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平成七年十二月十五日提出
質問第二九号

血液製剤によるHIV(エイズウイルス)感染薬害に関する再質問主意書

提出者  枝野幸男




血液製剤によるHIV(エイズウイルス)感染薬害に関する再質問主意書


 血液製剤によるHIV(エイズウイルス)感染薬害に関して、平成七年十一月十四日提出の質問主意書に対する答弁書を拝受した。注目すべき新たな見解も散見されるが、「確認できない」など不明確・無責任な回答も多く、真相を明らかにする姿勢にはまだまだ欠けるものである。また、前回の質問には、盛り込めなかった疑問・論点がまだまだ多数存在する。そこで、以下のとおり再質問する。

一 当時の厚生省の情報収集体制について
 1 CDC週報はいつから厚生省のどの部署が入手しているのか。さかのぼって調べるのが困難な場合は、81年〜83年(以下当時)に限ってはどうか。
 2 当時、CDC週報の入手は料金を払って購入していたのか。それとも、CDCが無料で情報提供のため送付してくれていたのか。
 3 当時、同様の海外の副作用等の情報を収集するために、どの部署がどのような出版物を定期的に購入していたのか。「ニューイングランド医学ジャーナル」誌、「ヘモフォリアブリティン」誌は入手されていたのか。現在ではどうか。
 4 こうした海外の情報は翻訳など問題もあると思うが、どのような事務手続を経て課長などの責任者に伝達されるのか。たまたま読み落としたり、担当者の判断で課長などの責任者に情報が届かないようなことは起こり得るのか。
 5 「3名の血友病患者にエイズ症例発症」の記事を載せた82年7月16日発行のCDC週報を入手したのはいつか。担当部署はどこで、その責任者がこの情報を認識したのはいつか。記事中にはどのような表現があるか。
 6 当時、元輸血学会長の村上省三氏より生物製剤課郡司課長へ血液製剤とエイズの関連に関する資料が送られていたのは事実か。事実とすれば、いつから、何回くらい、どのような情報が届けられていたのか。村上氏と電話で話すなり、会って話したりした事実はあるか。
 7 八八年七月七日付け毎日新聞の「編集者への手紙」欄に今日の事態を予想したかのような血液製剤の輸入禁止を求める元薬務局勤務者の投書が掲載されている。退職者が元職の業務に対して、これだけ明確に意見を述べることはかなり異例のことであり、当然関係職員の目にとまっていたと思うがどうか。もし、この記事を見ていたとすればどのような感想をもったか。このような関連新聞記事をスクラップするなどの業務は、当時の生物製剤課及び保健情報課にて行われていたのか。
 8 前回の質問主意書の答弁(以下答弁)において、八三年三月四日付けCDC週報に「血友病患者のエイズについては、血液製剤又は血液が原因のようにみえる」との記述があったことを認め、また当時厚生省薬務局生物製剤課にてこのCDC週報を八三年の早い時期に入手していた事実も認めている。この情報に関して何らかの対策を講じたのか。講じたとすれば、どのような対策か。
 9 対策を講じていなかったとすれば、誰がどのような判断で対策を講じなかったのか。答弁においては「当時エイズウイルスが同定されておらず、エイズの原因がウイルスであるか否かは明らかでなかった」との見解が示されているが、この見解通り原因が何かわからないとしても、こうした状況であるからこそ、あらゆる情報、特にエイズに関してより情報をもっていると思われる米国の公的機関の情報などには敏感に反応すべきであったと考えるがどうか。
二 トラベノール社と厚生省との交渉について
 1 答弁によれば「八三年当時、米国トラベノール・ラボラトリーズ・インク社の幹部が厚生省を表敬のために来訪し、また日本トラベノール社から生物製剤課に米国における加熱製剤の製造承認の申請データについて一回説明があった」とのことであるが、この両会合は同一のものか。別個のものか。
 2 別個のものであるとすれば、前者の米国トラベノール社の「表敬訪問」(答弁によれば日時、場所、説明資料確認できず)の際には、加熱製剤の輸入についての話は一切出なかったのか。出なかったとすれば、こうした特に用件のない企業幹部の「表敬訪問」とはしばしばあるものなのか。
 3 答弁(二の4)によれば、「八三年夏ごろ、日本トラベノール株式会社から米国における加熱製剤の製造承認の申請データについて説明があった」とあるが、この回答は答弁(二の1から3)の中で述べられている説明と同一のものか。
