衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成三年五月七日提出
質問第一三号

 リニアモーターカー山梨実験線にかかわる諸問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成三年五月七日

提出者  長谷百合子

          衆議院議長 櫻内義雄 殿




リニアモーターカー山梨実験線にかかわる諸問題に関する質問主意書


 リニア新実験線が山梨に決定し、「国家的プロジェクト」と称して計画が進められていますが、この事がどの程度国民的合意を得ているか、はなはだ疑問です。
 一九八九年八月七日、運輸省の「超電導磁気浮上式鉄道検討委員会」は、低公害、高速、営業採算も可として決定しました。しかし、走行実験の設備条件や、実用化できるかどうかの検討ばかりで、実験線建設を受け入れなければならない山梨県の一般住民は、意見を言う機会さえありませんでした。山梨県民の六五%は、リニアモーターカーに疑問と不安をもっている実態にもかかわらずです。(山梨日日新聞世論調査より)
 この事は、民主主義とはという事を改めて考えさせられたばかりでなく、国民的合意なしに強行するならば、社会的弱者に不当な受苦者としての道を選択させる結果になるだろうと憂慮せずにはいられません。
 また、超電導磁気浮上式鉄道という巨大技術は、推進する技術者達でさえ、やっと四合目にたどりついたばかりと認めている未完成なもので、クリアーしなければならない問題は十指に余ると言われています。これらの問題の解決なしに、たとえ実験線とはいえ、走らせる事は無謀な計画と言う以外にありません。
 従って、次の事項について質問します。

