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昭和四十八年六月二十九日受領
答弁第九号
(質問の 九)

  内閣衆質七一第九号
    昭和四十八年六月二十九日
内閣総理大臣 田中(注)榮

         衆議院議長 前尾繁三郎 殿

衆議院議員竹入義勝君提出インフレ・物価抑制緊急対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員竹入義勝君提出インフレ・物価抑制緊急対策に関する質問に対する答弁書



一について

1(1) 年初来、一般的な総需要抑制措置として金融面においては、預金準備率及び公定歩合の引上げ、窓口指導の強化、財政面においては、公共事業の施行時期の年度内調整等の措置がとられており、更に個別的措置として投機につながりやすいとみられる土地関連融資や商社向け融資については、それぞれきめ細かい抑制措置が講じられている。

 (2) これまでの経過をみると、これらの措置は、着実に効果をあらわしつつあり、今後引締め効果が一層浸透することを通じて企業の投資意欲も鎮静化していくものと考えられるが、なお、今後とも情勢の推移に応じ、更に適宜適切な措置を講じていきたいと考えている。

2(1) 金融引締め政策の推進に当たつては健全な中小企業金融に不当なしわよせが及ぼないよう従来からきめ細かい配慮を払つている。

 (2) また、中小企業や農業の生産性向上、生産力拡大等を図るため従来から政府関係金融機関において制度の拡充、融資条件の改善等各般の措置を講じているところであるが、今後とも十分配慮していきたいと考えている。

3 日本開発銀行等政府関係金融機関の融資は、各機関の設立目的に沿つて、いずれも国民福祉の向上に資するため、我が国経済社会発展のための基盤の充実を図るという長期的観点から行われているものであり、これを景気対策の観点から直ちに取りやめることは適当ではないと考える。

4(1) 消費者金融については、全体的な金融引締めの中で、金融機関が不要不急と認められる融資を抑制していくよう従来から指導しているところである。

 (2) 民間金融機関の行う住宅ローンについては、国民福祉の向上を図る観点から金融引締めが行われている中にあつても極力、その融資枠を確保するよう指導している。また、この金利についても、上記の観点から最大限の配慮を払うよう金融機関に対し要請しているところであり、この結果金融引締めの下で他の長期金利が全般的に引き上げられているにもかかわらず、住宅ローン金利は据置かれている状況にある。

 (3) また、政府関係金融機関としては、住宅金融公庫が政府から利子補給を受けて長期低利の住宅ローンを行つている。
 住宅金融公庫の貸付条件については、昭和四十八年度大幅な改善を図つているところであり、今後ともその改善について検討を続けていきたいと考えている。

5 銀行の預金金利については、本年四月に公定歩合の引上げを契機として全面的な引上げが行われたが、更に今般、預金者により有利な貯蓄手段を提供する見地から、期間一年以上の貯蓄性預金についての金利引上げ及び二年もの中期預金の創設を行うこととしたところである。
  郵便貯金の利率については、現下の経済情勢にかんがみ、国民に有利な貯蓄手段を提供するとともに、預金者の利益を増進するため、貯蓄性の高い定額郵便貯金、定期郵便貯金等の利率を〇・二五パーセントないし〇・五〇パーセント引き上げ、定額郵便貯金の利率を最高年六・五〇パーセントとし、七月一日から実施することとしたい。

6 昭和四十八年度予算における公共事業費は、国土の均衡ある発展を図るため、国土の総合的開発を計画的、かつ、着実に実施するとともに、各種の社会資本の整備を一層促進することにより、公私部門間の資源配分の不均衡を是正し、国民福祉の向上を図ることを目途として計上したものであり、また、防衛関係費については、他の一般諸施策との均衡を考慮しつつ、先に国防会議の議を経て決定した第四次防衛力整備計画に基づき、効率的な防衛力の整備に努めることとし、必要最小限度の額を計上したものであつて、いずれの経費についても減額する考えはない。

7 政府としては、従来から、社会保障制度の充実を図つてきており、昭和四十八年度においても、五万円年金の実現、年金におけるスライド制の導入、福祉年金額の引上げ、医療保険の給付率の引上げ、老人医療対策の拡充、各種福祉サービスの充実等を図ることとしているが、今後とも、社会保障制度については、物価の動きにも留意して、一層の充実を図つてまいりたい。

