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平成四年五月十一日提出
質問第九号

じん肺対策に関する質問主意書

提出者  児玉健次




じん肺対策に関する質問主意書


 じん肺は、炭鉱、鉱山、トンネル掘削現場、鋳物職場などで長期にわたり大量の粉じんを吸い込むことによって発生する職業病である。現在も患者が増え続け、療養者は約二万名に達している。現在においても根本的な治療方法がみつからず、粉じん職場を離れた後も進行することが明らかな疾病である。じん肺患者は症状が進行するなかで、激しい咳、たん、息切れ、呼吸困難の苦しみに、自殺に追い込まれる患者があとを絶たない。
 政府の石炭政策によって、北海道の炭鉱はあいつぐ閉山に追い込まれ、炭鉱離職者が急増した。八〇年以降だけでも一万四〇〇〇人にもの炭鉱離職者がつくりだされている。炭鉱で長年働いてきた労働者は、離職後一〇年、一五年経過して、じん肺が発症する場合が多い。九一年度で、全国の新規労災認定者は一一八五名(合併症を含む)であるが、北海道はじん肺最多発地域であり、労災認定される患者は全国の一割を超えている。じん肺の症状・所見を有しながら労災認定されない管理II、管理IIIの患者は、認定者の数倍いると指摘され、その多くは炭鉱離職者であるとされているが、その正確な実態すら明らかにされていない。
 粉じん産業からの離職時に行われる健康診断の際、管理IIIの離職者は、管理手帳の交付を受け、年一回、無料でじん肺診断を受診することができるが、管理I、管理IIの症状・所見を有する離職者は放置され症状悪化を招いている。このことは、随時申請によるじん肺の労災認定がじん肺労災認定全体の大半を占めていることからも明らかである。
 全国に多数存在する潜在患者にとって、まず自らがじん肺であるか否かを知ることが重要である。そのための集団検診の実施など離職後の早期発見、早期治療のための施策、予防、社会復帰対策など抜本的対策が急務である。
 以下具体的に質問する。

一 粉じん産業から離職後に症状が進行し増悪する例が多く、じん肺の随時申請による合併症を含む労災認定がじん肺労災認定全体の八五・九%(九〇年度)であり、離職者に対する健康管理を急がなければならない。
 (1) じん肺の定期健康診断は無料とし、粉じん作業従事者、じん肺有所見者に最低年一回の受診を制度化すべきではないか。また、粉じん産業からの離職者にはじん肺健康管理手帳を交付し離職後もじん肺検診を定期的に受診できるように改善すべきではないか。
 (2) 自治体で単独事業として実施しているじん肺検診に対する国の補助制度を検討すべきではないか。
 (3) 北海道・九州における炭鉱離職者からのじん肺発生の実態を明らかにされたい。
 (4) 北海道のじん肺労災認定者は八七年以降急増し、九〇年度では一二九名にのぼっている。発病するまでに長期間が経過することからも、炭鉱離職者を放置状況におくことは症状悪化を常態化するものである。炭鉱離職者に対するじん肺の啓蒙、予防、検診など早期発見、早期治療のための具体的な施策を検討すべきではないか。
二 じん肺法では、肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸に限定して合併症と認めている。しかし、じん肺による合併症は、法的に定められた症状に限られたものではなく、肺癌、消化性潰瘍、腎疾患、肝疾患、脳障害など全身性の疾患である。医学的知見の進展に伴い、合併症の範囲についても再検討の必要があると思うが、政府の検討状況を明らかにされたい。
三 じん肺患者の生活の安定を図るため、九〇年一一月、北海道庁から労働省に対し、じん肺法に基づく就労施設等の整備について要請が行われた。じん肺法第三十五条において、政府は「就労の機会を与えるための施設」、「労働能力の回復を図る」ための就労施設等の整備を行うことになっているが、これらの施設の整備状況を示されたい。
  なお、就労施設等の整備が行われていないとすればその理由は何か。
四 じん肺は、粉じんを長期間にわたって吸入することによって発生するものでありその原因は明確である。作業環境の改善、適切な防じんマスクの着用、早期発見のじん肺診断の実施など総合的な対策によって、確実に予防できる疾病であり、絶対になくさなければならない病気である。
 (1) 粉じん作業従事労働者約五〇万二〇〇〇人のうちじん肺健康診断を受診する労働者は四二%(九〇年度)という低さである。この状況を改善するために、労働基準監督官の粉じん事業所への立ち入り調査を強化し、予防、早期発見の上でも健康診断の受診率を引き上げる指導が重要である。最近の粉じん事業所への立ち入り調査の件数を示すとともに、違反の状況、指導件数を明らかにされたい。
 (2) 粉じん産業の屋内作業については管理濃度(作業環境評価基準)が指標として示されているが、鉱山、トンネル掘削現場などの「屋外」作業には基準が設けられていない。これらの「屋外」作業についても粉じんの法的許容濃度を定め、粉じん作業の労働環境が許容濃度以下となる作業規制を行うべきではないか。
五 北海道石炭じん肺訴訟は企業責任の立証段階に入っている。筑豊じん肺訴訟において福岡地裁飯塚支部は、昨年九月、「生きているうちに救済されるものなら救済すべきと考えます」と和解の勧告を行った。国はこの和解勧告に応ずるべきではないか。

 右質問する。





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