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平成九年七月二十二日受領
答弁第三三号

  内閣衆質一四〇第三三号
    平成九年七月二十二日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員秋葉忠利君外四名提出「国営諫早湾干拓事業」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員秋葉忠利君外四名提出「国営諫早湾干拓事業」に関する質問に対する答弁書



一の1について

 潮受堤防の工事工程上、締切りを行う段階であったこと、出水期に備えて締切り区間の盛石を行い堤体の安定を図る必要があったこと、作業の安全性の観点から小潮の満潮前の潮止まり時で、かつ、昼間に行うことが必要であったことから、本年四月十四日に潮受堤防の締切りを行ったものである。

一の2について

 調整池の水を造成農地のかんがい用水及び雑用水の水源とし、また、造成農地の除塩を促進するとともに農作物への潮風害等を防止するためには、調整池を淡水化することが必要であること、並びに防災機能を適切に発揮させるためには、調整池の水位を標高マイナス一メートルになるように管理することが必要であることから、排水門により海水を調整池へ流入させることは想定していない。

一の3について

 河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第十三条は、河川管理施設又は同法第二十六条第一項の許可を受けて設置される工作物の構造について河川管理上必要とされる技術的基準を規定したものにすぎない。
 また、河川法施行令(昭和四十年政令第十四号)第八条及び第九条は、操作規則を定めなければならない河川管理施設及び河川管理施設の操作規則に定めるべき事項を規定したものであるが、国営諫早湾干拓事業に係る北部排水門及び南部排水門については、河川法第三条第二項ただし書の規定による同意はなく、したがって河川管理施設には当たらない。

二の1について

 湿地の重要性については、渡り鳥を始めとした野生生物の生息地としての重要性などから判断することが適当であると考えている。
 「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(昭和五十五年条約第二十八号。以下「ラムサール条約」という。)の登録湿地のリストは存在するが、諫早湾は登録湿地となっていない。また、ラムサール条約登録湿地の候補地リストは作成していない。

二の2について

 諫早湾の干潟は、渡り鳥の渡来地として我が国有数の場所であると認識している。

二の3について

 「地球的展望に立った協力のための共通課題(コモン・アジェンダ)橋本総理大臣及びクリントン大統領への共同報告書一九九六年六月」では、湿地及び渡り鳥の保護に関する活動として、日本政府とオーストラリア政府が主導的役割を果たして「東アジア・オーストラリア地域におけるシギ・チドリ類に関する湿地ネットワーク」が国際的な非政府機関であるウェットランズ・インターナショナル・アジア太平洋評議会により構築されたこと及び日本政府が平成六年からアジア地域の開発途上国の湿地管理者のための国際協力事業団研修「湿地及び渡り鳥保全コース研修」を開始したことを報告している。
 当該報告は、コモン・アジェンダで協力分野として合意された「地球環境の保護」のうち「保全」分野に関する日本の取組を紹介したものにすぎず、国営諫早湾干拓事業を規制する趣旨のものではない。したがって、コモン・アジェンダとの関連では、問題はないと考えている。

二の4について

 ラムサール条約は、締約国は、その領域内の湿地をできる限り適正に利用することを促進するため、計画を作成し、実施すると規定しており、政府としては、日本国内の湿地をできる限り適正に利用することを促進するため、環境基本計画等の諸計画を作成し、施策を実施しているところである。
 国営諫早湾干拓事業は、生産性の高い農地の造成並びに高潮、洪水及び排水不良に対する防災機能の強化を目的として実施しているものであり、この事業により地域にもたらされる効果は極めて大きい。また、着工に先立ち、環境影響評価を実施し、その後も環境モニタリングを継続しているほか、事業の実施に当たり、環境に配慮した工法を採用するなど、適正な利用の観点にも配慮したものとなっている。

