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答弁本文情報

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昭和二十三年五月六日
答弁第六号
(質問の 六)

  衆甲第二三号
     昭和二十三年五月六日
内閣総理大臣 芦田 均

         衆議院議長 松岡駒吉 殿

衆議院議員井出一太(注)君提出林政一般に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員井出一太(注)君提出林政一般に関する質問に対する答弁書



一、農地改革の進行につれて、山林についても同様な措置がとられるのではないかというような懸念から、造林意欲が低下し幼令林の伐採が行われているのは遺憾ながら事実であり、政府としてもこれに対しては前内閣以來あるいは新聞であるいは議会において度々発表しているように山林の特殊性に鑑み、山林自体を農地改革と同様な方式で開放するということは全然考えていない。この点については今後機会あるごとに発表して造林意欲の向上につとめたい。

二、杭木、薪炭材の原材確保のため、林野の全面的國家管理説が流布されているとのことであるが、これは全くの流説であり、前号の問題と連関をもつているものと考えられるが、当局としてはかかる考は全くない。

三、林業の適正規模が農地とはその性格を異にし、より大面積な規模においてその優越性を示すことは御説の通りであつて、現在の所有形態を分割し、これをより零細化するようなことは林業生産力高度化の見地からは全然考えられないと思う。現在において林地は相当に零細化しており、大経営の利を攝取するためにはどうしてもそこに協同組合による協同作業が必要であり、森林組合が組織されている所以もそこにあるのであつて、今後とも森林組合の如き協同組合組織より大経営の利をとつて生産力の発展をはかりたい。

四、現在の如きインフレ昂進期において造林を單なる経済合理主義にのみ委ねておくことは、その資本の回轉率の長期なることに鑑み非常に無理であり、当局としてもでき得る限りの保護助成をはかりたいのであるが、國家財政窮乏の折柄、意の如くならないのは誠に遺憾である。しかしこの乏しき財源を以て造林單價の引上(約五倍平均一町歩八三八〇円)をはかつたが、それとともに山林所有者の造林意欲の向上により造林の促進につとめたいと念願している。
  その具体策としては、造林五箇年計画により昭和二十三年から二十七年まで約一九三万町歩の造林をする計画であるが、昭和二十三年度約三十八万町歩を予定している。

五、苗圃の拡張は必要であるので、造林計画に應じた必要面積をそれぞれ各都道府縣に割り当て、食用作物の作付との調整の下に既耕地えも拡張させる方針である。この際苗圃地には食糧供出の義務はない。なお、苗圃経営の特殊性に鑑み、既耕地以外の土地をあらたに開墾し、苗圃としたものは自作農創設特別措置法に規定する制限を超えて所有することを認めて拡張を容易ならしめた。なお、民有林造林用苗木の需給を調整するために、國営を以て二十二年度は約一億五千万本、二十三年度は二億一千万本の苗木の養成を行つている。苗木の無償交付は今のところ考えていない。

六、伐採跡地の造林について法的強制力をもたせることは諸般の事情を考慮して決定したい。したがつてこのため造林法というが如き單行法を制定するか、森林法に所要の改正をするか否かもまだ決定していない。もし法的強制力をもたせるとすれば当然相当額の財的裏付乃至食糧的措置を必要とすると思う。

七、山林の伐採所得に対する再造林費の控除については、現在の如きインフレーシヨンの段階において山林の伐採所得が再造林費を償わない現状から、造林の必要性に鑑み当局としても山林の伐採所得に対する所得税の財源にあたつては、経費を控除するのでなく、再造林費を控除するよう努めたのであるが、これは所得税体系全般にわたる問題であり、現在の所得税体系では困難ではないかと思われる。

八、農家の自家用薪炭林、放牧地、採草地の利用権あるいはその開放については、御説の如く林地と関係するところ極めて多く、林業関係者の意見をきく必要があるので、森林組合の意見を反映させ、あるいは薪炭林等委員会の構成員として森林組合の代表者をいれる等の措置をとつているので、この点なお末端まで徹底するように努力したい。

九、未墾地開拓がその進展とともに各地において種々の紛爭をおこしていることは遺憾ながら事実である。これに対しては國土の綜合的利用という見地から、農林畜の調整をはかることに閣議決定をみたので、この閣議決定の線にそつて、林地については林業関係者の意思が開拓適地の選定にあたつて充分反映するように措置している。

十、國有林の偏在に関しては、御説のように一地方に偏在していることは事実である。國有林を、特殊な歴史的沿革的事情を有し且つ経済的にも理由ある地方には開放せよということであるが、現在國有林はあるいは地元施設(委託林、部分林等)としてはあるいは農地又は放牧地、採草地として、可能な限り開放して、それは全面積の六二%に及んでいる。今後とも地元の要望にこたえてでき得る限り開放したい。しかし國有林の立地的な地方的な偏在を、今後全國的に均衡を得た分布にすることは、國有林の保安的使命に鑑み考えられることであるが、現在その用意はない。

十一、奥地林分の開発のため林道施設に対しては、民有林の奥地林九十五万町歩蓄積三億六千万石を対象として、昭和二十一年以降十年間一七、四一七粁の計画を樹て、二十三年度は一、七四二粁六億七千万円の予算を要求しているが、現在の見透しは一億四千四百五十万円程度なので、現在復活要求中である。

十二、民有林の計画施業は絶体必要であるので、そのにない手として森林組合は今後とも育成強化してゆくつもりであるが、森林組合の組織、運営については今後の産業全体のあり方と関連するところが多いので、その点も充分考えて善処したい。しかし現在は森林法を改正して森林組合を改組する考はない。

十三、林業については、その資金の固定が長期にわたる等のため、特殊の金融機関が必要なことはいうをまたないところで、その成立につき研究中である。農村復興金庫については、目下関係方面と接衝中で、これが設立については林業方面においても大いに関心をもち、その急速な実現を希求している。

十四、林業会法制定時と今日とではその社会的、経済的基盤が変化したため、林業会が当初意図した事業の主要なものを行い得なくなつたことは事実であり、又日本林業会が昭和二十二年安本訓令第三号に基く指定團体として解体一歩手前にあることもお説の通りである。そこで政府としては、地方林業会についてもその成立の経緯に鑑み、同法に基く特別法人としての重要性が失われたことを認め、その開散については、地方林業会の意思にまかせようと考えている。そうなれば林業会法は当然改正をみるわけで、そのあとにくる林業團体に関する法制は森林法に基く森林組合と林業会法に基く林産組合のみとし、その提携協力については、これら團体の任意の意向に基づくものとしたい意向である。




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