8(1)(イ) 今後における税制のあり方としては、最近の成長と福祉に対する国民意識の変化等にかんがみ、国民福祉増大のための施策の一環として、法人税負担をある程度強化し、租税特別措置を洗い直す一方個人に対する所得税負担を軽減合理化する方向で臨みたいと思つており、また、間接税についても新しい観点から見直しを行いたいと考えている。
        しかしながら、税制改正は、国の財政運営の基本に関連する事柄であり、これに関する政策決定は、予算編成のさいに財政需要、財源事情等をも勘案しつつ、財政金融政策全般の見地から総合的に検討すべき問題であるので、現在の諸状況の下で年内に直ちに税制改正をすべきであるとする御意見には、賛成いたしがたい。

    (ロ) 累進課税は、所得再分配機能に資するための最も有効な手段であるが、それは所得や財産が最終的に帰属する自然人に課税を行う所得税や相続税などにおいて端的に適用できる性格のものであつて、株主の構成の多種多様である法人を対象とする法人税においては、本質的になじまないものと考える。

 (2) 現在、資本金一億円以下の法人に対する法人税率は、年三百万円までの所得については、二十八パーセント(配当分二十二パーセント)となつており、資本金一億円超の法人に対する税率三十六・七五パーセント(配当分二十六パーセント)に比し、相当大幅に軽減されているところであり、中小法人の税負担については、十分配慮しているところである。

9 公共料金については、極力抑制的に取り扱う方針である。
  国鉄については、その業務運営の確保を図るため、財政助成の強化を図りつつ、必要最小限度の改定を行うことはやむを得ないと考えている。また、国鉄は、公共輸送の確保をその使命とするものであり、鉄道営業法の定めるところに従い、荷主のいかんにかかわらず平等の運送条件を設定している。
  また、今回の健康保険の改正は、被保険者の負担増を上回る規模で給付改善が行われるので、むしろ負担軽減になるものである。なお、そもそも健康保険の保険料は、公租公課とみるべきものであり、物価指数に影響を与えるものではない。

二について

1 我が国経済は、自由私企業体制を建前とし、公正かつ自由な競争を通じて適正な価格を形成せしめることを基本的な原則としており、国が一般的に企業の価格形成等に直接介入することには慎重でなければならない。
 したがつて、いわゆる管理価格問題についても、競争条件を一層整備すること等により対処すべく、現にその実態を解明するため調査を進めるとともに、その対策についても前述の基本的態度の下に鋭意検討を加えているところである。

2(1) 価格協定等について、確実な物的証拠によらずとも、状況証拠によつて事実認定を行うことは、その証拠力のいかんにもより、現行法上も可能とする向きもあるが、この点は、なお慎重に検討を必要とする問題であると考えられる。

 (2) 公正取引委員会が原価構成の報告を求め、価格引下げ命令等を行うのは、自由主義体制下において、是認できないことと考える。

3 国会の院の決定により設けられた特別委員会にどのような附属機関を設置すべきかは、国会自身が決定すべきことであり、このような問題について行政府である内閣が意見を申し述べることは、差し控えるべきであると考える。

三について

1 現下の自由経済の下における買占め等の行為に対して、行政上、機動的、弾力的に対処するには、生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律に示されているように、生活関連物資について必要な調査を行い、その実態を把握するとともに、買占め等を行つた者に対し、適当な価格で売り渡すことを勧告し、これに従わなかつた場合には公表するという社会的制裁を課すことが最も効果的な手段であると考えている。
 なお、土地投機に対する規制の強化に関しては、現在国会に提出している国土総合開発法案においては、土地等の取引を都道府県知事に対する届出制とするとともに、一定の要件に該当して指定された特別規制地域では土地等の取引を知事の許可制にすることとしている。

2 商品投機抑制のため特別の課税を行うという考え方は、取扱い商品の異なるごとに税負担が変わるという結果を招来し、すべての所得を総合して課税するという法人税制の現在の仕組みになじまないものであり、また、税務執行上も著しく繁雑となるので、賛成しがたい。

3(1) 現在、政府は、通関統計、輸入承認・届出統計等を通じ、輸入される物資について、物資毎にその平均価格、数量、輸入先等を把握しているので、通常の状態において常時個々の輸入契約の内容を企業に報告させる必要はないと考えている。

 (2) ただし、価格が異常に上昇し又は上昇するおそれがあり、しかも買占め又は売惜しみが行われ又は行われるおそれのあるものとして指定された生活関連物資に関しては、今国会で成立した生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律に基づき立入検査等の手段を通じて、個々の輸入取引についてもその価格・数量等の内容を調査し得ることとなつた。

