答弁本文情報
昭和二十四年五月二十七日答弁第二九号
内閣衆甲第四三号
昭和二十四年五月二十七日
衆議院議長 ※(注)原喜重※(注) 殿
衆議院議員高橋清治※(注)君提出宮城縣栗原郡岩ヶ崎町における百日咳ワクチン※(注)事件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員高橋清治※(注)君提出宮城縣栗原郡岩ヶ崎町における百日咳ワクチン※(注)事件に関する質問に対する答弁書
一 責任の所在に関する調査について
今回の事件の責任を明らかにするには、この事故が発生するに至つたてん末が明らかにされなければならない。
しかるに現在までのところ注射によつて結核菌を接種したという事実のほかには結核菌がどこから出て、どういう経路で注射されたかが全く不明である。ただ調査によつて知り得た事実から幾多の可能性が考えられるので、そのすべての可能性についてあらゆる角度から学理的、実驗的の根拠をうるように調査及び実驗を行つている。即ち、宮城縣当局は縣議会、縣衞生審議会並びに熊谷教授を始めとする抗酸菌病研究所及び東北大学の專門家の協力を得て特別調査委員会を設け、一方厚生省及び予防衞生研究所は積極的に協力して、現在各種の実驗を続行中である。なお、宮城檢察廳もこれが調査を開始したので、近い將來に原因究明に関し何らかの結論が得られるものと期待している。それによつて責任の所在もおのずから明確となる。
患者の治療については熊谷教授外、抗酸菌病研究所職員が自らこれを担当し、又連合軍総司令部公衆衞生福祉部の厚意によつて、所要量のストレプトマイシンの配付を受け、わが國の現況下において最善の治療を行つている。患者家族の御心労と経済的負担に対しては誠に御同情に堪えないので、差当り、患者の治療及び家族の生活援護についてはできる限りの努力を盡し、生活保護法の適用については充分の保護の目的を達しうるよう関係機関にも指示して、その萬全を期しておる。
國家賠償法の適用は公務員の故意過失によることが判明しない限りできないので、責任の所在の判明を待つて処置したい。