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答弁本文情報

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昭和五十二年五月二十四日受領
答弁第一七号
(質問の 一七)

  内閣衆質八〇第一七号
    昭和五十二年五月二十四日
内閣総理大臣 福田赳夫

         衆議院議長 保利 茂 殿

衆議院議員小川国彦君提出新東京国際空港公団による成田空港の二基の鉄塔の撤去問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員小川国彦君提出新東京国際空港公団による成田空港の二基の鉄塔の撤去問題に関する質問に対する答弁書



一について

(1)から(4)まで 新東京国際空港公団(以下「公団」という。)は、三里塚芝山連合空港反対同盟(以下「反対同盟」という。)に対し、千葉県山武郡芝山町岩山字金垣一八八二番二所在の鉄塔(以下「第一鉄塔」という。)及び同県同郡同町岩山字押堀一八九八番九所在の鉄塔(以下「第二鉄塔」という。)に関し、除去請求等を行つた。これに対し、反対同盟は公団に返信等を送付してきた。
    なお、公団から反対同盟以外の者に対し、第一鉄塔及び第二鉄塔の除去請求等を行つたことはない。
    公団からの反対同盟に対する除去請求等及びこれに対する反対同盟からの返信等の経緯は、次の表のとおりである。

公団からの反対同盟に対する除去請求等及びこれに対する反対同盟からの返信等の経緯


(5)及び(6) 第一鉄塔及び第二鉄塔(以下「本件各鉄塔」という。)が航空法第四十九条第一項の規定に違反して設置されたものであることから除去を求められている物件であるという事情に何ら変わりはなかつたものである。

(7) 公団の判断において行つたものと聞いている。

二について

(1) 御質問の工事実施計画変更認可申請書によれば、進入表面、転移表面若しくは水平表面の上に出る高さの物件又はこれらの表面に著しく近接した物件は、別表一のとおりである。
 これらの物件の存在等は、昭和四十七年四月に至り判明したものであると承知している。
 故意の設置等が行われた障害となる物件とは、本件各鉄塔であり、その設置が行われた時期は、第一鉄塔については昭和四十六年五月、第二鉄塔については昭和四十七年三月であると承知している。
 なお、「設置等」と記載されたのは、設置に付随する行為を含める意味であつたと承知している。

(2)
  (一) 新東京国際空港建設予定地及びその周辺地区では、空港建設反対派によつて立入りの実力阻止等の妨害活動が活発に行われた事情から、芝山町岩山地区等に立ち入つて進入表面、転移表面若しくは水平表面の上に出る高さの物件又はこれらの表面に著しく近接した物件の調査を行うことは極めて困難な状況であつた。芝山町岩山地区における最初の立入調査が行われたのは昭和四十五年九月三十日であり、昭和四十七年四月に至り、当該物件の存在等が判明したものであると承知している。

  (二) 御質問の刑事事件は、反対同盟に所属していた者による妨害活動の過程において生じたものであり、新東京国際空港建設にかかわる刑事事件としては七件目のものであつた。

(3)、(4)及び(6) 当初の資料によれば、障害となる物件はないとされていたが、その後の調査の進ちよくに伴い障害物件の存在等が判明した以上は、工事実施計画を変更することは当然のことであると判断した。

(5) 本件工事実施計画の変更についての審査に当たつては、航空機の離陸又は着陸に支障があると認めた物件は確実に除去することができると認めて、認可したものである。
    なお、工事完成の予定期日の変更については、工事の進ちよく状況にかんがみ、従前の認可に係る工事実施計画における工事完成の予定期日を一年三か月延伸することを認めたものである。

三について

 (一) A滑走路南側の航空保安施設用地の確保が遅れている事情から、公団は同側の着陸接地点を臨時に七百五十メートル内側に移して同滑走路を運用することとしたいとして、昭和四十七年四月二十八日に飛行場標識施設について設置基準と異なる方式によることの承認申請に及んだものであると承知している。
     同滑走路をそのように運用することとしても進入表面、転移表面及び水平表面に変更を生ずることはない。
     なお、このように同滑走路を運用すること自体はもとより安全なものである。

 (二) 設置基準と異なる方式によることの承認を受けている飛行場標識施設は、指示標識、滑走路中心線標識、滑走路末端標識、接地点標識、接地帯標識及び過走帯標識であり、これらの施設に係る工事は、昭和四十七年六月三十日に完了した。

