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答弁本文情報

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昭和二十四年十一月四日
答弁第二号
(質問の 二)

  内閣衆甲第六三号
     昭和二十四年十一月四日
内閣総理大臣 吉田 茂

         衆議院議長 (注)原喜重(注) 殿

衆議院議員(注)田甚太(注)君提出電力問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員(注)田甚太(注)君提出電力問題に関する質問に対する答弁書



 電力は、終戰後あらゆる産業が戰前の水準に達せず低迷している中にあつて、最も速かにその生産を恢復した産業であつて、昭和二十三年度においては豊水にも惠まれた結果三百四十億キロワツト時(発電所における電力量)という過去の最高記録である昭和十八年度に匹敵する発電をみたのである。昭和一五年以降の発電量及び水火力最高発電実績は別表第一及び第二の如くである。
 本年度においては水力は過去七箇年平均とし、火力は石炭四百六十五万瓲を消費することとして年間三百二十五億キロワツト時(対昨年度計画比一〇五パーセント)の発電を行う計画であるが、年度当初以来比較的豊水であつたため、毎月平均以上の発電を行い、第一・四半期一一〇パーセント、第二・四半期一〇六パーセントの実績をあげている。十月以降についても別表第二表に示す如く計画量に対し日量の一割余を上廻わる電力量を送り、最大電力についてもその最大限の六パーセントを上廻わる発電を行つている。
 しかるに何故に停電が起るのであろうか、現在停電は関東、関西(中部を含む)東北、九州、北海道に起つているが、関東地区の例をとつて説明すると、夏時刻中には日照時間が長いため別表第三に示す如く、午後八時から九時に尖頭負荷がかかり、九六万七千キロワツト(日発配電間需給地点の電力)となつている。この時には全く停電を行つていない。これに対し、十月十四日の例をとると、夏時刻の終了、日照時間の短縮の結果、午後四時頃から負荷が増大し、午後六時から七時にかけて最大となり、この時が一〇四万六千キロワツトであつて、しかも約六万キロワツトの遮断を余儀なくされている。この理由は夏時刻中分散して、負荷のかかつていた、退勤時刻の電車、家庭の電灯、電熱、それに残業中の工場が同時に電力を使用するために、需給の均衡が失したことと、風のため一部火力発電所が故障し出力が低下した結果、やむを得ず緊急遮断を余儀なくされたものであつて、全くやむを得ないものである。
 しかしながら夕食時の停電は国民生活上、極力これを避けなければならないので、政府は電気事業者をして、尖頭負荷時に火力発電所を最大に運転せしめるとともに、故障発電所の急速な補修、復旧を行わしめることとしたが、現状においてはそれだけでは停電の確実な回避を保証できないので、電力は「晝は工場へ、夜は家庭へ」の方針の下に需給の調節を行うこととし、別紙の方針によつてこれが万全を期することとなつた次第である。
 なお、電力の産業用及び家庭用業務用への地域別配分計画は経済安定本部の行つているところであるが、その計画及び実績は別表第四の通りである。

 右答弁する。


第一表、第二表


第三表、第四表、第五表


第六表
 最近並に今後渇水期をひかえての初夜緊急遮断を防止するため左の措置をとる。


一、初夜の尖頭負荷時刻の供給力を確保するため、貯水池、調整池の重点使用を図ると共に火力発電所を最大限に運転し、目下補修中の火力発電所については、その完成を促進し、概ね左の日程によつて供給力の増強を図る。

