答弁本文情報
昭和二十九年一月二十六日受領答弁第三号
内閣衆質第三号
昭和二十九年一月二十六日
衆議院議長 堤 康次※(注) 殿
衆議院議員古屋貞雄君提出富士山頂払下げに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員古屋貞雄君提出富士山頂払下げに関する質問に対する答弁書
第一点
(イ) 富士山頂八合目以上の国有境内地の譲与申請及びこれに対する処分は、社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律(昭和二十二年法律第五十三号)の規定に基くものであつて、同法に基く成規の手続によつて行われているものであるから、この問題のみを捕えて違憲行為であるとすることは妥当でない。
(ロ) 同法は、日本国憲法の政教の分離並びに宗教団体に対する公の財産利用の制限の趣旨に則り、社寺等に対する国有境内地の無償貸付関係及び社寺保管林制度の断絶とその善後措置としての国有境内地譲与又は時価の半額売払その他社寺保管林の譲与等を規定したものであつて、むしろ新憲法の精神を活かし、その予定する政教の分離を完全ならしめる措置として制定されたものであるから、日本国憲法の条規に反するものでないと信ずる。
(イ) 富士山頂八合目以上の国有地が、文化、観光、学術研究、国民感情などの角度から見て、多分の公益性を有するものであることは、否定し得ないところであるが、社寺境内地処分に関する前記法令の適用に当り、同法施行令(昭和二十二年勅令第百九十号)第二条の規定に基き、国有存置の理由となし得る「公益上とくに必要なもの」に該当するかどうかについては、なお検討の余地があると認められるので、目下のところ最終的な処分を留保している次第である。
(ロ) 国立公園法は、同地域内の土地について必ずしも国有主義をとるものではないが、公園行政の立場からすれば、その管理上、国有地であることが望ましいことは当然である。
しかしながら、前記の社寺境内地処分に関する法律の精神と富士山頂の特殊性とにかんがみ、公益留保に当然該当するかどうかについては、なお疑問の余地があるので、前記第二点(イ)に述べたように目下慎重に研究しているところである。