二の5について

 潮受堤防の締切り前に、ラムサール条約事務局に報告したことはない。
 なお、潮受堤防の締切り後に、同事務局から国営諫早湾干拓事業に関する情報の提供を求められたため、我が国から同事務局に対し、既にしかるべく情報を提供している。
 また、平成十一年のラムサール条約締約国会議への対応については、現時点では未定である。

二の6について

 諫早湾については、従来から干拓計画が進められてきており、関係者の合意を得て国設鳥獣保護区の設定及びラムサール条約上の登録簿に掲げるべき湿地としての指定を行う状況にはなかった。
 また、ラムサール条約は、いかなる湿地を登録簿に掲げるべきかの判断基準を具体的に規定しておらず、結局は各締約国の判断にゆだねているものと考えられることから、我が国が諫早湾を登録簿に掲げていないことをもって、同条約に反することにはならない。したがって、憲法違反という御指摘にも当たらない。

三の1について

 我が国がアメリカ合衆国、オーストラリア、ロシア連邦及び中華人民共和国との間でそれぞれ締結している二国間の渡り鳥等保護条約又は協定(以下「渡り鳥保護条約」と総称する。)は、いずれも両政府に定期協議の開催を義務付けるものではなく、いずれか一方の政府の要請があった場合に、渡り鳥保護条約の実施について協議を行うことを定める。当該規定に基づき、我が国政府は渡り鳥保護条約の相手国政府との間で随時協議を行ってきているが、同協議において諫早湾の干拓の消失について言及したことはない。

三の2について

 国営諫早湾干拓事業により消失する干潟は有明海の干潟全体の七パーセントであり、渡り鳥保護条約により保護される渡り鳥等を含む鳥類は周辺の干潟へ移動すると予測されている。さらに、干潟の再生促進のための調査を実施し、今後、鳥類のため自然植生の維持等の措置を講ずることとしている。これらのことから、当該事業は、これら鳥類に対し著しい影響を及ぼすことはないと考えている。このような事情にかんがみれば、当該事業の実施による諫早湾の干潟の消失が渡り鳥保護条約の規定に違反するものとは考えられないが、いずれにせよ、仮に、渡り鳥保護条約の相手国政府から御指摘のような措置が求められた場合には、このような事情を説明した上で、必要に応じ対応を検討してまいりたい。

三の3について

 長崎県とは諫早湾も含めた県内全般の鳥獣保護について、これまでも意見交換を行ってきたところである。
 なお、この地域については従来から干拓計画が進められてきたことから、関係者の合意を得て国設鳥獣保護区を設定する状況になかった。

三の4について

 日本を中継地又は越冬地として利用する渡り鳥の総数を把握する調査を行っていないため、諫早湾を利用する渡り鳥の割合については不明である。

三の5について

 諫早湾を中継地として利用している渡り鳥としては、シギ、チドリ類が主と考えられる。環境庁が財団法人日本鳥類保護連盟に委託して実施しているシギ、チドリ類の調査結果によれば、平成四年五月四日にダイゼン、チュウシャクシギ、ハマシギ等二十三種三千八十羽が、同年八月三十一日にダイゼン、ダイシャクシギ、ハマシギ等二十二種四千四百二十三羽が観察されている。

三の6について

 諫早湾を除く有明海の干潟全域を対象とした渡り鳥の種類及び数についての調査は、行っていない。

三の7について

 有明海においては、諫早湾以外にもシギ、チドリ等の餌となる底生生物の豊富な干潟が広く存在すること及びこれらの鳥類が有明海の干潟間を移動することが確認されていることから、シギ、チドリ等の飛来地は、諫早湾の残存海域や他の有明海の在来干潟に移動すると見込まれる。
 なお、潮受堤防の締切り後、現在までに鳥類の移動に関する調査は実施していない。

四の1について

 有明海の底生生物については、九州大学理学部の研究グループが、昭和四十七年から五十二年にかけて調査を行った例がある。また、有明海の魚類については、農林水産省西海区水産研究所が、昭和四十八年度から五十年度にかけて調査を行っている。

