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平成十年十二月十四日提出
質問第七号

クロイツフェルト・ヤコブ病問題に関する質問主意書

提出者  中川智子




クロイツフェルト・ヤコブ病問題に関する質問主意書


 病気を治すために受けた治療や手術によって、新たな、それも人を死に至らしめるほどの深刻な病気を引き起こすことがあることは、サリドマイド、スモン、クロロキン、ソリブジン等々の薬害の歴史が証明している。
 人の死体から作った「ライオデュラ」というヒト乾燥硬膜の移植により感染したクロイツフェルト・ヤコブ病もまた悲惨な薬害である。
 厚生省は、一九九七年三月二十八日にヒト乾燥硬膜の使用禁止、回収の緊急命令を出した。しかし、その十年前の一九八七年二月に米国疾病対策センター(以下「CDC」という)は、ヒト乾燥硬膜の移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病に関する世界で最初の症例をCDCの週報(以下『MMWR』という)で報告している。そしてその二ヵ月後の四月に米国食品医薬品局(以下「FDA」という)は米国の医療機関に警告を出し、CDCが『MMWR』の六月号にFDAが警告を出したことを載せている。
 一九九八年四月二日提出質問第二十二号の寺前巖議員のヤコブ病問題に関する質問主意書で、厚生省の関係者がCDC報告等を知っていたかという趣旨の質問に対し、その答弁書で、「厚生省の保健医療局において疾病対策を担当していた職員及び感染症対策を担当していた職員並びに薬務局において医療用具の審査を担当していた職員及び安全対策を担当していた職員に対する調査を行ったが、当該職員の中で当時何らかの認識を有していた者は確認されていない」と答えている。もし危険性の認識がなかったことが事実であるなら、繰り返された薬害への反省と教訓は全くいかされなかったどころか、今後も薬害発生の可能性がありうることになる。
 クロイツフェルト・ヤコブ病患者感染者、そして家族の方々の苦悩を考えると、一九九七年まで何ら対策をとらなかった厚生省の責任の所在は明らかにされるべきであると考える。
 従って、次の事項について質問する。

一 一九九八年九月二十五日の朝日新聞によると「米国政府が一九八七年四月二十八日付けで米国内の医療機関に廃棄を求める安全警告を出してから、九年余りもたって、厚生省は警告の有無を米国側に照会していた」とあるが、事実か。また米国以外に照会したことがあるか。
二 「照会文書は、一九九六年七月十日付で当時の厚生省薬務局医薬品適正使用推進室長名でFDA医療具.放射線保健センター(以下「CDRH」という)に「緊急課題」としてファックスされた」とあるが、事実か。
三 「CDC週報や米国医学雑誌が関係課に送付され、講読していたようだが、職員が情報を認識したことは確認されていない」とあるが、CDC週報『MMWR』や米国医学会雑誌『JAMA』、『JAMA〈日本語版〉』、『臨床とウイルス』、国立予防衛生研究所の月報『病原微生物検出情報』のそれぞれが、硬膜移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病発生の情報を掲載している。医療行政、感染症対策にかかわる者がこれらを講読して情報を認識していないということは考えられないが、どうか。
  それぞれの紹介者が厚生省と何らかの関係があったか、それとも全く無かったかどうか。関係があればどのような関係か。
  また、『病原微生物検出情報』は、国立予防衛生研究所と厚生省のエイズ結核感染症課が発行者になっているというのは事実か。
四 「CDRHが英国保健省に英国側の対応をただした電話記録によると、英国保健省はCDC週報の最初の症例報告で調査を開始し、FDA安全警告を紹介した週報を受けて二ヵ月足らずの一九八九年三月十七日に自国の安全警告を出している」という事実を、厚生省は知っているか。
五 一九九七年九月二十二日に大津地裁に新たに提出した準備書面で、国は「世界で一例のみの報告がされた時点では、ヒト乾燥硬膜をクロイツフェルト・ヤコブ病との関係が予見可能であったとすることは適当でなく」とし、責任を回避しているが、英国保健省のように最初の症例報告でいち早く処置をとっていれば被害の拡大を防げたはずだが、厚生省は責任を感じないのか。
六 FDAが情報公開した厚生省からの照会文書を、厚生省が非公開としているのは事実か。
七 平成十年十二月七日付厚生省大臣官房総務課行政相談室からの回答で、非公開の理由として「他国への照会、他国企業への照会及びその回答については、公開することにより関係国等に不当に不利益を与えるおそれや、直接不利益を与えなくても、公開することで、関係国等がわが国に寄せる信頼を傷つけ我が国と関係国等との関係に悪影響を及ぼすおそれが考えられること。当該文書は、現在国等を被告とする民事訴訟において係属中の件に係る文書であり、民事訴訟への影響を考えると非公開とすることが適当であると考えられること」としている。
  1 ここでいう「関係国等に不当に不利益を与えるおそれ」とは具体的にどういうことを指すのか。
  2 公開することで、「関係国等がわが国に寄せる信頼を傷つけ我が国と関係国等との関係に悪影響を及ぼすおそれが考えられる」としているが、FDAがすでに出している情報を、厚生省が改めて出すことでわが国に対して信頼を傷つけるとは到底考えられないが、どうか。また、情報を出さないことで、薬害を繰り返した厚生省に対する国民からの信頼をますます傷つける可能性があることについてどう考えるか。
  3 「現在国等を被告とする民事訴訟において係属中の件に係る文書であり、民事訴訟への影響を考えると非公開とすることが適当」としているが、公開することでどのような影響が考えられるか。
    また、情報を隠したことで、被害を拡大させ、解決を遅らせた薬害エイズを教訓にし、情報を速やかに公開すべきと考えるが、どうか。当時の菅厚生大臣が隠された情報を公開したのは訴訟の係属中ではなかったのか。

 右質問する。





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