衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十一年八月十一日提出
質問第四六号

沖縄県における旧日本軍による強制接収用地に関する質問主意書

提出者  上原康助




沖縄県における旧日本軍による強制接収用地に関する質問主意書


 旧日本軍が太平洋戦争遂行のため沖縄県民の土地を強制接収した、現嘉手納飛行場の一部(面積十四万五千坪)と、読谷補助飛行場(面積八十万六千坪)に関する件について質問する。
 まず、嘉手納飛行場の一部と、読谷補助飛行場の強制接収の概要は、太平洋戦争が敗色濃厚となった頃、沖縄派遣第三二軍により沖縄防衛戦略上、航空戦力強化のためと称し、沖縄本島の北谷村(嘉手納含む)、読谷村、浦添村(市)、西原村(町)等で強制接収され、飛行場建設が同時並行的に突貫工事で強行された。
 「嘉手納、読谷」以外の強制接収された飛行場は、米軍政下時代に旧地主の要求、要望に添ってすでに返還済みである。
 ところが、旧日本軍に最も強権的に先祖代々の大事な土地を有無を言わさない形で接収され、敗戦で米軍に占領され、復帰後もその形態に何ら変更なしに今日まで約六十年近く軍事基地として継続使用されてきているのが、「嘉手納および読谷補助飛行場」である。
 強制接収された両飛行場の所有権確認についての解決手段、方法は、違った経緯をたどってきているが、旧日本軍に強制接収された事実は同根である。
 確かに、嘉手納飛行場の一部については、所有権をめぐっては司法上も決着がついたかのようになっているが、旧地主の方々が民法上の売買契約はなされなかった、地代は受領しなかったと主張している以上、民事上の争点の余地はあると推定できるし、何よりも、戦争遂行目的で強制的に国民の土地を接収した国家(政府)の政治的、道義的責任を免れるものではない。
 そこで、次の事項について政府の回答を求める。

一 政府が、両飛行場を旧地主の要求どおりの処理をせず、国有地として扱っている理由に、両土地とも当時「法律上の手続きを経て接収した」ものだとの見解に立っている。国が、もし法的瑕疵がなかったというのであれば、それを裏付けるすべての証拠資料を改めて明らかにすべきである。
  大蔵省が昭和五三年四月一七日に明らかにした調査報告書では、納得がいかない。
二 旧日本軍によって、土地を強制接収された旧地主の、@氏名、性別及び生年月日、A本籍及び現住所、B地目及び地番、C筆数及び面積、D接収の時期、E接収目的及びその方法、F特に売買契約の有無、G土地代、補償金等の支払の有無、H支払方法及びその手続きの内容、I土地を接収した担当部隊、その責任者の階級及び氏名等を明確にすること。
三 政府は、正当な対価を旧地主に支払ったと主張してきたが故に、接収後五六年乃至五七年余が経過しているので「二」の証拠提示は困難だと強弁するだろうが、旧地主の方々は、政府がこれまでに提示した資料や説明に全く納得せず、「怨念の土地」だとして、いまなお、原則旧地主への返還を強く求め続けている。この地主の心情を政府はどう考えるか。
四 読谷補助飛行場の場合は、司法上の対抗措置を採らずに返還、もしくは返還予定地となっていることから、読谷村が策定した「返還跡地転用計画」に基づく戦後処理として、その解決策を求めてきている。しかし、いまだに具体的な解決の方策は提示されておらず、黙認耕作地の扱いを含め政府はこの点どう考えるか。
五 沖縄本島の土地問題解決の困難さ、複雑さは、沖縄戦において土地に関する諸帳簿類がすべて焼失してしまったこと、また敗戦後も米軍占領下での混乱した社会状況下で充分な所有権認定のための調査がなされずに、これらの土地は米軍管理下におかれ、復帰に際しても、形式的な手続きで国有地に認定されたものに外ならない。政府は、是非再検討頂きたい。沖縄戦末期の国民総動員体制下で、旧日本軍部に絶対服従以外に選択の余地のなかった「嘉手納、読谷」両飛行場の旧地主の方々が、どんな想いで肥沃な農地を旧日本軍に接収されたかを。
  祖国の勝利と戦争に勝てば土地は返還されると信じて、旧日本軍に最も忠実、献身的に国家のためという熱い想いで、土地を手放さざるを得なかった旧地主の方々の当時の心境を理解してもらえる政治家、行政マンがいないことを情けなく思う。
  これら、旧日本軍に土地を強制収用された地主は、戦時中、そして戦後の米軍占領時から今日まで、「日米両国」から土地代もなく、塗炭の苦しみと幾多の犠牲に堪えながら他界した地主も多く、高齢になった旧地主の方々は、この「怨念の土地」問題の一日も早い解決を望んでいるのである。こんな無慈悲な仕打ちは絶対に容認できない。
  嘉手納旧飛行場権利獲得期成会並びに嘉手納町当局(町長)からの重ねての要請によると、一連の訴訟を通じて明らかになった事実もあり、この土地が国有地になったことに異論があると強く訴えている。
  政府は即刻、沖縄戦前後に係わる諸資料の再調査、蒐集、整理に着手し、その中で「嘉手納、読谷」両飛行場の未解決の土地問題を戦後処理の最重要課題の一つとして、旧地主の方々や、関係団体等が納得できる解決策のため、政治的大英断をなすべきである。戦後の混乱期における「聞き取り、類推等」による一方的調査結果のみで処理すべき案件では断じてありえない。
  二十世紀に起きた沖縄の戦後処理を二十一世紀まで、決して持ち越すべきでない。それこそが、日本政府がいまなおなすべき沖縄に対する道義的、政治的責務だと考える。この点についても、政府の見解を問う。

 右質問する。





経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.