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平成十年八月二十一日受領
答弁第六四号

  内閣衆質一四二第六四号
    平成十年八月二十一日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員保坂展人君提出死刑制度などに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出死刑制度などに関する質問に対する答弁書



一の(1)について

 我が国において死刑が開始された時期、状況等については、承知していない。
 なお、文献によれば、八世紀に成立した律令制の下において、制度として笞、杖、徒、流、死の刑罰が整備されたとされているが、それ以前の状況については判然としない。

一の(2)について

 御指摘のような時代、時期があるとの事実については、承知していない。

一の(3)について

 明治当初の死刑執行の方法として、明治元年行政官布告第九百十六号、同年十一月十三日の達等を参考にすると、火附、強盗で人を殺した者に対する「梟首」(斬首の後に晒し首にするもの)、強盗、百両以上の窃盗、強奸の者に対する「刎首」(斬首とするもの)及び「絞首」が定められ、例外的に、君父を殺した場合には、磔刑があったことがうかがわれる。
 その後、明治三年の新律綱領によって、斬首(罪状により、梟示といって、首を晒すことを付加した。)と絞首のみとなった。

一の(4)について

 明治十三年七月十七日に公布された刑法(明治十三年太政官布告第三十六号。以下「旧刑法」という。)によって、死刑の執行方法は絞首のみになったと承知している。
 なお、旧刑法の編さん委員の一人であったボアソナードは、右の点を説明して、「本邦ニ於テハ是マテ斬絞二ツナカラ並用ヒタレ(注)本案ニ於テハ絞ノミヲ存シテ斬ヲ廢スルニ決セリ其旨意タル絞ハ身、首所ヲ異ニセス人間ノ躰躯ヲ存シテ毀傷セサルカ故ニ人生天壽ヲ以テ死セシト其有様ヲ別タス其一族ノ之ヲ受取リタルモ之ヲ身首ヲ異ニスル斬ニ比スレハ見テ甚シキ残忍ヲ覺エス」と述べている。

一の(5)について

 昭和三十六年七月十九日最高裁判所大法廷判決は、明治六年太政官布告第六十五号絞罪器械図式は現在法律と同一の効力を有するものとして有効に存続している旨判示しており、判例上、問題は解決している。

一の(6)について

 明治十四年の監獄則(明治十四年太政官達第八十一号)の改正をもって受刑者等の教化を図るため教誨師制度が明文化されたこと等から、死刑確定者の教誨も実施されるようになったものと承知している。教誨師制度は、その後、監獄法(明治四十一年法律第二十八号)に引き継がれ、今日に至っているが、死刑確定者に対する教誨は、希望する者に対してなされてきており、その点で制度的に特段の変更はない。

一の(7)及び(8)について

 明治三十五年三月三日、第十六回帝国議会衆議院刑法改正案委員会において、旧刑法の改正案が審議された際、安藤龜太郎委員が、死刑制度に反対する旨発言した上、旧刑法の改正案においても死刑を存置していることについて、政府及び法典調査会が調査した外国法制に関する資料を明らかにするよう質問したのに対し、政府委員倉富勇三郎が「死刑ヲ存スルト云フコトモ、是モ成程各國ノ例モ参照致シマシタ、併ナガラ此點二附イテハ他國の主法例ヨリモ、別ケテ此帝國ノ現今ノ状況ニ重キヲ置テ、ドウシテモ今日ノ有様デアレバ、死刑ヲ存スル必要アリト云フ見込ヲ以テ、矢張現行法ノ通死刑ヲ置タノデアリマス」と答弁しており、調査した範囲では、死刑の廃止について答弁したのはこれが最初と思われる。
 これ以後も死刑を廃止することは適当でない旨答弁しているが、調査した範囲では、具体的な死刑執行の事実について答弁をしたものは見当たらない。

