衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
昭和五十四年六月二十七日受領
答弁第五二号
(質問の 五二)

  内閣衆質八七第五二号
    昭和五十四年六月二十七日
内閣総理大臣 大平正芳

         衆議院議長 (注)尾弘吉 殿

衆議院議員上田卓三君提出一般消費税導入の動きに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員上田卓三君提出一般消費税導入の動きに関する質問に対する答弁書



 一般消費税(仮称)については、昨年十二月税制調査会からその導入についての答申を受け、政府においては、現在、同答申の「一般消費税大綱」を踏まえて、その具体的仕組みを検討中であるが、それぞれの質問について現段階での考え方を述べれば、以下のとおりである。

一について

 我が国財政は、石油危機をきつかけとする経済の停滞により租税収入の水準が落ち込んだにもかかわらず、歳出面では雇用の安定と景気の回復等を図る必要から適切な規模を確保せざるを得なかつたため、昭和五十年度以降、大量の公債に依存する異常な状況にある。このまま安易に財政赤字を積み重ねれば経済にインフレ要因を持ち込み、経済そのものの安定成長を阻害するおそれがあるので、我が国経済の健全な発展のために財政を再建することが緊要な課題となつている。
 財政再建のためには歳出の節減合理化や税負担の公平確保に努めなければならないことは当然であるが、現在の財政収支の不均衡はこれらの努力のみでは到底解決が期待し得ないまでに至つており、一般的な税負担の引上げを図ることが必要である。その場合、他の増収対策にはいずれも限界があるところから一般消費税を導入せざるを得ないと考える。
 一般消費税による歳入の増加は昭和五十四年度ベースで税率一パーセント当たり約六千億円程度と見込まれ、国、地方を通ずる財政収支の改善に著しく寄与するものと考える。

二について

 一般消費税は財貨・サービスの消費に対して負担を求めようとするものであるから、その税負担を所得を基準としてみる場合には、ある程度逆進的な傾向を有することは否定できない。
 しかしながら、家計消費において、その占めるウエイトが高く、かつ、所得の低い人ほど支出の割合の高い食料品を非課税とすることを予定しており、一般消費税の負担の逆進性や家計への影響はこれによつて大幅に緩和されることになると考えられる。
 また、税負担の累進性、逆進性については、一般消費税のみで判断すべきではなく、税体系全体更には歳出をも含めた財政全体で判断すべきであると考える。
 なお、税体系において、直接税、間接税をどのように組み合わせるのが最適かということは、一概に言える問題ではないが、直接税、間接税ともそれぞれ長所、短所を有していることを考えれば、いずれか一方に余りに偏ることは適当でないと考える。

三について

 一般消費税は、財貨・サービスの消費に対して負担を求めようとする消費税である。土地や有価証券については、消費の対象となるものではなく、これらの売買は単なる資本の移転であることからみて一般消費税を非課税とすることを予定しているものである。
 また、金融取引に伴う受取利子や受取保険料については、その基本的性格からして、一般消費税の課税対象としてはなじみにくいこと等から非課税とすることを予定しているところであり、一般消費税を採用している国においてはすべて非課税として取り扱われている。
 なお、税負担の公平確保については、政府としてもかねてから格段の努力を払つてきており、特に昭和五十四年度税制改正においては、社会保険診療報酬課税の特例を是正し、有価証券譲渡益課税を強化するとともに、企業関係についても、価格変動準備金の段階的整理を始めとして各種の租税特別措置の整理合理化を行う等各般の措置を講じたところである。

四について

 一般的にいわゆる消費税の課税においては、「消費地課税主義」が国際的な原則とされている。すなわち、国内における財貨・サービスの消費に課税し、国外で消費される財貨等については課税しないという考え方である。
 輸出取引についてはこれを非課税とし、これに対応する仕入れに係る税額について還付を行うことを予定しているのは、前述の原則からみると当然と考えられ、輸出取引を行う者を特に優遇しようとするものではない。

五について

 一般消費税の導入に伴い、物品税について具体的にいかなる調整を行うかについては、一般消費税の導入前後を通じて総合税負担が基本的に変わらないよう物品税の税率の引下げ等を行う方向で、現在検討中である。
 消費税は本来消費者への転嫁を予定する税であるから、仮に一般消費税の税負担相当分の物品税の税率の引下げが行われるとしても、それは、価格に上乗せして消費者に転嫁すべき税額の減少をもたらし、その減少税額分だけ物品税の納税義務者の販売価格は当然に引き下げられることになるのであるから、このことをもつて企業優遇であるという見方は当たらない。

六について

 前述したように、一般消費税を導入した場合における一般消費税と物品税との具体的調整については検討中であるが、現在物品税の高い税率が適用されている特定の物品については、物品税について必要な調整を行い調整後の引き下げられた税率による物品税に加え一般消費税が課税されることになろう。
 なお、一般消費税の仕組みの検討に当たつては、納税者と税務当局の双方の事務負担の軽減を図るよう種々の配慮を行うことを考えている。

七について

 一般消費税は原則としてすべての財貨・サービスの取引に対して単一の税率で課税しようとするものであり、これによりすべての財貨・サービスの対価が原則として税率相当分だけ一律に上昇することとなると考えられるので、下請業者等特定の者が特に一般消費税を転嫁することができないということにはならないと考える。
 なお、中小事業者については事務的対応力も乏しい面があること等から、年間売上高二千万円以下の小規模零細事業者は、納税義務者から除外することを予定しており、更には納税義務者となる中小事業者についても、年間売上高四千万円以下の場合には、課税の影響を緩和するために納付税額の一部を軽減するいわゆる限界控除制度を設けることを予定している。

八について

 一般消費税は財貨・サービスの消費に対して負担を求めようとするものである以上、消費者の所得水準等の事情を考慮することができないことはやむを得ないところである。
 なお、前述のように、食料品、社会保険医療及び社会福祉事業については、可能な限り非課税とする措置を講ずる予定である。

九について

 食料品については、その非課税の具体的範囲について、現在検討中であり、おおむね人の飲食の用に通常供されるものについては非課税にすることを予定しているが食料品の包装代や運送費等の流通経費については、一般消費税が課税されることになる。
 飲食店における飲食行為については、現在地方税である料理飲食等消費税が課せられているので、同税と一般消費税との調整が問題となるが、この点については、税制調査会の意見を踏まえ、料理飲食等消費税を存続させ一般消費税を併課しない方向で、現在検討中である。

 右答弁する。




経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.