衆議院

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平成七年十一月十日提出
質問第一一号

「平成七年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会」の報告書に関する質問主意書

提出者  今村 修




「平成七年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会」の報告書に関する質問主意書


 「平成七年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会」(以下「検討会」と略す)は九月二十九日、原子力安全委員会へ報告書(以下「検討会報告書」と略す)を提出し、同委員会は「原子力施設における現行の耐震設計審査指針は妥当」との結論を了承した。しかし、この結論を導く元になった指針における基準地震動の算定法や活断層の考慮の仕方等に重大な疑問があるので、次のとおり質問する。

一 直下地震における震源深さの設定法について
 1 耐震設計審査指針では、活断層を見逃す恐れがあることから、限界地震の一つとして全国一律に、マグニチュード六・五、震源距離十キロメートルの直下地震を想定している。しかし、指針が用いている大崎の方法によれば、マグニチュード六・五の震源深さは七・二キロメートルであり、十キロメートルではない。直下地震の震央距離は当然ゼロ・キロメートルだから、直下地震の震源距離は震源深さと一致するはずであり、マグニチュード六・五の直下地震の震源距離は七・二キロメートルとすべきである。なぜ、大崎の方法に忠実に従って震源距離を七・二キロメートルとせず、十キロメートルとしたのか。
 2 限界地震で考慮したマグニチュード六・五の直下地震の震源距離を十キロメートルから七・二キロメートルへ変更した場合に、現在までに建設が許可された原子力施設のうち、審査当時に想定された限界地震による基準地震動S2の応答スペクトルを短周期側で超える施設が出てくるが、どの原子力施設か。また、それを確認するため、全原子力施設について、基準地震動S1およびS2の応答スペクトルと、マグニチュード六・五、震源距離七・二キロメートルの直下地震による地震動の応答スペクトルを同一図上に記載した各原子力施設ごとの図を明らかにされたい。
二 近距離地震の最大速度の計算法について
 1 検討会報告書に示された第五 ― 五図のT1およびF1の応答スペクトルは、震央距離がいずれも十六キロメートルと記載されているが、大崎の方法によれば、いずれも震央距離二十キロメートルの応答スペクトルに対応する。大崎の方法による応答スペクトル(大崎スペクトル)では、△NEARの値がマグニチュードによって定められ、震央距離がこの値より小さいと規準化応答スペクトル(岩盤での最大速度を十カインとした応答スペクトル)は変わらないようになっている。しかし、最大速度は震央距離に応じて変わり、震央距離が△NEARより小さい位置での大崎スペクトルは、この規準化応答スペクトルに、当該位置で求めた最大速度の十分の一を掛けることによって得られるようになっている。ところが、検討会報告書では、震央距離が△NEARより小さい位置での最大速度は△NEARの位置での最大速度に等しいとされたため、第五 ― 五図のT1およびF1の応答スペクトルが震央距離二十キロメートルの大崎スペクトルで置き換えられる事態になったと思われる。これに相違ないか。
   また、規準化応答スペクトルだけでなく最大速度までも△NEARより近距離でカットするということは、いつ、どの原子力委員会(または原子力安全委員会)で、どのような根拠に基づいて決定されたのか。
 2 近距離地震動の最大速度を△NEARでカットせず、大崎の方法で最大速度を求めた場合に、現在までに建設が許可された原子力施設のうち、審査当時に想定された最強地震や限界地震による基準地震動S1やS2の応答スペクトルを短周期側で超える施設が出ると思われるがどうか。これに該当する原子力施設および該当する応答スペクトルを明らかにされたい。
三 大崎スペクトルによる地震動評価の正確さについて
 1 大崎スペクトルは解放基盤表面と呼ばれる岩盤上で地震動の応答スペクトルを求めるものであり、兵庫県南部地震では、松村組技術研究所の地下十五メートル岩盤上での地震観測記録がこれに対応する。検討会報告ではこの地点での地震観測記録に対する応答スペクトルを描きながら、同じ図の上に大崎スペクトルを描いていない。これらを同一図上に描くなら、大崎スペクトルが地震観測記録に対する応答スペクトルをかなり下回ることは明らかである。これに相違ないか。これを確認するため、松村組技術研究所の地下十五メートル岩盤上での地震観測記録に基づく応答スペクトルとこれに該当する大崎スペクトルを同一図上に描いたものを明らかにされたい。
