にされたい。
 2 政府の言う「二回程度だから影響はない」とする根拠は何か、訓練回数が将来にわたつて増えないと言い切れるのか、県民の納得のいく説明をされたい。
五 那覇防衛施設局は、県民のハリアー訓練基地建設反対運動の急速な高まりの中で、「県から六五〇〇平方メートルと九三〇〇平方メートルの基地を農耕地として返還する要請が出ているが、今回の問題でこれはマイナスに働くことは避けられない」とか、「地元住民は、反対するなら施設の代替地を示すべきだ」と地元住民の切実な願いを敵視し、踏みにじる言動を行つている。
  「基地のない平和な沖縄を」というのは本土復帰の原点であり、沖縄県民共通の願いである。しかも、「米軍基地の整理・縮小」は政府自身の方針ではないのか。
  県民の切実な要求をハリアー訓練基地建設との交換条件にするとか、基地撤去を要求している側に代替地を捜せなどという本末転倒した政府の無責任な態度は、言語道断であり絶対に許されるものでない。
  今回の新たなハリアー訓練基地建設計画に対して、沖縄県議会をはじめ、国頭村議会、周辺市町村議会が、建設の即時中止と北部訓練場の撤去を求める意見書を全会一致で相次いで採択している。ここに示されているのは基地建設反対の県民の願いであり、県民の意志である。政府はこれらの地方議会の意見書や県民の願いをどのように考えるのか、県民の一致した意志を無視して、アメリカの軍事計画をあえて優先させようというのか。
  政府はこうした県民の願いに謙虚に耳を傾け、直ちに米軍当局に対し基地建設計画の撤回を要求すべきである。あわせて北部訓練場の撤去を強く求めるものである。
  政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。





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