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答弁本文情報

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昭和五十二年十一月十一日受領
答弁第八号
(質問の 八)

  内閣衆質八二第八号
    昭和五十二年十一月十一日
内閣総理大臣 福田赳夫

         衆議院議長 保利 茂 殿

衆議院議員島本虎三君提出合成洗剤の安全性等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員島本虎三君提出合成洗剤の安全性等に関する質問に対する答弁書



一について

1 御指摘の著作等における合成洗剤の急性毒性及び慢性毒性に関するデータは、合成洗剤の人体に対する有害性を証するものとは考えられない。

2(1) 御指摘の論文においては、マウスに対し合成洗剤を投与した後、肝細胞を電子顕微鏡により観察したところ、肝細胞の核小体の萎縮等をみたとされているが、一般に合成洗剤の慢性毒性試験においては、肝障害は発現しないことが確認されている。

 (2) 御指摘の報告書においては、LASには催奇形性があるとされているが、報告者を含む四人の研究者により昭和五十年に実施されたLASの催奇形性に関する合同研究では、催奇形性は認められないとの結論を得ている。
     また、御指摘の報告書においては、胎仔末梢血液中に白血病細胞を確認したとされているが、その実験条件は合成洗剤の人体に対する有害性を判定する上において適切なものとは考えられない。

 (3) 御指摘の論文の内容は、各種界面活性剤が微生物の抗菌性、炭素源利用性等に与える影響についてのものであり、毒性を評価するためには利用できない。

 (4) 御指摘の論文の内容は、採取したヒト精子をLAS等に暴露した場合に形態変化が認められたとのものであり、毒性を評価するためには利用できない。

 (5) 御指摘の著作における血液中の赤血球細胞膜の溶解作用に関する記述にはその根拠が示されていないため、評価をすることはできない。

 (6) 御指摘の著作においては、ABSに血清コレステロール値を上昇させる作用があるとされているが、その根拠とされている実験からそのような結論が得られるとは考えられない。

 (7) 御指摘の著作の内容は、高濃度の界面活性剤共存下では腸壁から吸収される化学物質の量が増加するとのものであり、合成洗剤の人体に対する有害性を判定する根拠とはならない。

 (8) 御指摘の論文においては、いわゆる川崎病の原因としてABSによる慢性アレルギー説が提唱されているが、現在のところ学界において大方の賛同は得られていない。

 (9) 御指摘の論文は、室内実験に基づき合成洗剤の水産生物に与える影響を述べているものであり、直ちに自然界における影響を示すものではない。しかし、これらの論文でも指摘されているように、合成洗剤の影響として、実験上、卵稚仔の発育及びえら呼吸機能に対する阻害作用等が知られているところである。

 (10) 御指摘の著作においては、合成洗剤は経皮吸収されるとされているが、厚生省が行つた合成洗剤の経皮吸収に関する実験によれば、吸収される量は極めて微量であるので、健康上問題はない。

 (11) 御指摘の論文においては、乳児寄生菌性紅斑は合成洗剤の使用に起因するものとされているが、一般には同疾患は乳児の肛囲又は陰股部の不衛生に起因するものと考えられており、合成洗剤が同疾患の発症要因であるとは考えられない。

  以上のことから、合成洗剤の人体に対する安全性について御指摘のような調査研究を行う考えはない。
  なお、水産生物に与える合成洗剤の影響については、水産被害の防止を図る観点から、調査研究等を行うことを予定している。

二について

1 LASについては、内外の実験結果に基づく総合的判断からその安全性が確認されており、通常の使用方法による場合は問題ないと考えている。

2 御指摘の合成洗剤に関する研究の研究結果は、現在、その取りまとめを行つているところである。

三について

1 一般には、合成洗剤がおむつかぶれの発症要因であるとは考えられていない。したがつて、実態調査を行う考えはない。

2 御指摘の物質を含め各種合成洗剤の安全性については、各種の調査研究を基に問題はないと考えているが、更に各種の毒性試験を実施し、その安全性の再確認に努めているところである。