4 輸入総代理店の独占的輸入に伴う弊害を防止するため、昨年秋、関税定率法の運用を改め、真正商品の第三者による並行輸入を自由化するとともに、総代理店の行う各種の並行輸入阻止行為の規制を含め輸入総代理店に対する独占禁止法上の監視、規制を強化する等競争体制の整備を図つてきた。
  また、輸入総代理店制が実施されている輸入品を含め、輸入品の価格については、その追跡調査を実施して、流通段階における価格形成の問題点を明らかにし、消費者に対しても情報の提供を行つてきたところである。
  政府としては、今後とも、引き続き、以上のような調査の一層の充実を図り、輸入総代理店の価格形成の実態把握に努め、必要に応じ、独占禁止法に基づく措置を講ずる等輸入総代理店に対する監視、規制を強化するとともに、消費者に対する情報提供についても一層の努力を行つてまいりたい。
  去る二月十四日に円が変動為替相場に移行した後、値下がりを示している主要な輸入商品としては、レモン、バナナ、カラーフイルム、家電製品、万年筆、ゴルフクラブ、書籍、乗用車、ウイスキー、外国製造たばこ等があげられる。
  政府としては、引続き主要輸入物資の価格動向等の追跡調査を行い、消費者への情報提供を図るとともに、関連輸入業界等に対する指導を強めるなど、円レート上昇に伴う物価安定効果の確保に努めてまいりたい。

四について

1(1) 農業及び農村は国民に食料を安定的に供給するだけでなく、国土と自然環境を保全し、健全な地域社会を維持するうえで重要な役割を果たしており、農業と農村の健全な発展なくしては、我が国経済の調和ある発展はないものと考えている。
     特に、食料については、国民生活の基礎となるものであるから、国内生産が可能なものはできる限り国内で賄うという観点を基として、@安定的な供給を図ること、A国民の需要が多様化、高度化していること、B物価の安定が強く要請されていること等も勘案し各般の施策を強力に推進していく必要があると考えている。

 (2) 貿易の自由化については、一般的にはこれを推進しなければならないと考えているが、農産物の自由化については、種々困難な問題があるので、自由化を進めるに当たつても万全の対策を講ずるとともに、生産者の理解をえなければならないと考えている。

2(1) 米穀の管理制度は、農家経済、国民消費生活等国民経済の各分野に大きな関係を持つており、また、国民食糧を確保し、国民経済の安定を図ることは極めて重要なことであるので、食管制度のこのような基本的な役割は維持し、米の需給及び価格の安定を図つていく考えに変わりはない。

 (2) 本年の生産者米価については、従来どおり米価審議会の議を経て、生産費、物価その他の経済事情を参酌し、米の再生産を確保することを旨として決定するよう定めている食糧管理法の規定に基づき、決定することに変わりはない。
     現在、米価審議会の開催時期も含め具体的な方針はまだ決めていないが、物価・賃金の動向その他諸々の情勢及び米の需給が過剰基調にあり、生産調整を進めているという事情を考慮したうえで適正な決定をしたいと考えている。

 (3) 本年の米の政府売渡価格については、従来どおり、家計費及び物価その他の経済事情を参酌し、消費者の家計を安定させることを旨として決定するよう定めている食糧管理法の規定に基づき、慎重に検討する考えである。

 (4) 麦の政府売渡価格については、食糧管理法の規定に基づき、家計費及び米価その他の経済事情を参酌し、消費者の家計を安定させることを旨として定めることとしているが、現在の国際市場の動向が極めて流動的で、これを見通すことはなかなかに困難があるので、今後国際市場の動向を充分見究めた段階において、諸般の情勢を考慮して決定する考えである。

3(1) 今日、我が国は農産物の大輸入国となつており、昨年来の国際的な需給逼迫の影響をみても、食料政策の基本は、国内生産が可能なものは生産性を高めながら極力国内で賄うべきであり、国民食料は安易に外国に依存すべきではないと考える。このため、国民食料の国内生産体制の整備確立を基本とし、一部の輸入に依存せざるを得ない農産物についての輸入の安定的確保を図り、国民生活に不安を来すことのないよう食料の安定的供給に努めてまいりたい。