四について

 昭和五十二年三月三十一日付けの釈明要求書については、公団において現在その対応について検討しているところであると聞いている。

五について

(1) 航空法第四十九条第二項の規定により除去を求めることができる物件は、同条第一項の規定に違反して、設置し、植栽し、又は留置した物件とされているから、同項に違反する物件が生じたときは、飛行場の設置者は、直ちに当該物件の除去を請求することができる。

(2) 昭和四十二年運輸省告示第三十号は、昭和四十二年一月三十日付け官報第一二〇三六号に掲載されている。

(3)、(4)及び(5) 新東京国際空港の供用開始の予定期日は、航空法第五十五条の三第二項において準用する同法第四十条の規定により、工事実施計画の認可の時点において供用開始が可能であると合理的に予定された日を告示し、及び掲示したものであり、既にその予定期日は経過しているが、可能な限り早期に開港するよう最大限の努力をしているところである。

(6)及び(7) 航空法第四十九条第一項の規定は、公共用飛行場に離着陸する航空機の航行の安全を確保するために物件の設置等を制限するものであるが、財産権に内在する制約の範囲内において財産権の行使が制限されたことに伴い所有者等に生ずる損失に対しては、憲法上は補償の必要がないと解されるから、同条の規定が御質問のように憲法違反のものであるとは考えていない。
    なお、新東京国際空港の供用開始が遅れているからといつて、同空港に係る同条の規定による物件の制限に関し憲法上の問題を生ずることはない。

六について

(1) 新東京国際空港公団法(以下「公団法」という。)附則第八条は、公団が昭和四十一年三月三十一日以前に設立されることを想定はしているが、同条は単に公団の最初の事業年度の期間を明確にする趣旨の確認的な規定であつて、公団の設立を同日以前に行うべきことを義務付け、あるいは、公団設立の前提である公団法第二条に基づく政令の制定を同日以前に行うべきことまでを義務付けている規定であるとは解されない。したがつて御指摘のような事態は生じていない。

(2) 公団の業務方法書の認可申請が遅れたのは遺憾であるが、業務方法書について認可を受けるべきこととされているのは公団に対する監督上の必要からであり、公団が法令の定めるところに従つて行つた各種の行為が、公団が業務開始の際業務方法書について認可を受けていなかつたからといつて、適法ではないとされることは、もとよりない。

(3)
  (イ)及び(ロ) 公団が設置する航空保安施設の工事実施計画の認可に関しては航空法第五十五条の三第一項の定めるところであり、同項後段は、公団が工事実施計画を変更しようとするときは運輸大臣の認可を受けなければならない旨を規定している。

  (ハ)、(ニ)及び(ホ) A滑走路南側の着陸接地点を臨時に七百五十メートル内側に移して同滑走路を運用することに伴い移設を要する飛行場燈火に係る工事は、昭和四十九年三月三十一日に完了した。この工事に係る工事実施計画の変更は、昭和五十一年十一月二十五日に認可している。

(4)
  (イ) 公団が本件工事を実施したことが、当時の消防法第四十二条第一項第一号に定める要件に該当していたとは認められない。

  (ロ) 公団が本格パイプライン用地及び暫定パイプライン用地について農地転用の許可を受けないで工事を行つた件については、その後農地転用の許可を受けたこと等にかんがみ、農地法違反としての刑事手続はなされなかつたものである。

(5)及び(6) 公団は、御指摘の仮処分事件において、当時の認識に基づいて工事の完成の予定等について主張したものであると聞いている。
     なお、裁判所の判断に係る事項については、答弁の限りでない。

(7)
  (イ)から(ニ)まで 新東京国際空港建設に係る用地買収に当たつては、昭和四十一年七月四日の閣議決定「新東京国際空港位置決定に伴う施策について」に基づき、営農を継続する意思のある農業者に対しては、国は、千葉県の協力を得て移転先等につき申出者の希望を尊重して所要の代替地を用意することとした。この方針の下に同県が用意した代替地が農業者の移転先として提供されてきたが、その後同県が用意した代替地で農業者の意向に沿うものが少なくなつてきたため、公団においても同県とは別に代替地を確保して提供することとしたものである。
     なお、現在同県において保有している土地で、代替地として提供可能なものの面積は、約百五十ヘクタールであると聞いている。

