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答弁本文情報

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平成四年九月八日受領
答弁第二号

  内閣衆質一二四第二号
    平成四年九月八日
内閣総理大臣 宮澤喜一

         衆議院議長 櫻内義雄 殿

衆議院議員長谷百合子君提出毒物及び劇物取締法に基づく六フッ化ウランの劇物指定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員長谷百合子君提出毒物及び劇物取締法に基づく六フッ化ウランの劇物指定に関する質問に対する答弁書



一について

 厚生省は、動力炉・核燃料開発事業団(以下「動燃」という。)の毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号。以下「毒劇法」という。)違反の事実を、平成四年二月五日、岡山県からの報告により承知したものである。

二について

 岡山県から厚生省への報告の内容は、お尋ねのとおりである。

三について

 厚生省は、岡山県からの報告を受け、動燃から事実の経過について説明を聴いた。これにより確認された事実は、電力会社から委託を受けた濃縮六ふっ化ウラン製造の際に生じた劣化六ふっ化ウランを動燃が譲受していたこと、及び動燃が製造した六ふっ化ウランを他社に販売していたことである。

四について

 動燃から、三についてにおいて述べた事実の経過について説明を聴いた時点である。

五及び六について

 動燃は、毒劇法第三条第一項の製造業の登録(以下「製造業の登録」という。)の申請に際して、製造した天然六ふっ化ウランを販売又は授与する計画がないこと、及び販売又は授与の目的が生じた場合には毒劇法に基づく所要の手続を行うことを厚生省に回答しており、販売又は授与の目的がない場合には、製造業の登録及び毒劇法第三条第三項の販売業の登録(以下「販売業の登録」という。)のいずれも必要としないからである。

七について

 厚生省は、動燃に対し、天然六ふっ化ウランを含め、毒物又は劇物を販売又は授与の目的で製造する場合には製造業の登録を必要とし、また、毒劇法第三条第三項の毒物劇物営業者以外の者に毒物又は劇物を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵、運搬若しくは陳列する場合には販売業の登録をも必要とすることを、既に指導しており、お尋ねの動燃の理事長の答弁も、この指導を前提にしてなされたものと理解している。

八について

 岡山県は、製造業の登録の申請を行った動燃の人形峠事業所の設備を確認するために立入調査を行ったものであり、厚生省は同県から違反等についての報告は受けていない。

九について

 製造業の登録に当たっては、当該登録を受けようとする者の製造所の設備が毒劇法第五条の厚生省令に定める基準に適合していることを実地に審査している。

十の1について

 動燃は厚生省の指導を受けて速やかに製造業の登録の手続を進めたこと、動燃の人形峠事業所は毒劇法のほかに核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)に基づく規制が行われており、漏えい防止の措置が採られていること等から、保健衛生上の観点から危険性はないものと考えられたため、製造の中止を指導する必要はないと判断したものである。

十の2について

 五及び六についてにおいて述べたとおり、販売又は授与の目的がない場合には、製造業の登録を必要としないので、そもそも天然六ふっ化ウランの製造の中止を指導する必要はない。

十の3について

 原子炉等規制法は、核燃料物質である六ふっ化ウランに着目して、災害を防止し、公共の安全を図る等の見地からこれを規制しており、一方、毒劇法は、劇性を有する化学物質である六ふっ化ウランに着目して、保健衛生上の見地からこれを規制しているものであるから、両法はその目的が異なるものであり、どちらか一方の法律が優先するものではない。お尋ねの動燃の場合は、十の1についてにおいて述べた理由から、製造の中止を指導する必要はないと判断したものである。

十一の1について

 厚生省は、関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)が動燃に委託して製造し、譲渡した劣化六ふっ化ウランの数量についての報告は受けたが、お尋ねの譲渡先についての報告は受けなかった。

十一の2について

 関西電力が、販売業の登録をせずに、毒物劇物営業者ではない三菱原子燃料株式会社及び原子燃料工業株式会社に劣化六ふっ化ウランを譲渡したことは、毒劇法第三条第三項に違反している。

十一の3について

 大阪府を通じて、関西電力に対して毒劇法を遵守するように指導するとともに、今後同社が劣化六ふっ化ウランを毒物劇物営業者以外の者に販売又は授与する計画がないことを確認した。

十一の4について

 関西電力は販売業の登録をしていない。厚生省は関西電力に対しその登録を指導していないが、その理由は、関西電力は、劣化六ふっ化ウランを毒物劇物営業者以外の者に販売又は授与する計画がなく、このような場合には販売業の登録を必要としないからである。