 (2) このような観点に立つて、麦、飼料穀物、大豆等その大部分を輸入に依存している農産物については、その輸入の安定的確保を図るため、長期輸入契約の締結、開発輸入の推進、輸入先の多角化を進めるとともに、備蓄問題についても、今後の国際的需給の動向を見守りつつ検討してまいりたい。
     また、米については、その在庫は従来から需給操作上の必要性のほか、豊凶に備えた備蓄の意味をこめて一〇〇万トンの古米を持越すことを基本的な考え方としているが、今後とも、この問題について十分配慮してまいりたい。

五について

1 野菜の生産及び出荷の安定並びに価格の安定を図るため、昭和四十八年度においても、野菜指定産地制度について、野菜指定産地の追加(現在七一九産地)、指定消費地域の追加(現在一一地域)を行うとともに、指定産地の近代化のための事業を拡充実施して産地の整備を行うほか、価格補てん事業についても、対象市場の拡大、対象野菜の拡大、秋冬期重要野菜以外の野菜についての保証基準額の引上げ、予約数量の増大等を行つているところであり、
  今後とも、野菜生産出荷安定法の目的に沿つて、これら制度、事業を拡充、強化してまいりたい。

2(1) 卸売市場の整備については、中央卸売市場整備計画及び各都道府県の卸売市場整備計画に基づいて、中央卸売市場、公設の地方卸売市場等につき、年々その増設と適正配置を進めるとともに、既設の市場についてもその増、改設を図る等充実に努めてきているところであり、今後ともこれに必要な財源の確保等を通じて、生鮮食料品流通の合理化に資する考えである。

 (2) 総合食料品小売センターについては、地方公共団体の設置する公設センターのほか、民営、農協営のセンターがあり、これらを計画的に設置するよう指導してきており、昭和四十八年度においても六五ヵ所を目途に推進中である。

 (3) 近年における産地直結取引等への要請の高まりに対応して、昭和四十六、四十七年度において新たな流通経路の育成に関し、研究会を開催し、基礎的な検討を加えるとともに、これまで生産者団体(全国農業協同組合連合会)の設置する集配センターに助成を行つてきているが、更に昭和四十八年度以降においても集配センターへの助成を計画的に進めるとともに、新たに、直結的取引を希望する生産者団体、消費者団体に関する情報提供事業を実施することとしているほか、野菜、果汁、食肉等の消費地における冷蔵庫、ストックポイント等、市場外流通の機能を果たす施設についても助成を行うなど関連施策の拡充強化を図ることとしている。
     なお、近年、消費者利益の保護、向上を目的とする消費者活動の高まりに対応して、消費者団体が産地との直結取引などその流通の改善合理化のため、種々の試みを行つてきているが、これらに対し助成することについても、例えば、消費者団体を集配センターの設置主体とすることの可能性なども含めて、前向きに検討してまいりたい。

3(1) 野菜、食肉、魚介類など生鮮食料品の需給と価格の安定を図るため、これまで特に消費地において各種の冷蔵庫、ストックポイントなどの施設整備につき助成してきたところである。
     これらの施設については、最大限の有効活用と運営管理の適正を期する観点から、その設置主体は例えば野菜価格安定基金の例にみられるように生産者団体、公益法人などとなつている。

 (2) 今後は、需給調整の機能を十分に備えるとともに、輸送、保管などの物流機能を一属高めるため、産地、消費地の地方公共団体とも連けいを図りつつ関連施設の整備を進めてまいりたい。

 (3) なお中央卸売市場における取引の改善についても、卸売業者に需給調整機能を附与するため、昭和四十六年に新たに制定された卸売市場法において卸売業者が買付け集荷できる場合を定めるとともに、市場外の冷蔵庫等の保管場所にある物品の卸売ができることとし、その適切な運営を図つているところである。

4 大手水産会社、商社等が、流通機構の面でかなりの地位を有していることは事実であるが、流通の円滑な促進を図る見地からそれを一概に否定することはできないし、また、そのため水産物価格の上昇を大きくしているとは考えられない。
  しかしながら、流通機構の面で大手水産会社、商社等の有する地位利用による弊害が生ずるようなことは厳に戒むべきであり、今国会において成立した生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律に基づき流通の実態を適確に把握し、消費者の利益を不当に損うことのないように対処してまいりたい。
  なお、以上の措置とあわせて、生産者団体による生産、流通、加工の合理化対策を今後強力に推進してまいりたい。

