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平成十年五月八日提出
質問第三三号

「子どもの権利に関する条約」についての質問主意書

提出者  石井郁子  瀬古由起子  中林よし子  藤木洋子  藤田スミ




「子どもの権利に関する条約」についての質問主意書


 「子どもの権利に関する条約」(以下本条約)は一九八九年に国際連合総会において採択され、我が国は一九九四年に締約国となった。本条約締結後四年が経過し、また本年五月下旬には政府によって九六年五月に国際連合を通じて子どもの権利委員会に提出された本条約の第一回報告書(以下政府報告書)の審査がジュネーブにおいて行われることになっている。このような時期に当たり、以下質問する。

一 本条約の意義について
 文部省は本条約の日本における発効直前の一九九四年五月二十日の事務次官通知で本条約に関して「世界の多くの児童が、今日なお貧困、飢餓などの困難な状況におかれていることにかんがみ、世界的な視野から児童の人権の尊重、保護の促進を目指したものであります」(平成六年五月二十日文部事務次官通知「『児童の権利に関する条約』について」)との認識を示し、また外務省も中・高生向けの広報ポスターで「世界には、貧困、飢え、武力紛争、虐待などのひどい状態に置かれ苦しんでいる子どもが数多くいます。この条約は、各国がこうした現実に目を向け、子どもたちの人権を尊重し、保護していくために作られたものです。」と述べている。
 これらの文書を見るならば、政府は本条約に対して「主として発展途上国の現状を踏まえつつ、十分な保護を受けて健やかに育つことすら困難な状況におかれた児童に生きる権利、健やかに育つ権利などを保障することを主眼として作られたもの」(「学校経営」一九九二年十一月号文部省学術国際局国際企画課課長補佐岡本薫氏)と認識しているのではないか。
 しかし、本条約は全世界の子どもに「豊かな子ども期」を実現することを目的とし、「豊かな子ども期」が実現されていないあらゆる国にとって、発展途上国のみならず先進国にとっても重要な意義を有していると考えるが、本条約に対する政府の認識を明らかにされたい。
二 本条約批准後の子どものおかれている状況の変化について
 (1) 本条約批准に際して一九九四年三月二十九日参議院外務委員会で、立木議員の質問に対して、羽田外務大臣は、「私ども、子どもたちに対して後退するような措置だけはとらないように、やっぱりきめ細かい対応をする必要があろうというふうに思います」と答弁をしている。外務大臣の答弁は条約締結前後で児童福祉、学校教育など子どもに関連するあらゆる政策を行うに当たって、子どもたちの状況を悪化させないという政府の決意と方針を示したものと考えるが、この政府の見解は変わらないか。あらためて政府の見解を明らかにされたい。
 (2) 政府の調査・統計によっても条約批准後、不登校数、いじめ事件数、体罰件数、及び校内暴力件数は増加している。これらの指標を見るだけでも子どもたちをめぐる状況は後退し、より深刻化していると考えるが政府の見解を明らかにされたい。
三 本条約の広報活動について
 (1) 政府報告書には外務省はリーフレット九万枚を作成配布、ポスターを文部省と協力して学校などに百万枚を配布、法務省は啓発冊子を十万部配布、厚生省はパンフレットを作成・配布、母子健康手帳に条約の主な内容を記載するなど具体的数字・施策をあげて本条約の広報について政府が行った措置について記している。しかしこれらの措置は例えば「各学級一枚ずつ行き渡るよう」配布したはずの外務省のポスターが実際に教室に掲示されていないという報告が少なくないなど「適切かつ積極的な方法で」本条約の広報を行うことを求めている本条約四十二条に照らし、必ずしも十分とは言えない。政府は本条約の広報の現状をどう認識しているのか、また不十分な広報の現状に照らしよりいっそうの努力を行うべきと考えるがあわせて政府の見解を明らかにされたい。
 (2) これまでに政府が自ら行った広報措置は十分であったと考えるか。政府は周知度など、その効果について調査・評価を行ったのかどうか、明らかにされたい。
 (3) 子どもたちは次々と世代交代するのであるから、本条約の締結時に限らず、継続的に広報活動を行うことが本条約四十二条の趣旨に照らして必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。また政府の今後の本条約の広報計画について具体的に明らかにされたい。
 (4) 今後、単にポスターの掲示にとどまらないより「適切かつ積極的な」広報活動を行っていくこと、例えば、条約広報の学校教育カリキュラムへの導入、子ども一人一人への配布、学校における本条約の教育に関する先端的実践例の紹介、また生徒手帳へ記載されるよう関係者へ働きかけることなども考えられるが、政府の見解を明らかにされたい。
四 本条約の実施体制について