一の(9)について

 明治四十年四月二十四日に公布された刑法(明治四十年法律第四十五号)において、天皇等に対する危害、皇族に対する危害、内乱(首謀者)、外患誘致、外患援助、軍用に供する場所等の損壊等、敵国のための間諜等、軍事上の機密漏泄、現住建造物等放火、激発物破裂(現住建造物等放火の例によるもの)、現住建造物等浸害、汽車転覆等致死、往来危険による汽車転覆等致死、水道毒物等混入致死、殺人、尊属殺人、強盗致死(強盗殺人を含む。)及び強盗強姦致死の罪について、死刑が定められた。
 これらの罪のうち、刑法の一部を改正する法律(昭和二十二年法律第百二十四号)により、憲法の定める国民平等の趣旨を踏まえて天皇等に対する危害及び皇族に対する危害の罪が削除され、また、戦争放棄の趣旨を踏まえて、外患誘致及び外患援助の罪の構成要件が改められるとともに、軍用に供する場所等の損壊等、敵国のための間諜等及び軍事上の機密漏泄の罪が削除された。そして、刑法の一部を改正する法律(平成七年法律第九十一号)により、刑法を現代用語化して平易化する改正が行われたが、その際、最高裁判所の違憲判決等を踏まえて尊属殺人の罪が削除された。
 刑法以外で死刑が定められたものとしては、爆発物取締罰則(明治十七年太政官布告第三十二号)の爆発物使用の罪、航空機の強取等の処罰に関する法律(昭和四十五年法律第六十八号)の航空機強取等致死の罪、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(昭和四十九年法律第八十七号)の航行中の航空機を墜落させる行為等致死の罪及び人質による強要行為等の処罰に関する法律(昭和五十三年法律第四十八号)の人質殺害の罪がある。また、決闘罪に関する件(明治二十二年法律第三十四号)においては、決闘による殺人の罪につき、死刑を定める刑法の本条に照らして処断することとされた。なお、爆発物使用の罪については、爆発物取締罰則中改正法律(大正七年法律第三十四号)により、法定刑に無期又は七年以上の懲役又は禁錮が付け加えられた。
 現在、我が国の法律において、殺人の罪等合計十七の罪につき死刑が定められている。
 改正刑法草案においては、死刑を存置するとしても、その適用をなるべく制限するのが望ましいとの考えに基づき、刑法において死刑が定められている罪に当たるもののうち、現住建造物放火、激発物の破裂、出水による現住建造物浸害、汽車等の交通危険致死、汽車等の破壊致死、水道毒物混入致死及び強盗致死(強盗殺人を除く。)の罪については、死刑を定めていない。
 他方、同草案においては、既に死刑が定められている特別法の規定を整備して刑法に取り入れるとの考えに基づき、同法に爆発物爆発致死並びに航空機等の強奪等に係る強盗殺人及び強盗強姦致死の罪を設けて、死刑を定めている。

一の(10)について

 改正刑法準備草案は、法務省刑事局長を会長とし、学者及び実務家をもって構成する刑法改正準備会が刑法改正に関する法務省原案の作成に資するために作成した予備的な草案であり、その作成に際し、法務省として死刑の存廃に関する見解を示したことはない。

一の(11)について

 死刑確定者の接見及び信書の発受についての監獄法の解釈運用につき、一部に疑義を差し挟む向きもあったことから、同法の解釈運用の周知徹底を図るため所管部局の見解を示したものである。

一の(12)について

 昭和三十八年三月十五日付け法務省矯正局長依命通達「死刑確定者の接見及び信書の発受について」(以下「昭和三十八年通達」という。)は、監獄法第四十五条及び第四十六条の法意を明確にしたものである。
 なお、右死刑確定者の外部交通を含め監獄法を全面改正するため、三度にわたり国会(第九十六回、第百八回、第百二十回)に刑事施設法案を提出しているところ、同法案と右通達により明確にしている監獄法第四十五条及び第四十六条の法意とは、本質的に異なるものではないと考えている。