5 中央卸売市場におけるせり取引による価格形成は、市場機能の根幹であるので、これに携わるせり人の資質の向上を図り、せり取引の公正さを確保するため、卸売市場法に基づき、せり人の登録制を実施し、その適切な運営を図つているところである。
  なお、せり人を卸売会社から分離することについては、市場の取引機構をいたずらに複雑にすること、卸売業者を単なる荷受機関とし、集荷販売面での企業努力の意欲をそぐこと等のおそれがあり適当でないと考えている。

6 生鮮食料品等小売業の大部分は規模が零細であるのでその近代化を図るため、各種の施策を講じているところである。
  すなわち、@共同店舗化及び共同仕入等の共同事業を促進するため地方公共団体等による総合食料品小売センター及び共同仕入配送施設の設置に対する助成、A小売店の施設等の近代化に必要な資金を融資する国民金融公庫の生鮮食料品等小売業近代化資金貸付制度の活用、B主として小売業者の経営の近代化を図るために社団法人食料品流通改善協会が実施する食料品流通改善事業に対する助成並びにC農林省において小売業者のチェーン化、協業化を推進するための調査及び普及啓もう等を行つており、今後ともこれらの助成を拡充強化してまいりたい。

7(1) 我が国の畜産振興との関連を考慮すると、牛肉については、現状においては、内外の価格差が大きく、関税の引下げは、国内生産に与える影響が大きいので、困難であるが、国内消費者物価問題を考慮し、輸入数量については、毎年、割当量を増大させており、特に昭和四十八年度上期には、前年度上期の約三倍の七万トンに拡大したところである。
     豚肉については、昭和四十六年十月の輸入自由化以降、輸入が増大してきているところであるが、更に、最近における豚肉価格の動向にかんがみ、去る三月三日から豚肉の関税の減免措置を実施し、輸入の促進を図つているところである。

 (2) 食肉加工メーカーについては、食肉加工品の原料手当等の関係から商社がその株主となつている例もみられるが、商社による不当な系列支配が行われないよう指導してまいりたい。

 (3) 輸入豚肉、輸入羊肉等は、ほとんどが加工用、業務用に回つているのが現状であり、輸入牛肉については、畜産振興事業団の指定輸入牛肉販売店や全国食肉事業協同組合連合会の輸入牛肉展示販売店の大幅拡充等を通じて輸入牛肉を適正な表示とマージンで販売するよう行政指導を強化してまいりたい。
     また、輸入牛肉について、不当表示があれば、その是正について努めてまいりたい。

8 畜産振興事業団は、畜産物の価格安定等に関する法律に基づき設立され、同法及び加工原料乳生産者補給金等暫定措置法に基づいて、主要な食肉及び乳製品の価格の安定、畜産振興のための事業の助成等を行うことにより、畜産の発達を促進し、併せて国民の食生活の改善に資することとしている。
  最近、牛肉等一部の畜産物の需給が逼迫し、国内価格の上昇傾向がみられたところから畜産振興事業団は、これら畜産物の輸入及び畜産振興のための助成を行い、価格の安定、生産の振興に努めているが、昭和四十八年度においては、価格安定措置の強化を図るため、輸入量の拡大を図るとともに、業務関係の組織の拡充を行い、その機能の強化に努めているところである。

六について

1(1) 固定資産税は、固定資産の所有者に対し、その資産の価格に応じて税負担を求めることとされているものであり、一定規模以下の住宅用地及び住宅についてのみ固定資産税を一律に非課税とすることは適当でないと考える。しかしながら、住宅用地については、昭和四十八年度の税制改正において、住宅政策上の見地からその税負担の増加を緩和する趣旨で課税標準額をその価格の二分の一の額とする特例を設けるとともに、昭和四十八年度及び昭和四十九年度の両年度は従来の負担調整措置を継続することとした。このように、住宅用地の固定資産税については今回の改正でも十分な配慮を加えたところであるが、更に一定規模以下の住宅用地の固定資産税の軽減については、税制調査会等の審議を経て今後慎重に検討してまいりたい。

 (2) 累進課税の制度は、所得税のような応能的な人税について採用されるべきものであり、個々の財産に対して課税することとされている固定資産税にはなじまないものであると考える。また、固定資産税は市町村税であり、市町村はそれぞれ市町村内に所在する固定資産についてのみ課税することとされているので、固定資産税に累進課税の制度を設けることは技術的にも極めて困難であると考える。

