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平成元年十一月二十七日提出
質問第一二号

 船底塗料などに使用されている有機スズ化合物に関する再質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成元年十一月二十七日

提出者  新村勝雄

          衆議院議長 田村 元 殿




船底塗料などに使用されている有機スズ化合物に関する再質問主意書


 先に提出された「船底塗料などに使用される有機スズ化合物に関する質問主意書」に対する答弁書(以下「答弁書」という。)の中で、その答弁内容が不十分であると思われる事項等について、改めて質問する。
 次の事項に、明確かつ詳細に答えられたい。

一 一九八九年十一月十五日付日本経済新聞の報道によれば、ビス(トリブチルスズ)=オキシド(以下「TBTO」という。)が十二月にも、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下「化審法」という。)」に定める第一種特定化学物質に指定されるという。TBTOが第一種特定化学物質となれば、その製造、輸入、使用が原則として全面的に禁止されるので、TBTOが今後も環境中に放出されることはなくなるはずであるが、他のトリブチルスズ化合物(以下「TBT化合物」という。)はなくならない。一方、水棲生物等に対して、TBT化合物が極めて強い毒性をもつことはよく知られているが、その毒性は(CSn(以下「BuSn」とする。)の部分にある。従って、TBTOがなくなっても、他のTBT化合物が存在し、船底塗料などとして、海域などの環境中に放出され続ける限り、水中のBuSnも依然として存在し続け、生物に対し、脅威となり続ける。いったい、TBTO以外のTBT化合物をこのまま“放置”し続けるのか。政府の姿勢を示されたい。
二 Laughlin et al.(1986)によれば、海水中でのTBTOは、その六〇%がトリブチルスズ=クロリド(以下「TBTCl」という。)の形で存在しているという。第一種特定化学物質として、製造、輸入、使用が全面禁止となるTBTOが、海水中ではTBTClとして六〇%が存在するならば、現在、指定化学物質となっているTBTClもTBTO同様、第一種特定化学物質に指定されるべきではないか。蓄積性の試験などに何か問題はなかったか。あるいはそうした試験におけるモデル系そのものに欠陥はないか。根拠を共に説明されたい。
  注 Laughlin et al.(1986):Environ・Sci・Technol.20,201 ― 204
三 すべてのTBT化合物並びにトリフェニルスズ化合物(以下「TPT化合物」という。)の、個々の化合物毎にその生産量、輸入量、国内向け出荷量、輸出量を用途別、輸出入相手国別に詳しく答えられたい。
四 「答弁書」の中に、「TBT化合物やTPT化合物を含有する船底塗料等については、(中略)製品中のTBT化合物等の含有率の低減、可能な限りの使用の自粛等を指導しているところである。」とあるが、製品中のTBT化合物及びTPT化合物の含有率を具体的に何%以下とするよう指導しているのか。TPT化合物については当時の指導内容を、TBT化合物については現在の指導内容を、船底塗料及び漁網防汚剤の製品それぞれに対して答えられたい。また、そうした指導内容は完全に守られているものと考えてよいか。
  なお、製品中のTBT化合物等の含有率について、具体的に何%以下にせよという指導がなされていない場合、その理由を答えられたい。また、その場合、実際の含有率を何%と見なせばよいか。根拠と共に示されたい。
五 我が国の船舶の総トン数について、@種類別(例えば、ヨット・レジャーボート、漁船、観光船、観光船を除く商業用船舶など)及びA材質別(例えば、鉄鋼製、アルミ製、FRP製など)に答えられたい。
  また、このうち、有機スズ化合物を含んだ船底塗料(以下「有機スズ系船底塗料」という。)を使用している船舶はどのくらいあるか。その割合を@Aのそれぞれの項目別に答えられたい。なお、有機スズ系船底塗料には、モノマー系とポリマー系があるので、これらについても同時に別々に分けて示されたい。
六 政府は、我が国の周辺海域(例えば、領海内と考えてよい)を航行する船舶のうち、有機スズ系船底塗料を使用している船舶について、その全量を把握しているか。把握しているのであれば、それについて詳しく示されたい。
七 国内法では規制対象外である外航船について、日本の港に一年間に入港する総トン数を国別(即ち船籍別)、種類別、材質別に示されたい。また、同時にこれを、滞留日数別にも分けて示されたい。さらに、有機スズ系船底塗料を使用している船舶について、その占める割合についても個々の項目毎に併せて詳述せよ。
八 何らかの形で、有機スズ系船底塗料の使用が規制された場合、我が国の周辺海域を航行する、有機スズ系船底塗料を使用している船舶のうち、何割が規制の対象となるか。考えられるすべての場合について、答えられたい。
九 「答弁書」の中に、運輸省が昭和六十三年度に、東京湾の港内及び航路内の五箇所について実施したTBT化合物による汚染状況の調査結果が示されているが、調査地点である「東京湾の港内及び航路内の五箇所」とはどこか、はっきりと示されたい。即ち、調査地点の明示と各調査地点での水質及び底質の調査結果を一覧表として示されたい。示すことができない場合、それはなぜか。また、この調査における分析方法、検出限界、底質の分析値の単位は湿重量当たりか、乾重量当たりか、水質及び底質の分析値はTBTcl換算か、TBTO換算か、あるいは他のTBT化合物換算か、についても併せて示されたい。
十 フランス、イギリス、アメリカなど諸外国では、すでに、有機スズ系船底塗料などの使用禁止等の規制措置がとられている。各国の規制状況について、現在、政府が把握している内容のすべてを詳しく示されたい。また各国が、有機スズ化合物に対して設定している水質基準(淡水域・海域別)についても併せて示されたい。
十一 「答弁書」の中に「国際海事機関(IMO)の海洋環境保護委員会において、船底塗料における有機スズ化合物の使用に関する問題について検討を行っているところであり、我が国としては、同委員会における検討結果を踏まえ、今後適切に対処してまいりたい。」とある。IMOの海洋環境保護委員会における、船底塗料への有機スズ化合物の使用問題に関する検討は現在どうなっているか。詳しく報告されたい。
十二 伊奈(一九八九)によれば、ワサビの成分である「ベンジルイソチオシアネート」が海藻や貝類を寄せつけない効果をもち、有機スズ化合物の代用品になり得るという。政府はこのことをどのように受け止めているか。
  また、このような、天然に存在する物質を用いて、かつ付着生物を致死させるのではなく忌避させるという発想での研究及び有機スズ化合物の代替品の開発に対し、積極的にこれを推進するべく、予算措置を講ずる考えがあるか。ない場合、その理由は何か。
  注 伊奈(一九八九)中部化学連合会秋季大会講演要旨集

 右質問する。





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