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答弁本文情報

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平成九年十二月二日受領
答弁第四号

  内閣衆質一四一第四号
    平成九年十二月二日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員山本孝史君提出臓器の移植に関する法律の施行に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員山本孝史君提出臓器の移植に関する法律の施行に関する質問に対する答弁書



一の@について

 お尋ねの措置については、警察庁において各都道府県警察に対し、
 ア 医師に対して、脳死した者の身体に対して検視等(検視、検証、実況見分、死体見分その他の死体に対する警察活動をいう。以下同じ。)を行う必要がある場合にはその旨を連絡するとともに、検視等の立会いや検視等を行うための場所の提供について協力を求めること
 イ 脳死判定前に必要な調査又は捜査を行うこと
 ウ 必要に応じ、脳死判定前に医療機関に臨場し、検視等に必要な体制を確保すること
等速やかに検視等を開始するための措置をあらかじめ講ずることを指示したところである。

一のAについて

 警察庁において本年十月に調査したところ、過去三年間に全国で刑事調査官(検死官その他の名称の者を含む。以下同じ。)が交通事故に係る死体に対する検視等に臨場した件数は、約五百三十件である。
 刑事調査官は、死体に関して豊富な知識経験を有する幹部警察官であることから、刑事調査官が検視等に臨場することにより、交通事故に係る脳死した者の身体に対する検視等は適正に行われるものと考えている。

一のBについて

 御指摘の刑事部門と交通部門の連携及び都道府県警察間の協力については、警察庁において各都道府県警察に対し、例えば、
 ア 交通事故に係る脳死した者の身体に対する検視等については、当分の間、原則として刑事調査官が臨場し、交通部門による検視等に加わること
 イ 脳死した者の身体に係る捜査、調査又は検視等が複数の都道府県の区域にわたって行われる事案については、必要に応じ、当該事案に係る捜査、調査又は検視等を関係都道府県警察に依頼すること等について具体的に指導しているところである。

二について

 御指摘の答弁書の七についてにおいては、臓器の摘出に係る脳死の判定以外の脳死判定については、臓器の移植に関する法律(平成九年法律第百四号。以下「臓器移植法」という。)の適用がないため、患者の臓器提供の意思を確認することが法律上義務付けられているものではない旨を述べたところである。
 一方、「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)の制定について」(平成九年十月八日健医発第一三二九号保健医療局長通知。以下「指針」という。)第4の1の御指摘の記述は、臓器移植法に基づいて行われる臓器の摘出に係る脳死判定については、患者が臓器提供の意思を有していることが必要であり、脳死した者の身体から臓器の摘出を行う可能性がある場合においては、脳死判定を行う前に患者の臓器提供の意思を確認することが当該脳死した者の身体から臓器の摘出を臓器移植法に基づき円滑に実施する上で適当であると考えられることから、そのような場合における標準的な手順を示したものである。
 なお、指針第4の1においては、主治医等が臨床的に脳死と判断した場合以後において、本人が何らかの意思表示を行っていたか把握することについては、家族等の脳死についての理解の状況等を踏まえて行うよう努めることとしているものである。

 三について

 臓器移植法第六条第一項の「死体(脳死した者の身体を含む。)」の規定は、同条の規定に基づいて臓器の摘出を行う場合に関して適用されるものであり、臓器の摘出に関係のない脳死の判定が行われた場合には適用がないものである。また、当該規定は他の法令における「死体」の解釈に直接影響を与えるものではない。他の法令における「死体」の解釈は、当該他の法令の趣旨、目的等に応じて考えられるべきであるが、内閣法制局としては、臓器移植法の施行に伴って他の法令における「死体」の解釈について、当該他の法令の所管省庁から意見を求められれば、慎重に検討の上必要な対応を行ってまいりたい。

四について

 臓器移植法第十二条第一項の許可を受けた臓器あっせん機関の職員として臓器のあっせんに係る連絡調整を行う者(以下「コーディネーター」という。)の活動については、現在、当該許可を受けている臓器あっせん機関である社団法人日本臓器移植ネットワーク(以下「臓器ネットワーク」という。)においては、次のような自主的な評価及び審査の手続を、臓器ネットワークの定款に基づく規則を定めて実施し、あっせん行為の適正な実施を図っているものと承知している。
 ア 全国七か所の臓器ネットワークの地域(ブロック)センターに、臓器ネットワークの会員及び学識経験者から構成される地域評価委員会を設置して、臓器ネットワークに所属するコーディネーターが行った臓器のあっせんについて、臓器提供者の家族に対し臓器提供に関する説明を行った時の状況についての記録に基づいて、個別に評価を行う。
 イ 臓器ネットワークにその会員及び学識経験者から構成される中央評価委員会を設置して、地域評価委員会から報告があった事例、中央評価委員会が特に必要と認める事例等について評価を行う。
 ウ 臓器ネットワークに臓器移植に関係する分野の学会の代表者等の学識経験者から構成される審査委員会を設置して、中央評価委員会において問題があると評価された事例について審査するとともに、家族への説明等の提供手続等の臓器移植全般に係る問題について審議を行う。
 御指摘のコーディネーターの処分規定等の整備については、臓器ネットワークにおいて、コーディネーターの活動の状況等を踏まえつつ検討するよう指導してまいりたい。

五について

 文部省において各国立大学医学部に確認したところ、熊本大学医学部から、心臓死後の病理解剖遺体から遺族の承諾を得て心臓弁又は大血管を摘出し、将来的に凍結保存されたこれらの人体の組織を移植に使用することを目的とした凍結保存に関する研究を実施することについて、同大学医学部倫理委員会が本年十月十三日にこれを承認した旨の回答があったところである。
 病理解剖遺体から移植に使用することを目的として心臓弁等の人体の組織を摘出し凍結保存することについては、これを行うことに根拠を与える特段の法令の規定はないが、熊本大学医学部の研究を含め移植に使用することを目的とする死体からの人体の組織の摘出及び凍結保存は、通常遺族の承諾を得た上で医療上の行為として行われるものと承知している。死体解剖保存法(昭和二十四年法律第二百四号)は、公衆衛生の向上を図るとともに医学の教育又は研究に資することを目的として、死体の解剖及び保存並びに死因調査の適正を図るための手続等を規定しているものであることから、移植に使用することを目的として病理解剖遺体から人体の組織を摘出し、及びこれを保存することについては、同法の適用はないものと考える。

六について

 社団法人日本腎臓移植ネットワーク(以下「腎臓ネットワーク」という。)は、腎臓の移植におけるあっせんを業務とする団体として、その業務及び運営について特段の問題があったとは考えていない。臓器ネットワークは、臓器移植法の施行に当たり、臓器を使用した移植術を受ける者の選択が公平かつ適正に行われることを目的として、腎臓ネットワークを母体として設立されたものである。
 なお、厚生省においては、国民の理解を得ながら臓器移植を推進するためには、臓器ネットワークがより一層公平かつ適正な事業運営を行うことが不可欠であることから、腎臓ネットワークが臓器ネットワークに改組する定款変更の認可に当たり、総会等の議事録の公開、財政構造の改善及び常任理事会の構成の三点について、臓器ネットワークに対して指導を行ったところである。





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