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平成四年十二月四日提出
質問第一一号

選択的夫婦別氏の法制化に関する質問主意書

提出者  常松裕志




選択的夫婦別氏の法制化に関する質問主意書


 近年、選択的夫婦別氏の法制化(夫婦が婚姻時に何れかの氏を選択することを強制されず、夫婦双方が婚姻前に称していた氏を引き続き称することもできるよう、民法その他関連法規の改正を行うこと)を求める世論が活発化していることに鑑み、以下の事項について質問する。
 なお、以下の質問事項について、法制審議会又は法制審議会民法部会身分法小委員会(以下「小委員会」とする。)内に異論があるときは、その内容もあわせて答えられたい。

一 法制審議会における審議状況について
  現在、小委員会において、夫婦別氏の法制化の可否を含めた婚姻法・離婚法の改正に関する審議が行われており、今月一日にはその中間報告を法制審議会民法部会が了承したと聞くが、これに関して以下の点につき回答されたい。
 (1) 小委員会の委員構成。
 (2) 小委員会における現時点での全体的な審議状況。特に、審議対象となっている法令及び規定の範囲。
 (3) 小委員会では右をいかなる考え方に基づいて、いかなる方向に改正することを検討しているのか。
 (4) 中間報告の内容。特に、両論併記の形式をとった箇所については、そのような形式をとった理由。
 (5) 今後、法制審議会ないし小委員会内でどのような手順が踏まれる予定なのか。
 (6) 法制審議会からの最終答申はいつ頃提出される見込みなのか。
 (7) 最終答申後、政府内でどのような手順が踏まれる見込みなのか。特に、順調に手順が進んだ場合の改正法案の国会提出時期及び改正法の施行時期はいつ頃になる見込みか。
二 選択的夫婦別氏に対する基本的姿勢
 (1) 選択的夫婦別氏の法制化を認めると仮定した場合、政府はその趣旨をどう考えるのか答えられたい。特に、夫婦別氏の法制化によって個人主義をより一層制度面に反映させようとする立場と、夫婦別氏の法制化によって一人娘などの場合にも家名を残そうとする立場の各々について、その何れかの立場により一層の理解を示すか否かの点については、政府の見解を明らかにされたい。
 (2) 選択的夫婦別氏ないしこれに類似した制度の法制化は多くの国々で進んでおり、それらを認めない我が国はこの点で最早少数派に属するとの調査結果(国立国会図書館・調査立法考査局「外国の立法」三一巻四号九五〜一一九頁(一九九二年))があるが、これに対する政府の見解を明らかにされたい。
 (3) 夫婦同氏は明治以来我が国で定着した社会的慣行である、あるいは、夫婦同氏は夫婦の一体感を維持するために必要である、との主張に対する政府の見解を明らかにされたい。
 (4) 選択的夫婦別氏を法制化した場合の立法上の問題点及びその解決方法として、政府は各々どのようなものを考えているのか、概略を答えられたい。
三 子の氏の選択について
 (1) 選択的夫婦別氏の法制化を行うと仮定した場合、政府は子の氏をどのような基準ないし方法によって決定するのを妥当と考えるか、答えられたい。特に、嫡出子について、夫婦たる両親が婚姻の際に予め両者の間の嫡出子が称すべき氏を決定すること、及び、兄弟姉妹間で異なる氏を称することの可否の二点について、政府の見解を明らかにされたい。
 (2) 非嫡出子の氏について、出生後の氏の変更を経ることなく、出生時に父親の氏を選択的に称することができるようにする、という考え方に対する政府の見解を明らかにされたい。
 (3) 両親(婚姻しているか否かを問わない)が別氏を称する子について、一定年令に達した後に自己の意思で他方の親の氏を称すること(氏の変更)を認めるべきだ、との考え方に対する政府の見解を明らかにされたい。
四 戸籍の編製について
 (1) 選択的夫婦別氏の法制化を行うと仮定した場合、別氏を称する夫婦及びその間の嫡出子に係る戸籍をどう編製すべきか、という点に関する政府の見解を明らかにされたい。特に、@夫婦の同氏・別氏に関係なく、夫婦及びその間の嫡出子を同一の戸籍に記載する、という考え方(いわゆる別氏同戸籍案)と比較して、A別氏を称する夫婦についてはその各々につき別個に戸籍を編製し、両者の間の嫡出子についてはその子が称する氏を称する親の戸籍に入れる、とする考え方(いわゆる別氏別戸籍案)、及び、Bすべての国民について個人を単位とする身分登録簿を作成し、両親や子などにつき必要な記載を行う、とする考え方(いわゆる個人籍ないし個人登録案)はいかなる長所及び短所を有し、結果として@ないしBのうち何れが最も好ましい考え方であると考えるか、根拠を付して明確に説明されたい。
 (2) 現行の戸籍法のもとで、非嫡出子が父の氏を称したいと思った場合、父と同じ戸籍に入っている父の配偶者が非嫡出子の同籍を拒否するために、家庭裁判所が氏の変更の許可審判を出さず、結局非嫡出子が父の氏を称することができないことがある。これは、戸籍制度が子の氏の取得を阻んでいる例であると思われるが、政府はこの問題に対してどう対処するのか。政府の見解を明らかにされたい。
五 既婚者に対する経過措置について
