答弁本文情報
昭和二十四年四月二十七日答弁第一一号
(質問の 一一)
衆甲第二〇号
昭和二十四年四月二十七日
内閣総理大臣 吉田 茂
衆議院議長 ※(注)原喜重※(注) 殿
衆議院議員今野武雄君提出法※(注)寺國宝保存に関する質問に対する別紙答弁書を送付する。
衆議院議員今野武雄君提出法※(注)寺國宝保存に関する質問に対する答弁書
一 工事事務所長及び主任技師が博物館と兼任をしていた事情は、前任所長退職後古代建築についての專門家を得ることがきわめて困難であつて、他に適任者がなかつたため、やむを得ない措置であつたのである。
二(イ) 法※(注)寺火災調査会は火災の責任及び原因の二点について調査したのであつて、その結果は次の通りである。
1 火災の責任
本事件は、他の國宝とは本質的に異つた重大性があるから、これについての責任は單に事務的行政的な責任では解決されない。
國宝保存に関する事務的な責任は、補助金の交付に伴う監督上の責任であつて、本件のごとき場合に直ちに事務的責任を負うものとは考えられないが、本件は公務員が法※(注)寺國宝保存事業部の職員を兼ねていたのであるから、法規的には疑問はあるが、なんらかの責任はまぬかれない。
2 火災の原因
火災の原因は電氣ざぶとんにあると推定する。(理由略)
(ロ)奈良地檢で目下調査中と聞いているが、未だ確実なる回答は受けていない。
三(イ) 火災直後、対策協議会を開催して應急処理を決定し、文部省より應急対策費五〇〇万円の補助を受けたほか、目下燒失した壁画の模写の補写及び五重の塔の工事を鋭意進めている。
(ロ) 三月三十一日附をもつて國立博物館乾技師を所長事務取扱に命じ、現地に派遣している。後任所長については目下鋭意交渉中であるが、まだその人を得るに至らない。
(ハ) 所長の任命は、法※(注)寺國宝保存事業部長の責任であるが、その候補者の選考には関係專門家の意見を徴して行つている。
四((イ)(ロ)) 目下國会で研究されている文化財保存委員会が成立の見込でもあるから、その様子によつて決定されると考えている。
五、金堂火災直後應急処置費として國庫から五百万円を法※(注)寺に補助しているが、右支出についてはおおよそ左記の通りであるが、未だ決算未了のため、正確にいたしかねることを御了知願いたい。
記
一、燒 跡 整 理 費 三四〇、〇〇〇円
二、素屋根建設工事費 一、九六七、〇二〇円
三、壁画應急手当費 一、〇四五、〇〇〇円
四、壁画及び金堂破損状況記録撮影費 一、二八〇、〇〇〇円
五、消火関係謝礼等臨時経費 二三〇、〇〇〇円
六、金堂復旧対策協議会費 一四〇、〇〇〇円
(旅費を含む)
備考
工 事 費 約百分の九二・六
その他の経費 約百分の七・四
(旅費を含む)
六、世論の要点は、制度改善の問題と國庫補助金の増加の関係にあると考えるが、この二点については國宝保存関係の諸問題についての國会における論議に基いて今後あらゆる観点より努力したいと考えている。
右答弁する。