四の2について

 有明海の底生生物については、昭和四十七年六月の調査において、有明海中央部と天草諸島沿岸の調査地点で生物の密度が高く、大半が甲殻類であること、有明海奥部の河川流入部及び菊池川河口に近い調査地点並びに諫早湾内の調査地点では、生物の密度がやや低く、多毛類と二枚貝類が高い比率を占めていること等を確認している。
 なお、当該調査の結果においては、有明海特産種は特定されていない。
 有明海の魚類については、主要な十一魚種の分布と移動状況等を調査し、コノシロは冬季には有明海中南部に分布し、春季から秋季にかけては有明海全域に分布域を広げるようであること、ボラ類は有明海奥部が分布の中心であること等の調査結果を得ている。
 なお、当該調査の対象となった主要な十一魚種には、有明海特産種は含まれていない。

四の3について

 農林水産省九州農政局諫早湾干拓事務所が、昭和六十三年度から平成元年度にかけて、諫早湾の底生生物及び稚仔魚の調査を行っている。

四の4について

 四の3についての調査の結果、生物の種類の名称及び個体数は次のとおりであった。また、これらの生物の分布は諫早湾全域にわたっている。

四の3についての調査の結果、生物の種類の名称及び個体数
 備考 昭和六十三年度における四回の調査の平均

五の1について

 干潟の浄化作用についての調査としては、環境庁水質保全局瀬戸内海環境保全室が、平成五年度から十一年度までの七か年計画で、瀬戸内海に分布する干潟を対象として調査を実施している。
 また、農林水産省東海区水産研究所が、昭和五十七年度から六十一年度にかけて、三河湾の一色干潟を対象として調査を行っている。
 これらの調査は、諫早市及び周辺地域又は有明海を対象としたものではない。

五の2について

 国営諫早湾干拓事業の実施に当たり行った環境影響評価において、当該事業の実施により、諫早湾においては、湾奥部に生息するムツゴロウ、ワラスボ、ハゼクチ、アサリ等の生息場が失われること等の影響があるものの、諫早湾以外の魚類等にはほとんど影響を及ぼすことはないことを予測している。

五の3について

 昭和六十年度から六十一年度にかけて、財団法人九州環境管理協会に対し、国営諫早湾干拓事業に係る環境影響評価について、専門的見地からの検討を委託しており、委託調査の結果が当該事業に係る環境影響評価書(案)となっている。
 なお、環境影響評価書(案)の結論部分と環境影響評価手続実施後の環境影響評価書の結論部分は、双方とも「本事業が諫早湾及びその周辺海域に及ぼす影響は許容しうるものであると考えられる。」となっている。

六の1について

 締切りによって、調整池の水質に障害が発生することは、予測していない。
 なお、締切りに際して、調整池内の水質監視体制を強化するとともに、必要があれば臨機の対策をとることとしている。

六の2について

 必要に応じ、排水門を開けて排水を行っているところである。

六の3について

 御指摘の「国営諫早湾干拓事業に係る潮受堤防及び排水門の一部使用に関する河川法第三十条第二項の承認について」(平成九年四月十一日付け九州地方建設局長通知)の記の条件の第五の(一)の「障害」は、現在まで生じていない。

六の4について

 「水質に障害が発生」したことの判断の目安として、水質の悪化が恒常化し、かんがい用水としての利用に著しい悪影響を及ぼす場合等を考えている。

六の5について

 公共用水域の水質の汚濁の状況を常時監視する義務は、水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第十五条の規定により都道府県知事が負っており、調整池の水質保全対策については、関係省庁及び関係地方公共団体が、連携して必要な措置を講じていくこととしている。

六の6について

 国営諫早湾干拓事業に係る公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)の手続における昭和六十三年の環境庁長官意見には、「海水によるフラッシュバック」という記述はない。