供給量一覧


二、供給力の増加によつてもなお不足する場合を予想せられるので需要側の消費調節を行はしめ、「晝は工場へ、夜は家庭へ」の方針によつて、電力の有効利用を図るため左の措置をとる。
 (イ)晝間(地下室その他特殊の場所を除く)の点灯及び夜間でも無用の点灯は決して行わないように指導する。
   更に渇水が甚ぎしくなつた場合には「一戸一灯一ラジオ」に制限することもある。
 (ロ)家庭用電熱器は午後五時から午後八時まで使用を禁止する。
 (ハ)電化浴場に対しては当分の間送電しない。
 (ニ)工場に対する余剩電力の特配は当分の間停止する。
 (ホ)休電日を確実に守らせる。(産業用午前五時 ― 午後十時)
    (電気需給調整規則第十一條による。)
 (ヘ)工場及農村動力用等は午後四時半から午後七時半迄電力の使用を禁止する。(同右)
   但し、鉄道、放送、水道等の要確保電力、二十四時間操業の工場の最低所要電力、その他(概ね五百KW以上の需用者)で
   通商産業局長が尖頭負荷時の最大電力を指定したものについてはこの限りでない。
 (ト)以上各項の違反者に対しては送電停止を励行する。(電気需給調整規則第二十七條による。
 (チ)一般配電線に対する電力の配分は適正需要にあわせて行い需要家の協力を得た場合には送電を確保し、需用家において超過使用する場合にはまず警告停電をなしなお自粛の跡の見えない超過使用のある場合は送電を遮断する。

三、本件措置により差当り家庭用緊急遮断を阻止し得るも今後の渇水期においてもこれを維持するためには火力発電設備の補修を繰上げ完成し、且石炭手当を充分ならしめる必要があるので、これに必要な資金につき特段の措置を講ずるものとする。

四、右の措置は全電気事業者をしてその責任の下に全力をあげてこの業務に邁進せしめるとともに、通商産業局及び同電力事務所をしてこの実行を確実に推進せしめることとする。この方針については新聞、放送その他あらゆる広告機関を動員してその周知徹底を図る。


初夜緊急遮断防止対策について

 最近関東及び関西地区において初夜(午後五時 ― 八時)に、電気の緊急遮断が頻発し家庭等に御迷惑をおかけしています。
 この原因は九月十日に夏時刻が終了し、官庁、会社の退勤時間が遅くなりこの混雑時の通勤電車と、日沒時の早くなつたことによる各家庭の電灯及び電熱が同時に電気を使用し、更に工場の操業が重なつて初夜における電気の負荷が最近著しく大きくなり、供給力がこれに応じ切れぬためであります。この負荷の変遷については別表(1)の通りであります。
 政府においては年間の電力需給計画をたて、(毎四半期に修正)、水力と火力との総合的運転によつて極力年間に平均した電力を供給することにつとめておりますが、わが国発電所の特殊事情のため豊水期と渇水期とに供給力上相当の差があることはやむを得ません。政府は上、下期に分つてこの変動ある供給力をその各々の期間においてある程度安定せしめるため電力割当計画に沿つた日発各配電間の需給契約を締結させ、その線に供給力、需要の双方を調整することとしております。この契約は一応年間出水率が平水であることを前提とし、年間における出水の変動を火力によつて能力の許し得る限り調整しています。従つて水力発電について一応年間出水率が平水であること、火力発電については年間消費石炭四、六五〇、○○○屯の範囲内において冬期渇水期に全力を発揮し、年間としての供給力変動と、上下期両期間においても出水の変動を併せ防止する意味においてできているのであります。火力発電所は豊水期にはできる限り補修することとなつている関係上、平年に比して非常なる豊水が相当長期に亙つて得られなければ、この契約供給力を上廻つて供給することには多大の困難があります。しかも電気料金は他の物価に比して甚だしく低廉であり、燃料費、修繕費は本年度の計画量を賄うに充分なだけは織込まれていない現状においては施設の補修はもとより、計画石炭量の購入さえも困難な状況であつて、このまま推移するならば冬季渇水期用の貯炭すら危ぶまれております。
 本年秋は全国的に比較的豊水であり、電気の供給も割合に楽であつたのですが、最近にいたつて九州を除き他地区はすべて出水が低下しましたので火力発電所を動員して供給力の確保を図つています。この状況は別表(2)の通りで全国的に需給契約を相当上廻つております。特に緊急制限の多い関東、関西の火力発電所の能力は両地区合計においても別表(3)に示す如く僅かに約三〇、〇〇〇キロワツトを残すのみであつて、到底多くを期待できないのであります。もちろんこの火力につきましても極力運転する方針をとつておりますが、今後十一月、十二月に入れば、例年水力の出力は次第に低下する傾向を示すのであつて、多少の火力をもつてしては現在のような需要の状況には応じきれないのであります。
 ここにおいて停電の防止は需要の面でこれを調節する外に回避できないこととなります。現在関東配電地区において初夜午後六時頃の遮断をしているのは晴天時六 ― 七万KW、曇天時一〇 ― 一一万KWであります。これは八五万KWの需給契約に対し関配系を加え九六 ― 一〇〇万KWの供給をしていながら起る状況であつて、今後出水が低下するならば益々苦しくなることは必然であります。
 しからばこの尖頭負荷時において何故このような負荷がかかり、遮断をおこすかを検討せねばなりません。別表(4)に示される如く夏時刻中にくらべ、現在の尖頭負荷時の負荷は顯著な傾向を示しております。この負荷の内容を分析いたしますと別表(5)のようになるのであつて電灯、電熱、電車及び工場動力の分布がこれで判明いたします。この中電灯及び電車の負荷が制限できないとすれば電熱及び工場用動力によつて調節する外はありません。因みに本年正月殆ど工場が稼動していなかつた時に電灯その他を自由に使用せしめた負荷は同じく別表(5)に示されているとおりであつて、工場負荷の大であることが判ります。
 かくして対策としては緊急遮断防止のため次のような諸措置をとることとし、既に一部実施しております。

