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平成九年五月十五日提出
質問第二四号

食品添加物「臭素酸カリウム」に関する質問主意書

提出者  枝野幸男




食品添加物「臭素酸カリウム」に関する質問主意書


 竹村泰子参議院議員に対する第百三十九回国会答弁書第一号について、食品添加物「臭素酸カリウム」の問題に限定して以下質問する。

一 臭素酸カリウムには強い発癌性があるため、最終食品であるパンに残留してはならないとの答弁主旨であると理解するが、この理解に誤りはないか。
二 最終食品であるパンから分解・除去しなければならないということは、どのように精密な測定を行っても必ず「検出せず」「残留ゼロ」でなければならないと理解するが、この理解で良いか。
三 政府答弁書によれば、イギリス・EUが使用禁止、WHO・FAO合同食品添加物専門家会議(以下JECFAと略)が加盟各国に使用禁止を勧告しているが、わが国は用途・添加量の制限付きで使用を許可している。
  小麦粉処理剤臭素酸カリウムに関するわが国政府の見解と、イギリス・EUやJECFAの見解は「臭素酸カリウムが持つ強い発癌性」という認識においては一致しているが、では「なぜ日本が制限付きの使用を許し、イギリス・EU・JECFAが全面禁止なのか」という素朴な疑問が湧くのは当然である。禁止諸国(機関)とわが国の、見解が異なる点をわかりやすく表にまとめた答弁を求めたい。
四 その後の私の問い合わせに対して、製パン業各社、日本パン工業会、イーストフードメーカー各社、流通業界などの回答はすべて「臭素酸カリウムの使用については業界が自主的に使用しないことにしている」というものであった。
  これは事実であろうか。政府の責任ある調査・答弁をお願いしたい。
五 前四項の調査の結果、「業界が自主的に使用していない」ことが明らかになった場合は、食品添加物リストから除外しても何ら問題はないと考えるが如何であろうか。実際にパン業界が使用していない場合でも、あえて「臭素酸カリウム」を食品添加物リストに留め置く理由が特にあるのかどうか。あるとするならば、その理由を簡潔明瞭に示されたい。
  さて、私の調査によれば、市販されているパンに臭素酸カリウムが残留している。この調査・測定は、民間の材料分析会社に委託して実施した。食品衛生法に定める指定検査機関ではないため、法律的には参考資料ということになるが、検出されたという点を重要な問題としてとらえ、以下質問する。
  また、測定データについては、ここに添付するので、政府の有効な活用を期待するものである。
六 昭和五十八年四月十一日付けの「食品添加物の指定における当面の対応について」という食品衛生調査会毒性・添加物部会がまとめた文書(以下、本文書という)がある。
  本文書では、その第一項で、食品添加物の指定に際しては「FAO、WHOにおける安全評価が終了しA(1)ランクに分類されているもの」を対象とするとされている。臭素酸カリウムは、ここでいうA(1)ランクに分類されてはいない。私の調査では、一九九四年十二月の時点でA(1)ランクから外されている。A(1)ランクに分類されていたものが外されるということは、過去においてなされた安全評価そのものが否定され、FAO、WHOは臭素酸カリウムを小麦粉処理剤として使用することを危険であると判断したと考えるのが普通である。また、本文書第二項でいう日本独自の添加物には当てはまらない。
  本文書第四項にある「FAO、WHOにおける一日摂取許容量」という点でも、A(1)ランクから除外されたという事実から判断して、FAO、WHOは一日摂取許容量を設定すべきでないと判定したことは明らかである。結論として、本文書の主旨を踏まえるならば、臭素酸カリウムは食品添加物の指定から削除する必要があると解釈出来る。
  この解釈に誤りはあるか。あるとされるならば正されたい。
七 政府答弁書五の5にいう試験成績について、学会誌の内容を説明されたい。私の調査・分析結果では、焼き温度の低いパン、焼き時間の短いパンについては、添加量によるが、イオンクロマトグラフィーにても分析可能な数値を得ている。
  基準とした試験方法に検討の足りない部分があった可能性も考えられるため、再度公的機関での試験・検討を行うとともに、この点についての見解を示されたい。
