衆議院

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昭和四十五年三月三十一日受領
答弁第二号
(質問の 二)

  内閣衆質六三第二号
    昭和四十五年三月三十一日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 (注)田 中 殿

衆議院議員春日一幸君提出宗教団体の政治的中立性の確保等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員春日一幸君提出宗教団体の政治的中立性の確保等に関する質問に対する答弁書



一(1) 憲法第二十条は、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」と定め(第一項後段)、また、「国及びその機関は、……いかなる宗教的活動もしてはならない。」と定めて(第三項)、いわゆる政教分離の原則を規定している。
     さらに、この原則を財政面から補足するため、憲法第八十九条は、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため……これを支出し、又はその利用に供してはならない。」と規定している。

 (2) この政教分離の原則については、第九十帝国議会において、当時の金森国務大臣は、憲法第二十条第一項後段に関し、同条項は、宗教団体が「政治上の運動をすることを直接に止めた意味ではない……。国から授けられて正式な意味に於て政治上の権力を行使してはならぬ」ということを定めたものである旨を述べ(昭和二十一年七月十六日衆議院帝国憲法改正案委員会)、また、憲法第二十条第三項に関し、同条項は、「国家は積極的にも何等宗教に対して特別なる働き掛けをしないと言ふ原理」を認めたものである旨を述べているのであつて(昭和二十一年九月十八日貴族院帝国憲法改正案特別委員会)、政府としては、現在でもこの解釈を変えていない。すなわち、政府としては、憲法の定める政教分離の原則は、憲法第二十条第一項前段に規定する信教の自由の保障を実質的なものにするため、国その他の公の機関が、国権行使の場面において、宗教に介入し、または関与することを排除する趣旨であると解しており、それをこえて、宗教団体又は宗教団体が事実上支配する団体が、政治的活動をすることをも排除している趣旨であるとは考えていない。

二(1) 宗教法人法は、「宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えること」を目的としており(同法第一条第一項)、宗教活動を行なうことを主たる目的とする団体に限り、宗教法人となる途を開いている(同法第二条、第四条)。
     したがつて、宗教法人が、同法第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱するような場合は、所定の手続を経て、裁判所が解散を命ずることができることとされている(同法第八十一条)。

 (2) 次に、宗教法人の政治活動に関する立法措置についてであるが、宗教法人法は、憲法で保障する信教の自由および政教分離の原則に則つて、宗教法人の管理運営に関しては、国の関与をできる限り抑制し、宗教法人の自主性および自律性を尊重することを建前としているものであり(同法第一条第二項、第八十四条および第八十五条参照)、また、憲法第二十一条第一項が「集会、結社及び言論……その他一切の表現の自由」を保障している趣旨にかんがみ、宗教団体についてもその政治活動の自由は尊重されるべきであつて、宗教法人の政治活動を規制する立法措置をとることには、賛成し難い。

三 宗教法人を含め公益法人等がその設立された目的を逸脱して活動を行ない、その目的外の活動のためにその非収益事業の所得を支出した場合に法人税を課税することとするときは、まず、具体的な支出が目的外の支出であるかどうかを判定することが必要となる。ところで、実際問題としてこの種の判定はかなり困難であるとともに、ひいては課税当局として、一般的に公益法人等の活動が設立目的を逸脱しているかどうかを判断することを余儀なくされることになるおそれがある。したがつて、これを法人税の課税対象とするか否かについては、なお慎重な検討を要するものと考える。

四 憲法第二十一条で保障する「言論、出版、その他一切の表現の自由」は、民主主義社会の基礎をなすものであることから言つて、ある国民の言論または出版に対し、他のものが、いわれのない圧迫を加えることをつつしまなければならないことはもちろんであつて、かりにもいわれのない圧迫を加えるような事態があるとすれば、事案によつては、それぞれ関係法令の定めるところに従い、適正な措置が図られるべきである。
  なお、現行の関係法令については、不備な点があるとは認められないので、あらたな立法措置を講ずることは、現在、考えていない。

五(1) 人権擁護機関としては、人権の侵害行為につき調査の結果その事実があつた場合には、事案に即し適切な処置をとることとしており、このことは、宗教活動に関連して発生するものについても同様である。なお、検察官は、一般刑事事件の処理に関連して、宗教法人自体について宗教法人法第八十一条第一項に該当する事由があることを確認した場合には、同項に規定する権限を発動する等適切な措置を講ずべきことは当然である。

 (2) 昭和三十一年六月三日、衆議院法務委員会において決議された事項に関しては、同年六月二十一日、文部省調査局長名をもつて、文部大臣所轄宗教法人および都道府県知事に対し、それぞれ自粛または所轄宗教法人の指導の徹底を要請した。
     また、文部省および都道府県所轄庁においては、宗教法人の管理運営の適正化に資するため、宗教法人の役職員を対象とする研修を行なつている。

 (3) なお、宗教法人の規則の認証、認証の取消し等に関する現行宗教法人法の改正の検討については、昭和三十一年十月六日、文部大臣から宗教法人審議会に諮問を行ない、昭和三十三年四月二十二日に答申を得たところであるが、同答申は、「現行法の改正が宗教団体に及ぼす影響を考慮し、慎重に取扱われることを希望」しており、また、宗教界においても法改正に対し、消極的な意向が強いところから、今後とも、その取扱いは、なお慎重にすべきものと考える。

 右答弁する。


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