 (3) 未利用地税の創設については、税制調査会においても慎重に検討が行われてきたところであるが、その答申にも述べられているように、個々の土地が未利用地であるかどうかを制度的、技術的に判定することは極めて困難である等その実施には多くの問題があり、この税の創設は困難であると考える。

 (4) 一定規模の自己所有の土地及び家屋については、これを非課税とし、借地、借家については税額を据え置くことは、両者の間の税負担に不均衡を生ずることになり適当でないと考えられる。また、宅地等の固定資産税については、昭和三十九年度以来負担調整措置が講じられてきたため、現在の評価額が同一の土地であつてもその税額が異なる場合があるというように土地相互間に税負担の不均衡が生じているので、昭和四十七年度の税額を据え置くことは税負担の不均衡を存置することとなり、適当でないと考える。なお、昭和四十八年度における固定資産税の評価替え及び課税の適正化措置に伴つて、地代、家賃の不当な便乗値上げが行われることのないよう関係機関において所要の措置をとるよう指導を行つているところである。

2 大企業が買占めた土地のうち、住宅用地として適している土地であつて、開発に着手されていない土地や開発予定のないもの及び公共施設用地として必要なものについては、国、地方公共団体、日本住宅公団等で積極的に取得し、宅地開発を行つて公共住宅用地や公共施設用地として活用するようにしてまいりたいと考えている。
  なお、公共住宅及び公共施設用地を取得するための先買権、買取請求権、収用権については、現行の都市計画法、新住宅市街地開発法等において制度化されており、その活用によつてこれらの土地の取得を図つてまいりたい。

3(1) 総合的な土地対策の一環として、本年度の税制改正においては、最近における企業の投機的土地投資を抑制することを主たる目的とし、併せて宅地の供給促進、公有地拡大の推進にも配意しつつ、国税による法人の土地譲渡益重課と地方税による特別土地保有税との組合せによる土地税制を実施することとしたところである。
     なお、この土地譲渡益重課の税率は、通常の法人税や地方税とを合わせた負担がおおむね七十パーセントとなることを目途に二十パーセントと決められており、これは相当の重課であると考える。

 (2)法人の土地譲渡益を完全に分離して課税することについては、同じ土地の譲渡でありながら、譲渡をした法人が赤字であるか黒字であるかによつて追加的な税負担が著しく異なることになると、いう問題があり、適当でないと考える。

4 現下の土地事情にかんがみ、都市及び都市周辺に所在する米軍からの返還財産及び国、公有の未利用地は、従来より一層、公用、公共用に優先的に活用することを基本方針とする考えである。
  また、在日米軍提供財産については、その使用の実態に応じて返還の促進に努めてまいりたいと考えている。

5 企業による投機的な土地取得の抑制について所要の立法措置を講ずべく、政府は、第七十一回国会に、土地売買等の届出観告制及び特別規制地域における土地売買等の許可制の導入等を内容とする国土総合開発法案並びに土地の先買いに関する制度の対象区域を都市計画区域に拡大すること等を内容とする公有地の拡大の推進に関する法律の一部を改正する法律案を提出したところである。また、金融及び税制措置により、土地投機を抑制するため、土地融資の抑制並びに法人の土地譲渡益に対する特別課税及び特別土地保有税の創設を図つたところであり、当面、これらの措置により対処してまいりたいと考えている。
  次に、都市計画区域内の土地の開発許可制については、市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画が定められていない都市計画区域についても、開発許可制度を設けるべく、第七十一回国会に、都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律案を提出したところである。

6 提案された土地管理委員会は、執行機関としての任務を負うものと理解されるが、土地利用計画の作成あるいはその運用は、各行政分野にまたがる性質のものであり、単一の機能を有する委員会を設けるよりも総合的な執行機関である普通地方公共団体の長たる都道府県知事が担当することが適当と考える。
  また、国土総合開発法案では、土地利用基本計画の作成にあたつては、審議会及び市町村長の意見をきくこととしており、これによつて住民の意向を充分反映しうるものと考える。
  なお、土地利用基本計画について内閣総理大臣の承認を受けることとしたのは、土地利用基本計画の決定に当たつては、都道府県の自主性を認めつつも全国的な観点から各都道府県間のバランスをとる必要があることなどから、あらかじめ必要な調整を図ることとしたものであり、中央集権的な規制と介入を行う趣旨のものではない。

 右答弁する。




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