衆議院

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平成元年五月十九日提出
質問第二六号

 新幹線騒音公害に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成元年五月十九日

提出者  安藤 巖

          衆議院議長 原 健三郎 殿




新幹線騒音公害に関する質問主意書


 いわゆる東海道新幹線騒音振動差止・損害賠償請求訴訟事件において、一九八六年四月二八日、名古屋新幹線公害訴訟原告団団長小倉義一、同訴訟弁護団団長山本正男、日本国有鉄道総裁杉浦喬也との間で別紙和解協定書の記載のとおりの和解協定がなされた。
 右和解協定条項の実施に当たっては、和解協定における日本国有鉄道の地位を東海旅客鉄道株式会社(以下単に「JR東海」という。)及び新幹線保有機構が承継している。政府、特に環境庁及び運輸省は右和解条項の履行に当たってJR東海に対して指導し監督すべき立場にある。
 和解条項の基本である「昭和六四年度末まで」にはもう一〇ヵ月余しかない。以下に指摘するように測定結果の示す状況では、この約定を国鉄が、JRが的確に履行して、いわゆる新幹線公害から原告住民及び沿線住民を解放するのかどうか、政府・運輸省・環境庁はどのようにJRに対して指導、監督するのか、果たしてできるのかと強い懸念を沿線住民は抱いている。新幹線公害を無くするために、以下の質問について誠意ある答弁を求めるものである。
 そこで、次の事項について質問する。

一 和解条項1.(1)において、昭和六四年度末までに、住民ら居住の名古屋七キロメートル区間において、騒音を七五ホン以下にするよう国鉄が最大限の努力をすることになっており、同1.(4)では国鉄は国及び地元自治体の測定結果を尊重するとなっている。
  ところで、一九八八年一〇月一一日から同月二〇日までの間に名古屋市が、右七キロメートル区間内の原告住民ら居住地を含む五地点においていずれも線路より二五メートル離れた場所で測定したところ、原告住民ら居住地三地点での騒音測定結果は、
(a) 名古屋市熱田区古新町 上り側 七七ホン
(b)   下り側 七四ホン
(c) 名古屋市熱田区二番二丁目 上り側 七七ホン
(d)   下り側 七八ホン
(e) 名古屋市南区豊田二丁目 上り側 七二ホン
(f)   下り側 七四ホン
  (なお、原告住民ら居住地以外であるが名古屋市緑区大高町鷲津上り側では八〇ホン)というものであった。
  しかも防音対策として国鉄が和解条項3.(1)の@及びAの防音対策を@については終了、Aについてはほとんど終了という段階においてなおかくの如しである。
  これでは、和解条項1.(1)の昭和六四年度末までに騒音が七五ホン以下になるのかどうか極めて不確定であるといわざるを得ない。政府はJR東海に対して、名古屋市のこの測定結果をどのように尊重するように指導、監督するのか。
二 名古屋市は一九八六年度、一九八七年度にも測定しているが、右各地点における騒音レベルは次のとおりであった。
  一九八六年度 一九八七年度
(a) 七四ホン 七七ホン
(b) 七七ホン 七八ホン
(c) 七五ホン 七七ホン
(d) 七七ホン 八〇ホン
(e) 七四ホン 七三ホン
(f) 七四ホン 七六ホン
  (緑区大高町鷲津上り側では、いずれも七八ホン)
  この測定結果と一九八八年一〇月の結果とを比べてみるに、防音対策施行によって騒音レベルの引下げに効果があったとみられる部分もあるが、逆に騒音レベルが同じか若しくは上がって悪化している部分((a)、(c)、(d))さえある。
  この結果をどのように考えているのか。
三 右の様な測定結果となったのは、新幹線列車走行の速度と密接な関連がある。全部について指摘する余裕はないが、例えば
 (a)の場合、一九八六年度測定(第一測定)の評価列車(以下同じ)の速度は時速一八八キロメートルで七四ホンであったが、一九八七年度測定(第二測定)の速度は一九九キロメートルで七七ホンと、一一キロのスピードアップの影響が明らかに出ている。
 (b)の場合、第一測定は一九四キロで七七ホンであったが第二測定は二〇七キロで七八ホンと、一三キロのスピードアップの影響が出ており、一九八八年度測定(第三測定)は一七八キロにスピードダウンで七四ホンと明らかな影響がある。
 (d)の場合、第一測定は一九五キロで七七ホンであるが第二測定は二一五キロで八〇ホンと上がり、第三測定は一九六キロで七八ホンとなっている。
 (f)の場合は、第一測定二〇六キロで七四ホンが第二測定は二一二キロで七六ホンと上がり、第三測定は一九一キロで七四ホンと下がっている。
  他の場合でも同じことがいえる。
  この測定結果からみると、防音対策が行われても列車のスピードアップによって対策の効果が減殺されてしまっていることが明らかである。
  測定結果を尊重するというのであれば、そして七五ホン以下にするように最大限の努力をするというのであれば、列車走行を完全に減速するか、少なくとも七五ホン以下にすることができる防音対策ができるまで減速すべきではないか。
四 環境庁は、一九七五年七月二九日環境庁告示第四六号(新幹線鉄道騒音に係る環境基準について)で、主として住居の用に供される地域(類型I)は七〇ホン以下、商工業の用に供される地域等I以外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域(類型II)は七五ホン以下と基準値を示し、一九八五年七月二八日を目途に環境基準が達成又は維持されるよう努めるものとした。そして、一九八五年一〇月二一日付で、環境庁大気保全局長名で運輸省大臣官房国有鉄道再建総括審議官宛に、環境基準がいまだ達成されていない地域も相当みられるとして、住宅が集合する地域については当面七五ホン以下となるよう努め、特にこのうち住宅が連続して密集する所については、一九九〇年一〇月までに対策が完了するよう要請しているが、原告らの住居地のうち右(c)及び(f)は住居地域であり、住宅が連続して密集する所である。この要請をどのようにして実効あるものとしようとしているのか。
  和解条項1.(2)は、この環境基準を可及的速やかに達成するよう、対策の開発、実施に努めるよう国鉄に義務づけている。これを履行させるため、的確な措置をどのようにとるというのか。

