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昭和六十二年十月九日受領
答弁第三八号

  内閣衆質一〇九第三八号
    昭和六十二年十月九日
内閣総理大臣 中曽根康弘

         衆議院議長 原 健三郎 殿

衆議院議員小澤克介君提出ソ連原子力発電所事故調査報告に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員小澤克介君提出ソ連原子力発電所事故調査報告に関する質問に対する答弁書



一の1について

 ソヴィエト連邦チェルノブイル原子力発電所事故(以下「チェルノブイル事故」という。)に関するソヴィエト連邦政府の報告及び情報について、原子力安全委員会ソ連原子力発電所事故調査特別委員会がソ連原子力発電所事故調査報告書(以下「事故調査報告書」という。)を取りまとめるまでの間に政府が入手したものは、国際原子力機関の国際原子力安全諮問グループがソヴィエト連邦政府代表者との質疑も踏まえて作成した報告書、ソヴィエト連邦原子力発電省ルコーニン大臣が本年四月日本原子力産業会議の年次大会において行つた講演の議事録等がある。

一の2について

 政府は、各国のチェルノブイル事故に関する検討結果の入手、関連する国際会議への専門家の派遣等チェルノブイル事故に関する情報の入手に努力してきたところである。また、ソヴィエト連邦政府に対し我が国政府の調査団の受入れを要請してきたが、いまだにソヴィエト連邦政府との間での合意は得られていない。引き続き、ソヴィエト連邦政府に対する前記調査団の受入れを要請するとともに、チェルノブイル事故に関する情報の収集に努力する所存である。

一の3について

 ソヴィエト連邦政府が国際原子力機関に報告した空間線量率等の情報については、我が国も国際原子力機関から入手している。その内容は、チェルノブイルの南東六十八キロメートルに位置するオスター並びにソヴィエト連邦西部国境沿いのレニングラード、リガ、ビルニュウス、ブレスト、リボフ及びキシニヨフの七地点において昨年五月九日から十月二十七日までの間において測定された空間線量率、気温、露点温度、風向、風速及び降雨量である。

二の1について

 事故調査報告書の記述の根拠資料の開示については、委員会等の場における専門家の自由な発言及び資料の開陳を阻害せず、安全に関する審議が十分なされることを確保するという観点等から、資料によつては公表することが適当でない場合もあり得ると考えられる。

二の2イについて

 炉心内の冷却水及びジルコニウムが、原子炉建屋内で爆発を起こさせるだけの水素を生成させるのに十分な量であつたと推測されること、一次冷却系配管の多数の破断口から水素が一次冷却材とともに建屋内に噴出したと推測されること等から水素爆発が起こり得たと考えられる。

二の2ロについて

 ソヴィエト連邦政府が国際原子力機関に報告したところによれば、炉心外への大規模な燃料放出及び黒鉛ブロックへの二酸化ウランの入り込みは認められないとされているため、国際原子力機関の国際原子力安全諮問グループの報告書にいう出力暴走による場合も含めて、事故調査報告書では、炉心内で炉心を破壊するほどの爆発が生じたとは考え難いとしている。

二の2ハについて

 我が国の原子力発電所のうち、加圧水型原子炉、沸騰水型原子炉及びガス冷却型原子炉の反応度出力係数の値は、これらの原子炉が我が国に導入される以前から、長年の開発過程を通じて整備され、その妥当性が確認されている計算コードにより、全出力領域で負であることが確認されている。
 また、新型転換炉原型炉「ふげん」の反応度出力係数の値は、動力炉・核燃料開発事業団大洗工学試験センターの重水臨界実験装置及び「ふげん」と同型の英国の重水炉のための臨界実験装置による炉物理試験により妥当性の確認された計算コードにより、全出力領域で負であることが確認されている。
 さらに、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の反応度出力係数の値は、「もんじゅ」の炉心を模擬した英国の臨界実験装置等を用いた炉物理試験及び実験炉「常陽」の性能試験による解析により、妥当性の確認された計算コードにより、全出力領域で負であることが確認されている。

