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平成四年五月二十一日提出
質問第一〇号

歯科材料の製造認可基準と保険導入手続き及び補綴技術料に関する再質問主意書

提出者  新村勝雄




歯科材料の製造認可基準と保険導入手続き及び補綴技術料に関する再質問主意書


 本年一月二十九日に放映されたNHKスペシャル「入れ歯のハナシ」は視聴者のみならず、各界に強い衝撃を与えた。日本の入れ歯人口一千万人の内、約半数が合わない入れ歯で悩んでおり、その構造的な原因の一つに医療制度の問題があることが公然の事実として浮かび上がったからである。
 私が過去二回にわたって提出した質問主意書の趣旨もまさにその医療制度の問題であり、歯科材料の安全性と歯科医師等の適正な技術料評価による良質な歯科補綴物の確保を要望したものであった。
 しかし、政府の回答は積極的な施策と展望を持たない抽象的な答弁に終始しており、また本年四月改定の診療報酬では、依然として総義歯を低い技術料のまま据え置くなど、歯科医療関係者のみならず高齢者の願いにも反するものであった。
 厚生省は、高齢化社会に向けた対策の一環として、生涯自分の歯で物が食べられるようにとの観点から「八〇二〇運動」を進めているが、現実は八十歳で四本の歯しか残っておらず、大半の高齢者が入れ歯のお世話になっているという状況である。従って当面の行政施策として重要なことは、保健予防を中心とした「八〇二〇運動」を推進する一方、高齢者が安心して良質な入れ歯の治療が受けられるように医療制度・診療報酬を改善することであり、またその当然の前提として、安全性の高い歯科材料を安定的に供給できるよう薬務行政を根本的に見直すことである。
 以上の観点から、歯科材料の安全性と歯科補綴物の適正評価について三たび質問する。

一 歯科材料の臨床試験データ偽造事件を防止するためには、製造業者に対する行政指導の徹底はもとより、薬事法の改正による製造承認要件の見直しが必要と思われるが、政府として法改正の意思があるかどうか、明確に答弁頂きたい。
二 中央薬事審議会と歯科用調査会との関係は上下関係か、それとも委任関係か。法律上の解釈を明らかにされたい。
三 歯科材料の承認審査については「画一的な基準を設定することが困難」とのことであるが、現状では評価基準が一切ないとの理解でよいか。
四 新薬の承認申請に当たっては、何千という症例数に加え、八年以上の臨床試験期間が必要であるのに対し、歯科材料については僅か三十例、三ヵ月の最低基準で承認している。その理由を明らかにされたい。
五 厚生省は、医薬品の副作用など薬害対策の一環として、従来非公開であった新医薬品の臨床試験データを公表する方針を決めたが、歯科材料の臨床試験データについても同様に公開すべきと考えるが、どうか。
六 厚生省は、歯科材料の承認申請に当たり、専門学会へ諮問しない理由の一つに「臨床試験成績等を論文等として公表することにより、添付すべき資料の質的向上と客観性の確保」が図られることを挙げているが、論文の発表イコール資料の信憑性に結び付けるのは、あまりにも短絡的であり、危険である。資料の信憑性・客観性は専門学会において評価が高いことを前提にして判断すべきと考えるが、どうか。
七 医療用具等の製造承認に当たっては、歯科材料のみならず「医薬品及び他の医療用具についても(中略)専門の学会への諮問は行っていない」とのことであるが、重大な問題である。日進月歩する医学・歯科医学の最先端を担う専門学会への諮問を行わないことは、学問の著しい軽視である。専門学会の役割をどのように考えているのか、中央薬事審議会との関係で明らかにされたい。
八 保険診療上の有用性とは、@医学的見地から有効であること、A臨床上安全性が証明されていること、B費用が合理的範囲内であること、との説明であるが、具体的な評価基準がない中では恣意的な判断が起こらないとも限らない。公正な立場を貫くために具体的な評価基準を設けるべきと考えるが、どうか。
九 厚生省は従来の国会答弁で「日本補綴歯科学会の意見は、従来から社団法人日本歯科医師会の意見に反映されているものと認識している」と回答してきたが、今回の答弁では「反映されるものと認識しており(以下略)」と述べ、当為性の問題にすり替えている。過去の事実認識については明らかに誤認であり、再度その事実関係を調査すべきと考えるが、その意思はあるか。
十 薬事法第六十九条の二(緊急命令)に基づく医療用具の販売又は授与の一時停止命令はどのような場合に発動するのか、具体的に例示願いたい。
十一 ポリサルフォン義歯については「将来の普及の見込みが高いと判断して導入した」との答弁であるが、現実の使用頻度から見て将来的に普及する可能性は少なく、従って有用性にも乏しいと考えるが、どうか。また使用頻度の少ない理由及び昭和六十三年に請求件数が減少した理由については、厚生省として調査した上、公表すべきと考えるが、その意思はあるか。
十二 最近十年間で、歯科技工士学校の卒業者数及び就業技工士数とも、頭打ちから減少傾向を示しており、また卒業者数の割に就業者数が増加していないという奇妙な事実も明らかになった。その主要な原因はどこにあると考えるか。
十三 ポリサルフォン義歯の料金について、政府は臨床上の有用性のほか、保険診療上の有用性などを総合的に勘案して設定したと答弁しているが、なぜアクリルレジン義歯の二倍なのかとの質問については答えていない。二倍の合理的根拠を明らかにされたい。また「歯科技工料についても諸要素の一部として勘案される」との答弁であったが、歯科技工料は諸要素の一部ではなく主要な部分ではないのか。義歯の製作料「七対三配分」との関係において説明されたい。
十四 政府はポリサルフォン義歯の適応症について「限定されることはない」と繰り返し答弁しているが、昭和六十年の診療報酬改定でポリサルフォン義歯の局部義歯の点数を下げた理由については「鉤やバーなどの組合せが複雑なものには適合し難い面がある」と答弁しており、明らかに矛盾する。局部義歯についてはその後適合性が改良されたのかどうか明らかにされたい。
十五 先に厚生省が実施した技工料調査について、政府は「種々の支障を来すことが考えられることから、現時点においては公表を見合わせている」と答弁しているが、具体的にどのような支障があるのか、またいつの時点で公表する予定かを明らかにされたい。
十六 先にNHKが取り上げたように、高齢化社会を迎える中で、入れ歯など歯科治療に対する国民の要求がますます大きくなっているにも拘らず、歯科医師の診療報酬や歯科技工士の労働評価があまりにも低く、患者の要望に十分応えられない状況に置かれている。少なくとも義歯については、現行の二倍以上に早急に引き上げるべきと考えるが、どうか。

 右質問する。





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