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答弁本文情報

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昭和五十八年四月五日受領
答弁第一二号
(質問の 一二)

  内閣衆質九八第一二号
    昭和五十八年四月五日
内閣総理大臣 中曽根康弘

         衆議院議長 福田 一 殿

衆議院議員林百郎君提出中小業者への強権的税務行政に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員林百郎君提出中小業者への強権的税務行政に関する質問に対する答弁書



一について

 所得税法第二百三十四条第一項の規定による質問検査権は、所得税に関する調査について必要がある場合に、同項各号に掲げる者又はその者の事業に関する帳簿書類その他の物件について行使し得るものである。なお、この質問検査権は、適正な課税を実現する行政目的のために行使し得るものであるが、同条第二項において、犯罪捜査のために認められたものと解してはならないとされている。
 これに対し、国税犯則取締法第二条第一項の規定による調査は、国税に関する犯則事件を調査するために必要があるときに、裁判官の許可を得てする強制調査であり、告発を終局的目的として行うものである。

二について

 御指摘の三事例について申し上げると、

(1) 中京税務署の件については、
    調査担当者と納税者の間であらかじめ約束した日に、所得税調査のため事業所に臨場した際、納税者本人の在宅の有無を確認する必要があることから、作業場の入口まで入室したものである。
    なお、本件については、納税者から損害賠償を求める民事訴訟が提起され、現在、裁判係属中である。

(2) 仙台国税局の件については、
    納税者とともに事業に従事し、特に、納税者本人が入院中は納税者本人に代わつて、現金、預貯金等の管理を行つている納税者の妻と長男に対し来意を伝え、その承諾の下に、現金や預貯金の在り高及び取得資産の契約書等の関係書類の確認を行つたものであり、その際、家人を「不当に引き止めた」り、「二人がかりで犯罪者扱いをした」という事実はない。
    なお、税務調査において、財産の増減や収支の裏付けとなる預貯金等の資金出所を解明するため、必要な質問を行うことは許容されるところである。

(3) 伊那税務署の件については、
    調査法人の営業の実態等を把握するため、調査日現在の現金や預貯金の在り高及び営業関係の関係書類等の確認を、食堂及び事務所内で代表者の承諾の下に行つたものであり、代表者の意向について「まつたくこれを無視して、この書類ケースのすべての引出しを開け」たという事実はない。
    なお、所得税法第二百三十四条第一項の規定による質問検査権の行使の限界は、一についてにおいて述べたとおりである。

三について

1 税務行政については、従来から、納税者の理解と協力を得て、適正な執行に努めてきたところであるが、今後とも、この方針を堅持してまいる所存である。
  なお、一般の税務調査に当たつては、原則として、調査日時をあらかじめ通知するとともに、必要に応じ概括的な調査理由を開示することとしているところである。
  しかし、的確な税務調査を行う上で、事前通知を行うことが不適当な場合もあり、また、調査事項を限定するような具体的な調査理由を開示することはできない。このことは、第七十二回国会における請願(中小業者に対する税制改正等に関する請願)に対する内閣の処理意見としても述べたところである。

2 二についてにおいて述べたとおり、本件に関する税務調査において、行き過ぎと認められるような事実は確認されなかつた。

3 税務大学校及び税務署においては、所得税法第二百三十四条に規定する質問検査権の意義及び性格等について最高裁判所の判例をも取り入れて講義、研修を行つている。

4 質問検査権を行使して税務調査を行う場合の税務職員の心得については、従来から、納税者と税務当局との間の信頼関係を確立することを基本に、納税者の理解と協力を得ながら調査を進めるよう指導しているところであるが、今後とも、このような指導を徹底していく考えである。

 右答弁する。




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