一の(13)について

 死刑確定者は、その執行を確保するために拘置されているのであって、一般社会とは厳に隔離されるべきものであり、身柄の確保及び社会不安の防止等が必要である上、精神の安静裡に死刑の執行を受けることとなるよう配慮されるべきであることから、これらの要請を阻害する典型的なものを類型化して昭和三十八年通達を定めたものであり、具体的にどのような事案が昭和三十八年通達に示されている三つの場合に該当するかは個々の事情に照らして個別に判断されるべきものであると考えている。昭和三十八年通達発出前については、関係記録がすべて残っているわけではなく、お答えすることはできない。

一の(14)について

 昭和三十八年通達においても、再審弁護人との外部交通は禁じておらず、死刑確定者の再審に向けた活動を制約しようとするものではない。

一の(15)について

 雑誌等に御指摘の事実を掲載するものがあることは承知しているが、事実関係の確認はできなかったので、御質問にお答えすることはできない。
 なお、法務大臣は、死刑の執行に関しては、一貫して、裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対処してきた。

一の(16)について

 死刑の執行などに関する質問に対する答弁書(平成十年一月十三日内閣衆質一四一第二一号)三の1についてでお答えしたとおり、昭和二十二年以降、死刑確定者で恩赦(減刑)に浴した者は二十五名であるが、このうち個別恩赦の対象となった者は十一名である。
 なお、個々具体的な事案については、恩赦に浴した本人の更生、未執行の死刑確定者の心情及び関係者の生活に与える影響等にかんがみ、答弁を差し控えたい。

一の(17)について

 死刑制度の廃止を求める運動に関しては、各種の団体及び個人が、死刑が残虐であるなどと主張して、その廃止を求めていることを承知しているが、かかる運動には様々なものがあるので、その起源、廃止を求める理由、運動の経緯等について、すべてを承知しているわけではない。
 死刑制度に関する主な国会の動きについては、昭和三十一年、刑法等における死刑に関する規定を改正して死刑制度を廃止することを内容とする刑法等の一部を改正する法律案が高田なほ子参議院議員外六名によって参議院に発議され、同議院法務委員会において審議されたが、同法律案は、審査未了のまま廃案となったものと承知している。また、平成六年四月六日、百名以上の国会議員で構成される死刑廃止を推進する議員連盟が設立されていると承知している。さらに、平成七年十月から平成十年八月までの間、十回にわたり、死刑制度等に関する質問主意書が提出され、平成十年五月十三日には、衆議院法務委員会において死刑問題に関する論議が行われたところである。

一の(18)について

 平成四年九月二十五日東京都清瀬市議会において、平成五年十二月二十一日大阪府高槻市議会において、同月二十二日同府泉南市議会において、平成六年六月二十四日埼玉県新座市議会において、同年十二月二十二日東京都小金井市議会において、それぞれ死刑制度の廃止等を求める意見書が採択されたことを承知している。