 4 この日本トラベノール社のデータ説明の際、加熱製剤がエイズ感染防止に有効であるまたはあるらしいとの利点は示されたのか。
 5 「加熱に伴う副作用の懸念」とは誰が、どのような医学的根拠で判断したのか。この際、懸念された副作用とはどのようなものか。死に至るような副作用なのか。
 6 トラベノール社のエイズ患者の供血による製剤の回収は、答弁にあるように「エイズに関する新たな知見を提供するものではなかった」かもしれないが、利潤追求、責任回避などのためしばしば安全対策が後手後手に回ると指摘されがちな製薬企業が自ら自社製品を回収したという事実は血液製剤とエイズ感染の関連への疑いをさらに深めるべき重要な情報であると考えるがどうか。
 7 答弁(二の7及び8)によれば、トラベノール社は「念のため」出荷停止を行ったとのことであるが、「念のため」というのはトラベノール社が言ってきたのか。文書に書いてあるのか。それとも厚生省がトラベノール社の意図を推測して述べているのか。
 8 製薬会社が副作用、汚染等の被害が発生する以前また薬品、製剤等と被害の因果関係が十分判明しない内に、「念のため」製品を回収したりすることはよくあることなのか。あるなら、最近の例をいくつか述べよ。
 9 答弁(二の6)によれば、八三年当時の対策が述べられ、「六月、社団法人日本血液製剤協会を通じて、各製薬企業からエイズ予防のための対応策を聴取し」とあるが、この聴取の方法はいかなるものか。聴取した企業はどこか。聴取した内容はどのようなものだったか。
 10 答弁(二の6)に、「同年(83年)七月、同協会(日本血液製剤協会)を通じて、製薬企業に対し、輸入血液凝固因子製剤及び輸入原料血漿について同性愛者や麻薬常習者等のエイズのハイリスクグループからの供血によるものではない旨の証明書を添付するよう指示を行った」とのことであるが、この指示は文書でなされたのか。この指示の法的な位置づけは何か。この指示も生物製剤課の判断か。
 11 答弁(二の6)によれば、「ハイリスクグループ」という言葉を使用しているが、ハイ(高)リスクの反意語、またハイリスクグループ以外の人々とはどのような人々か。もし「ロウ(低)リスクグループ」であるなら、異性愛者や非麻薬常習者などのロウリスクのものの供血は使用してもいいように読めるがどうか。ロウであってもリスクはあることを認めていたのではないか。
 12 答弁(二の7及び8)によれば、トラベノール社の製品回収を「エイズ研究班」に報告したかどうかは確認できないとのことであるが、当時の厚生省担当者以外の研究班メンバーには確認したのか。確認していないとすればなぜか。今後、確認すべきと思うがどうか。
 13 答弁(二の9)によれば、当時の郡司生物製剤課課長は「課内での検討を経て、最終的に課長が判断した」とのことであるが、課の構成員は何名か。その内、意思決定にかかわらない純粋事務職は何名で、意思決定にかかわったと思われる職員は何名か。課長補佐は誰で現職は何か。
 14 前主意書の二の9に答弁漏れがあるので再質問する。郡司課長がこうした件を「職制上相談すべきなのは誰か。」
 15 また訴訟の中で九五年三月二六日に提出されたいわゆる「トラベノール陳述書」においても「五、一九八三年における厚生省との協議」の項に、「加熱処理に伴う蛋白変性が有効成分の変更と当たると見るべきかどうかについて、厚生省は、中央薬事審議会の下部組織である血液製剤調査会委員に意見を求めたと聞いております。」との記述があるが、この件は、事実か。
 16 同「トラベノール陳述書」には八二年当時から厚生省担当官と頻繁に加熱製剤の承認について交渉が行われていたようであるが、この点はどうか。
 17 同「トラベノール陳述書」によれば、当時の生物製剤課課長補佐が当初「有効成分に影響を与えない製造方法の一部変更」の扱いで、加熱製剤の認可を示唆したとのことであるが、これは事実か。事実とすれば、どうしてこの扱いが、臨床試験が必要な新薬の扱いに変更になったのか。
三 「AIDSの実態把握に関する研究班」について
 1 答弁(三の1)中にあるエイズ研究班のメンバー人選時の「エイズに関する当時の知見」とはどのようなものか。文書等に残っているのか。この知見も郡司課長以下、生物製剤課の独自の認識か。
 2 その「知見」にのっとったとされる研究班の人選において、免疫、感染症、疫学などの権威を集めるとの観点は素人でも理解できるが、血液、血友病の権威をも集めたのはいったいいかなる根拠によるのか。
 3 まして、班長が血友病の権威というのは、いかなる判断か。
 4 この研究班の設置の決定は、さすがに生物製剤課課長のみの判断でないと思うが、どのレベルの上司までの裁可、判断を受けていたのか。
