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答弁本文情報

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平成十年四月十日受領
答弁第一四号

  内閣衆質一四二第一四号
    平成十年四月十日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員坂上富男君提出早稲田大学探検部員殺害事件に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員坂上富男君提出早稲田大学探検部員殺害事件に関する再質問に対する答弁書



一について

 平成九年十二月二十八日の橋本内閣総理大臣の発言は、早稲田大学学生二名の方がアマゾン川で命を落としたという知らせが入っているが、海外での身の安全についてどう考えるかとの質問に答えたものである。本発言は、正確に記録に残っているわけではないが、通信社の記者が作成したメモによると、「その話はしばらく前から情報としては確認している。本当に残念なことだ。よくわからないのは、事前に現地での安全の確保がどのように決められていたのかわからないということだ。冒険というものは危険があり、その危険は事前に準備して最小限にとどめる必要がある。それでも墜落とか転覆とか、蛇やヒルにかまれることがある。二人のいた探検部にきちんとした計画書が出ているのか、連絡がないと捜索を始めるチェックポイントがあったのか、そういうことが今までの報道からでははっきりしないので論評はできない。軍の連中が殺害したならそれはもってのほかだが、ペルーはMRTAだけではなくほかにもテロ組織があって、当然政府軍との間でぴりぴりしている。十分に事前に準備ができていたのか、冒険好きな僕からしても疑問に思う。」という趣旨のものである。
 したがって、発言の本意は、二人の有為の青年が殺害された本件事件は本当に残念なことであり、ペルー共和国(以下「ペルー」という。)軍の兵士が殺害したというのであればもってのほかであるとの気持ちとともに、冒険には危険が伴うため、事前に準備をしてその危険を最小限にとどめる必要があることを伝えようとしたところにあり、犠牲者の方を冒とくする趣旨ではなかったというのが、橋本内閣総理大臣の率直な気持ちである。

二について

 橋本内閣総理大臣は、平成九年十二月二十八日の時点で、本件事件へのペルー軍人の関与がペルー軍により確認されたことは承知していたが、ペルー軍人がどのように具体的に本件事件に関与したか等の本件事件の詳細については承知していなかったため、詳細なことが判明していないため論評はできないと述べた上で、御指摘の発言を行ったものである。
 御指摘の発言の内容は一についてで述べたとおりであるが、その中で、橋本内閣総理大臣は、「軍の連中が殺害したならそれはもってのほか」と述べることで、「本来市民の生命と安全を守るべき立場にある軍人が集団として罪のない青年を殺害したことは極めて遺憾である」との気持ちを伝えようとしたものであり、犠牲者の方を冒とくする趣旨の発言ではなかった。
 また、犠牲者の方には衷心より御冥福をお祈りしたいというのが、橋本内閣総理大臣の率直な気持ちである。この気持ちは、犠牲者の方の身元が確認されてから今日に至るまで変わりはなく、例えば、平成十年二月四日、参議院予算委員会においてもその旨発言している。

三について

 ペルー憲法第百三十八条は、司法権は司法府が行使する旨規定しているが、同憲法第百三十九条では、軍事裁判は例外とする旨規定している。また、ペルー軍事裁判法は、軍事裁判の管轄となる具体的犯罪を列挙しているが、予審の対象となっていた殺人や非公務員の誘拐は軍事裁判の管轄となる具体的犯罪には含まれていない。一方、ペルー刑事訴訟法第九条は、殺人や誘拐を含む一般犯罪の予審及び裁判は一般の刑事裁判所の管轄になると規定していると承知している。
 以上のとおり、本件事件に関する裁判は、ペルーの国内法制にのっとって、軍事裁判ではなく一般裁判として取り扱われているものと認識している。

四について

 小西駐ペルー大使は、平成九年十二月三十日(現地時間)に声明を発表し、その中で、「今回の犯行は、冷酷であり、本来市民の生命と安全を守るべき立場にある軍人が集団として罪のない青年を殺害したことは極めて遺憾である。私は、事件に関与した者たちが適正に法の裁きを受けると確信する。」との抗議を行った。右抗議内容を決めるに当たっての外務本省と在ペルー日本国大使館との間における検討に関しては、外交関係の処理にかかわる政府部内の意思決定過程の問題であるので、答弁を差し控えさせていただきたい。

五について

 ペルーにおける予審とは裁判に入る前の捜査段階の手続の一つであり、予審はペルー国内法により非公開とされていると承知している。
 なお、本件事件に関するペルーでの予審の概要については、予審後公開で行われる裁判において把握することが可能であると承知している。

六について

 現在、ペルーにおいては、本件事件に関する司法手続が進められ、予審は既に終了していると承知している。本司法手続終了までの所要期間については、不確定な要素もあり、現時点で確たることは申し上げられないが、これまでは迅速な対応がなされていると考えている。
 また、御遺族に対する損害賠償は、基本的には当事者間の問題であると考えている。現時点においては御遺族から損害賠償の請求は行われていないが、御遺族から損害賠償の請求が行われる場合には、政府としても、必要に応じて側面的に協力していくこととしたい。
 なお、ペルー政府に対しては、これまでも適切な対応を働きかけてきており、また、御遺族の考えも伝えてきたが、右に述べた点も踏まえ、引き続きしかるべく対応してまいりたい。





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