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平成七年十月十六日提出
質問第四号

死刑制度の運用に関する質問主意書

提出者  金田誠一




死刑制度の運用に関する質問主意書


 現在、国際社会は死刑廃止の潮流の中にある。これは、第二次大戦後、国連に集う各国が、さまざまな機会を通じて、死刑廃止に向けての国際的な枠組みを作る努力を重ねてきたことの結果である。
 すなわち、国連は一九六二年以降、死刑に関する国連報告を公表し、六六年に採択した国際人権B規約の中で、死刑廃止が望ましいことを強く示唆した。そして八九年、一〇年にわたる審議を経て、いわゆる死刑廃止条約を採択(九一年発効)した。また、八四年の経済社会理事会の決議を受けて八九年、「死刑に直面する者の権利の保護の保障の履行に関する決議」を採択、捜査から刑執行までのすべての段階において十分な弁護を受ける権利の保障、妊婦・扶養の幼児を有する母・精神障害者・高齢者への死刑の禁止、恩赦・再審請求権の保障等の措置を講じることなどを、すべての加盟国に対して勧告した。
 そして九三年一一月、国連規約人権委員会は、日本国に対して、「死刑廃止に向けた措置をとること」を勧告している。
 こうした国際社会の状況、国連の勧告、またそれに対応した国内での死刑廃止の論議の高まりを踏まえて、死刑廃止諸団体、学者、宗教者、そして死刑廃止をめざす国会議員連盟は、政府に対し、死刑執行を一時停止し、その間に死刑存廃に関する国民的論議をつくすことを、要請してきた。
 しかしながら政府は、昨年一二月、今年五月の二度にわたり死刑を執行し、五名の死刑囚の命を奪った。ここ数年の執行の状況を見ても、死刑執行のペースはますます早くなっており、政府が国連規約人権委員会からの勧告を全く無視し、あえてそれに抗する動きを強めているのではないかとの印象を禁じ得ない。そうした姿勢はこの間の死刑執行の実態にも感じられる。この間の死刑執行の実態は、現行法、あるいは国際基準にてらして様々な問題があり、慎重を期するべき執行の判断が、どのように行われたのか疑問である。
 そこで、死刑制度の運用の実態と今後の方向性について、以下のとおり質問する。

一 前二回の死刑執行について
 1 二回の執行はいずれも、総理府世論調査をマスコミが「死刑容認七四%」と報道(これは調査の内実を正確に伝えていない)した直後、あるいはオウム報道のさなか、など死刑容認の社会風潮が高まっているように判断される時期と重なっている。死刑囚本人の責任ではないこうした事情が、刑執行に微妙に影響を与えかねない時期は、むしろ執行を避けるべきではないのか。なぜこのような時期にあえて執行に踏みきったのか。
 2 九四年一二月に執行された死刑囚のうち一人は、養父母と面会・文通をさせるよう求めて民事提訴中だった。憲法はどのような人間であれ、裁判を受ける権利を保障しているが、この権利を死刑執行によって奪ったのは、どのような判断からか。
 3 九五年五月に執行された死刑囚のうち一人は、再審準備中であり、そのことは法務省当局、拘置所にも確実に伝えていた。執行命令は、このことを知った上で発せられたのか。
 4 二回の執行によって命を奪われた五名のうち三名は、一審のみで本人が控訴せず、あるいは控訴を取り下げて確定した死刑囚だった。これは本人が経済的事情から弁護人を依頼できない国選弁護の場合(ほとんどの死刑囚がこのケースに当たる)、一審判決後控訴申立てと同時に国選の任を解かれるため、二審弁護人が選任される迄数か月間弁護人不在の状態になり、死刑囚が一人で控訴取り下げを判断してしまうという制度的欠陥によるものである。国連「死刑に直面する者の権利の保護の保障の履行に関する決議」は、捜査以降すべての段階において十分な弁護を受ける権利の保障を、加盟各国に勧告しているが、上記三名に対する死刑執行は、この国連決議に反するとの疑いが持たれる。これについて、十分な調査はなされたのか、どのような判断のもとに執行がなされたのか。
二 死刑を執行する法務大臣の権限について
  法務総合研究所発行の『執行実務解説』(当局の刑政の指導書に当たる)は、「死刑が法務大臣の命令によって執行されるのは…死刑が人の命を奪う極刑であって、いったんこれを執行するときは、もはや回復することができないから、その執行手続きを特に慎重にする必要があるばかりでなく、死刑が確定しても、その執行を逃れさせるために(法務大臣が中央更生保護審査会の審査を通じて)、特赦、減刑等恩赦をすべきでないかどうかを調査し、その後において執行を決定する必要があるから」であるとしている。
  内閣・法務大臣には、特赦、減刑等恩赦を行う独自の権限があり、死刑執行に当たっては法務大臣が独自に調査して(法務省にその判断を任せるのではなく)その必要性の有無を判断すべきであるとしているのである。昨今、形式的手続きどおりに死刑を執行するのが法務大臣の職務であるかのような議論があるが、むしろ法務大臣の職務とは、死刑執行を逃れさせるべきかどうかの最終的判断をすることにあると思料する。
  当然、精神障害者、高齢者等の執行についても、法務大臣は独自の調査、諮問によってこれを判断する職責があると考えられる。
 1 死刑執行を命ずる法務大臣が、独自の判断で執行を中止する事がありうるか。あるとすればそれはどのような場合か。
 2 直近の二度の執行において、法務大臣は、執行命令に先立ち、再審事由の有無、恩赦相当の是非を判断するためにどのような調査を行ったか。
三 死刑制度に関する今後の姿勢について
 1 法務省は死刑囚家族のプライバシーを理由に、個々のケースについてはあらゆる情報の公開を拒んでいる。このため違法な執行があったかどうかを判断するために必要な情報までも、隠蔽される結果となっている。
死刑の問題で、公共の利益にかかわる情報を公開することについてどのように考えるか。
 2 死刑存廃に関し、国民的論議を高めていくことは、必要と考えるか。必要なら、そのためにどのような方策をとるか。
 3 「死刑廃止に向けた措置をとること」との国連勧告に応える姿勢があるか。あるとすれば、どのような具体的な方策をもって応えるのか。

 右質問する。



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