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平成十年六月十六日提出
質問第五八号

日本共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任所在などに関する第三回質問主意書

提出者  保坂展人




日本共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任所在などに関する第三回質問主意書


 五月六日提出の「日本共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任所在などに関する再質問主意書」(以下、「再質問」とする)に対する同月二十六日付け政府答弁書(以下、「第二回答弁書」とする)には不明、不十分な箇所があるほか、質問に答弁していない部分もあるので、以下第三回質問をする。組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案については、通信や財産の秘密を捜査機関に合法的に捕捉させる条項が盛り込まれている。これまでの歴史を踏まえて日本の捜査機関にこうした基本的人権にかかわる秘密を捕捉させて大丈夫なのか、恣意的に運用されないか、逸脱した運用がないかなどの点が最大の問題点となっているので、一部新たな質問も加えた。

一 共産党幹部宅盗聴事件の事実認定
 (1) 第二回答弁書「一の(1)について」によると、東京地検検察官は共産党幹部宅盗聴事件で不起訴となった警察官二人に「盗聴を指示したり、その承認を与えた者が存在したと認めるに足りる証拠はないと判断している」としながら、「被疑者両名は、その地位等に照らして本件の首謀者ないし責任者的立場にあったとは認め難い」「両名以外に本件犯行を実行し、又はこれに加功した者を認めるに足りる証拠はない」(三月二十七日付け政府答弁書「一の(4)について」、第二回答弁書「一の(2)について」)と判断している。こうした判断は二人以外に「首謀者」とか「責任的立場」にあった者は特定できなかったが、いずれにしても警察官二人は盗聴という警察による組織的犯罪の末端で実行行為に関与したにすぎないから、起訴猶予としたということか。「はい」「いいえ」で答弁されたい。
 (2) (1)で「はい」と答弁された場合、検察による警察の組織的犯罪の追及は困難ということか。
     また、こうした警察の組織的犯罪が将来反復継続しないように、検察としてどのような措置を講じたか。
 (3) (1)で「いいえ」と答弁された場合、どの部分がどういう根拠で違うというのか、具体的に説明されたい。三月二十七日付け政府答弁書、第二回答弁書の訂正があれば、併せて言及されたい。
 (4) 元検事総長の故伊藤栄樹氏は回想録「秋霜烈日」で、「わが国でも、かりに警察や自衛隊という大きな実力部隊をもつ組織が組織的な犯罪を犯したような場合に、検察は、これと対決して、犯罪処罰の目的を果たすことができるかどうか、怪しいとしなければならない」と書いているが、現在の検察は大丈夫か。「大丈夫」と言うなら、その理由と根拠を述べられたい。
 (5) 第二回答弁書「一の(2)について」で「両名以外に本件犯行を実行し、又はこれに加功した者を認めるに足りる証拠はない」とあるが、関与した東京地検の捜査官全員は十分な捜査が尽くされたと認識しているか。途中で捜査が打ち切られ、十分な犯罪処罰の目的を果たせなかったと忸怩たる思いの捜査官がいるのではないか。
 (6) 第二回答弁書「一の(3)について」に記載されている神奈川県警本部長による書面について、事実認定と責任の所在に関する要旨を明らかにされたい。また、共産党幹部宅盗聴事件の関係者に対する「相応の懲戒処分」の内容を示されたい。
 (7) 第二回答弁書「一の(4)について」「二の(1)について」に記載されている警察庁警備局長通達について、事実認定と責任の所在に関する要旨を明らかにされたい。
二 責任の所在
 (1) 第二回答弁書「二の(1)について」によれば、警備局長通達以後十年余にわたり、適正な職務執行に努め、今後「違法な傍受が行われることはないと確信している」と強調されているが、共産党幹部宅盗聴事件以後に違法な傍受があったことや今後、違法な傍受がなされたことが発覚した場合、警察当局と法務、検察当局は明確に責任を取るということか。
 (2) 再質問では「『我が国の行政機関においては、違法な傍受は行われていない』と断言しているが、根拠は何か」とただしたのに、第二回答弁書では「根拠」について答弁がない。答弁されたい。
 (3) 五月二十日の法務委員会で、警察庁の伊達警備局長は「警察官による盗聴行為」があったことを認め、その「反省」を踏まえて厳しく戒めると発言したが、「盗聴行為」や「反省」という言葉を使って共産党幹部宅盗聴事件の事実認定と責任の所在について明らかにしたのはこれが初めてか。
     初めてとすれば、なぜこれまでは、こうした発言ができなかったのか。
 (4) 共産党幹部宅盗聴事件で起訴猶予となった警察官二人は現在、どのような職務を担当しているか。
三 令状請求手続き
 (1) 第二回答弁書「三の(1)について」によると、令状請求時に提出した疎明資料を事後に改変すれば、懲戒処分や刑事罰の対象となるが、過去にこうした事例で懲戒処分や刑事罰を科せられた事例を明らかにされたい。
 (2) 第二回答弁書「三の(2)について」によると、逮捕状、差押・捜索許可状又は検証許可状について請求後に「その要件が欠けることが判明したこと」によって請求を取り下げたケースがあると答えているが、こうした場合、逮捕、差し押さえなどの要件を十分に精査しなかった捜査員に対してどのような懲戒処分がなされるか。過去の懲戒事例を明らかにされたい。
 (3) 令状請求時の疎明資料は適正手続きを担保するため、裁判所に残しておくべきと考えるが、どうか。
四「警察が狙撃された日」
 (1) 三一書房から出版された「警察が狙撃された日」によると、共産党幹部宅盗聴事件は公安警察の中核とされる「チヨダ」(事件当時は「サクラ」)による組織的犯罪と指摘されているが、「チヨダ」の概要、予算措置、国会に対する報告の経緯などを明らかにされたい。
 (2) 同書によると、「チヨダ」は警察庁警備局警備企画課の裏理事官に率いられているというが、警備企画課の人員、予算を明らかにされたい。また、「チヨダ」はスパイの獲得工作、尾行、盗聴技術などの研修を行っているというが、その費用は国費か。また、こうした研修はいかなる法律に基づいてなされているのか。
 (3) 同書の出版をめぐり、警視庁が著者割り出しのために三一書房の取引銀行に捜査照会した事実はあるか。あるとすれば、いかなる法的根拠によるものか。また、こうした出版社と著者に対する圧力が平然と行われるようなら、共産党幹部宅盗聴事件以後、違法な捜査はないとする政府答弁に強い疑念を持たざるを得ないが、どうか。

 右質問する。





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