3 台所用合成洗剤は、生鮮野菜に付着する細菌の除去等の観点から食品衛生上有用と考えるので、御指摘のような指導を行う考えはない。
  また、台所用合成洗剤による皮膚障害の防止については、家庭用品品質表示法に基づく使用上の注意事項の表示の義務付け等所要の措置を講じているところである。

4 卵殻を卵洗浄用洗剤で洗浄処理することにより、コレステロールが多量に吸収されることとなるとは考えられない。したがつて、卵洗浄用洗剤の規制について検討を行う考えはない。

5から7まで 御指摘のシャンプー、陽イオン系界面活性剤及び歯みがきについては、内外の実験結果に基づく総合的判断からその安全性につき問題はないと考えている。したがつて、被害の実態調査を行う考えはない。

8から10まで 御指摘の柔軟剤、増白剤等及び螢光剤については、現在のところその安全性につき問題はないと考えている。したがつて、使用禁止等の措置を講ずる考えはない。

11 フロンガスは、成層圏にまで拡散し、成層圏内でオゾンと反応してオゾン量を減少させるため、地表面に到達する紫外線量が増加し、その結果皮膚ガンの発生率が増加するという理論を米国内の一部の学者が主張している。この理論については、我が国を含め各国で調査研究が行われているが、いまだ前述のようなフロンガスの有害性についての結論を得るに至つていない。
   また、御指摘の有機溶剤及び非イオン系界面活性剤に起因する健康被害例については承知していない。
   したがつて、現在のところスプレー洗剤の販売禁止の措置を講ずる考えはない。

12 洗たく用石けん等は、従来家庭用品品質表示法の規制対象としていなかつたが、消費者の要望及び実態に即するため、製品及び家庭用品品質表示審議会の審議を経て、昭和五十一年十月八日同法に基づく政令及び告示の改正を行い、これらをも対象とすることとしたものである。この改正の際、石けんに三パーセント未満の他の界面活性剤が混入している石けんを含めることとした理由は、石けんの生産者はほとんどが中小企業者であり、その中には石けんと合成洗剤を同一の設備で製造しているものもあるため、製造製品の転換時に石けんの中に微量の合成洗剤が混入する場合があり、これを防ぐことが技術的に困難であること及び三パーセント未満の純石けん分以外の他の界面活性剤が混入した場合においても洗たく用石けんの品質には何ら差異がみられないことによるものである。
   なお、三パーセント未満の他の界面活性剤を含む石けんについては、その旨の表示を義務付けることにより、他の界面活性剤を全く含まない洗たく用石けんと明確に区別できるようにしている。

13 公正取引委員会は、現在、業界に対し合成洗剤の表示に関する公正競争規約の設定を指導中であるが、この規約において不適切な表示は使用しないようにする方向で検討しているところである。

四について

1 厚生省は、合成洗剤が衣類に残留することはないという見解を示したことはない。

2 台所用合成洗剤については、食品衛生法に基づき使用基準が定められており、従来から監視指導を行つているところである。

3 陰イオン系界面活性剤についての水道水の水質基準は、水道水の使用に当たり発泡しないことを要件として定められたものであるが、この基準の安全性については十分に確認されているところである。なお、WHOが定めた水質基準では、望ましい基準値を〇・二ppm、許容基準値を一・〇ppmとしている。
  その他の界面活性剤についても、その安全性につき特に問題はないと考えている。

4 学校教育においては、小学校の家庭科、中学校の技術・家庭科等で洗剤の種類、特徴、成分、用法等を児童生徒の発達段階に応じて学習することとしており、合成洗剤の使用上の注意等はこれらの学習の中で取り扱われているところである。

