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昭和六十二年九月十四日提出
質問第三三号

 石綿(アスベスト)汚染対策に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十二年九月十四日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 原 健三郎 殿




石綿(アスベスト)汚染対策に関する質問主意書


 石綿(アスベスト)については、建築資材として、また断熱材や摩擦材、防火、保温材などとしても一般に広く使用されている。ところが、その製造・加工や解体に従事する労働者や周辺住民に対する危険性が叫ばれるようになつて、各地の学校をはじめ、公共建物などからの撤去が相次いでいる。また、東京都などでは独自に解体の作業マニュアルや廃材の処理方法などを示した要綱を策定する方針といわれている。
 沖縄県においても昨年三月に県庁舎改築に伴う石綿の撤去が行われたのをはじめ、本年六月から七月にかけて元牧港米軍住宅地区で大規模な石綿撤去作業が行われ、また、この秋にも旧琉球大学の建物からの石綿撤去作業が予定されている。さらに、在沖縄米軍基地でも五ヵ年以内に沖縄県内の基地からすべての石綿を除去するといわれている。
 このように、全国的に石綿の実体調査が進むにつれて撤去作業が頻繁に行われることは必至である。にもかかわらず、その撤去作業に伴う労働者のばく露防止や周辺の環境への飛散防止対策は極めて不十分であり、政府の対応も縦割りの関係省庁まかせであり、統一的な対策がとられていない。
 従つて、石綿汚染に対する政府の対策を早急に強化し、労働者や住民の安全を第一に石綿の規制を強化するうえから、以下質問する。