 5 この研究班を運営する予算はどのような名目で支出されていたのか。委員には報酬、交通費等が支給されていたのか。支給されていたとすれば、領収書等は残っているか。
 6 答弁(三の5)によると、九四年二月六日放送のNHK「埋もれたエイズ報告」の画面に映し出されている資料が配布資料かどうか「確認できない」とのことであるが、九五年一二月一日放送のNHK・ETV特集にはさらに明確に配布資料が映し出されている。この資料は配布資料か。もし、これも確認できないとすれば、NHKが書類をねつ造したとでもいうのか。資料の下部には厚生省の用箋であることを示す印字もある。あの印字は当時、厚生省で使用されていた用箋のものか。テレビ画面上の筆跡を当時の担当者(郡司氏のみでなく、課長補佐や森尾保健情報課担当官など)に見せ、自分の字かどうか確認できないか。確認しないとすれば、なぜか。
 7 配布資料や議事メモが研究班のメンバーのもとにはないか調査しないのか。しないとすれば、その理由は何か。
 8 答弁(三の4)によると、「エイズ研究班は、学術的な研究成果の報告を目的とする」とあるが、八三年五月二五日付け読売新聞によると郡司課長は「近く専門家で研究班をつくり、患者の有無などのも現状を調べ、対策を立てたい」と述べている。「対策」は目的ではなかったのか。なかったとすれば、この読売新聞の記事は何か。
四 エイズ研究班の血液製剤小委員会について
 1 エイズ研究班にはどのような小委員会がいくつ設置されたのか。
 2 その内、血液製剤小委員会はいつ設置されたのか。何回、いつ会合をもったのか。
 3 どのような理由で、誰の判断で設置されたのか。郡司課長か。安部研究班班長か。
 4 メンバーは誰か。メンバーの人選は誰がどのような観点で行ったのか。
 5 各会合には、厚生省の担当官は誰が出席したのか。
 6 配布資料、議事録、議事メモなどは残っているか。もし、「確認できない」とすれば、メンバーにも確認をとった上でのことか。
 7 この小委員会の最終報告書はいつ出されているのか。またエイズ研究班に討議内容の報告を行ったのか。行ったとすれば、いつか。
 8 小委員会の報告書に「我が国の血友病患者にとって、かかる因了製剤使用に関連するAIDS伝播は由々しき問題である」との表記があるのは事実か。
五 中央薬事審議会について
 1 八三年当時の中央薬事審議会の会長及び委員の氏名、またその者の当時の役職等を述べよ。
 2 八三年から八四年にかけて、現存する以下の特別部会及び部会は存在していたか。血液製剤特別部会、血液製剤調査会、副作用調査会。
 3 血液製剤特別部会、血液製剤調査会が当時も存在していたとすると、そのメンバー及び部会長の氏名、及び当時の役職等を述べよ。
 4 当時、これら一二つの部会が存在していたとすると、八三年から八四年にかけてそれぞれ、いつ、何回会合が開催されているか。
 5 それぞれの会合の議事録、メモなどは残っているか。公開はしているのか。
 6 広河隆一氏著「日本のエイズ」一五三ページに、「実はクリオ問題は、この小委員会(血液製剤小委員会)にかけられる以前に、薬事審議会の血液製剤部会で討議されたことがあった。」との記述がある。この表記は事実か。もし、確認できないとすれば、どのような調査の上で確認できないのか。
六 いわゆる「スピラ認定」及び第一号症例の認定について
 1 答弁(四の1及び2)に漏れがあるので、再質問する。郡司課長以外の「会合の出席者は誰か。厚生省、エイズ研究班、CDCそれぞれについて答えよ。」また、CDCのローレンス氏の出席は確認できないとのことであるが、いわゆる外国人はスピラ氏のみだったのかどうかの記憶はないか。生物製剤課課長補佐、保健情報課課長の出席はどうか。
 2 答弁内のCDCが八二年に発表したエイズに関する診断基準とはどのようなものか。
 3 帝京大症例に投与されていたステロイド剤とはいつから、何のため、どれくらいの量投与されていたのか。
 4 この症例の他にも、日本においてステロイド剤の投与によるエイズ疑似症例の報告はあるのか。
 5 医学的に、また薬事行政として、こうしたエイズの疑似症例のような症状まで引き起こすようなステロイド剤の投与は、問題ではないのか。
 6 厚生省及びエイズ研究班がいわゆる帝京大症例を実はエイズと認定していたまたはなんらかの理由で故意に認定しないようにしていたのではないかとの疑惑は晴れないが、もし「エイズの疑似症例と考えていた」との厚生省見解を認めるとしても、このこと自体、重大な判断ミスとは考えないか。