5 学校給食における衛生管理については、各般にわたり指導しているところであるが、合成洗剤を使用する場合には、必要に応じ使用する液の濃度、浸漬時間、すすぎの方法等に留意して使用するよう指導しているところである。
  なお、学校給食設備整備の補助に際しては、液状、固形又は粉末の石けんの使用も可能である洗浄器もその対象としている。

6 繊維の加工処理に際しては、使用する化学薬品について事前にその安全性を確認した上で使用するよう厚生省において従前から必要に応じ指導しているところであるが、御指摘の化学薬品は、繊維の加工処理以外の目的にも広く使用されているため、製造及び販売段階で一律に規制を行うことは適当でないと考える。

7 医薬品及び化粧品に使用される界面活性剤については、従来から安全性が十分に確認されたものに限定して使用を認めているところである。また、食品添加物として使用を認められている界面活性剤については、その安全性は十分に確認されている。

8 赤潮については、その発生機構が必ずしも十分に解明されていないが、燐は赤潮発生条件の一つとされている富栄養化の要因物質の一つであるといわれており、その排出源としては種々のものが考えられ、これら排出源について総合的な対策が必要であると考えられる。
  合成洗剤中の燐酸塩については、政府の行政指導により、その低減化を図つてきたところである。その結果、合成洗剤に使用されたトリポリ燐酸塩の量は昭和四十九年には十二万八千トンであつたが、昭和五十年には七万五千トン、昭和五十一年には七万二千トンと減少してきており、これを合成洗剤中の燐酸塩の比率(無水燐酸に換算しての比率)でみれば昭和四十九年には約十二パーセントであつたが昭和五十年には約十パーセント、昭和五十一年には約九パーセントであつたこととなる。なお、今後とも更に一層合成洗剤中の燐酸塩の低減化について行政指導を行うこととしている。
  工場又は事業場から排出する燐の規制については、技術的対応の可能性等を考慮して検討することとしており、排出源の実態、排出水の水質レベル、処理技術の実態、規制の効果等について調査を進めているところである。
  赤潮による漁業被害の救済については、昭和四十九年に漁業災害補償法を改正し、異常な赤潮被害の際にも共済金を支払う赤潮特約を養殖共済契約に付することができる制度を設けるとともに、当該特約に係る掛金については全額公費(国三分の二、地方公共団体三分の一)により負担することとしたところである。

9 水質汚濁による農業被害は、生活排水等の都市汚水によるものがその大宗を占めており、その要因の大部分は、生活排水中の窒素による窒素過多と考えられる。このような状況に対処するため、都市汚水等不特定多数の汚濁源による被害が生じ緊急に水質改善を必要とする地区については、被害対策として取水源の転換、用水路と排水路との分離等を実施してきている。
  また、長期的な対策として下水道の整備等により生活排水による水質の汚濁の防止に努めてきているところである。

10 合成洗剤は、通常の使用方法により使用する限り、その安全性について問題のないものであり、また、石けんを使用する場合においては、有機物汚染量が増加するおそれがあること、牛脂等石けん原料資源に限界があること等の難点があることから、全面的に合成洗剤に代えて石けん等の代替品への移行を促進する必要はないものと考える。
   なお、政府としては、石けんの生産、販売等が消費者の需要にこたえられるよう配慮しているところである。

11 日本石鹸洗剤工業組合において、実験的に家庭廃油と石けんとの交換を実施し、回収した家庭廃油の再利用の可能性を検討していると承知している。
   しかし、回収、精製等に多額の費用が必要であることから製造コストが高くなるため、工業的規模で家庭廃油を原料として石けんを製造することは極めて困難な状況にあると聞いている。

12 なたね油は、現在のところ主として食用として使われており、将来とも直ちに石けん原料として使用されるとは考えられないが、なたねについては、従来からなたね生産技術の改善とその普及を図るとともに、大豆なたね交付金暫定措置法に基づき価格対策を講ずる等その生産振興に努めているところである。

 右答弁する。




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