   これは大崎スペクトルが内陸地震による震源断層近くの地震動の岩盤上での最大速度および応答スペクトルを大幅に過小評価する傾向があることを示していると思われるが、これに相違ないか。もし、違うというのなら、応答スペクトルにおける右相違点の発生理由について定量的な説明を求める。
 2 検討会報告書における第五 ― 五図では、断層モデルによる応答スペクトルが、とくに短周期側で、大崎スペクトルより上側に来ている。断層モデルによる応答スペクトルは各種パラメータによって異なるが、国内の原子力施設立地点での地盤条件下で、内陸地震の震源断層に近く震源も近い地点では、このように、断層モデルによる応答スペクトルの方が大崎スペクトルより上側に来るのではないか。もし違うというのであれば、どのような条件のときに違うのか。
 3 大崎スペクトルが震源断層に近く震源に近い地点で応答スペクトルを過小に評価するとすれば、最も大きな影響を受けるのは直下地震である。全国一律に想定しているマグニチュード六・五の直下地震の地震動を過小評価しているとすれば、ほとんどの原子力施設で、この直下地震の応答スペクトルが現行の想定基準地震動S2の応答スペクトルを短周期側で超えると思われるがどうか。
四 耐震設計上考慮すべき活断層について
 1 現行指針では、基準地震動S1の発生源として、一万年前以降活動したA級活断層および微小地震により活動性が認められる活断層を考慮し、基準地震動S2の発生源として、一万年前以前に活動したA級活断層および五万年前以降活動した(または再来期間が五万年未満の)B級活断層を考慮している。ところが、小出仁氏らの「地震と活断層の本」(国際地学協会発行、一九九五年)の百ページには「明治以降に活動し明瞭な地震断層を出現させた活断層が十例ほどある。このうちA級活断層は根尾谷(濃尾)断層、丹那(北伊豆)断層の二例、B級活断層は、千屋・矢流沢・石廊崎の各断層で三例である。他の五例はいずれもC級活断層が活動したものである。全部で十例しかない活断層の運動のその半分をC級活断層が占めているのである」と指摘した上で、「日本列島はこのように、目に見える活断層とおそらくその十倍以上の現在よくわかっていない活断層によって切り刻まれた傷だらけの断層列島ということができる」と結論づけている。この警告を裏付けるかのように、兵庫県南部地震ではB級活断層と評価されてきた野島断層が震源断層となった。また、一九四五年の三河地震で現れた深溝(ふこうず)断層は再来期間が約五・五万年のC級活断層である。現行指針の考え方によれば、野島断層は基準地震動S1の考慮対象外とみなされ、深溝断層は基準地震動S1およびS2のいずれの対象からもはずされることになる。さらに、指針策定時の原子力委員会原子炉安全技術専門部会耐震設計小委員会委員で「基準地震動S2の発生源として考慮すべきB級活断層は五万年前以降活動したものに限る」との数字的基準を提案したと言われる松田時彦氏自身も「原子炉のハードの部分との兼ね合い、つまり活断層だけ厳しくしても……ということで五万年にしたのではないか。私はわからない。ただ、アメリカの活断層の基準よりは日本は甘い。なぜアメリカ並にやらなかったのか……」(Be−Common、九十四ページ、一九九二年七月)と答えている。最強・限界地震の発生源として考慮すべき活断層がなぜ現行指針のようになったのかさえ明確でない。兵庫県南部地震を教訓とし、指針策定後の新しい知見を考慮して、日本列島では、A級活断層だけでなく、まだ未発見の活断層も含めて、すべてのB・C級活断層による地震を最強・限界地震の考慮対象とすべきだと考えられる。
   基準地震動S1の発生源として一万年前以前に活動したA級活断層およびすべてのB・C級活断層を考慮すべきではないか。また、基準地震動S1の発生源として一万年前以前に活動したA級活断層およびすべてのB・C級活断層を考慮外に置いた根拠は何か。
   基準地震動S2の発生源として五万年前以前のB級活断層およびすべてのC級活断層も考慮すべきではないか。また、基準地震動S2の発生源として五万年前以前に活動したB級活断層およびすべてのC級活断層を考慮外に置いた根拠は何か。