七の1について

 「諫早湾防災総合干拓事業」という名称の国営土地改良事業の事業計画は存在しない。

七の2について

 調整池の淡水化は、調整池の水を造成農地のかんがい用水及び雑用水の水源とし、また、造成農地の除塩を促進するとともに農作物への潮風害等を防止するために必要である。

八の1について

 国営諫早湾干拓事業を実施している地域は、建設省が昭和五十二年に取りまとめた新耐震設計法(案)の地域区分において、地震危険度の低い地域に含まれており、また、これまでの調査では海底活断層は確認されていないことから、当該地域には海底活断層は存在しないものと判断した。

八の2について

 内部堤防及び潮受堤防は、新耐震設計法(案)等の基準に従って標準設計水平震度を〇・二として設計されている。

八の3について

 サンドコンパクションパイルは直径一・六メートルで、潮受堤防の基礎地盤に二・六メートル又は三・四メートル間隔で最大約三十メートルの深さまで打ち込んでおり、すべてが軟弱粘土層下の砂礫層に達している。

八の4について

 国営諫早湾干拓事業の事業計画の策定に当たっては、昭和三十四年の伊勢湾台風級の高潮と昭和三十二年の諫早大水害級の洪水を想定している。

八の5について

 潮受堤防等の設置に係る河川法第二十六条第一項及び第九十五条の規定に基づく協議(以下「河川協議」という。)は平成四年に終了しているため、河川協議の許可基準として平成六年に発出された「工作物設置許可基準について」(平成六年九月二十二日付け建設省河川局治水課長通達)に基づく水理模型実験等は、潮受堤防等について行っていない。
 なお、当該基準は、河川区域内の工作物を対象としており、潮受堤防等は対象とはならない。

八の6について

 潮受堤防の排水門における水流の速度は、調整池から外海への流出時に最大毎秒約七メートルとなる。
 なお、外海から調整池への流入については想定していない。

八の7について

 現在、潮受堤防は工事中であり、潮受堤防のうち仮締切り区間の断面が完成時の断面に比べて小さいこと等から一部海水が浸透することが想定されることを根拠に発言したものである。
 また、潮受堤防は海水が浸透することを見込んで造成している。

九の1について

 潮受堤防及び内部堤防は、長崎県が予定管理者となっている。
 また、これらの設置に瑕疵があったために損害を生じたときは、国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)第二条第一項の規定により、原則として堤防の設置者たる国がその損害を賠償する責任を負うこととなる。

九の2について

 平成八年度に海底地形測量を実施している。
 「諫早湾防災対策検討委員会中間報告書」添付の図 ― 9「比較検討案平面図」は、概略的な測量に基づくもので、平成八年度の海底地形測量とは測量精度に差があるため、両者を比較対応させ正確な変化を把握できるものではない。
 なお、平成八年度の測量結果では、事業計画どおり調整池水位が約三・二メートルの時に約七千二百万立方メートルの洪水調整容量を確保できることを確認しており、問題はないと考えている。

十の1について

 過去三十年間のうち住居への浸水被害が記録されているケースにおける降水量、被害状況及びポンプの稼働状況は次のとおりである。

過去三十年間のうち住居への浸水被害が記録されているケースにおける降水量、被害状況及びポンプの稼働状況
 備考
  一 諫早市、森山町、高来町、吾妻町及び愛野町を対象に取りまとめた。
  二 浸水戸数及び死亡者数は、建設省河川局「水害統計」、長崎県消防防災課「災害報告書」及び関係市町からの聞き取りによる。
  三 降水量は、諫早地域気象観測所のデータである。
  四 床上浸水、床下浸水及び死亡者の欄の( )は諫早市のみを示す。
  五 排水ポンプ稼働時間は、記録の残っているポンプ場のうち、稼働したポンプ一台当たりの平均稼働時間(十分未満の端数は四捨五入)を示す。
  六 この他、降水量との関係は明らかでない浸水被害の記録はある。