二の(1)及び(2)並びに(4)から(6)までについて

 御質問の点について調査し、把握した範囲でお答えすると、次のとおりである。
 イギリスにおいては、千九百六十九年(昭和四十四年)、通常犯罪につき死刑が廃止されたものと承知している。その背景には、謀殺について死刑が絶対刑として定められていたことがあったとみられる。
 カナダにおいては、千九百七十六年(昭和五十一年)、通常犯罪につき死刑が廃止されたものと承知している。それに関する議論においては、人間の尊厳を尊重する姿勢を示す必要があること、一定の罪を犯した者だけに死刑を科すという社会的不平等を是正すること、死刑制度の存在により裁判官が正当に刑罰を科すことを回避しようとする心理的傾向を生みがちであること等が指摘されたことを承知している。
 千九百九十年(平成二年)、ドイツ連邦共和国とドイツ民主共和国が統合されてドイツ連邦共和国が成立したが、同国においては、死刑制度はないものと承知している。右統合前、ドイツ連邦共和国においては、千九百四十九年(昭和二十四年)、死刑制度が廃止され、ドイツ民主共和国においては、千九百八十七年(昭和六十二年)、死刑制度が廃止されたものと承知しており、このうち、ドイツ連邦共和国における死刑制度の廃止の背景には、ナチスによる死刑の乱用の経験があったとみられる。
 イタリア共和国においては、千九百四十七年(昭和二十二年)、通常犯罪につき死刑が廃止され、千九百九十四年(平成六年)、すべての犯罪につき死刑が廃止されたものと承知しており、その背景には、現代の人道主義と社会認識の変化があったとみられる。なお、同国においては、千九百二十六年(大正十五年)、千八百八十九年(明治二十二年)に廃止された死刑制度が再び設けられたことを承知しているが、その理由については承知していない。
 フランス共和国においては、千九百八十一年(昭和五十六年)、すべての犯罪につき死刑が廃止されたものと承知している。その経緯としては、同年の大統領選挙において、公約の一つに死刑廃止を掲げたミッテラン氏が当選したことがあったとみられる。
 これらの国においては、それぞれの国の諸事情を踏まえて慎重に検討された上、死刑が廃止され、あるいは再び設けられたものと考えている。
 死刑制度の存廃の問題については、諸外国における動向や経験も参考にする必要があると考えるが、基本的には各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、それぞれの国において独自に決定すべきものであると考えている。

二の(3)について

 イギリスにおいては、反逆罪、殺意をもった暴行等を伴う海賊の罪及び一定の軍法上の罪について死刑を定めていると承知している。
 また、カナダにおいては、一定の軍紀犯罪、スパイ罪及び反乱の罪について死刑を定めていると承知している。
 これらの罪に当たる行為の中には、我が国における外患援助、殺人等の罪に当たるものがあると考えている。

二の(7)について

 アメリカ合衆国の五十州及び一特別区のうち、死刑制度がある州は、アラバマ、アリゾナ、アーカンソー、カリフォルニア、コロラド、コネチカット、デラウェア、フロリダ、ジョージア、アイダホ、イリノイ、インディアナ、カンザス、ケンタッキー、ルイジアナ、メリーランド、ミシシッピー、ミズーリ、モンタナ、ネブラスカ、ネバダ、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューメキシコ、ニューヨーク、ノースカロライナ、オハイオ、オクラホマ、オレゴン、ペンシルヴェニア、サウスカロライナ、サウスダコタ、テネシー、テキサス、ユタ、ヴァージニア、ワシントン及びワイオミングの三十八州であり、他方、死刑制度がない州等は、アラスカ、アイオワ、ハワイ、メイン、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、ノースダコタ、ロードアイランド、ヴァーモント、ウェストヴァージニア及びウィスコンシンの十二州並びにコロンビア特別区であると承知している。
 これらの五十州及び一特別区においては、十九世紀半ば以降、十二州及び一特別区において死刑制度が廃止され、他方、七州において死刑制度がいったん廃止された後再び設けられることとなったものと承知している。
 また、同国の連邦最高裁判所は、千九百七十六年(昭和五十一年)の判決において、死刑それ自体は、アメリカ合衆国憲法に違反する残虐かつ異常な刑罰ではないこと、恣意的に死刑を科す制度は同憲法に違反するが、刑を科す機関に十分な情報と指針が与えられているような死刑制度は同憲法に違反しないこと等を判示したものと承知している。

二の(8)について

 アメリカ合衆国においては、千九百九十五年(平成七年)のニューヨーク州知事選挙において死刑法の発効に必要な署名が争点となったことがあることを承知している。これは、同国において、死刑制度の存廃の問題が国民の大きな関心を集める事項の一つとなっていることの表れであるとみられる。
 なお、政府としては、死刑制度の存廃の問題については、諸外国における動向や経験も参考にする必要があると考えるが、基本的には各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、それぞれの国において独自に決定すべきものであると考えている。

