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昭和六十三年八月五日提出
質問第八号

 ゴルフ場開発による農薬汚染等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十三年八月五日

提出者  寺前 巖

          衆議院議長 原 健三郎 殿




ゴルフ場開発による農薬汚染等に関する質問主意書


 第三次ゴルフブームといわれるゴルフ場建設ラッシュによつて、ここ数年以内にゴルフ場は全国二千ヵ所以上、総面積二十万ヘクタール以上に達し、東京都全域の面積にほぼ匹敵する状況となる。また、ゴルフ場総入場者数も延べ七千七百万人に達しているといわれる。
 最近のゴルフ場開発の特徴は、リゾート開発に伴い都市計画区域外の地域で保安林や農業振興地域の指定を解除してまで山間部に建設されていることである。これらの開発は、@水源涵養の低下による湧水の枯渇、A急傾斜地の造成による災害の危険性、G農薬・肥料の過剰使用による飲料水の汚染等、周辺の自然環境にさまざまな影響を及ぼしている。
 とりわけ、農薬・肥料の過剰使用については、ごく一部で公表されているが、それによると十八ホールゴルフコースの場合、年間散布量で殺菌剤(五〜六種類)一、四〇〇キログラム、除草剤(六種類)一、三〇〇キログラム、殺虫剤(二種類)八〇〇キログラム、化学肥料平均五、〇〇〇キログラムが使用されている。最近では、健康を保持するためのゴルフ場でめまい、目のかすみ等の症状を訴えるゴルファーや従業員が増えている。
 そこで、千葉県では県内のゴルフ場に対して「ゴルフ場における緑地保全等の実態調査」アンケートを行つたり、埼玉県の小川町で周辺住民とゴルフ場業者との間で「環境保全協定」を結び、農薬使用状況の公開、水質等の定期的検査、汚染の場合の損害補償等を明示するという状況になりつつある。
 これらのゴルフ場開発問題について政府は、各都道府県の不十分な「ゴルフ場開発事業の規制に関する要綱」等にまかせつきりで、ゴルフ場は農薬取締法等の適用がほとんどなされない。故に、その使用農薬名、使用量、使用方法、水質への影響等の全容を明らかにさせていない。そればかりか、リゾート開発に伴うゴルフ場建設促進のための農地転用の規制緩和などを押し進めて、開発許可をめぐる贈収賄事件や周辺の自然環境を無視した建設ラッシュの横行を許している。政府の責任は重大である。
 日本共産党は、従来から大衆的な各種の公共的スポーツ施設の充実を国に強く要求するとともに、ゴルファー、従業員の健康と周辺の自然環境の保全及び住民の健康を守ることを強く主張してきた。
 ゴルフ場開発による農薬汚染、災害の危険から国民の生命と自然の環境を守るための対策は、緊急を要すると考える。
 従つて、次の事項について質問する。