八 答弁書四の2、3及び4で言及されている食品衛生調査会添加物部会報告書において、パンへの使用については、一定量以下の添加である限り、最終食品であるパンに「臭素酸カリウム」は残留しないとしているが前七項で指摘したとおり、焼き温度の低いパンや焼き時間が短いパンについては、添加量にもよるが、イオンクロマトグラフィーにても分析可能な残留数値を得ている。答弁書記述の「一定量以下」という基準を決定した際に、検討が足りない部分があった可能性も考えられる。基準決定の際の試験方法を公表されたい。また、再度試験検討を行うとともに、それを踏まえた見解を示されたい。
  私が行った分析方法について、政府の見解を伺いたい。
九 科学の発展はめざましく、年々その技術は高度なものへと進歩していることは明らかな事実である。
  日本国民の健康を守ることは、政府としての負うべき役目のひとつであり、義務であると考えられる。そこで、臭素酸カリウムの分析方法について質問する。政府としては、臭素酸カリウムの分析方法について、現行の「イオンクロマトグラフィーによる」という決定にあくまで固執する考えであるのか、明確な答弁をお願いしたい。時代の進歩、科学技術の進歩に伴い、分析方法も変わっていくべきであると考えるが、見解を示されたい。
十 臭素酸カリウムの分析において、今回私が行ったICP ― MSによる分析方法について、条件などを含む測定方法を提出するので、その評価をお願いしたい。
  なお、分析結果の評価については、水、試薬などから臭素酸カリウムが混入した可能性、臭素酸イオンの分離・抽出技術の完成度、検出データの的確性などについては、国立大学教授など専門家より「問題なし」との評価をいただいている。
  この分析方法、及び分析結果についての見解を示されたい。
十一 分析結果が正しいと仮定した場合、このデータには明らかな傾向が出ているように考えられる。
   バターロールに顕著な残留が見られるが、これは焼成工程において加熱時間が短く(七〜八分)、加熱温度も低い(摂氏二一〇度程度)ことが原因と考えられる。
   従って、現在の臭素酸カリウムに対する法規制(小麦粉一キログラムにつき臭素酸として〇・〇三グラム以下)では、規制が甘い可能性があると考えられる。この点について明快な答弁を示されたい。
十二 前十一項に対する検討の結果、法規制を変更される可能性があるのであれば、その数値と根拠を示されたい。
十三 政府答弁書によると、臭素酸カリウムは使用しても良いが残留してはいけない、と規定しているため問題は生じないということである。
   しかし、この規定をよいことにパン業界の一部が「自主規制している」と宣伝しておきながら、臭素酸カリウムを添加し、しかも残留する可能性について何ら検討を行わず使用していたとすると、これは重大な問題とされるべきであると考えられる。
   もしもパン業界の一部が言う「自主規制」が偽りであるとすれば、メーカー名の公表を含め、それなりの措置が当然あってしかるべきであると考えるが、政府の答弁をお願いしたい。
   もしも偽りであることが明らかとなった場合、日本国政府・国民を偽っていたことになり、ことは重大であると認識するものであるが、政府としての見解をいただきたい。
十四 日本パン工業会の言う「自主規制」が本当であり事実とするならば、既にわが国においては必要のなくなった添加物であると解釈でき、食品添加物の指定から除外することで生じる問題は何らないものと考えられる。
   従って、前六項で触れた本文書中の2「これに伴い既に指定されている添加物であっても(中略)食生活の変化によって、ほとんど使用実態のないもの、つまり有用性、必要性の乏しくなっているものについては検討を加える」という基本姿勢からしても、臭素酸カリウムを食品添加物の指定から除外すべきであると考えるが如何であるか。政府の答弁をお願いしたい。
十五 政府は、日本国民の健康を考え、食品添加物に対する基本的な考え方を「食品添加物の指定における当面の対応について」という文書にて示された。
   日本国民の健康を守る観点からも素晴らしい指針であると考えられる。政府はこの指針に沿って、添加物の使用許可を与えているものと信じている。臭素酸カリウムは、この指針からすれば使用を禁止し、食品添加物リストから外すべきであると考えるが、如何であろうか。
   外さないのであれば、その理由を明確に示されたい。また、その他の添加物について、臭素酸カリウムと同様な取り扱いをする添加物があれば、その添加物名を明記されたい。

 右質問する。



試験報告

試験報告

試験報告

表1 定量分析結果






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