一 石綿の危険性について
  石綿を起因とする肺がんや中皮腫の発病は、潜伏期間二十から四十年を経てからといわれていると聞くが、労働省が作成している特定化学物質等作業主任者講習テキストによると、石綿障害の事例として、「五十三歳の男で石綿工場で保温材を製造していたが、約四年後に息切れがあり、翌年、せき、たん、呼吸困難がひどくなつた。石綿肺と診断されたのち、肋膜炎を繰り返し衰弱がひどくなり、発病後約三年で死亡した」例が挙げられている。
 1 石綿による人体及び環境への影響・危険性について政府はどのように把握しているのか。
   また、建材やブレーキ・クラッチ材などの石綿製品の安全性についてはどうか、その根拠も含め明確にされたい。
 2 石綿製品の製造に従事する労働者の障害の発生件数を障害毎、作業環境毎に明らかにされたい。また、それら製造に従事する労働者について全員を対象にした健康診断の実施など健康・安全管理が必要と考えるが、政府はどのような対策をとつているのか、具体的に示されたい。
二 石綿の環境基準及び安全管理について
 1 我が国においては、壁材、床材、屋根ふき用スレートなどの建材として、また、自動車用ブレーキ材などとしても、石綿が広く一般に使用されている。これら石綿の製造.加工、建築現場からの飛散や自動車のブレーキからの摩擦による飛散が危惧されている。事実、環境庁が行つたモニタリング調査でも、交通量の多い場所や建築物の解体現場近くでは他に比して高い値が測定されている例もみられる。
  (1) にもかかわらず、一般の空気中の石綿については環境基準さえもないという状況である。昨年十一月二十五日付中路雅弘議員の「米軍基地等における石綿粉じん公害に関する質問主意書」に対する答弁書の中で、政府は、「石綿が環境蓄積性の高い物質である」としてその危険性を認めながら、石綿による大気汚染については「直ちに問題となるレベルではないと判断している」というが、その根拠は何か。どのレベルになれば問題になると判断するのか。また、現在のレベルであれば絶対に安全であると断言できるのか。明確にされたい。
  (2) 一般空気中の石綿については、昭和六十年度から始められたモニタリング調査があるが、それ自体ごく限られた資料しかないのが実態である。政府は、昭和五十年に石綿を有害物質として指定し、原則として石綿の吹きつけを禁止する措置をとつている。石綿の危険性を十分熟知しているにもかかわらず、石綿による汚染の実態調査を怠つてきた政府の責任は重大である。国民の生命にかかわる石綿汚染の実態調査と安全基準の確立に関する政府の責任についてどのように考えているのか、明らかにされたい。
  (3) 現在行つている調査を一層拡充し、全国的な実態の把握を行うとともに、環境基準を早急に策定する必要があると考えるがどうか。
 2 労働環境中の石綿の空気中における許容濃度は、我が国の場合、空気一立方センチメートル当たりの石綿繊維本数は二本といわれている。ところが、欧米諸国とりわけアメリカの場合、日本の十分の一の〇・二本を許容濃度としている。
   去る八月十九日の本院沖縄及び北方問題に関する特別委員会における私の質問に対して、労働省冨田達夫化学物質調査課長は石綿粉じんの労働環境基準強化について、「国際的動向を踏まえつつ、国内での知見を集め、必要な対策をとる」と答弁された。昨年、労働環境濃度を十分の一に強化したアメリカの例を挙げるまでもなく、石綿の使用を含めた規制強化は世界的流れとなつている。
   石綿粉じんへのばく露防止のために、「国際的動向」は労働環境基準の強化である。いつまでに、どのような方向で強化しようというのか、具体的に明らかにされたい。
 3 石綿製品の表示については、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第五十七条によつて石綿の含有量が重量の五%を超える物について義務づけられている。ところが、「主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りではない」として一般消費者用を除外したうえ、その表示も実際にはスレートにして百枚〜百五十枚の梱包毎の表示であるために、末端の工務店や利用者が扱う段階では梱包が解かれ、表示そのものがされておらず、作業者は石綿含有について知らされないままにおかれるというのが実態となつている。また、表示されている分析表では〇%や五%とされているものでも、実際には七%の含有量であるものもあるという。
   末端の利用者にも石綿材であることをわかりやすく表示するために表示の在り方を改善するべきと考えるがどうか。また、表示の内容についてのチェック体制はどのようになつているのか、具体的に示されたい。
 4 石綿を取り扱う作業については、特定化学物質等障害予防規則(昭和四十七年労働省令第三十九号)第二十七条、二十八条で「特定化学物質等作業主任者を選任」し、作業現場での指揮、監視に当たらせることとされている。ところが、その「選任」は「特定化学物質等作業主任者技能講習の修了者」とされているだけであり、特別の免許や資格が必要とされている訳ではない。
   「作業主任者」は作業に従事する労働者の健康、安全にかかわる危険物の取扱いを指揮、監督する責任者である。その資格や技術基準を厳正かつ明確にすることが必要と考えるがどうか。
 5 労働省は、昨年九月六日付労働基準局安全衛生部長名の「建築物の解体又は改修の工事における労働者の石綿粉じんへのばく露防止等について」という要請を、建設業労働災害防止協会など関係団体宛てに行つている。また、都道府県労働基準局に対しては、この要請に基づく活動に関して関係団体等から協力依頼がなされた場合には、適切な指導、援助に努めるよう配慮を求めている。
  (1) 労働省の「要請」は、実際に石綿の撤去作業を請け負う事業者に対してどのような強制力をもつのか。「要請」の内容に従わなかつた場合、労働省はどのような措置をとるのか。
  (2) 各都道府県労働基準局の「指導」、「援助」も事業者や発注者からの相談がなされることが前提となつている。労働安全衛生法第八十八条第三項においては、「建設業に属する事業の仕事のうち」「重大な労働災害を生ずるおそれがある特に大規模な仕事で、労働省令で定めるものを開始しようとするときは」事前(当該工事の開始の日の三十日前まで)に届出を義務づけている。
      本年六月に行われた沖縄県那覇市の元牧港米軍家族住宅の撤去作業では、那覇防衛施設局が事業者を伴つて沖縄労働基準局に工期六月九日からという施工計画書をもつて「相談」に来たのは六月九日のことである。これで十分な指導ができると考えているのか。しかも、制度上はこの「相談」に行かなくても問題とはならないのである。
      石綿が人体に及ばす危険性について明確な以上、事前の届出義務を課すことは当然と考えるがどうか。なぜそうしないのか、その理由を明確にされたい。
  (3) 文部省は十月二十五日までの予定で、学校の石綿吹きつけの実態調査を行つているが、朝日新聞八月二十二日付によると、現在までの調査で全国約七百校で石綿が吹きつけられていることが判明したとされている。同時に、石綿の吹きつけがわかつた自治体では、撤去作業をしたいが専門の業者がほとんどなく、工事のやり方が分からずに、撤去工事の方法も、石綿を削り落としたり、薬品により封じ込めたり、板でとりあえず覆うなどバラバラという現状であり、ズサンな工事が行われている。
      建設業労働災害防止協会が本年七月に「建築物の解体又は改修工事における労働者の石綿粉じんへのばく露防止対策の進め方」という作業マニュアルを作成、講習会で使用しているというが、統一的な工事マニュアルがない。国の責任で労働者の安全と周辺への粉じん飛散防止を図るための工事マニュアルを早急に作成すべきと考えるが、いつまでに、どのような形で作成するのか、明らかにされたい。
三 石綿使用建材等の実態調査について
  防音・断熱材などの建築材料としての石綿材の使用は、学校に限らず多くの公共施設も同様と考えられる。石綿二次製品も含め使用されている施設の実態調査をいつまでに行うのか。現在進められている各省庁による実態調査の詳細を含め、具体的にされたい。
  また、建築材料以外の使用の実態についても明らかにされたい。
四 石綿を含む廃材処理について
  撤去された石綿を含む廃材の最終処理のうち埋立処理については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号)第七条第十四号ハに規定する「管理型」の最終処理施設において処理されているという。
  ところが去る九月六日、我が党の調査によつて大阪府泉南市男里の金熊寺川右岸の河川敷に大量の石綿半製品が野積みされていることが判明した。事態を重視した同市教育委員会が現場付近の小学校や幼稚園に通学・通園路の変更を指示するという事態にまで発展している。
  事実は野放しともいえる状態である。厚生省は現在、石綿廃棄物の安全な処理方法の作成を検討しているというが、そのマニュアルはいつまでに作るのか、明確にされたい。
  また、埋立処理方式の安全性について将来にわたつて安全であるといいきれるのか。埋立地の開発に対してどのような対策を講じるのか。その根拠も含めて明確にされたい。
五 石綿材の安全な使用方法の確立について
 1 防音や断熱性などの特性に優れているとはいつても、人体や環境への影響が明確な以上、国の責任で早急に石綿及び石綿材の無公害化、安全な使用方法を確立することが必要である。政府はどのような措置を講じているのか。
 2 我が国の大手メーカーが開発した代替製品には、欧米諸国に輸出されているものもあるとのことだが、現在の時点での代替製品の開発の到達点について明らかにされたい。また、その安全性についてはどのような対策をとられているのか、明らかにされたい。

 右質問する。





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