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昭和六十年十一月十二日受領
答弁第五号

  内閣衆質一〇三第五号
    昭和六十年十一月十二日
内閣総理大臣 中曽根康弘

         衆議院議長 坂田道太 殿

衆議院議員浦井洋君提出血液製剤による血友病患者へのエイズ感染の現状と安全確保に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員浦井洋君提出血液製剤による血友病患者へのエイズ感染の現状と安全確保に関する質問に対する答弁書



一の1について

 昭和六十年十月末までに厚生省のAIDS調査検討委員会が後天性免疫不全症候群(以下「エイズ」という。)と判定した患者は十一人であり、このうち血友病患者は五人であつた。
 また、昭和六十年六月までに約四百人の血友病患者について行つた調査によれば、エイズ抗体の保有率は約三十パーセントであつた。
 なお、エイズ関連症候群の定義については、いまだ確立していない状況にあるが、いわゆるエイズ関連症候群の状態にある者の数は、エイズ抗体の保有者の数より少ないものと考えられる。

一の2について

 昭和五十九年度から、都道府県及び医療機関の協力を得て、エイズの疑いのある患者の情報を収集し、AIDS調査検討委員会の判断を踏まえ、都道府県等に必要な指示を行つている。
 また、昭和六十年七月には、都道府県及び医療機関の参考に資するため、患者発生時の感染防止等に関する留意点を都道府県に通知したところである。

二の1について

 血液製剤によるエイズ感染防止のために、これまでに次のような施策を講じてきている。
(一) 昭和五十八年度において、厚生省に後天性免疫不全症候群(AIDS)の実態把握に関する研究班を設置し、同研究班がエイズ診断基準を定めた。
(二) 昭和五十八年八月に、血液製剤の輸入販売業者に対し、エイズウイルスによる汚染のおそれのない旨の証明のある血液製剤のみを輸入するよう指導した。
(三) 昭和五十八年十一月に、血液製剤の製造業者及び輸入販売業者に対し、エイズウイルス不活化のため加熱処理した凝固因子製剤の開発について要請を行つた。
    なお、加熱処理第VIII因子製剤の製造・輸入申請については、優先審査を行い、昭和六十年七月に承認を行つた。
(四) 昭和六十年十月に、日本赤十字社及び都道府県に対し、男性同性愛者等エイズハイリスクグループからの採血を避けるため、献血時における問診の強化を指示した。
(五) 昭和五十九年十月から、血液事業検討委員会において、エイズ対策を含む我が国の血液事業の諸問題について検討を行い、昭和六十年八月に中間報告を出した。

二の2について

 血液製剤は医療上不可欠なものであり、国内における自給が十分でない現状を考慮して、輸入禁止措置は採らなかつたものである。

二の3について

 原料血漿及び血漿分画製剤の輸入に当たつては、加熱処理されることが明らかな一部の血漿を除き、エイズウイルスによる汚染のおそれのない旨の証明があつたもののみを輸入させることとしており、現に証明書の添付がすべてなされている。

二の4について

 昭和六十年三月に、日本赤十字社に対し、乾燥抗血友病人グロブリンの製造承認を行つたところであり、国内血液を原料とする製剤の供給拡大を図つている。

二の5について

 血液製剤の投与によつて発症するエイズ及び関連症状については、エイズウイルスにより汚染された血液を原料とする製剤を用いた結果であり、医薬品の副作用ではないと考えている。
 なお、エイズの疑いのある者の情報については、厚生省に報告されることになつている。

三の1について

 加熱処理製剤(第VIII因子製剤)については、中央薬事審議会において十分審議を行つた結果、製剤中のエイズウイルスの不活化が確認されている。
 また、たん白変性等による副作用については、動物試験及び臨床試験の結果から、非加熱製剤と差はないことが明らかにされている。

三の2について

 血友病B患者のための加熱処理凝固因子製剤については、現在、中央薬事審議会において審査を行つているところであり、本年中に承認される見通しである。

四の1について

 エイズ抗体検査試薬については、現在、中央薬事審議会において審査を行つているところであるが、新規の検査試薬であるため、承認の時期の見通しを現段階で明らかにすることは困難である。

四の2について

 エイズ抗体検査試薬が、患者の診断、治療に有効なものとして薬事法上承認されることとなれば、健康保険法上の療養の給付の対象にしてまいりたい。

四の3について

 現在、エイズについては、根治療法は確立されておらず、抗生物質、免疫賦与剤等による対症療法が行われている段階にあり、厚生省のエイズに関する研究班等において治療法を含む諸外国の情報の収集に努めているところである。
 これらの研究班等に係る予算は、昭和五十八年度約四百五十万円、昭和五十九年度約八百五十万円であり、昭和六十年度については、昭和五十九年度とほぼ同額を予定している。

五の1及び2について

 血液製剤の国内自給を高めるための年次計画については、血液事業検討委員会の中間報告の提言を踏まえ、現在、関係者と協議を行いつつ検討を進めているところである。

五の3について

 現在、血液事業検討委員会の中間報告の提言を踏まえ、関係者と協議を行いつつ検討を進めているところであり、この結果を待つて、日本赤十字社に対し、必要な指示を行うこととしている。

五の4について

 民間製薬会社の能力の一時活用の規模及び方法については、現在、関係者と協議を行つているところであるが、血漿分画製剤の国内自給体制の早期確立のため必要な措置であり、国民及び献血者の理解が得られるものと考えている。

六の1について

 献血された血液のエイズウイルス抗体に関する調査研究では、これまで抗体陽性者は発見されておらず、現段階では献血の血液を検査する必要はないと考えているが、なお、今後の推移を慎重に見守ることとしている。

六の2について

 昭和五十八年度に行われた全国の供血者における成人T細胞白血病ウイルスの抗体保有状況調査によれば、その陽性率は九州で約三パーセント、その他の地方で〇・〇八から〇・三パーセントと推定されている。
 その対策としては抗体検査によるスクリーニング等が考えられるが、検査の方法及び体制の確立、陽性者への保健指導等なお検討すべき問題があり、現在検討を進めているところである。

七の1について

 厚生省血液研究事業において、六年間にわたり多数の供血者の協力を得て四百ミリリットル全血採血を実施し、専門家による検討を行つたところ、副作用及びその発生率は、二百ミリリットル全血採血の場合と差はなく、安全に行えることが明らかにされている。

七の2について

 四百ミリリットル採血及び成分採血を実施するため、国、地方公共団体及び日本赤十字社が一体となつて、その意義及び安全性について、普及啓発活動を行い、国民の理解と協力を得ることとしている。

七の3について

 四百ミリリットル採血及び成分採血に従事する医師、看護婦等に対し、採血技術の研修等を行うことを考えている。

 右答弁する。




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