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平成四年十二月九日提出
質問第一八号

供述調書の信用性判断に関する質問主意書

提出者  鈴木喜久子




供述調書の信用性判断に関する質問主意書


 いわゆる狭山事件、一九六三年、埼玉県狭山市でおきた女子高校生殺害事件は、概略、つぎのような経過をたどっている。
 五月一日午後七時三十〜四十分頃、被害者宅玄関ガラス戸に脅迫状が差し込まれているのを被害者の兄が発見した。五月二日夜十二時頃、脅迫状に指定された佐野屋に被害者の姉の登美恵さんが身代金に見せかけた紙包みを持って犯人の現れるのを待ち、捜査本部は四十人の警察官を張り込ませた。現れた犯人と被害者の姉との間で約十分にわたるやりとりがなされたが、警察はついに犯人を取り逃がすという大失態を演じ、五月三日より開始された山狩り捜査によって、翌四日朝に被害者の遺体が発見され、同日午後七時から九時にかけて県警鑑識課所属の警察医の五十嵐勝爾氏によって解剖され、鑑定が作成された。
 この捜査の経緯におけるいくつかの疑問点について尋ねる。

一 一九六三年五月九日付『朝日新聞』埼玉版によれば、五月八日、埼玉県議会の社会党議員から捜査経過について説明を求められ、犯人取り逃がしの失敗をきびしく追及された際に、上田・埼玉県警本部長(当時)は、「いまのところ犯人は単独か共犯であるか決め手はない。とにかく殺してから金を要求した犯罪は前代未聞で悪質きわまりない」と答えたと報じられている。この上田・埼玉県警本部長の「犯人は殺害後に身代金を要求した」という根拠は何か。
二 同じく、五月四日付『朝日新聞』夕刊には、「死後三日を経たものと見られ、本部では殺害の犯行時間は一日午後三時か四時ごろではないかとみている」と報じられている。
  この犯行時間の根拠は何か。
三 警察は通常、殺人事件がおきたとき、死亡時刻を何時の時点で、どのように発表するのか。
  犯行時刻の推定は、事件の解明にとって重要な捜査であるが、科学捜査では、どのように犯行時間ないし死亡時間の割り出しがおこなわれているか。
四 これまでの冤罪事件では、多くの場合、自白に信用性がないことが証明され、誤判が明らかになっているケースが多い。自白の信用性の判断は重要な問題であるが、自白の信用性を判断する基準は何か。
五 狭山事件で、石川一雄氏の自白によれば、体重五十四キロの被害者の死体を前にかかえて、死体隠匿場所に選んだ畑の中のイモの貯蔵用の穴まで運び、足に木綿ロープをくくりつけ、さらにそれに荒縄を結んで、この穴(二・七メートル)に逆さづりにしたとなっている。殺害地点からこのイモ穴までの距離は、検察官の実地検証によれば、約二百メートルである。
  また、自白によれば殺害現場は雑木林の中であるが、犯行時の心理として、わざわざ雑木林内から人目につきやすい農道を通って死体を運ぶのは不自然であり、また、五十四キロの死体を二百メートルも前にかかえて休まず運んだという自白内容は明らかに経験則に反していると思われる。弁護団は、ボディビル歴のある男性に五十四キロの人形を運搬する実験をおこない、心拍数などを測定することにより、このような死体運搬がありえないことを証明する意見書を提出している。このような自白は常識的にありえない。
  検察官は、常識的にありえない自白調書でも証拠としての証明力があると思うのか。
六 同様に、死体の足首を木綿ロープで縛り、それに荒縄を結びつけて逆さにつるし、穴に出し入れすれば、死体足首に損傷・痕跡が残るのが経験則上考えられるがどうか。
七 一九六三年七月三日付『朝日新聞』埼玉版には、「警官エキストラで・ロケさながらの検証」という見出しで、石川一雄氏の自供に基づく実地検証が七月四日午前十一時すぎから浦和地検の滝沢弘検事、特捜本部の青木一夫・諏訪部正司両警部らの指揮でおこなわれたことを報道している。そのなかで、「死体をつるしたイモ穴が調べられた。警官がナワで体をしばられて穴につり下げられ、普通の男の力で引上げられるかどうかなどが調べられた」と書かれている。また、「八ミリ映写機で撮影するなど映画のロケーションさながらの検証」とも書かれている。これは自白の信用性を判断するうえで重要な資料と考えられ、この「つり下げ実験」の模様を撮影した八ミリフィルムも存在するはずである。
  この実地検証の記録および八ミリフィルムは現在、どこに、どのように保管されているのか。
  弁護団からの要求があれば開示するべきだと思うがどうか。

 右質問する。



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