三の1について

 シビアアクシデントは、様々な事象を組み合わせることにより、無数の観念的な事故シナリオを設定し、想定し得るものである。米国原子力規制委員会等においても数多くの事故シナリオを設定した研究が実施されている。我が国においては、

(一) シビアアクシデント現象を把握するための実験
(二) シビアアクシデント現象を解析するための計算コードの開発
(三) 確率論的安全評価手法の開発

が実施されている。前記(一)及び(二)については、特定の事故の全過程を対象とするのではなく、苛酷な条件下に置かれた燃料の変化、燃料からの核分裂生成物の放出及び移行、格納容器等の挙動等の個々の現象を把握するため実験及び解析をしようとするものである。また、(三)は様々な仮定を置き、理論的に起こり得る特定の事故の全過程を描き、その発生確率と影響を試算しようとするものである。
 しかし、少なくとも(一)及び(二)の研究が進行中の現段階においては、シビアアクシデントについて意味のある放射能放出量を提示する段階ではない。
 また、以上に述べたシビアアクシデントの研究は、その現実の発生を想定した事故対策についての研究まで含むものではなく、原子炉施設の安全裕度の評価等に関する技術資料を得るために行つているものである。

三の2について

 最近我が国において実施された特殊試験の例としては、(一)主蒸気安全弁のシート面の密着性調整のための手動開試験、(二)制御棒駆動装置のスクラム排出容器のドレン弁及びベント弁の作動確認のための試験、(三)蒸気発生器水位制御系の応答性確認のための試験等がある。
 特殊試験については、(一)核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第三十七条に基づき認可された保安規定において運転上の制限及び条件を定め、その範囲内でのみ実施できることとしていることに加え、(二)保安規定に定められた手続にのつとり、十分な安全確保のための措置を含めた計画を作成し、それに基づき実施すべきものとされており、安全上の問題はないと考える。

三の3について

 「人為ミス」の定義・範囲は必ずしも明確でないが、原子炉の運転停止に至つた原因が、運転に際しての誤操作又は不適切な操作であるものとしては、これまでに次の七件がある。

@ 昭和四十七年二月一日、日本原子力発電株式会社敦賀発電所一号機において、計装用電源の切替操作の際、十分な確認をせずに切替操作を行つたこと。

A 昭和五十三年十一月二十一日、東京電力株式会社福島第一原子力発電所四号機において、計装用電源回路の切替スイッチを誤操作したこと。

B 昭和五十七年七月二十日、関西電力株式会社大飯発電所二号機において、原子炉停止操作中、給水流量の調整操作が遅れたこと。

C 昭和五十八年八月二十六日、東京電力株式会社福島第一原子力発電所五号機において、計装用電源を切り替えた際、誤操作したこと。

D 昭和五十八年十一月一日、関西電力株式会社大飯発電所一号機において、タービン過速度試験の際、速度上昇操作が早すぎたこと。

E 昭和六十一年二月十三日、動力炉・核燃料開発事業団新型転換炉ふげん発電所において、原子炉起動操作中給水流量の調整操作が遅れたこと。

F 昭和六十一年八月二十二日、関西電力株式会社高浜発電所二号機において、タービン起動の際、誤操作したこと。

 右のいずれの場合においても、原子炉は設計どおりに安全に停止している。
 なお、我が国法制上「運転規則」という用語は存しないが、安全確保のため遵守が義務付けられている保安規定に違反したことが原因となつて原子炉停止に至つた事例はない。

四について

 発電用原子炉及びその附属設備に係る定期検査は、電気事業法施行規則(昭和四十年通商産業省令第五十一号)第五十六条の規定により、前回の定期検査終了の日から一年を経過した日の前後一月を超えない時期までに開始すべきものとされているが、この規定に違反した事例はない。
 なお、運転中でなければ実施できない検査を実施するために、定期検査期間末期に定期検査の一環として、原則一か月を超えない期間での調整運転を認めることとしている。このため、運転期間自体については、十三か月を超える場合があるが、法令上問題となるものではない。

 右答弁する。




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