 7 八四年九月二十日付けの保健医療局通知「AIDS調査の実施について」に基づき各都道府県からはじあて調査票が提出されたのは、いつ、どこの都道府県から何通か。
 8 厚生省が八五年三月二十二日に発表した第一号症例の調査票はいつ、どの都道府県から提出されたのか。
 9 その後、八五年四月二日に帝京大症例の調査票が東京都より提出されるまでの間に、東京都から他の調査票の提出はあったか。
 10 この帝京大症例の調査票の提出について、東京都と事前の協議はあったか。あったとすれば、どのようなもので担当者は誰か。
 11 保健医療局に設置された「AIDS調査検討委員会」は、いつ設置され、担当課はどこで、メンバーは誰で、会合はいつ何回開催されているのか。
七 CDCローレンス博士と意見交換を行った旨の報道について
  答弁によれば、二度にわたる調査によっても、生物製剤課長、エイズ研究班メンバーの双方にローレンス氏に面識がなく、会合の記憶もないとのことであるが、記憶がないだけであって、会っていないと断言できる者がいない以上、当該毎日新聞報道について、やはりローレンス氏本人にこそ、確認すべきと考えるがどうか。そう考えないとすれば、その理由は何か。
八 加熱製剤の臨床試験について
 1 八三年一一月に厚生省が加熱製剤の治験説明会を行ったのは事実か。治験説明会の担当部署はどこか。この説明会の趣旨、法的位置づけは何か。
 2 八四年一月に厚生省が加熱製剤の治験の指示を行ったのは事実か。治験の指示の担当部署はどこで、法的位置づけは何か。
 3 加熱製剤の治験を行ったメーカーは何社で、どこか。
 4 各社が治験を開始したのはそれぞれいつか。
 5 治験を担当した医師、病院などはどこか。公開しないとすれば、その理由は何か。
 6 例えば、この治験担当医師が設立した財団に対し、治験の直前の時期、治験を受ける立場の製薬会社が寄付をするというような行為は法的に問題となりうるか。道義的にはどうか。
 7 八五年一月、各社に許可申請するように指示したのは事実か。この指示の担当部署はどこか。この指示の法的位置づけは何か。
 8 各社が許可申請をしたのはそれぞれいつか。
 9 この申請を審査した中央薬事審議会の担当部会はどこか。メンバーは誰か。
 10 許可が出たのはいつか。
 11 違った時期に治験を開始した同種の薬剤、製剤の承認が同時に出るということはよくあることなのか。よくあるとすれば、例を示せ。
九 加熱製剤販売開始後の非加熱製剤の扱いについて
 1 この回収・販売停止などの通達を出さなかった時点で、担当の生物製剤課長は、エイズと非加熱製剤の関係をどのように認識していたのか。
 2 この時点の生物製剤課長は誰か。その上司の役職と氏名を答えよ。
 3 回収・販売停止などの通達を出さないことは、その上司に相談したのか。
 4 答弁(六の1)によると非加熱製剤の回収・販売停止を行わなかったひとつの判断理由として「血液凝固因子製剤が、血友病患者の治療上不可欠である」との認識が述べられている。しかし、加熱製剤が既に承認されていること、血液凝固因子製剤以前はクリオ製剤による治療が行われていたこと、血友病はそれのみで直接死に至るものではないことなどの点から、この判断理由は理由になっていないと思われるが、どうか。
 5 答弁(六の1)によると「製薬会社が自主的に加熱製剤と交換する方法で非加熱製剤を回収していた」とあるが、この回収の事実、方法、スピードをどのように把握していたのか。把握していたとすれば、どのような状況だったのか。
十 天下り問題について
 1 答弁によれば八〇年から九五年にかけて五名の厚生省職員がミドリ十字へ天下りをしているとのことだが、これは同時期の他の製薬会社への天下りと比べて多いのか。この時期に一番多くの厚生省職員が天下りしている製薬会社の規模と天下りの数と比較して答えよ。
 2 厚生省に在職したことのある者で八〇年から九五年にかけて日本血液製剤協会の職員となったものの氏名、厚生省における最終役職及び協会における役職を答えよ。
十一 責任者の刑事責任について
  答弁によれば、当時の血液製剤の危険性に関する情報判断、その後の対応に遅れがあったと認められる。答弁では、当時の郡司、松村両生物製剤課長がこれらの件について最終判断をしていたとのことであるが、これが事実とするとこの両名には業務上過失致死の重大な疑いがある。捜査当局にこのような認識はあるか。あるとすれば、どのような捜査を行っているか。

 右質問する。





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