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平成四年十二月四日提出
質問第一四号

警察捜査に関する質問主意書

提出者  谷村啓介




警察捜査に関する質問主意書


 一九九一年四月二十三日に、東京高裁刑事第十二部において出された、いわゆる松戸女性殺害事件に対する無罪判決は、争点となった物証のひとつである被害者の傘の発見が自白の信用性を証明するいわゆる『秘密の暴露』にあたるかどうかについて、『警察が事前に発見していて、被告人の指示に基づいて発見したかのように作為したとまでは断定できないにしても、少なくとも、被告人の指示に基づいて初めて発見されたと認めることはできない』とし、自白に基づいて発見されたとされた重要な物証について作為の疑いを強く指摘している。とくに、その根拠として、発見場所が死体発見場所から約二百メートルと近く、しらみつぶしに捜索が行われたはずの場所であること、発見の契機になった図面について被告人が誘導であると主張していること、被告人の立会いの機会を与えていないことなどを指摘している。

一 この東京高裁判決はすでに確定しているが、このように捜査上の不正の指摘がなされていることについて厳粛に受け止めているか。
二 一九八四年七月十一日に仙台地方裁判所の出した松山事件の再審無罪判決は、争点となった「布団襟当ての血痕」について、『右物証については、押収、保管、移動並びに鑑定経過に若干の疑義がみとめられ、そのことが押収当時果たして襟当てに右の血痕群が付着していたであろうかにつき払拭できない疑問と、押収以後に血痕群が付着したとの推論を証拠上容れる余地とが残されているのであり、これらにかんがみると、本物証は、これをもって有罪証明に価値のある証拠とすることはできない』と判示している。
  このような、自白の信用性を高めようとして、警察が自白に基づいて証拠が発見されたかのように偽造、作為をおこなったことが明らかになった場合、警察としても大いに反省しなければならないと考えられる。
  このように、裁判所によって、あるいは警察自身の調査で、警察官が証拠の偽造や作為をおこなったことが明らかになった事例を警察庁では反省の材料として把握すべきだと思うが、どのように考えているか。
三 よく知られているように、狭山事件は東京でおきた吉展ちゃん事件の直後に発生、いずれも犯人を警察が取り逃がすという大失態を演じたことで、埼玉県警だけでなく、警察庁としても全面的に協力体制をとるなど、大々的な捜査がおこなわれたと言われている。これにまちがいはないか。
四 狭山事件のこうした徹底した捜査は、事件直後の初動捜査だけでなく、起訴された石川一雄氏の逮捕後もすすめられたと思われる。とくに、被疑者とされた石川一雄氏の逮捕の当日におこなわれた被疑者宅の家宅捜索は、警察の捜査のメンツのかかったものでありマスコミもふくめて何か事件に関係するものが当然発見されるだろうと注目される捜索であったと考えられる。当時の記録上は、十二人の刑事により、二時間十七分となっているが、これはかなり徹底した捜索がなされたと考えられるがどうか。
五 石川一雄氏宅の家宅捜索は、さらにその後、第二次逮捕の翌日である六月十八日にもおこなわれている。記録の上からは、捜索目的は、被害者の鞄、腕時計、万年筆、財布にしぼられており、再逮捕について弁護人から批判されていたときであるから、このときの捜索も再逮捕した警察のメンツのかかった捜索である。当然、徹底した捜索がおこなわれたと考えられる。記録上は十四人の刑事が二時間八分捜索をおこなったとなっているが、これは前記捜索対象にしぼられた徹底した家宅捜索と考えられるがどうか。
六 記録上は、警察はこの二回の家宅捜索ののち、六月二十六日に、万年筆を石川一雄氏の自白に基づいて発見したとなっている。しかし、石川一雄氏が万年筆隠匿場所を自白したという自白調書の日付は六月二十四日である。重大な証拠物の捜索がこのように二日もおかれているが、このようなことは不自然ではないのか。
七 逮捕後に、捜索以外で石川一雄氏宅を訪問している捜査本部の警察官はいないか。いるとすれば、どのように何回ぐらい訪問しているのか。
八 裁判記録によれば、この万年筆が発見されたとき、発見場所の写真がまったく撮られていない。通常、こうした証拠物を捜索・押収する場合、発見・押収場所の写真を撮ると考えられるがどうか。
九 記録によれば、この万年筆押収のとき、石川一雄氏の兄に素手でとらせている。被疑者が被害者から奪ったとされる証拠物を押収するやり方として、このようなやり方は極めて不自然ではないか。
  このような証拠物の場合、指紋採取は当然おこなわれると思うがどうか。
  指紋採取をおこなうとすれば、証拠物を被疑者の兄に素手でとらせることは極めて不自然と考えられるがどうか。
十 記録によれば、万年筆の発見された場所は石川一雄氏宅の勝手場出入口の鴨居の上であり、床からの高さが一七五・九センチ、奥行きが八・五センチである。このような場所は、通常捜索の際にその捜索対象となると考えられるがどうか。
十一 記録によれば、証拠とされた万年筆在中のインキはブルーブラックであり、一方、被害者が使用していたインキは、日記やペン習字清書などから、ライトブルーであることが判明している。被害者が使用していたインキと異質のインキが入っていた万年筆が真に被害者のものと言えるのか。
十二 被害者の日記およびペン習字清書は、最高検察庁が保管していたものを上告審段階で開示されたものである。だとすれば、検察庁は裁判に提出した証拠の万年筆在中のインキが被害者が使用していたインキと異質であることを知っていたと考えられるがどうか。
十三 このような二度の徹底した家宅捜索、万年筆隠匿場所の自白(これは弁護人との接見が禁止されていた期間である)、万年筆発見という経過は、前記松山事件再審無罪判決の判示するところからしても、また、松戸事件での東京高裁判決からしても裁判に提出されるべき証拠となりえないと考えられるがどうか。

 右質問する。





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