衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
昭和六十二年三月二十三日提出
質問第二二号

 自由貿易地域に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十二年三月二十三日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 原 健三郎 殿




自由貿易地域に関する質問主意書



 沖縄振興開発特別措置法(昭和四十六年法律第百三十一号、以下「沖振法」という。)第四章には、自由貿易地域に関し次のように規定している。すなわち、@「沖縄開発庁長官は、沖縄県知事の申請に基づき」指定するものであること、A「自由貿易地域内において事業を行なおうとする者は」「沖縄開発庁長官の認定を受けることができる」こと、B「自由貿易地域内の土地又は建設物その他の施設」を関税法に規定する「指定保税地域」「保税上屋」「保税倉庫」「保税工場」「保税展示場」として外国貨物がそこにある一定期間の保税を認めること、CAの認定を受けた者に対する、租税特別措置法で定める「自由貿易地域投資損失準備金」「減価償却の特別償却」の適用及び「事業税」「不動産取得税」「固定資産税」の課税免除の適用と地方自治体に対する地方税減収分の地方交付税措置など、である。
 いうまでもなく、沖縄の経済を再建するうえで産業振興は不可欠であり、県民本位に推進されることが求められている。沖縄県の経済構造、深刻な失業問題等の現状にてらせば、「自由貿易地域」は雇用拡大を図る無公害の企業立地によつて進められるべきであり、その具体化に当たつては広く県民の創意と工夫が結集されなければならない。
 現在、沖縄県当局をはじめ関係者の間では、沖振法に基づく「自由貿易地域」の指定に向けた作業が進められている。
 しかしながら、私の聞くところでは、同法にいう「自由貿易地域」の概念をめぐつて必ずしも関係者や県民の認識が一致しておらず、また、沖縄県が用地として使用の申請を行つている米軍那覇港湾施設区域についても、日米安保条約のもとでその承認が著しく遅れ、沖縄開発庁長官に対する地域指定の申請もできず、県の来年度予算への計上も見送らざるを得ない状況とのことである。
 従つて、沖振法に規定された「自由貿易地域」を、県民生活の向上と産業振興に役立つように、早期実現を図るという立場から、以下質問する。

一 沖振法第四章に規定されている「自由貿易地域」とは、保税地域のことであり、関税法の枠内のものとされており、立地企業に対する租税特別措置法、地方税法上のいくつかの優遇措置と一定期間の保税を認めるだけのものであると考えざるを得ない。
  だとすれば、沖振法にいう「自由貿易地域」はいわゆるフリー・ゾーンと明確に区別すべきである。
  いわゆるフリー・ゾーン ― 国際的にも行われている自由貿易地域と、関税法でいう保税地域との違いは何か。また、関税法でいう保税地域と沖振法でいう「自由貿易地域」との違いはあるのか、あるとすればそれは何か。具体的に明らかにされたい。また、復帰前の沖縄にみられた“自由貿易地域”との違いは何か。
二 沖振法に規定された「自由貿易地域」で製造・加工された商品が同地域外へ移出される際に課される関税は、すべて製品課税ではなく原料課税とされるのか。さらに、最近の世論調査でも国民の八二%が反対(「朝日新聞」三月十四日付)している「売上税」について、保税地域たる「自由貿易地域」内における製造・加工、及びそれに必要な原材料の国内からの移入、こうしたものは関係ないといいきれるのか、具体的に明らかにされたい。
三 沖縄に「自由貿易地域」を創設することのメリットについて、特に県民一人当たり所得水準や失業率の改善など、「自由貿易地域」を創設することによつて本土との格差をどのように是正しようと考えているのか、具体的に明らかにされたい。
四 現在検討されている「自由貿易地域」について、沖縄県は米軍提供施設の一部である那覇港湾施設内の用地(約二・七ヘクタール)に物流中継加工型として、昭和六十二年度に政令等の制定、地域指定、事業の認定、六十三年度に企業立地し、運用開始を希望していると聞いている。
 1 沖縄県は、那覇港湾施設の一部を用地として使用するため、日米安保条約第六条に基づく地位協定第二条4項(a)に規定されている一時使用の申請を昨年七月に行つた。
   米軍提供施設は、本来県民の財産である土地を米軍が銃剣とブルドーザーで取り上げたものであり、本土復帰に伴い日米安保条約による提供施設とされているものである。その土地を県民のために使用することは、沖縄県民にとつて当然の権利であり、政府は積極的に県民の要求に応ずる義務がある。
   だからこそ政府自身も第二次沖縄振興開発計画において、米軍基地の「整理・縮小」を明記しているのではないか。
   沖縄県が「自由貿易地域」の用地として使用を希望している区域について、沖縄の振興を図るうえからも速やかに使用できるようにすべきであると考えるが、政府は米軍に対してどのような交渉をしているのか、いつまでに結論を出すのか、具体的にされたい。
   また、「一時使用」ということで、米軍が再び必要とした場合、「自由貿易地域」としての安定的使用はどのような形で保証されているのか、具体的に示されたい。なぜ返還という形をとらないのか。
 2 県知事の申請に対して、開発庁長官は、どのような基準、原則に基づき指定をするつもりなのか。
   沖振法では、自由貿易地域内における事業の認定に関し必要な事項を政令で定めることとされている(第二十四条第三項)。政府はその政令を、いつまでに、どのような内容で制定しようとしているのか。
   また、制定に向けては、沖縄県等の関係者の意見をどのような形で反映させるつもりなのか。
 3 沖縄県の計画では、用地造成などを含め約十四億円の事業費が必要とされている。特に、施設整備費は十二億円が見込まれている。沖振法第二十八条によると、「国は、必要があると認めるときは、自由貿易地域となるべき地域の土地の造成、自由貿易地域内の施設の整備その他自由貿易地域内の土地及び施設に関する事業を行なうことを目的とする特別の法人を設ける」と明確に規定されている。
   沖振法の趣旨にてらせば、また、沖縄県の財政事情をみれば当然国の責任でこの「特別の法人」を設置し、国の負担で事業の推進を図ることが必要と考えるが、そのための立法措置をとるつもりはないのか。
   仮にそのつもりがないとした場合、沖縄県の負担を軽減するためどのような措置をとるつもりなのか、具体的に明らかにされたい。
 4 沖振法では、認定業者に係る事業税、不動産取得税、固定資産税の減収に対する地方交付税措置を規定している(同法第二十七条)。これらの地方税減収分の補てんは、沖縄県における産業振興を図るうえからも完全に実施されることが必要であり、その保証を明確にすることが必要である。
   政府はどのような措置を考えているのか、明示されたい。
 5 沖縄県は、本土復帰に際して、家具製造業、製靴業などの既存の県内産業が本土製品の流入で壊滅的打撃を被つたという苦い経験がある。沖縄県の産業振興を図るためには、その教訓を生かし、既存産業の振興発展を基礎にした政策の実行が不可欠である。
   現在進められている「自由貿易地域」の立地企業の業種については、物流中継加工機能と関連する製造加工業や輸入卸売業等を主体とすると伝えられているが、既存の県内産業への影響、とりわけ地場産業への打撃による失業の拡大という否定的影響を引き起こさないために、政府はどのような具体的措置をとるつもりなのか。
五 沖振法に基づく「自由貿易地域」の今後の運用について、沖縄県は同地域内における観光ショッピングなど、枠の拡大を要望しているというが、政府は沖縄の振興という立場からどう考えているのか、明らかにされたい。

 右質問する。





経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.