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答弁本文情報

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昭和四十八年十月十二日受領
答弁第二二号
(質問の 二二)

  内閣衆質七一第二二号
    昭和四十八年十月十二日
内閣総理大臣 田中(注)榮

         衆議院議長 前尾繁三郎 殿

衆議院議員上原康助君提出復帰一年後の沖繩問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員上原康助君提出復帰一年後の沖繩問題に関する質問に対する答弁書



一について

 1から3まで 政府は、沖繩の復帰に際し、県民生活に急激な変化や、無用な混乱を生じることのないようにとの配慮のもとに、復帰の円滑な実現と豊かな沖繩県の建設を期して、関係諸機関の総力を結集して復帰対策に取り組み、同時に沖繩の各界各層の意見を取り入れ、琉球政府と調整を行い復帰対策要綱を決定し、各分野にわたり暫定特別措置を講ずるとともに沖繩の振興開発に関する基本的な方針を定め、昨年十二月には沖繩県が作成した原案に基づき沖繩振興開発計画を決定しており、新しい県づくりへの歩みを着実に進めている。
 しかしながら、復帰直後の沖繩県においては、経済、社会等の各分野における諸種の変化のため県民生活にもさまざまな影響がみられたが、政府としては、諸分野における沖繩県の実情をふまえつつ、適時適切な対策を講ずるとともに、長期的観点から沖繩の振興開発を図るため引き続き努力を払つてまいりたい。

二ついて

1 海洋博は、国際海洋博覧会条約に基づく国際博覧会であり、世界で初めて「海洋」をテーマとして開催されることは、御承知のとおりであるが、この海洋博の目的は次のように要約できよう。

 (1) 沖繩県の本土復帰を記念する事業の一環であること。

 (2) 海洋博の関連公共投資による社会資本の充実を図り、もつて沖繩県の経済発展に多大の貢献をなすこと。

 (3) 海洋博を契機に、沖繩県をはじめとする我が国民の余暇需要に応えるとともに、沖繩県の観光振興に資すること。

 (4) 海洋国である我が国の今後の発展に必要な海洋開発技術の開発に資すること。
    こうした目的に沿つて現在、沖繩県及び市町村との協力のもとに海洋博の準備を鋭意進めているところであり、関係者の努力によつてこれらの目的は十分に達成し得るものと確信している。

2 海洋博は、沖繩の本土復帰記念事業の一環であり、本博覧会に関連して公共施設の整備を図ること等により沖繩の経済、社会開発を促進し、沖繩国民の福祉向上に大きく寄与するものである。また、これは世界で初めて海洋をテーマとする国際博覧会であり、国の内外から大きな期待が寄せられている。従つて、政府としては海洋博の推進に全力を傾注する所存であり、これを延期若しくは中止する考えは全くない。
  しかしながら、準備期間が比較的短いこともあり、沖繩の経済等に与える影響が強く、それに基づく混乱の懸念も理解できるので、海洋博推進対策本部の活動を更に強化し、対策の実を挙げていきたい。

3 海洋博は、沖繩県の本土復帰を記念するものであり、また、会期中、会期後も含めて地元沖繩県の振興開発、沖繩県民の福祉向上及び文化の振興に寄与することを第一義として開催されるものであり、国会における決議の御趣旨に則つて準備を進めている。
  また、とくに地元の負担に関しては、会場建設について国庫の負担割合を九十パーセントにまでする等、実情に応じて地元の財政負担の軽減に努めているところである。

4 海洋博は何よりも沖繩県民の福祉向上に寄与することをその主たる目的としており、海洋博関連事業は、沖繩の振興開発を図るうえでも必要不可欠のものであり、政府としてもその推進に努めているところである。
  しかしながら、2で述べたとおり、沖繩の経済や県民生活に与える影響についての懸念も理解できるので、海洋博推進対策本部の活動を更に強化するとともに、関係機関の協力により、迅速かつ的確な対策を講じ、振興開発計画の推進に最大の努力をする所存である。