十の2について

 本事業地区の流域内では、気象庁が諫早地域気象観測所及び五家原岳地域気象観測所で降水量の観測を行っている。平成九年五月十三日から十四日にかけての観測によると、日降水量は諫早地域気象観測所で、五月十三日に六十四ミリメートル、五月十四日に六十九ミリメートル、五家原岳地域気象観測所で五月十三日に八十四ミリメートル、五月十四日に百六十三ミリメートル、日最大一時間降水量は諫早地域気象観測所で五月十三日に十九ミリメートル、五月十四日に十六ミリメートル、五家原岳地域気象観測所で五月十三日に十四ミリメートル、五月十四日に五十七ミリメートルであった。
 本明川の増水状況は、建設省が遠方監視装置により水位観測を行っている。本明川の基準地点である裏山での、水位上昇時の最高水位と水位上昇前の水位の差は百四十二センチメートルであった。
 関係者からの聞き取りを含む農林水産省の現地調査では、降雨による湛水の分布状況は諫早市の松崎排水機場周辺地域等で約五十五ヘクタール、森山町の諫早湾周辺地域で約九十ヘクタール、吾妻町の釜の鼻排水機場周辺地域で約十ヘクタール、愛野町の有明川河口周辺地域で約五ヘクタールであり、このほか面積は不明であるが黒崎排水機場周辺地域等にも湛水があった。住居の浸水被害はなかった。
 また、排水機の稼働状況は運転管理日報によれば次のとおりであった。


排水機の稼働状況は運転管理日報

十の3について

 平成二年六月二十八日から七月三日にかけての気象庁の諫早地域気象観測所及び五家原岳地域気象観測所での観測によると、日降水量は諫早地域気象観測所で六月二十八日に八ミリメートル、二十九日に五十一ミリメートル、三十日に七十二ミリメートル、七月一日に四十九ミリメートル、二日に百五十三ミリメートル、三日に二十三ミリメートル、五家原岳地域気象観測所で六月二十八日に十五ミリメートル、二十九日に七十九ミリメートル、三十日に七十九ミリメートル、七月一日に五十二ミリメートル、二日に二百二十ミリメートル、三日に三十ミリメートル、日最大一時間降水量は諫早地域気象観測所で六月二十八日に八ミリメートル、二十九日に十六ミリメートル、三十日に十ミリメートル、七月一日に十五ミリメートル、二日に三十八ミリメートル、三日に十八ミリメートル、五家原岳地域気象観測所で六月二十八日に十二ミリメートル、二十九日に十九ミリメートル、三十日に十一ミリメートル、七月一日に十一ミリメートル、二日に三十六ミリメートル、三日に十一ミリメートルであった。
 本明川の増水状況は建設省の水位観測記録では、本明川の基準地点である裏山での、水位上昇時の最高水位と水位上昇前の水位差は二百十二センチメートルであった。
 農林水産省が当時の資料から取りまとめた降雨による湛水の状況は、諫早湾周辺では諫早市で約八百四十ヘクタール、森山町で約五百六十ヘクタール、高来町で約十ヘクタール、吾妻町で約百五十ヘクタール、愛野町で約三十ヘクタールであった。住居の浸水被害状況は、床上浸水一戸、床下浸水六十五戸であった。
 また、排水機の稼働状況は運転管理日報によれば次のとおりであった。


排水機の稼働状況は運転管理日報

十の4について

 浸水被害状況等は、事業計画策定時(昭和六十一年)に、伊勢湾台風級の高潮と諫早大水害級の洪水が同時に発生した場合について数値解析により予測しており、その結果は、事業実施前の浸水面積三千二百四十ヘクタール、床上浸水三千三十六戸、床下浸水千三百五十八戸、事業実施後の浸水面積二千二百七十ヘクタール、床上浸水百六十七戸、床下浸水百四十二戸となっている。
 なお、人口、住居地域の変遷による予測の修正は行っていない。

十の5について

 伊勢湾台風級の高潮と諫早大水害級の洪水が同時に発生した場合を想定して、数値解析を行い、調整池水位が約三・二メートルの時の調整池容量約七千二百万立方メートルを洪水調整容量としたものである。