一 資源小国日本は、続発する原子力発電所の事故や中東の戦争で示されたエネルギー供給の脆弱さ等からも明らかなように、これから開発すべき技術は、省エネルギーに基づくものであるべきだと考えられます。また、生活、経済、社会の全般にわたって省エネルギー・省資源の道を選択しなければならないことは当然と言えるでしょう。
 1 現在建設されようとしているリニア実験線は、明らかにエネルギーの大量消費を前提としています。このような技術が、国際的にも認知されるとお考えですか。また、その必要性があるとお考えですか。
 2 リニアモーターカーの消費する電力については、速度上昇に伴う空気抵抗の増加、モーター自体の効率の低下、周波数変換に伴う効率の低下等から膨大な電力を消費するものと推測されています。発進時、定速走行時、減速時等の各条件における電力消費量を質問します。
 3 現在山梨に建設が予定されている実験線の実験に要する供給電力は、どのくらいと想定されていますか。また、その消費の具体的な配分及び量を明らかにして下さい。
 4 リニアモーターカーの走行のためには、専用の変電所が必要とされます。その規模、数、電力供給能力、効率を明らかにして下さい。
 5 前項に示す電力の供給のため、新たな送電設備の建設を行っていますか。
 6 現在、東京電力では柏崎刈羽原子力発電所を増設していますが、これは実験線、さらに将来の実用線のためではないですか。もし違うならば、その具体的な目的を明示して下さい。
二 磁気の人体への影響について質問します。
 1 動物の中には、強磁性物質を体内に持つものがあり、回遊、渡り、帰巣に地磁気が関係していると推定されています。実験線による磁場が生態系に与える影響について、どのような対策を講じますか。
 2 遺伝子を構成するDNAが強磁場では変形を起こす事が実験で認められていますが、遺伝的な影響について、どのように確認されていますか。
 3 血液は電気伝導性の液体なので、磁場の中を流れると発電機と同じ原理で微小電位を生じ、体内をコントロールする神経作用に影響を与える可能性があると指摘する科学者がいますが、この点についてはどのようにお考えですか。
 4 電磁場の人体への影響に関しては、細胞や小動物(マウス、ラット、ショウジョウバエ)レベルでの報告はいくつかありますが、全体としてまとまった研究はまだ行われていません。灰色の状態のまま見切り発車することは許されないと考えます。しかし、すでに研究を始められているのであれば、その研究内容と経過を明らかにして下さい。
 5 研究所などで実験に従事する者に対しての安全基準は作られていますか、その内容を明らかにして下さい。
 6 実験線の沿線の住民は、たとえ弱いとはいえ、長期にわたり、変動する磁場の影響を受け続けます。住民に対する安全の確認の方法を明らかにして下さい。
三 実験線の建設が、山、川、谷等の自然、植生や小動物等の生態系に多大な影響を与えることが懸念されます。
 1 実験線は約八割がトンネルですが、トンネルの規模、残土の量、残土の処分方法について明らかにして下さい。
 2 トンネル工事により、地盤沈下、地下水脈の破断、温泉の枯渇を指摘する声がありますが、予測されるこれらの事態にどう対処されますか。
 3 ボーリング調査の地点と規模、方法について明らかにして下さい。
 4 山梨の現地では動植物について現況調査が行われていません。すでに送電線建設により、イヌワシは姿を消しました。早急に専門家による現況調査を行う必要があります。この事についてどのような予定になっていますか。
 5 実験線予定地は低山の里山が多く、ふつうの動植物の生息地が広範囲にわたって破壊されます。もはや日本に残り少なくなった貴重な里山が失われ、見なれたふつうの動植物が姿を消すだろうことが憂慮されます。生命をはぐくむ自然環境が衰退することは、同時に人間の生命にとっても大きなマイナスです。里山が失われることによる種の絶滅の可能性について、どのような対策を講じる予定ですか。
四 リニアモーターカーは二十一世紀の夢の乗物だと宣伝されていますが、技術的には致命的とも思える問題を内包している技術だと考えざるを得ません。
 1 実験線のルートは東部地震の震源地です。万一、地震や事故や妨害のためにガイドウェイが変型した場合、列車位置を知るための交差誘導線が簡単に切れてしまう可能性があります。こうなると列車は制御出来なくなるばかりか、ガイドウェイの損傷は、即脱線、大事故につながります。自然災害や事故、妨害対策を明らかにして下さい。
 2 宮崎の実験線では、百時間に一回以上のクエンチ現象が起きています。一九九〇年五月二十六日のクエンチ現象は、リニアモーターカーが側壁に衝突、暴走した重大事故でした。宮崎実験線での現時点までのクエンチ現象が起こった日時、規模について明らかにして下さい。また、その対策はどこまで進んでいますか。
 3 リニアモーターカーは列車に異常が起きた場合、先ず指令センターへ、そこから変電所へと異常が知らされ、変電所が列車を制御すると言われています。このような複雑な制御システムでは、緊急の場合役に立たないと考えられます。列車内に異常が起きた場合の制御システムについて明らかにして下さい。
 4 時速五百km以上で走るリニアモーターカーは、その安全性を考えるならば最低限、常時列車の位置は正確に把握されなければなりません。そのために列車に発信器をのせ、ガイドウェイに交差誘導線を張りめぐらせて位置を受信する仕組みになっています。しかし、この発信器の故障や停電や妨害電波などにより、発信できなくなったり、信号が消えてしまったりすると列車位置が分からなくなります。この事に関する対策を明らかにして下さい。
五 公共性について
 1 現在、東京大阪間の大動脈である東海道新幹線、東名・名神高速道路、羽田大阪間航路は、それぞれどのような利用状況ですか。
 2 二十一世紀に向かって鉄道、車、飛行機のベストミックスはどのようになると考えていますか。また、その中でリニアモーターカーは、どのように位置付けられますか。
 3 リニアモーターカーの波及効果はどのようなものがあると考えていますか。社会的、経済的、技術的にそれぞれ明らかにして下さい。
 4 リニアモーターカーが営業を始めると、各交通機関にどのような影響があると予想していますか。
 5 貨物車両をつける予定はありますか。
 6 営業線は、東京大阪間以外にどのような路線を計画していますか。
 7 東京大阪間、東京山梨間、山梨大阪間の運賃は、それぞれどの位になると予想されますか。
 8 営業線の東京側の起点は、計画ではどこに予定されていますか。
 9 現在までにJR東海が積極的に推進していますが、運営はどこが主体になりますか。

 右質問する。





経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.