一 農薬・肥料の過剰使用による飲料水等の汚染について
 1 農薬・肥料の使用状況についての全国的な実態調査
   ゴルフ場で使用されている農薬で、例えば発癌性で使用禁止になつた農薬と同じ化学構造をもち、魚毒性が強いC類で残留性も高い殺菌剤キャプタンや猛毒のダイオキシンを含んでいるといわれる除草剤2・4 ― D、アメリカのゴルフ場で使用禁止になつており、蒸散性が高く散布されるといつまでも大気中にガス化して環境汚染がおびただしい殺虫剤ダイアジノンなどが過剰に使用されれば、周辺住民の健康や自然環境に重大な影響を与える。
   ゴルフ場での農薬の使用状況がほとんど明らかになつていない現在、国は、その使用する農薬の品名、使用量、使用方法及び水質の監視体制等の実態調査を行うとともに、ゴルフ場の調整池、排水口及び簡易水道等の取水口での農薬残留モニタリング調査を実施すべきではないか。
 2 グリーンキーパーへの技術指導の強化
   政府の「農薬危害防止運動実施要綱」による農薬使用者等への講習会のような一般的な指導では不十分である。グリーンキーパーに対して農薬安全使用基準に従つた低毒性、低残留性の農薬を、適正な時期に、適正な量を局所的に使用するよう技術指導を強化し、周辺環境汚染に及ばないようにすべきではないか。
   そのうえで、農薬残留モニタリングによる検出量の高いゴルフ場については、農薬の使用を禁止する等の措置をとるべきではないか。
 3 無登録及び適用外使用に対する指導の強化
   農薬取締法においては、無登録及び適用外の使用はできないのに、実際には芝用登録以外の農薬が多種多量に使用されている。例えば、マス類の水生菌症の治療に使用するために水産用医薬品に指定されているマラカイトグリーンがゴルフ場の芝生の染色に使用されている。このマラカイトグリーンは、奇形発生因子(癌原性)があることが明らかにされているばかりでなく、河川等への薬物流出によつて自然界の生物に影響を及ぼすことが指摘されている。毒性の強いマラカイトグリーンの使用は、水産用の場合には排水処理装置で場外に流れることのないよう措置されているが、ゴルフ場の場合は、芝生の染色であり処理装置がないので使用すべきではないと考えるがどうか。
 4 水質・大気・環境汚染の生じない農薬の許可
   農薬取締法は、農作物を中心とした法とはいえ、ゴルフ場をはじめ公園、運動場、道路、鉄道線路等ひろく非農耕地における農薬の使用についても同法によつて登録認可を許している以上、同法によつて安全性を担保しなければならない。
   従つて国は、
  @ 非農耕地用登録の農薬においては、総量規制及び安全使用基準を明示すべきではないか。
  A 水質汚濁性農薬等指定農薬については、現状の農薬の認可された種類数から考えれば全く不要な製剤であり、これらに該当する薬剤は、再登録を留保するようメーカーを指導すべきではないか。
  B 水源涵養地及び簡易水道使用地等での農薬の使用は、水質を汚染しない性質をもつた薬剤をスクリーニングして許可すべきではないか。
 5 ゴルフ場開発地域に簡易水道等の水源地が有る場合、開発によつて水源の汚濁や水量の枯渇減少が生じる。この場合、影響を与えないように水源地の開発計画を変更するか、事業者負担で新たな水源地を確保するかにすべきである。
   奈良県山添村の山間部に計画が進められているゴルフ場開発は、その地域が農業振興地域でしかも多数の簡易水道の取水を有している。こうした水源の汚濁や水量の枯渇減少を生じさせる開発は計画そのものの凍結・再検討を指導すべきではないか。
二 急傾斜地の造成による災害の危険性について
 1 急傾斜地の造成における安全の確保
   最近のゴルフ場開発は、急傾斜地の山林に造成するケースが増え、昔からの地滑り多発地帯等に大規模な切取、盛土を行い、法肩の不安定状態や斜面崩壊を造りだし、周辺に災害の危険性を与えている。
   これらの災害の危険性をなくすためには、急傾斜地、山崩れ、地滑り等の危険地帯での開発は認めないという指導を徹底すべきであり、また切土、盛土を最小限にし、擁壁の設置、裸地期間の短縮、排水、水抜き対策等の安全上必要な措置が十分図られるよう指導すべきではないか。
 2 造成工事中の水質汚濁防止の強化
   造成工事は、降雨量によつて工事を停止し、とりわけ急傾斜地の工事は雨期を避けて工事する必要がある。工事中の濁水は、沈砂池や調整池で対処するとしているが、集中豪雨等でオーバーフローして河川を汚濁し、アユ等の放流魚に影響を与えることがしばしば起こつている。また、地下水脈の切断や汚濁によつて、周辺住民の井戸水の枯渇減少や汚濁が生じている。
   京都府亀岡市で現在造成中の地域では、かなりの急傾斜地で計画され、調整池のほかに仮設の沈砂池を二重、三重に設けても河川の汚濁がひどく、農業用水やアユ等に影響を与えるとともに、周辺の井戸水の汚濁も生じている。これらの周辺環境に影響を与えないためには、当面汚濁防止膜の深さ及び設置範囲の拡大等の措置が必要であるが、年間最大降雨量や流域面積当たりの流量、とりわけ裸地期間と傾斜度及び保水力を加味し、なおかつその容量は、洪水調整必要量の二倍程度の調整池や沈砂池の設置を指導すべきではないか。

 右質問する。





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