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平成四年二月五日提出
質問第三号

診察料に関する質問主意書

提出者  安田修三




診察料に関する質問主意書


 昭和五十六年以降現在まで、医療費の伸び率は一桁台を維持し、六十年以降は国民所得の伸び率の範囲内にほぼ収まっている。この大きな要因の一つに、薬価引下げ分を財源とした診療報酬の改定があったことは周知の事実である。特に歯科は物価及び人件費の上昇率をはるかに下回る改定が続いた結果、医院経営の逼迫を訴える切実な声が寄せられている。
 診療報酬をみる場合、初診料・再診料は医師及び歯科医師の基本的な技術料として理解され、点数表には基本診療料として位置付けられている。平成二年の診療報酬改定で医科では初診料、再診料各々五点ずつ引き上げられたが、歯科は昭和六十年以降据え置かれているため医科甲表の初診料二一〇点に対し、歯科は一六〇点、甲表の再診料七一点に対し歯科二二点と、格差が一層大きくなっている。
 この点について第百二十回国会参議院での沓脱議員の質問に対する答弁書(内閣参質一二〇第一一号)には、「初診料及び再診料については、医科と歯科とでは、診療の対象となる傷病の性質が異なるため、それぞれの診療行為全体の中での初診行為等の基礎的医療行為の行われ方が異なること等から、それらの点数が異なっている」とある。この内容に多くの歯科医師から疑念の声が寄せられている。
 すなわち、口腔も生体の有機的構成部分であり、歯科も含めてどの科においても様々な疾患を持った患者が受診し、それに応じて初診・再診時の医療行為は当然異なってくる。しかし消化器官である口腔内の疾患に対して、医学的に医科と歯科とでその対処が異なることはない。これらを前提として、初診料や再診料を個々の検査や処置と区別して基本診療料として設定されているのであって、歯科のみに大きな格差を設ける合理的理由とはならないといえる。
 従って基本診療料である初診料及び再診料について、以下の点について質問する。

一 衆議院厚生委員会議録(昭和二十九年十月一日)によれば、新医療費体系すなわち現行診療報酬体系の出発点の質疑において、医科での各科のみならず歯科についても同程度の診察料にする経緯が、当時の曾田医務局長によって説明されている。この時の「眼科、耳鼻科で説明申し上げましたと同じような意味で、(略)歯科におきましても内科、小児科あるいは眼科、耳鼻科と同じように、同程度の診察料を支払うことにする」という厚生省の根拠はいかなるものか、明らかにされたい。
二 右の会議録に「補綴料において大きなプラスを出しておりまして、これを診察料の方に移して行く。それで計算いたしますと、おおむね数字が合」うとある。現在歯科の診療報酬の中で、補綴分野が低いという歯科医師会や学会の評価であるが、現在の初診料に補綴の一部が入っているのか、いないのか明らかにされたい。
三 昭和四十九年十月から十年余り甲表と同一であったものが、昭和六十年に再び格差が生まれ、以後現在まで歯科初診料は据え置かれている。これには五十六年以降の診療報酬改定が薬価引下げを財源としたことによって、歯科への配分が相対的に小さくなり、限られた配分の中で補綴など他の分野を重点的に引き上げたため、と伝えられているが、昭和六十年の改定時において、先の診察料に関する厚生省の見解が変わったのか。変わったとすればいかなる文書に明示されているか、明らかにされたい。
四 現行診療報酬点数においては、初診料は医科甲表二一〇点医科乙表一七五点に対し、歯科は一六〇点である。「同程度の診察料」という考え方からすると、現在の歯科初診料は同程度の範囲内にあるのか、また範囲外であるとすれば、その範囲を明らかにされたい。
  再診料は、甲表七一点、乙表診療所四三点に対し、歯科二二点である。同様に範囲内にあるか、またその範囲を明らかにされたい。
五 現在、初診料・再診料が医科と歯科で違うことによって、厚生省の通達とも矛盾する事態が起こる。すなわち、医科歯科併設の医療機関にあって同一の患者が同一傷病によって医科、歯科にわたって初診を受けた場合、初めに初診を受けた診療科において初診料を算定する(昭和三十三年十月二十日、保険発一三九)ことになっており、たまたま歯科から先に受診すれば一六〇点、医科から先に受診すれば二一〇点となる。本来、このような事態を避けるために、新医療費体系のスタートにおいて歯科を含む各科で診察料を同一にしたと思うが、先の通達と医科歯科診察料格差についての整合性を明らかにされたい。
六 現在、厚生省は一物一価の見直しとして、各科別の診察料なるものを検討していると伝えられているが、このこと自体現行の保険診療では各科同一の診察料を自認したものである。
  以上の点から、中医協等で結論が出ていない現在においては、新医療費体系の精神を尊重し「各科同程度」の診察料となるよう、次回改定を審議する中医協において歯科の診察料に対し強力に手当てすべきと考えるが、いかがか。
七 薬価引下げ分を財源とし、限られた枠の中で配分するという従来の診療報酬の改定は、右の診察料のアンバランスを生んだだけでなく、従業員確保の困難等医療経営への先行き不安を広げている。さらに、薬価基準算定方式の変更により薬価引下げ財源に今後は期待できない。昭和六十三年に厚生省は社会保障の将来推計を発表し、現行制度を前提として国民医療費の伸び率を年率七%としている。今後医療制度の改革論議が活発になることが予想されるが、世界に冠たる日本の医療制度のレベルを落とすことのないようにしなければならない。
  そこで、中医協における診療報酬改定の取扱いについて、現在中医協医療経済実態調査の結果を待って医科と歯科の改定枠が決まり、その後に具体的な点数配分が明らかになるという手順を改め、まず診療側からの具体的なデータに基づく要望項目の妥当性を審議し、改定総枠のアウトラインを確定して政府に建議した後に微調整を図るという中医協本来の運営方法に戻すべきと考えるが、いかがか。

 右質問する。





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