十の6について

 国営諫早湾干拓事業の環境影響評価において、調整池水位を標高マイナス一メートルに管理しても、小野、森山地区の地盤沈下に与える影響は軽微であると予測している。

十一の1について

 既設堤防の嵩上げ工事として、延べ四・五キロメートルの区間を予定しており、その工事費は約十億円と見込んでいる。

十一の2について

 締切り内部の既存の海岸堤防及び河川堤防を伊勢湾台風級の高潮に対応できるよう嵩上げすると、その費用はおおむね千八百億円と試算される。

十二の1及び2について

 大潮満潮時における外潮位(標高二・五メートル)以下の地域には、昭和六十一年時点で戸数約三百七十戸が存在し、この地域においては、水が高い所から低い所へ流れるという原理によれば、大潮満潮時には自然排水による常時排水は不可能であったと考えられるが、国営諫早湾干拓事業により調整池水位を標高マイナス一メートルに管理することにより、自然排水による常時排水が可能となる。

十二の3について

 標高零メートル以下となる面積は約千百ヘクタールである。
 排水ポンプは、事業計画では八台設置する予定であり、設置費用として約三十八億円、運転費用として年間約四千五百万円を見込んでいる。
 設置費用については、原則として国が三分の二、県が十五・四パーセント、地元が十八パーセントを負担することが予定されている。
 また、運転費用の負担は、排水ポンプの予定管理者である土地改良区の定款の定めるところによる。

十二の4について

 事業計画上、造成農地を導水池(遊水池)として利用することは予定していない。

十二の5について

 調整池を淡水化すれば、諫早湾沿岸及び創出干拓地の塩害は予想されない。

十三の1について

 一級河川本明川の河川管理者は、建設大臣である。
 御指摘の地域については、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第三条から第五条までに定めるところにより、国、長崎県及び諫早市が、それぞれ防災対策に取り組む責務を有している。

十三の2について

 国営諫早湾干拓事業計画が決定された昭和六十一年時点では、御指摘の地域においては、河川堤防は改修途上にあり、また、海岸堤防及び排水施設については、整備を要する状況にあった。
 なお、建設大臣が行う本明川に係る河川管理の目的は、当該河川についての洪水、高潮等による災害の発生の防止を含んでいるが、これ以外の災害の発生の防止を目的としているものではない。

十三の3について

 本明川に係る河川法第十六条第一項に規定する工事実施基本計画(以下「工事実施基本計画」という。)は、当該河川についての洪水、高潮等による災害の発生防止という目的を達成できるよう策定しており、潮受堤防の存在を前提としているものではない。
 また、これまで、国営諫早湾干拓事業の実施に伴って工事実施基本計画を変更したことはないが、潮受堤防により本明川の高潮区間において結果的に高潮対策上の効果が生じることを踏まえ、今後、河口部の高潮対策について調査検討を行うこととしている。

十三の4について

 河川管理者たる建設大臣は、河川法第二十六条第一項の規定に基づく河川管理者の許可を受けて新築される工作物について、当該許可に際して河川管理上の安全性について判断するものである。建設省九州地方建設局長は、国営諫早湾干拓事業に係る同法第九十五条の規定に基づく農林水産大臣からの協議があったので、潮受堤防等の河川管理上の安全性について審査を行った。
 また、当該協議に併せて、農林水産省から建設省に対して、国営諫早湾干拓事業の防災効果について報告があった。
 なお、建設省は、本明川の高潮区間において結果的に高潮対策上の効果が生じること及び本明川の洪水に対して支障がないことについては認識しているが、国営諫早湾干拓事業そのものの防災効果については判断する立場にはない。

十四の1について

 干拓地のかんがい用水及び雑用水として年間八百万立方メートルの水源依存量を見込んでおり、全量を調整池に依存することとしている。
 本事業地区の周辺の河川は水源として不安定である上、既耕地のかんがい用水等として利用されており、新規造成農地における新たな水需要をこれら河川に依存することはできない。