 (1) 本条約実施のために、目標及び目標達成の期限を明示した包括的な国内行動計画を策定する予定はあるのか。予定があるのであれば、どのように各省庁間の調整を行う予定であるのか、その主管官庁がどこであるのか、予定が無いのであればその理由を明らかにされたい。
 (2) 政府報告書の中で、「関係省庁の青少年に関する施策を政府全体として総合的かつ効果的に実施するために、総務庁青少年対策推進会議等をつうじて関係省庁の施策の調整を行っている」と評価されている総務庁青少年対策推進会議の構成及び同会議が本条約の実施に関する政策調整に関してどのような権限・実績を有しているのか、具体的に明らかにされたい。
 (3) 政府は本条約の実施に際して新たな行政機関を設置する必要がないという立場をとっているが、関係省庁が多岐にわたる本条約の実施に当たり調整権限を有する行政機関の存在は不可欠と考える。政府が既に存在する総務庁青少年対策推進会議を本条約の実施も含め青少年施策に関する政策調整機関と評価するならば、同会議に対して本条約の実施に関する調整権限を付与するのが相当であると考えるが政府の見解を明らかにされたい。
五 非政府・非営利組織などとの協力関係について
 (1) 本条約の実施に当たって各地で子どもの育成、保護、子どもの人権擁護、その他あらゆる子どもの権利の向上の為に活動している非営利・非政府組織(以下NPO・NGO)と政府との協力は不可欠と考えるが、日本政府は、NPO・NGOが本条約の実施に当たって果たしている役割をどのように認識し、評価しているのか具体的事例をあげて明らかにされたい。また、NPO・NGOとの協力の下に本条約を実施した実例があればそれを具体的に列挙されたい。
 (2) 政府は今後、本条約のより実効的な実施を実現するためにNPO・NGOの参加を確保するためにいかなる措置を取ることを検討・予定しているのか具体的に明らかにされたい。
 (3) 本条約三条は、子どもに関するあらゆる措置を実施するに当たって子どもの最善の利益に考慮を払うことを要求するものであるが、その具体化として、政府が子ども団体及び子どもの権利の向上を目的とするNPO・NGOからのヒアリングを定期的に行うこと、また政府の審議会等で子どもに関する施策の検討を行う場合に子ども団体、子どもの権利の実現を目的とするNPO・NGOからのヒアリングを行うことが必要と考えられるが政府の見解を明らかにされたい。
六 学校における子どもの意見表明権と市民的自由の実現について
 (1) 本条約は「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する」(十二条一項)とし、また「締約国は、学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で及びこの条約に従って運用されることを確保するためのすべての適当な措置をとる」(二十八条二項)としている。これに照らせば法令にもとづく懲戒処分や法令にもとづかない「謹慎」等の実質的な懲戒処分(以下懲戒処分等)に関して、子どもの意見表明権の確保など懲戒処分等に至るまでの手続き規定が本条約の趣旨に沿って法令などによって具体的に規定される必要がある。
     しかし現実には懲戒処分等に至る、いずれの段階においても当該生徒の意見表明・弁明の機会が保障されていないのが通例で子どもの権利が保障されない状況がある。そのため懲戒処分等に関する子どもの手続き的権利を保障するための法改正等の措置や具体化のためのガイドラインの制定が必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
 (2) 初等中等局長通知(「高等学校における政治的教養と政治活動について」一九六九年十月三十一日付)を出した理由及び、子どもの意見表明の権利(十二条)、思想、良心、宗教の自由(十四条)、結社及び平和的集会の自由(十五条)を明文で定めた本条約を批准した現在においても、同通知が必要とされる理由及び本条約との整合性について政府の見解を明らかにされたい。
 (3) 校則の見直しを関係教育機関に通知するに当たり、どのような校則を見直しの対象として例示したのか具体的に明らかにされたい。また髪型・服装・持ち物・校外生活を規制する校則に関して政府はどのような認識を有しているのか明らかにされたい。
七 子どもをめぐる文化状況について
 本条約十七条は子どもにとって有害な情報から子どもを保護することを求めている。日本の子どもをめぐるテレビや雑誌などのメディアの状況は深刻である。国際的に見ても日本ほど、暴力と性をむき出しにした映像や雑誌などに対して子どもたちが無防備でさらされている国はなく、子どもに与える深刻な影響が指摘されている。
 このようなメディアの状況が子どもにどのような影響を与えているのか科学的な調査を行うことが国民的にも政府に求められている。政府は直ちにこのような調査を行うべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。





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