答弁本文情報
昭和四十七年六月二十日受領答弁第一三号
内閣衆質六八第一三号
昭和四十七年六月二十日
衆議院議長 ※(注)田 中 殿
衆議院議員※(注)崎弥之助君提出沖繩の「核ぬき返還」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員※(注)崎弥之助君提出沖繩の「核ぬき返還」に関する質問に対する答弁書
一及び二について
沖繩の「核抜き」返還については、一九六九年の日米共同声明で明らかなとおり、日米最高首脳間の相互理解と信頼に基づく確約であり、かつこの確約は返還協定においても条文化されたところである。
さらに、政府としては、本問題に対する国民の関心に照らし、また、衆議院における決議にかんがみ、念には念を入れるという意味で沖繩の返還時における核の不存在の確認につき、本年一月のサン・クレメンテにおける首脳会談を始めとして米側と話合いを行なつた結果、米国政府は、五月十五日付ロジャーズ国務長官発※(注)田外務大臣あて書簡をもつて、あらためて、沖繩の核抜き返還に関する米国政府の確約が完全に履行されたことを通報するとともに、事前協議にかかる事項については、米国政府は日本国政府の意思に反して行動する意図のないことを併せて確認した次第である。
右のとおりであるので、政府としては、沖繩の核抜き返還が完全に実施されたことについては、何らの疑念も抱いていない。
引用のあつた米軍関係者の発言は、復帰後の沖繩においても、日本本土と同様、日米安保条約に基づき米軍による施設・区域の使用が認められることを踏まえて、軍関係者としての立場からその見解を述べたものであると考えられるが、いずれの発言についても、復帰後の沖繩が「核抜き」でないがごときことを示唆しているものは全くない。特に、一九七〇年四月のウォルト海兵隊副司令官の発言は、「沖繩の米海兵隊は一五五ミリ自走砲を有するが、核砲弾は保持していない」との趣旨を明らかにしており、引用のあつた米軍関係者の発言をもつて「日本政府の核抜き返還論を真向から否定する発言」というのは当たらない。
従前沖繩において行なわれていた第三国軍人の訓練は、復帰後は一切行なわれていない。
また、米側としては、軍隊として常に一定の技術的水準を維持させるため多種、多様の訓練を行なう必要があるとし、核攻撃を受けた場合の対処訓練を含め多岐にわたる訓練を従来から行なつている旨説明しているが、かかる訓練自体は、安保条約及びその関連取極に照らし、禁止されるべきものではない。
核兵器のわが国への持込みは事前協議の対象とされており、日本国政府の承諾なしには米側としてこれを行ないえないのであるから、米軍の編成、行動等が一般的にいかようなものであろうとも、それらをもつてわが国への核兵器の持込みとするのは、当をえないと考える。
また、政府は、従来より核兵器については「持たず、作らず、持ち込ませず」のいわゆる非核三原則を堅持しており、「日米共同核戦力」などというような考えはありうるはずがない。
事前協議の主題となるべき事項については、安保条約第六条の実施に関する交換公文に明記されているとおりであり、復帰後の沖繩をも含め米軍による施設・区域の使用がこれに違背して行なわれているということは全くない。ヴィエトナム紛争の最近における状況との関連で米軍の一部の施設・区域の使用が従前に比して活発化していることは事実であるが、これらはすべて事前協議の対象とならない行動に限られている。