衆議院

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昭和三十三年十二月七日受領
答弁第五号
(質問の 五)

  内閣衆質三〇第五号
    昭和三十三年十二月七日
内閣総理大臣 岸 信介

         衆議院議長 星島二(注) 殿

衆議院議員松(注)重義君提出東海大学における原子炉の設置に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員松(注)重義君提出東海大学における原子炉の設置に関する質問に対する答弁書



 原子力の研究、開発および利用の促進が、今後の人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに資する役割の重要性については、あらためて今日申すまでもないところであつて、政府としても、昭和三十年以来、原子力委員会を設けてその施策の計画的遂行と原子力行政の民主的な運営を図るとともに、日本原子力研究所および原子燃料公社の指導、原子力予算の確保等に多大の努力を払い、国会における原子力開発利用のための超党派的支持、民間における献身的努力とあいまつて、着々と成果をあげつつあるところである。これに対応して、大学等においても大いに原子力の平和利用に関する研究教育の強化拡充を図ることが、今後とも必要であると考えている。
 しかしながら、原子力の平和利用に際しては、不慮の原子炉災害や放射線障害が人類に与える被害のじん大となる可能性のあることを十分に考慮しなければならない。再三にわたつて核爆発による被害を経験し、原子力災害の問題に強い関心を有しているわが国民は、原子力の平和利用の成果を期待するとともに、災害問題の解決面における科学技術の進歩を特に渇望しているのである。政府としては、原子力災害を防止し公共の安全を確保するための十分な措置を講ずる責務を有するものと信じて疑わない。核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第二十四条が、原子炉の設置の条件として、特に原子炉施設の位置、構造と設備が災害の防止上支障がないことと、その運転に際してはもちろん、その設置に際しても必要な技術的能力があることを求め、内閣総理大臣は、これらの条件に適合すると認める場合でなければ設置を許可してはならないと定めているのも、またこの点を明らかにしたものであろう。
 原子力委員会においては、原子炉問題に関するわが国最高の科学技術陣各二十有余名からなる原子炉安全審査専門部会および原子炉安全基準専門部会を設けているが、本年四月、東海大学から原子炉設置の許可申請がなされたので、その安全性についての検討を原子炉安全審査専門部会に求めたのである。この専門部会は、以来約半歳にわたり、慎重かつ詳細な検討を進め、この間東海大学におかれても数度にわたり許可申請書を書き改める等、不明の点を明らかにする努力は、申請者側および審査者側の両者によつて重ねられたのである。その結果、去る十一月十一日付をもつて、原子力委員会に対して答申がなされた。安全審査専門部会においては、特に日本にあつては設置例も運転例も少ない時であるので、その設置についてはきわめて慎重に取り扱うべきであるとの観点から検討されたのであつて、現段階におけるこの科学技術陣の判断は十分尊重すべきものと考えるが、現在、これについて、原子力委員会と原子力局とにおいて、慎重に審査を進めている状況であり、いずれ、結論を得次第、適当な方法によつて政府の見解を明らかにしたいと考えている。
 次に原子炉の設置に当つての技術的定量的基準を定めることについては、御存知のとおり、一般に、研究施設、産業施設等の安全基準を定量的に定めることはきわめて困難なことであつて、すでにその技術が長い経験の下に開発され確立されている電気施設、高圧ガス施設、火薬施設等においても、法令によつてその技術的基準を定めることとなつていながら、定量的基準をもつて示されている範囲はきわめて特殊な部分に限られている。今さらいうまでもなく、原子力関係の技術はいまだ開発日浅く、ことに日本においては、その技術は近々数年の経験しか有しないのが偽らざる現状であるので当局としては、原子力委員会に原子炉安全基準専門部会を設け、安全基準の確立について、鋭意努力を払つているものではあるが、原子炉の設置について、位置、施設、技術的能力が具備すべき基準を定めるに当つては、各種の原子炉施設について、その立地条件、型式、出力、技術的能力を十分勘案した上定める必要があり、かつ、安全性の確保のためには、位置、施設、技術的能力の三者は互に相関関係をもつて論ぜられるべきものと考えられるので、現在の日本の原子力技術として、一般的定量的基準を早急に確立することは不可能と思料される。
 このことは、原子力技術の豊富な経験を持ち、わが国より格段の進歩を見ている欧米諸国においても、原子炉設置についての定量的基準は定めておらず、わが国と同様に、個々の場合に応じて安全性の評価を行つている点から見ても了解願えるものと考える。
 なお、コールダーホール改良型原子炉については、現在、原子炉安全審査専門部会において予備審査を行つているが、この炉は指摘されたような事故を起したことはなく、事故を起したウインズケール原子炉とは冷却方式も根本的に異なつている。この炉についても、正式に設置許可申請書が提出された場合には、慎重に審査の上処理したいと考える。

 右答弁する。


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