 (1) 選択的夫婦別氏の法制化にあわせて、既婚者が改正法の施行後一定期間内に何らかの届出をすれば婚姻前の氏に復することができる、という趣旨の経過規定を設けることが好ましいと考えるが、政府はどのように考えるか、明確に答えられたい。
 (2) もし政府に右のような考えがあるとすれば、その適用期間についてはどの程度のものを妥当と考えるのか、答えられたい。
六 関連問題について
 (1) 婚姻法の改正に関連して、現在、「児童の権利に関する条約」の批准が間近になっており、それとの関係で非嫡出子の法的地位の改善を求める声が高まっているが、今後、民法・戸籍法などにおける非嫡出子関係規定の見直しを法制審議会において行う予定があるか、もしあるとすればいつ頃の予定か、答えられたい。
 (2) 差し当たって右のような見直しをせずに同条約を批准すると仮定した場合、我が国の非嫡出子に対する相続分の差別や、戸籍・住民票等における続柄の差別記載等は、同条約の禁止する「出生による差別」に該当するのではないか、との議論があるが、政府の見解及びその根拠を明らかにされたい。
     なお、国際連合規約人権委員会は、市民的及び政治的権利に関する国際規約第二四条に関するジェネラル.コメント(一九八九年四月五日)の5において、「相続の場合を含めて、全ての分野における全ての差別を取り除く目的で、特に、(中略)嫡出子と非嫡出子との差別をも除去する目的で、各国が子供達に対する保護措置を、いかに法律上及び実務上保障しているかということを、各国はその報告書に記入すべきである。」としており、これは同条が非嫡出子に対する相続分差別をもその射程に含んだ規定であるという解釈の根拠になると思われるが、政府の見解及びその根拠を明らかにされたい。
 (3) 夫婦別氏との関連に限らず、戸籍制度全体の見直しを行う予定があるか否か、あるとすればいつ頃になる見込みか、明らかにされたい。
 (4) 戸籍をコンピューター化するための法改正も準備されていると聞いているが、それに対する国民の不安や反発も強い。コンピューターを導入する前に、まず、戸籍を原則的に非公開とすることや、個々人の身分に関係する情報を他者に開示することの必要性に対応した戸籍公開の手法(最低限必要な情報のみが開示されるよう、特に謄本の交付を厳格に制限したり、記載事項証明を積極的に運用する、など)の検討、部落差別や非嫡出子差別を助長するものとして問題視されている本籍欄及び続柄欄の記載方法の改善の検討などを優先的に行うべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。
七 選択的夫婦別氏の法制化をめぐる近年の動向について
  一昨年に総理府が実施した世論調査で回答者全体の三割、東京都区部の女性の半数近くが「夫婦同姓・別姓を選択にしたほうがよい」と答えていることからもわかるように、選択的夫婦別氏の法制化を求める世論は近年ますます盛んになっており、そのような傾向を反映して、既に同趣旨の請願が衆議院・参議院及び法務省に対して多数なされている。また、東京弁護士会、名古屋弁護士会及び大阪弁護士会が夫婦別氏の法制化を求める意見書を採択しているほか、東京都江東区議会も今年の一〇月一四日、内閣総理大臣及び法務大臣宛に「選択的夫婦別姓制度の法制化の早期実現を求める意見書」を提出している。以上に加えて、国のレベルでも以下のような動きが見られる。
  即ち、婦人問題企画推進有識者会議は昨年四月、「変革と行動のための五年」と題する意見を内閣総理大臣に報告し、その「重要課題8・男女共同責任型家族の形成」において、「男女平等の見地から、夫婦の氏や待婚期間の在り方などを含めた婚姻及び離婚に関する法制の見直しを行う必要がある」と述べている。これを受けた総理府婦人問題企画推進本部も同年五月、男女共同参画型社会の形成を目指す「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」の第一次改定を行い、その具体的施策(平成三〜七年度)の「7 地域社会及び家庭生活における男女共同参画の促進」において、「男女平等の見地から、夫婦の氏や待婚期間の在り方等を含めた婚姻及び離婚に関する法制の見直しを行う」と述べている。さらに、国民生活審議会は今年一一月、内閣総理大臣に対して「ゆとり、安心、多様性のある国民生活を実現するための基本的な方策に関する答申」を行い、その「第3節公平・公正な社会の実現」において、「法制上も(中略)夫婦同一姓のように形式的には平等でも実質的には不平等が存在するものもあり、社会情勢の変化に応じて検討する必要がある」と述べている。
  欧米各国における法改正の動向を踏まえた上でこれらの提言を見ると、その趣旨を実現するためには選択的夫婦別氏を法制化することが不可欠であると思われるが、政府はこれらの提言の趣旨を真摯に受け止めて、選択的夫婦別氏の法制化に取り組む意思があるか否か。政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。





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