十二の1について

 毒物及び劇物を指定するに当たっては、経口投与実験等動物実験における知見、ヒトにおける知見、物性、解毒法の有無等を総合的に勘案し、既に指定されている毒物又は劇物と同等以上の毒性又は劇性を有するものに該当すると認められることを基準としている。例えば、最近、新たに劇物に指定されたO ― エチル=S ― 一 ― メチルプロピル=(二 ― オキソ ― 三 ― チアゾリジニル)ホスホノチオアート及びこれを含有する製剤(一パーセント以下を含有するものを除く。)の場合、ヒトの事故例がなかった以外は、前記の各種知見が得られており、既に指定されている劇物と同等以上の劇性を示唆している。

十二の2について

 新たに有害性が高い物質が生成若しくは発見された場合、又は既存の物質についてその有害性の疑いが示唆された場合には、まず、当該物質の毒性等について、できる限り多くの知見を
収集する。そして、これに基づき、中央薬事審議会毒物劇物調査会の意見を聴いた上で、当該物質が毒物又は劇物に該当すると認められる場合には、その指定を行うものである。

十二の3について

 毒物も、劇物も比較的少量で健康状態の生体の機能に障害を与える性質を有する点では同じであり、両者の違いは毒性の程度の差である。米国及びECでは三段階の分類が行われていると聞いている。

十二の4について

 毒物及び劇物指定令(昭和四十年政令第二号)第二条第一項第十一号に規定する可溶性ウラン化合物とは、ウラン化合物であって、かつ、水に溶けるものをいう。ウラン化合物とは、ウラン原子と他の一種類以上の元素の原子とが互いに化学結合力によって結合することによって生じ、一定組成を持ち各成分の性質がそのまま現れていないような物質をいう。可溶性ウラン化合物という名称は、前記に該当する化合物の総称であり、例えば、酢酸ウラニルがこれに該当する。

十二の5から7までについて

 可溶性ウラン化合物の指定に当たっては、ガラス着色、試薬等で使用されていた数種類の可溶性ウラン化合物について、得られていた文献データ等を検討した。その結果、既に指定されている劇物と同等以上の劇性を示唆していたこと、それらの化合物による腎障害、肝障害等の中毒症状が類似しており、他の可溶性ウラン化合物も同様の重金属中毒を示唆する症状を引き起こす可能性があること等を総合的に勘案し、可溶性ウラン化合物全体について、既に指定されている劇物と同等以上の劇性を有するものに該当すると認め、劇物に指定したものである。指定に当たって、新たな実験は行っていない。

十二の8について

 六ふっ化ウランは、ウラン化合物であり、かつ、水に溶けることから、溶解時にできるイオンのいかんにかかわらず、十二の4についてにおいて述べたとおり、可溶性ウラン化合物に該当する。

十二の9について

 十二の5から7までについてにおいて述べたとおり、可溶性ウラン化合物全体について既に指定されている劇物と同等以上の劇性を有するものに該当すると認めたものである。

十二の10について

 毒物又は劇物の指定に当たっては、毒劇法第一条に基づく保健衛生上の見地から、同法第二条に基づいて既に指定されている毒物又は劇物と同等以上の毒性又は劇性を有するものに該当するか否かを、科学的知見に基づき、具体的に比較、検討するものである。

十二の11について

 既に指定されている毒物と同等以上の毒性を示唆する知見がないためである。

十二の12について

 天然六ふっ化ウラン、劣化六ふっ化ウラン及び濃縮六ふっ化ウランは、それぞれ別品目として登録されるものである。

十二の13について

 製造業の登録又は毒劇法第三条第二項の輸入業の登録に際し、天然六ふっ化ウラン、劣化六ふっ化ウラン及び濃縮六ふっ化ウランは別品目とされるので、登録を受けていない品目については、販売又は授与の目的で製造又は輸入することができない。
 天然六ふっ化ウランとは、ウラン二三五のウラン二三八に対する比率が天然の混合率である六ふっ化ウランをいう。劣化六ふっ化ウランとは、ウラン二三五のウラン二三八に対する比率が天然の混合率に達しない六ふっ化ウランをいう。濃縮六ふっ化ウランとは、ウラン二三五のウラン二三八に対する比率が天然の混合率を超える六ふっ化ウランをいう。

十二の14について

 お尋ねの輸入報告書は、毒物又は劇物を自家消費、試験研究等の目的で輸入する場合に、その行為が販売又は授与を目的とする輸入に当たらないことを確認するために提出されたものであり、統計上の目的や公表を前提として提出されたものではないので、その提出日等をお示しすることは差し控えさせていただきたい。





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