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平成十年十二月十一日提出
質問第四号

旧国鉄債務のJR各社強制負担問題に関する質問主意書

提出者  坂上富男




旧国鉄債務のJR各社強制負担問題に関する質問主意書


 質問者は、先に二回にわたりJR各社強制負担問題について、憲法第二十九条の憲法違反である旨の質問をしたのに対し、政府は、合憲であると答弁し先国会で、JR各社負担の、「日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律」が成立した。よって以下について質問する。

一 JR各社の負担についての態度と、これからの見通しについて。
二 JR各社の負担金額を各社別に明示されたい。これが遅延損害金の利率と起算点及び、支払日について。
三 請求権者(訴訟提起の場合は原告)は、誰か。
四 旧国鉄職員であってJR社員となった者の年金給付に係る日本鉄道共済組合の移換金については、平成八年の「厚生年金保険法等の一部を改正する法律」(厚生年金保険法等一部改正法)によって、国鉄改革前組合員期間を計算の基礎として算定された額は事業団の負担とし、国鉄改革後組合員期間を計算の基礎として算定された額はJRの負担とすることで整理された経緯が存する。しかして、この平成八年の厚生年金保険法等一部改正による整理は、JRが国鉄改革に伴って設立された民間企業たる新企業体であり、更にJR社員はJR設立の際に新規に採用されたことに伴う確定的立法措置であり、このことは、既に平成五年の時点でJR東日本の株式上場に際して公にされた目論見書においても予定されていたところである。しかるに、今次の「日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律」(今次法)は、既に「厚生年金保険法等一部改正法」によって決着済みの事柄を一方的に反故にし、事業団が日本鉄道共済組合に負担する債務の一部をJRに付け替えると言うものである。ところで、答弁書によれば、政府は「負担を(中略)JRに求めることは(中略)公共の福祉の実現のために合理的な範囲内のものであり、憲法第二十九条第一項の財産権の侵害に当たらないものと考える」と憲法第二十九条第二項を根拠にJRの追加負担を正当化しているが、一般国民の負担を減少させるため特定の民間企業に事業団の債務(すなわち実質的に国の債務)を負担させるという事は、憲法第二十九条第二項により認め得る財産権の制約とは言えないし、しかもこれに対する補償を行わないと言うのは明らかに憲法第二十九条第三項に反するものなのである。
  佐藤功「ポケット註釈全書憲法(上)〔新版〕」有斐閣では、「憲法第二十九条第二項は財産権の内容を公共の福祉に適合するように法律で制限しうることを定めたものではあるが、それは何らかの財産権の内容を法律により一般的に定めうることの根拠を示したものであり、特定の者に現に属する財産権に対する制限を許す根拠とはなりえず、また、特定の者の財産権を剥奪することを許す根拠ともなりえない。そこで特定の者の財産権を公共のために制限したり剥奪したりする必要があるとすれば、その場合の根拠を別に定めなければならず、それが本項の規定である。すなわち、本項は、右のような場合に、個人の財産権すなわち私益と公共の必要すなわち公益とを調節するための制度として、また他の者との衡平を維持するための制度として、国が公共の必要のための個人の財産を用いるには無償で没収することは許されず、「正当な補償」を与えなければならないとするものである」とされているのである。学説通説は、ほぼ同じ趣旨であると思われる。本件は、憲法第二十九条各項いずれにも、違反する憲法違反と思料されるが如何。
五 また答弁書は、日本鉄道共済組合における給付財源の不足について他の被用者年金制度から支援が行われていることをも指摘するが、他の被用者年金制度からの支援は、国に認められる裁量権の範囲において財政上の措置を講ずるに過ぎず、その不足分(清算事業団の債務)を民間企業に強制的に負担させる事とは本質を異にするから、他の被用者年金制度から日本鉄道共済組合における給付財源の不足に対する支援が行われるという事をもって、憲法第二十九条の合理性を理由付けることとはならないのである。よってこれが合理性の範囲内であるとの主張は誤りである。如何。
六 政府は事業団に残る資産等が乏しくなり事業団における資産等による債務等の処理が困難となった事態に対処して、当該債務等の抜本的な処理方策を早期に策定し実施することが緊急の課題となったことに鑑み、平成八年十二月に、平成十年度より事業団の債務等の抜本的な処理を実施することを閣議決定し、さらに平成九年十二月の閣議決定において、昭和六三年一月の閣議決定にいう「本格的な処理」として、事業団の整理を前提とした上、事業団の債務等の抜本的な処理方策を初めて策定するに至ったという。
  しかしながら、事業団に残る資産等が乏しくなり、事業団における資産等による債務等の処理が困難となったと言う事態は、旧国鉄職員であってJR社員となった者に係る年金給付に係る日本鉄道共済組合の移換金について「厚生年金保険法等一部改正法」による整理が行われた当時、既に存在していたのである。
  そうすると今般の事業団の整理と言う事情が生じたことによって、既に「厚生年金保険法等一部改正法」により整理確定された権利を一方的に変更する立法には違憲性を否定し得ないものがある。
  要するに事業団の債務は実質的に国の債務であり、事業団の整理を行うか否かにかかわらず、事業団の債務の償還、弁済等が国の責任においてなされるべきことは否定し得ないのであるから、事業団の整理と言う事情の発生によって事情変更による合憲性が保持できることとはならない。最高裁判例と本件は実質的に前提を異にするものである。この点についての見解は、如何。
七 答弁書で政府は、「今般の措置と平成八年の措置とでは(中略)、事業団の整理を前提としているか否かという点において、その事情を異にするものであり、したがって、このような事情の変更が生じた状況の下で(中略)、新たに今般の措置を講ずることとしても、憲法第二十九条第一項及び第二項の規定との関係で問題が生じることはない」と答弁しているが、事業団が解散しないで、存続したままJR各社への追加負担をする事は憲法に違反するものと理解してよいか。如何。
八 事業団の解散は国が一方的にその裁量で決定した事で、JRの関与する余地はなかったのである。このような国が一方的に裁量できめれば、それまで憲法上問題があり、あるいは憲法違反であったものが、合憲になると言うことは、国の勝手がまかり通る事になり憲法上の財産権の保障は、無意味になるのではないか。民法第一条第三項(権利ノ濫用ハ之ヲ許サス)の権利濫用ではないか。又、民法第一二八条(条件付き権利の侵害の禁止)にも該当し無効であると思料されるが如何。
九 JR各社で、これが負担を拒否するには、正当の理由があると確信するものであるが、政府とJR各社と話し合いが成立しなかった場合は、訴訟提起によって、負担の履行を求めるのか、求めるとすれば、何時を予定しているのか。訴訟は避けるべきであると思うが如何。

 右質問する。





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