  (ホ) 公団の代替地業務は、公団法第二十条に規定する公団の業務の範囲内において農地法令上可能な範囲で行うものである。

  (ヘ) 農地法第三条第一項第三号、公団法第四十条及び公団法施行令第八条第一項第四号である。

  (ト) 農地法第五条第一項第四号及び同法施行規則第七条第十一号である。

  (チ) 農地法第三条、第五条又は第七十三条である。

  (リ) 都道府県が農地又は採草放牧地を取得する場合には、農地法第三条第一項第三号の規定により許可を要しない。

  (ヌ) 御質問のような個々の事案については、運輸大臣の了解、承認及び追認は必要とされていない。

  (ル)、(ヲ)及び(ワ) 公団の代替地業務に係る予算執行の責任者は、公団総裁であり、現公団総裁は、大(注)茂である。

(8)
  (一) 特定公共事業として建設大臣が認定することができる事業は、公共用地の取得に関する特別措置法(以下「特措法」という。)第七条各号のすべてに該当するものであることを要するが、新東京国際空港第一期建設事業は、設置される諸施設及び区域にかんがみれば、その起業地の範囲は適正であると判断し、同条の要件をみたすものとして特定公共事業の認定をしたものであつて、当該認定処分は、もとより違法あるいは無効とされるものではない。

  (二) 公団は、その後昭和四十七年六月、飛行場標識施設及び飛行場燈火について、それぞれ設置基準と異なる方式によることの承認を得て、同滑走路南側から進入する航空機に係る着陸接地点を臨時に七百五十メートル内側に移して同滑走路を運用することとしたが、これは、空港建設に対する反対運動等によりA滑走路南側の航空保安施設用地の確保が遅れている事情に基づくものである。
     なお、同滑走路は、このような運用の下においても、四千メートル全体が供用されるものであり、同滑走路の長さを三千二百五十メートルとしたことはない。

  (三) 新東京国際空港について航空保安施設が必要なことはいうまでもなく、既にA滑走路の当面の運用に必要な航空保安施設は設置されており、また、当初計画した同滑走路南側の航空保安施設についても早急に設置することとしている。

  (四) 新東京国際空港は第一種空港であり、当該空港に必要不可決な航空保安施設に関する事業は、特措法に基づく特定公共事業の認定の対象となり得るものである。

(9) 公団は、航空法第五十六条において準用する同法第四十九条第二項の規定により、同条第一項の規定に違反して、設置し、植栽し、又は留置した物件の所有者その他の権原を有する者に対し、当該物件を除去すべきことを求あることができるものである。

七について

 本件各鉄塔は反対同盟が建設し、及び所有するものであると認め、反対同盟の代表者にその除去を求めたものであると聞いている。なお、念のため事務局長にも通知したものであると聞いている。

八について

(1) 告示で示された進入表面等の上に出る高さの物件については、航空機の航行の安全確保の観点から、航空法第四十九条第一項ただし書の承認を受けて設置したもの等を除き、当該物件の設置等の時期にかかわりなく極力除去に努めてきたところである。

(2)及び(4) 御質問に係る障害物件に関する当面の安全対策等は、別表二のとおりである。

(3) 御質問に係る障害物件のうち現在訴訟により除去を求めているものはない。所有者との交渉等によつて除去できる見通しが立つかどうかは、交渉の経過等より個々具体的に判断するほかないと考える。

(5)、(6)及び(7) 航空法上、飛行場を設置し、又は飛行場について重要な変更を加える場合において飛行場の周辺に航空機の離着陸に支障があると認められる物件があるときは、工事完成の予定期日までに当該物件を除去することを要するとともに、公共用飛行場については、その設置又は変更につき告示があつた後においては、その告示で示された進入表面等の上に出る高さの物件の設置等は原則として禁止されている。

(8) 航空法第四十九条第一項の規定が、進入表面等の上に出る高さの物件の設置等を原則として禁止しているのは、公共用飛行場に離着陸する航空機の航行の安全を確保する必要からである。

(9)、(10)及び(11) 三沢飛行場については、航空法による進入地面等は設定されていないが、東亜国内航空(株)の航空機の離着陸に支障があると認められる物件はないものと判断している。なお、三沢飛行場を利用する東亜国内航空(株)の航空機の運航については、航空法による規制がなされており、その安全は確保されているものと考える。

 右答弁する。


別表一
別表一


別表二
別表二 1/6


別表二 2/6


別表二 3/6


別表二 4/6


別表二 5/6


別表二 6/6




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