一、供給力は日間に甚しい変動のないことを前提として、特に初夜及び午前の尖頭負荷時の電力の増強に努力せしめる。

二、電気の使用は「晝は工場へ、夜は家庭へ」の方針によつて尖頭負荷時の電力の軽減を図る。即ち、  (イ)晝間(地下室その他特殊の場合を除く)の点灯及び夜間でも無用の点灯は決して行わないようにする。
   更に渇水が甚だしくなつた場合には「一戸一燈一ラヂオ」に制限することもある。
 (ロ)家庭用電熱器は午後五時から午後八時まで使用を禁止する。
 (ハ)電化浴場に対しては当分の間送電しない。
 (ニ)工場に対する余剩電力の特配は当分の間停止する。
 (ホ)休電日を確実に守らせる。(産業用        午前五時 ― 午後十時)
                    (業務用、家庭用   午前七時 ― 午後五時)
   必要ある場合には家庭用、業務用に対しても休電日を指示する。
 (ヘ)電力需用(工場及農村等)は午後四時半から午後七時半迄電力の使用を禁止する。但し、鉄道、放送、水道等の要確保電力、二十四時間操業の工場の最低所要電力、その他通商産業局長が尖頭負荷時の最大電力を指定したものについてはこの限りではない。
 (ト)以上各項の違反者に対しては送電を停止する。
 (チ)一般配電線に対しては、それによつて供給する需要の量によつてキロワツト配分を行いこれを負荷が超過した場合には、設備の許す限り警告停電を行いそれでも負荷が減少しない場合には送電を遮断する。

   これらの対策が電気事業者、電気使用者のすべてによつて完全に実行せられるならば、現在の緊急遮断は回避せられるのであります。本年初頭以来連続的に豊水に惠まれ、電気的には一般に楽な状態をすごしたため、国民一般に電気に対する楽観的な気分が横溢しており、一昨年冬及び昨年秋の需給逼迫時の苦しさを忘れたかの如くでありますが、設備補修の進捗、消費石炭の増加に対し需用の増加が更に上廻つている現状では、全電気事業者の需給調整に対する全力をあげての努力並びに全電気使用者の協力なしに、この危機を乘切ることは出来ないのであります。
   再び「晝は工場へ、夜は家庭へ」の方針に対する協力を要請するものであります。


第一表、第二表、第三表


      初夜最大電力の分析(昭和二十四年十月二十日)
一、サンマータイム終了前と最近初夜の最大電力の比較

最大電力の比較


二、初夜最大電力の分析
  本分析は業種別大口代表工場の負荷実績曲線と電灯、電力用柱上変圧器の負荷記録を基とし且つ昭和二四年一月一日(工場全停止家庭は全負荷)の実績記録を参考として勘案作製せるものである。
(詳細調整資料第一六号参照)

初夜最大電力の分析




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