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平成十年六月五日提出
質問第四六号

トラック事業の経営環境とそこで働くトラック労働者の労働条件改善に関する質問主意書

提出者  平賀高成




トラック事業の経営環境とそこで働くトラック労働者の労働条件改善に関する質問主意書


 景気の長期低迷の下で、昨年四月からの消費税の引き上げや今年度からの軽油引取税の暫定税率の五年間延長などによるコスト増は、営業トラック事業(以下「トラック事業」)の経営を悪化させている。特に、このようなコスト増を届出運賃に転嫁できない中小零細トラック業者の経営は深刻な状態となっている。さらに荷主やトラック業界大手による優越的地位の濫用によって、運賃の中から一方的に金額を差し引く「値引き」や「協力金」の強要が常態化し、中小零細トラック事業者の経営を一層苦しめている。また、元請であるトラック業界大手が運賃ダンピングによって中小トラック業者の市場に参入し、これをさらに中小零細トラック業者に運賃を安く下請化させる実態が多くなってきている。
 トラック事業者の経営圧迫が、トラック労働者の労働条件を切り下げ、過労運転、過積載、速度違反などによる事故多発などの大きな原因になっているとの認識は、トラック業界では常識となっている。九六年度のトラック労働者の労働条件を全産業と比較すれば、一時間当たりの時給では、全産業平均が二千三百五十五円に対して、トラック事業を含む陸上貨物運送事業では千八百四十八円と五百円以上の格差があり、労働時間数では全産業平均が二千二百四十四時間に対して、二千五百九十二時間と三百四十八時間も長くなっている。トラック事業の労働災害死亡者数は九六年は三百十三人と、この五年間で五十人も増加、労働省は昨年四月二十五日に「陸上貨物運送事業における労働災害防止の徹底」(労働基準局長指導)を(社)全日本トラック協会など三団体に異例ともいうべき指導を行っている。
 このようなトラック事業の経営環境と労働条件を改善をすることは緊急な課題となっている。以下の事項について質問する。

一 運輸省は九七年六月の「協力金」問題でトラック業界への調査にもとづき、九七年六月十八日付で荷主の事業者団体宛に「トラック事業の取引の正常化に関する協力依頼について」を、(社)全日本トラック協会宛には、「トラック事業における公正取引の確保について」の「通達」を出した。この「通達」が実効性をあげるため、次のような対策が求められている。
 1 トラックの届出運賃の遵守をさせるために、荷主等の一方的な運賃の「値引き」や「協力金」を強要する取引契約はやめさせるべきだ。そのためには政府は、罰則を含めた実効ある具体的な措置を、政府あげて取り組むべきではないのか。
 2 トラック事業者の元請と下請の間や利用運送事業者と実運送事業者であるトラック事業者との間での「値引き」や「協力金」の強要をなくするために、運輸省は同事業を所管する責任官庁として、実効ある対策を緊急に取るべきでないのか。
 3 また、荷主等の優越的地位の濫用による不公正な取引である「値引き」や「協力金」の強要をやめさせ、事業者の届出運賃の遵守の重要性を喚起するためにも、貨物自動車適正化事業機関の指導項目にあった「運賃の割戻はしないか」の項目を復活させるべきではないのか。
二 トラック事業者の圧倒的部分を占める中小零細トラック事業者は、高速料金の相次ぐ値上げをはじめ、昨年四月には消費税率の引き上げ、今年度からは軽油引取税の暫定税率が再び五年間延長などによるコストの増加によって経営が圧迫されている。全日本トラック協会の九五年一月のアンケート調査では、前回の軽油引取税率の税率増加分の運賃への転嫁ができた事業者は一五%にすぎず、多くの中小零細トラック事業者は自己負担を強いられている。
 1 軽油引取税や消費税等の税金や高速料金の引き上げ等によるコスト増加が、どのようにトラック事業者の経営を圧迫しているのか、政府はその実態について調査したことがあるのかどうか。調査しているのであれば、その結果を明らかにされたい。
 2 政府は経営圧迫している税金や公共料金のあり方を見直して、中小零細トラック業者の負担を軽減すべきではないのか。
三 トラック事業者の経営環境が悪化し、トラック労働者の長時間運転による過労運転や無理な運行スケジュールによる速度違反、過積載など労働条件の切り下げや安全性無視が横行している。トラック事業が事故多発業種といわれるのも、同事業の経営環境の悪化が大きな原因であると考えている。そこで、過積載と過労運転防止策について具体的に質問する。
 1 過積載防止対策としてトラック車両に自重計の設置を義務づけるための関係法令等の改正をすべきではないのか。
 2 荷物名やその重量、積み込んだ日時、運送場所名とその着時間予定等を書き込んだ「輸送状」の発行を荷主等(利用運送事業者を含む)に義務づけるべきではないのか。
四 陸上貨物運送事業において、交通労働災害を含めた死亡災害が九二年の二百七十人から四年連続で増加したために、九七年四月二十五日付で労働基準局長名による陸上貨物運送事業労働災害防止協会、(社)全日本トラック協会、日本路線トラック連盟のそれぞれの会長宛に、「陸上貨物運送事業における労働災害防止の徹底について」の指導が行われた。しかし、九八年は若干減ったものの、依然として二百九十人もの高い水準にある。
 1 このようなトラック業者を含む陸上貨物運送事業の事故多発の原因について、(社)全日本トラック協会は、第一に厳しい時間指定、第二に深夜運転の増大、第三に長時間・過労運転、過積載をあげている。政府としては、事故多発の原因を、どのように認識しているのか。
 2 政府はいままで事故多発対策を、どのように行ってきたのか、また、今後はどのような対策を行おうとしているのか、具体的に明らかにされたい。

 右質問する。





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