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答弁本文情報

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昭和四十三年三月二十八日受領
答弁第七号
(質問の 七)

  内閣衆質五八第七号
    昭和四十三年三月二十八日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 石井光次郎 殿

衆議院議員竹本孫一君提出国際金融危機に備える政府の施策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員竹本孫一君提出国際金融危機に備える政府の施策に関する質問に対する答弁書



一 政府の政治責任について

 外貨および金準備の保有高については、わが国が今日まで達成してきた高度の経済成長とあわせて、これを総合的に判断すべきものであり、その点からみてわが国の外貨準備政策は妥当なものであつた。
 わが国経済は従来においても強い国際競争力に支えられ、また適切な経済運営により国際収支の困難を円滑に調整してきたが、今後も基本的には適切な産業政策により産業の国際競争力を強め輸出の振興を図るとともに、財政金融政策を中心とする経済政策の適切な運営により、国際収支の早期改善を達成し十分円価値を確保していくことができるものと信じている。

二 政府の国際金融不安の現状認識について

 わが国を含む世界の経済発展のためには、国際通貨体制の安定が不可欠の要件であるが、安定への過程において世界経済が縮小することがあつてはならない。このような基本的認識に立つて現在基軸通貨国は、それぞれ国際収支改善のため真剣に努力を傾注しており、同時にIMF加盟各国特に国際収支が黒字基調にある西欧諸国は、これに対し協力を示している。
 政府としては、これらの自主的努力と国際協力により、また、現行国際通貨体制を補強するためのIMF特別引出権の実現促進等により、国際金融情勢は安定に向うことを期待する。

三 国際金融不安の打開について

 前記のような情勢にかんがみ、現在十カ国蔵相会議などにおいて、国際通貨制度の検討のための真剣な努力がなされているところであり、国際金融不安除去のための世界最高会談などの開催の必要はないものと考えている。

四 当面の国内緊急対策について

1 輸出停滞に起因する資金需要につき一律無差別に優先的に融資することは困難であるが、実情に応じケース・バイ・ケースで配慮を加えることは必要であると考えられる。日本銀行も同様の見解である。

2 輸出停滞にともなう関連倒産の防止については、中小企業信用保険法第十二条に規定する倒産関連保証の特例の適用について特別な配慮を行なう等積極的に対策を講じて参りたい。

3(1) 輸出の振興については、従来から、税制上輸出割増償却、海外市場開拓準備金、技術等海外取引の特別控除等の諸措置を講じ、他の分野に比べて格段の配慮を行なつてきたところであり、来年度の税制改正においても、特に次のような税制上の輸出振興の特別措置を講ずることとしている。

   (イ)輸出の伸長に特に貢献したと認められる企業に対する輸出割増償却の特別割増しおよび海外市場開拓準備金の高率積立て

   (ロ) 技術等海外取引にかかる所得控除制度の対象範囲の拡大

   (ハ) 海外投資損失準備金の対象となる新開発地域法人の範囲の拡大

  (2)輸出所得控除制度については、種々問題もあるので、慎重に対処すべきものと考える。

五 昭和四十三年度財政金融政策の弾力的運用について

1 厳しさを加えた国際金融環境の下では、国際収支の早期改善の必要性は特に強いのであり、今後とも引締め政策を堅持し、時々の経済情勢の推移に即して政策の機動的運営を図ることにより、引締め効果の浸透、定着に努める必要がある。
  なお、輸出関係金融は、日本銀行の行なう窓口規制の適用外とされている。

2 予算の執行および金融政策の運営に当たつては、経済情勢の推移に応じて機動的に対処し、その弾力的運用をはかつていくべきことは当然であり、この点については、すでに予算編成方針で明らかにしているところである。
  なお、補正予算の編成については、現在の段階においてその必要があるとは考えていない。

六 国際収支悪化に伴うIMF(国際通貨基金)資金の借入れについて

 国際通貨機構の安定のため現在西欧諸国が進めている経済政策は、国際経済の縮小を避ける方向であるが、わが国としては、流動的に事態に対処しうるよう既に実施している財政金融面の諸措置の浸透を図つているので今後着実に貿易収支の改善の実をあげるとともに、対外信用の強化と相まつて資本収支にも重大な支障は生じないものと信じている。
 なお、このような国際収支改善の過程においてもし必要が生ずればIMF借入れ等により対処することも考えられようが、いまのところこれらの手段によることは考えていない。

七 国際収支赤字の見通しと円価値維持についての政府の決意について

1 四十三年度の国際収支見通しについては、現在のところ先に閣議決定した見通しを改訂する考えはない。

2 円価値の維持は自らの経済の体質の強化によつて達成することが必要であり、今後とも景気調整策を堅持するとともに、輸出の拡大に努めてまいりたい。

3 現段階においては、各国巨頭会談等の招集を要請する必要はないと考えている。

 右答弁する。




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