衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成元年十二月十四日提出
質問第二一号

 「児童権利条約」の批准に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成元年十二月十四日

提出者  岡崎万寿秀

          衆議院議長 田村 元 殿




「児童権利条約」の批准に関する質問主意書


 本年一一月の国連総会において子どもの権利条約が全会一致のコンセンサスで採択された。一九五九年の子どもの権利宣言をさらに発展させ、単なる宣言的条項ではなく子どもの直面する問題にこたえた内容をもった今回の「児童権利条約」は、日本の子どもにとっても画期的な意義をもっている。日本の子どもは経済大国などといわれるその陰で、平和的に生存する権利、健康的で文化的な生活権、環境権、教育への権利、文化にたいする権利などあらゆる面で深刻な事態におかれているのが実態である。「児童権利条約」の早期批准によって日本の子どもの権利を保障し、子どもが自主性、主体性を確保できるように条件をつくりあげることが政治の緊急課題となっている。
 日本の子どもをめぐる問題は多岐にわたるが、条約に関する基本的問題について以下、質問する。

一 政府は国連総会においてこの条約に賛成を表明した。しかし、署名するにいたっていない。日本政府の人権感覚は、国際人権規約を国会承認を得るために国会に提出したのが同条約の国連採択後一三年も経ってからであったように、きわめて後進的姿勢といわざるをえないものであるが、今回のこの「児童権利条約」に関してはそうしたことがあってはならない。
  一九九〇年早々にも署名のための開放が実施される見通しであるが、その場合ただちに署名して、批准の意思を鮮明にすべきではないか。
  また、批准を先延ばしすることがあってはならない。早期批准の見地にたち、そのための準備をいそぐべきと思うが、どうか。
二 本条約は、「子どもは表現の自由への権利を有する」(第一三条)、「締約国は、子どもの思想、良心および宗教の自由への権利を尊重する」(第一四条)、「締約国は、子どもの結社の自由および平和的な集会への自由の権利を認める」(第一五条)ことを明記している。子どもにもこうした権利が固有の権利としてあるということをあらためて確認したことは、子どもの権利が実際上保障されていない今日の日本の実態に照らして重要な意義をもっている。また、子どもの「固有の権利」を尊重してこそその自立を促し将来の社会発展の推進力にふさわしい成長を保障できる。子どもは保護される権利と同時に、その子の発達や能力に応じて「表現の自由」「思想・良心・宗教の自由」「結社・集会の自由」が尊重されなければならないと思うが、どうか。
三 条約は子どもの「表現の自由」および「思想・良心・宗教の自由」を認めたわけだが、日本ではこれらの条項がとくに重要である。
  日本軍国主義による中国やアジア諸国への侵略戦争の事実を社会科では教えないとか、戦後日本の原点である広島・長崎の原爆被爆とその実相を削除して、子どもの「表現の自由」を保障する前提となるべき事実を正しく子どもに伝えないことはいうまでもなく、学校教育に「日の丸」「君が代」を強引に押しつけ、公教育に特定の思想・信条をもちこむことはこの条約に照らしてもやめるべきと思うが、どうか。
四 本条約の特徴の一つは第十二条で、「自己の見解をまとめる力のある子どもに、その子どもに影響を与えるすべての事柄について、自由に自己の見解を表明する権利を保障する」とのべ、さらに「その際、子どもの見解が、その年令および成熟に従い、正当に重視される」と規定したことである。「厚木基地周辺の飛行機騒音を無くして勉強できる環境をつくってほしい」、「三宅島の自然をまもってほしい」、「通学路の危険を防止してほしい」、などなど子どもの生活にかかわるすべての問題にたいして子どもが意見表明することを権利として保障し、その見解を尊重すべきではないか。
五 条約前文は、「子どもが、人格の全面的かつ調和のとれた発達のために、家庭環境の下で、幸福、愛情および理解ある雰囲気の中で成長すべきであることを認め」ている。しかし、日本の子どもは深刻な状態におかれており、この改善が急務となっている。
 @ 条約第九条は子どもを親から分離することを次のように禁止している。「締約国は、子どもが親の意思に反して親から分離されてはならないことを確保する」。しかし、日本の子どもは、親の単身赴任、長期出張のもとで愛情ある家庭で育つ権利が保障されていない状況におかれている。こうした現状を是正するために政府は法的規制を含めて強力な措置をとるべきだと思うが、どうか。
 A 条約第一八条は「親の第一次養育責任に対する援助」を規定している。その二項では「締約国は、親および法定保護者が子どもの養育責任を遂行する際に適当な援助を与え、かつ子どものケアのための機関、施設およびサービスの発展を確保する」と明記されている。この規定に照らせば、親が低賃金のため養育費をわずかしか確保できないとか、長時間労働のため子どもと接する時間もほとんどないといった状況、あるいは、保育所や学童保育など児童福祉のきわめて不十分な実態などは早急に抜本的是正をはからなければならないのではないか。またそのための施策を早急に具体化する考えはないか。
六 条約第四二条はこの条約の原則および規定を広く知らせることを締約国の義務と規定している。政府は子どもをふくめてすべての国民がこの条約について知ることができるようにするため、@条約の日本語訳をつくり配付すること、A政府広報誌に積極的に掲載すること、をただちに実施すべきではないか。

 右質問する。





経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.