 2 基準地震動S2で考慮すべき直下地震のマグニチュードは六・五と設定されているが、その根拠の一つとなった松田時彦氏の経験則「活断層が動く時にはマグニチュード六・五以上の大地震が起こる」(地理、第二四巻、十三ページ、一九七九年)は最近、松田氏自身の手によって「既存の活断層が動くときには、マグニチュード七程度かそれ以上の地震が伴うと考えられる」(月刊地球号外十三号、九十三ページ、一九九五年)と修正されている。十数年前の古い知見はその後の新しい知見によって修正される必要があり、指針で想定すべき直下地震の規模をマグニチュード六・五から少なくともマグニチュード七に引き上げる必要があるのではないか。もし、必要ないというのであれば、その根拠は何甕か。
   また、マグニチュード七の直下地震を想定した場合に、現在までに建設が許可された原子力施設のうち、審査当時に想定された限界地震による基準地震動S2の応答スペクトルを短周期側で超える施設が出てくるが、どの原子力施設か。それを確認するため、全原子力施設について、基準地震動S1およびS2の応答スペクトルと、マグニチュード七の直下地震による地震動の応答スペクトルを同一図上に記載した各原子力施設ごとの図を明らかにされたい。
 3 兵庫県南部地震においては野島断層の北東方向神戸側の震源断層が地震断層として地表に現れておらず、今なお調査中である。また、昨年一月にアメリカ西部ノースリッジで起きたマグニチュード六・七の地震は、地下十数キロメートルの伏在断層によって引き起こされ、このときも地震断層は生じていない。これらを考慮すれば、マグニチュード七クラスの地震でも震源断層が必ずしも地表に現れず、地表や地下一キロメートル程度の範囲の調査では活断層を見逃す場合もある。これに相違ないか。
   活断層を発見するための現在の調査方法では地下十数キロメートルの伏在断層を発見できない、または、極めて困難であるが、これに相違ないか。もし、発見できると言うのなら、その調査方法と検出精度はどの程度か。また、その調査方法はこれまでに、どの原子力発電所の調査に用いられたのか。
五 運転中の原子力施設の耐震安全性について
 1 指針策定前の原子力施設については現行指針による審査が義務付けられていない。原子力施設のようにその重大事故が及ぼす放射能災害の深刻さを考慮するなら、当然、指針策定前の原子力施設について、新しい指針に基づいて再審査されるべきである。ところが、現行法体系では、原子力安全委員会にも、科学技術庁にも、通産省にも、どこにも、その権限がない。これに相違ないか。
 2 科学技術庁および通産省は九月二十九日、指針策定前の原子力施設の耐震安全性の確認結果概要を原子力安全委員会へ提出しているが、これはどのような目的で原子力安全委員会へ提出され、原子力安全委員会でどのように処理されたのか。
   耐震安全性の確認結果概要の表に掲載されている「基準地震動の最大値」は応答スペクトルから得られた模擬地震波の最大速度振幅であり、応答スペクトルを定める解放基盤表面上での最大速度振幅ではないと思われる。例えば、敦賀二号炉設置変更許可申請書(一九八〇年八月)には「Aクラスの施設は、敷地の解放基盤表面における最大速度振幅が十五カインの応答スペクトル、又は最大速度振幅二十六カインの模擬地震波で定める基準地震動S1に基づいて動的解析から求められる地震力に対して耐えるように設計する」(四ページ)となっているが、敦賀一号の確認結果概要の表では基準地震動S1の最大値は二十六カインとなっている。基準地震動S2でも同様である。耐震設計では設計用応答スペクトルが最も重要であり、応答スペクトルを定める地震動の最大速度振幅を掲載するのが耐震工学上の常識であり、原子力安全委員会で専門家に確認してもらうためにも、そうすべきではなかったのか。より大きな地震動を考慮しているかのように見せかけるこの様な記載方法をなぜとったのか。
   すべての原子力施設に関し、応答スペクトルを規定する基準地震動S1およびS2の最大速度振幅と模擬地震波の最大速度振幅の値はそれぞれいくらか。
 3 原子力施設の耐震安全性には建物・構築物、機器・配管類の老劣化、施工・製作ミス、人為ミスを考慮することが不可欠である。ところが、原子炉圧力容器はもとより蒸気発生器細管や枝管等に応力腐食割れ等のひび割れが発生し、蒸気発生器内振れ止め金具の製作ミスが発覚し、弁やスイッチの操作ミスなど人為ミスが絶えない。しかも、定期検査を終了し通産省の許可を得て運転を再開した直後に異常が見つかる場合がある。このような現実を見るなら、老劣化、施工・製作ミス、人為ミスを考慮に入れて耐震設計が行われて当然だが、これらは現行指針では一切考慮されていないのではないか。なぜ、考慮されていないのか。今後考慮する予定はないのか。

 右質問する。



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