三について

1 御指摘のように沖繩の農業は、土地基盤整備の遅れ、農業技術の低水準等種々の問題に当面しており、また最近他産業の急速な成長がみられるとはいえ、従来からも農業は、沖繩の基幹産業たる地位を占めており、地域の実情に即してその振興開発を図ることは、極めて重要であると考える。農業経営規模も、沖繩本島地域ではやや零細であるが都市近郊等立地上の有利性もあり、また宮古、八重山地域では、かなり大きい。
  従つて、今後の沖繩農業の振興開発の方向としては、合理的、計画的な土地利用により優良農地を確保し、沖繩が我が国唯一の亜熱帯地域であるという特性を生かして、土地基盤の整備、機械化の促進、農業技術の開発普及など、まず農業生産の基礎条件の整備強化を図ることなどにより、基幹作目であるさとうきびやパインアップルの生産性の向上を図るとともに、畜産、野菜などを振興し、作目の多様化を進めてまいりたい。

2 海洋博関連建設工事の促進のために他県からもかなりの人が参加し、沖繩における農産物の需要が増大する結果、生産の刺戟にもなり、沖繩の今後の農業生産及び農産物の流通改善に良い影響を与えることも考えられる。しかし、労働力不足から農家労働力の流出が行われ、農業経営の粗放化等の問題も生じている。
  このような事態に対処するため、海洋博関連事業の推進に当たつても農業等への影響に慎重に配慮するとともに、また併せて沖繩農業の基本的問題の解決に資するために、土地基盤の整備や機械化の推進による営農の省力化を進めてまいりたい。

3 さとうきびは、沖繩農業における基幹作物であり、甘味資源として重要であるので、その再生産が確保されるようさとうきびの最低生産者価格の決定に当たつては物価その他の経済事情を十分参酌してまいりたい。
  なお、価格決定のための各種の資料は、現在収集中である。

4 さとうきびの最低生産者価格の算定については、砂糖の価格安定等に関する法律に基づき、パリティ価格方式をとつているが、このパリティ価格方式は、さとうきびのように今後、技術改善、単位収量の増大、経営の合理化等の合理化の余地があり、また、その可能性が大きい作物については、農家の創意工夫によるメリットを享受することが可能であることから、これを採用しているものである。

5 甘味資源の国内生産の振興は砂糖の自給度を確保するために重要であり、これと併せ地域農業振興のため、政府は北海道並びに鹿児島県南西諸島及び沖繩県をそれぞれてん菜生産振興地域及びさとうきび生産振興地域に指定し、生産振興に努めてきている。
  復帰後社会情勢の変動が著しい沖繩においては農業労働力の流出、賃金の高騰等最近の情況はきびしいものがあるうえ、さとうきびは他作物に比し、多くの労働力を要することから、収穫作業の省力化を中心とした機械化の推進が急務となつている。
  従つて、収穫機械の緊急導入、生産組織の育成、土地基盤の整備、種苗対策等総合的な生産対策を推進するとともに価格対策の適切な運用とあいまつて農家経営の改善を図つてまいりたい。

6 パインアップルについては、沖繩の復帰と同時に果樹農業振興特別措置法の対象果樹として政令で指定し、果樹農業振興基本方針に加え、これに基づき、栽培の省力化、土壤の改良、優良種苗の普及等に積極的に助成するとともに、その植栽、育成資金の融通等生産の振興及び生産性の向上を図るための各種施策を実施しているところであり、また、パインアップル缶詰を非自由化品目としつつ、関税制度の運用等により、沖繩産パインアップルの積極的な保護育成を図つているところである。
  なお、パインアップル缶詰の輸入自由化については、パインアップルはさとうきびに次いで沖繩における重要な作目であり、合理化が十分行われていない現在においては、沖繩パインアップル産業に重大な影響を与えるので、これを行うことは考えていない。

四について

1 国土調査法に基づく地籍調査については、経済企画庁においてその事務を所管しているが、沖繩県には、土地の境界等が不明のため国土調査法に基づく地籍調査を実施することが極めて困難な地域が存在し、種々の問題を生じているので、当該地域については、さしあたり境界不明の実情を把握するとともに、境界明確化の具体的方策の検討に資するため、沖繩開発庁に予算を計上し、所要の調査を実施している。
  なお、問題の性質上、この作業に引き続き関係地権者の話し合いの場を作るなど、地籍の明確化のための方策を検討してまいりたい。

2 国土調査法に基づく地籍調査については、国がその事業に要する経費の三分の二を負担している。また、境界不明土地の調査については、その事業に必要な経費を国費をもつて支出できるよう予算措置を講じている。

3 施設区域についても、できる限り早期に、地籍が明確化されるよう努めたい。
  なお、地籍が不明確のまま返還された場合に採るべき措置については、今後検討いたしたい。

4 施設区域の一部返還に当たつては、御質問の線に沿つて努力いたしたい。

 右答弁する。




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