十四の2及び3について

 干拓地は平坦な地形で、土壌は多量の有機質を含み肥沃であり、周辺干拓地の実績からみても多様な作物の育成に十分な生産条件を備えている。本地域は温暖で冬期の降雪もほとんどなく恵まれた気象条件を有しており、生産性の高い営農を行うことが可能である。
 事業計画上の営農計画は、増反による野菜作及び肉用牛肥育並びに経営移転入植による酪農経営を設定している。

十四の4について

 平成七年十二月策定の「農産物の需要と生産の長期見通し」において、ばれいしょの需要は今後伸びるものと見込まれていること、ばれいしょは、既に機械化一貫作業体系が確立されていること等から、広大な干拓地において、生産団地の形成が十分図られるものと考えられる。

十五の1、2、3及び7について

 国営諫早湾干拓事業に係る当初の総事業費は千三百五十億円であり、国営土地改良事業特別会計における工事別の内訳は、「諫早湾」(潮受堤防の工事等)が六百五十億円、「諫早湾(開畑工事等)」が七百億円である。
 なお、地元対策費という支出項目はない。

十五の4について

 国営諫早湾干拓事業の平成八年度末までの支出実績は、「諫早湾」に約千三百三十五億円、「諫早湾(開畑工事等)」に約二百三十五億円である。

十五の5及び6について

 「諫早湾」については、平成十年度の完了を目指し、平成九年度以降で約二百億円の事業費を見込んでいる。
 「諫早湾(開畑工事等)」については、平成十二年度の完了を目指し、平成九年度以降で約六百億円の事業費を見込んでいる。
 なお、国営諫早湾干拓事業に係る事業費については、毎年度、予算編成の過程で、農林水産省から大蔵省に対して説明している。

十六について

 国営諫早湾干拓事業等を含む国の公共事業は、国会の審議を経た毎年度の予算に基づき、行われているものである。
 なお、国営諫早湾干拓事業については、目的の変更又は追加はない。

十七について

 公有水面埋立の免許の環境保全に関する基準については、公有水面埋立法第四条第一項第二号の規定により「其ノ埋立ガ環境保全(中略)ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」、同項第三号の規定により「埋立地ノ用途ガ(中略)環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体(港務局ヲ含ム)ノ法律ニ基ク計画ニ違背セザルコト」とされており、同項第二号の規定の具体的な運用については、「公有水面埋立法の一部改正について」(昭和四十九年六月十四日付け運輸省港湾局長、建設省河川局長通達)の記の三の(三)に基づき、「埋立てそのものが水面の消滅、自然海岸線の変更、潮流等の変化、工事中の濁り等に関し、海域環境の保全、自然環境の保全、水産資源の保全等に十分配慮されているかどうかにつき慎重に審査すること」を、免許権者である都道府県知事に指導している。
 これに従って、都道府県知事が、出願に対して個別に審査を行っている。

十八について

 ラムサール条約に関しては、諫早湾は、同条約上の登録簿に掲げられた湿地ではなく、同条約に基づき自然保護区として設定された湿地でもないので、国営諫早湾干拓事業はこの限りにおいては、同条約との関係で問題はないものと考えている。
 なお、同条約上の「適正な利用」との関係については、二の4についてにおいて答弁したとおりである。
 渡り鳥保護条約に関しては、三の2についてにおいて答弁したとおり、国営諫早湾干拓事業が同条約の規定に違反するものとは考えられない。
 生物の多様性に関する条約(平成五年条約第九号)に関しては、政府としては、国営諫早湾干拓事業につき、着工に先立ち環境影響評価を実施したほか、水質、野鳥及び水生生物等についての監視を実施しており、同条約との関係でも問題はないものと考える。
 外国政府、国際機関等からの質問等については、ラムサール条約事務局から国営諫早湾干拓事業について情報を求められたので、我が国から同事務局に対し、既にしかるべく情報を提供している。
 今後、外国政府、国際機関等から質問等がある場合には、必要に応じ前記のような我が国の考え方を説明していく考えである。





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