 右質問する。


(別紙)

           和 解 協 定 書

 いわゆる東海道新幹線騒音振動差止・損害賠償請求訴訟事件(最高裁判所昭和六〇年(オ)第一二四〇号、同第一二四一号、名古屋高等裁判所昭和五五年(ネ)第四八七号、同第四九二号、名古屋地方裁判所昭和四九年(ワ)第六四一号事件。以下「本件訴訟」という。)について、その原告である別紙和解対象原告一覧表記載の住民ら(以下「住民ら」という。)と被告である日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)は、本日、次のとおり和解する。
1. (1)新幹線鉄道騒音について、国鉄は、昭和六四年度末までに、発生源における対策により、住民ら居住の名古屋七キロメートル区間において、七五ホン以下とするよう最大限の努力をするものとする。
   (2) 前号のほか、国鉄は、可及的速やかに新幹線鉄道騒音に係る環境基準を達成するよう発生源における対策の開発、実施に努めるものとする。
   (3) 国鉄は、前2号と併せて、新幹線鉄道振動を軽減させるため、引続き発生源における対策の開発、実施に努めるものとする。
   (4) 国鉄は、前各号の対策を実施するに当たっては、新幹線鉄道騒音・振動に関する国および地元自治体の測定結果を尊重する。
2. (1) 国鉄は、住民らに対し、一括して、和解金として金四億八〇〇〇万円を支払うものとし、その授受については、一審判決に基づく仮執行により住民らが取得した金員(五億九一万一五九八円)のうちから同額をもって本日その支払いに当てた。
   (2) 住民らは、前号の仮執行金のうち和解金を除く全額を、一括して、国鉄に返還し、国鉄は本日これを受領した。
3. 国鉄は、下記事項を含め、昭和六〇年五月二三日から一二月一九日までの間六回にわたって行った協議の際に住民らに対し確認した発生源対策、障害防止対策その他の事項を尊重・遵守するものとする。
   (1) 国鉄が熱田地区で試験した下記の各対策については、これを名古屋七キロメートル区間で重点的に実施し、また、その効果が維持されるよう努める。
       その実施時期については、次のとおりとする。
       @ラムダ型防音壁、レール削正およびハンガー間隔縮小架線への改良については、昭和六〇年度中に着手し、昭和六一年度中に終了する。
       Aバラストマットについては五年を待たずに実施する。
   (2) 国鉄は、振動の発生源対策につき現場テストを行う場合には、名古屋七キロメートル区間において優先的に実施する。
   (3) 国鉄は、前記協議において確認された内容に沿って、障害防止対策を誠実に実施する。
   (4) 国鉄は、名古屋七キロメートル区間において、高架下および移転跡地につき、良好な環境の保全を目的として、長期的総合的視点にたった活用、当面の管理および利用につき、積極的に努力する。
   (5) 国鉄は、屋外騒音と振動の軽減に一層努力し、名古屋七キロメートル区間において屋外騒音と振動の現状を悪くしないという基本的考え方を明らかにした。
4. 住民らは、本日、本件訴訟を取り下げ、国鉄は、これに同意するものとする。
5. 前各項のほか、住民らおよび国鉄との間に、本件訴訟に関し、何らの債権、債務のないことを相互に確認する。


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