二の(9)について

 アメリカ合衆国の五十州及び一特別区における凶悪犯罪の発生率及び警察官を殺害する事件の発生件数は各州によって相当異なるが、それらに影響を与える要因には各州ごとに様々なものがあると考えられるので、その差異を死刑制度の存廃のみによって説明することは困難であると考えている。

二の(10)について

 例えば、テキサス州においては、死刑の執行に関する情報は原則として公開情報となっているほか、死刑の執行には死刑囚の希望する五人以内の親族等の立会いが許されていると承知している。
 アメリカ合衆国の情報公開の程度が死刑存廃論議にどのような影響を与えているかについては、承知していない。

二の(11)について

 詳細は承知していないが、調査した範囲では、例えば、カリフォルニア州においては、死刑確定者の信書の発受については、一般の被収容者と同様の規則が適用され、事前の検閲により、人に危害を及ぼしたり、及ぼすおそれのある場合等に信書の発受の制限が行われるなどの状況にあると承知している。

二の(12)について

 死刑の必要性、情報公開などに関する第三回質問に対する答弁書(平成十年五月一日内閣衆質一四二第二〇号。以下「平成十年五月答弁書」という。)一の(8)についてでお答えしたとおりであり、今後も同様である。

三の(1)について

 御指摘の捕虜や搭乗員等の処刑が当時一般にどのように考えられていたかについては、関連の事実につき断片的な記録しか残っていないため、政府として確定的な判断を行うことは困難である。
 他方、死刑の執行は、憲法を頂点とする現行法制の下で法律の定めるところに従い、裁判所による慎重な審理を経て罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対して死刑を宣告した判決が確定した後、同判決に基づく刑の執行として行われるものである。

三の(2)について

 御指摘の戦争中に日本軍が殺害した連合国側の捕虜等の数については、正確な記録が見当たらないことから、政府として正確な数字をお答えすることは困難である。また、強制労働で死亡した捕虜の数についても、正確な記録が見当たらない。

三の(3)について

 政府としては、平成七年八月十五日の内閣総理大臣談話を基本とし、我が国が過去の一時期に植民地支配と侵略により、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受け止め、これらに対する深い反省とお詫びの気持ちに立って、世界の平和と繁栄に向かって力を尽くしていきたいと考えている。
 政府は、このような考え方を踏まえ、関係諸国との信頼関係を一層強化していくとともに、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義を推進していくとの立場である。

三の(4)について

 お尋ねの捕虜や搭乗員等の殺害について死刑となった者の数については、いわゆるBC級戦争犯罪人として死刑となった者の罪名についての正確な記録が見当たらないことから、政府として正確な数字をお答えすることは困難である。
 なお、いわゆるBC級戦争犯罪人につき裁判により死刑となった者の数を裁判国ごとに示すと次のとおりであると承知している。
 アメリカ合衆国百四十三人
 イギリス二百二十三人
 オーストラリア連邦百五十三人
 オランダ王国二百三十六人
 フランス共和国六十三人
 フィリピン共和国十七人
 中華人民共和国百四十九人

三の(5)について

 政府は、いわゆるBC級戦争犯罪人に関する裁判については、連合国軍最高司令官総司令部に対して、判決内容の通知を求める等情報の収集に努めるとともに、証人、弁護人及び通訳者の派遣、嘆願書等の提出、裁判に対する資料提供等裁判の進行に側面支援を行った。さらに、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号。以下「平和条約」という。)発効後には、外地刑務所に服役中の戦争犯罪人の早期送還及び我が国国内刑務所への収監、早期仮釈放の推進、特赦等による刑期の短縮及び解消を図るため連合国との交渉を行った。

三の(6)及び(7)について

 政府としては、国と国との間の関係においては、平和条約第十一条により、いわゆるBC級戦争犯罪人に関する連合国戦争犯罪法廷の裁判及び極東国際軍事裁判所の裁判を受諾している。

三の(8)について

 連合国による戦争犯罪人の死刑執行に関する情報公開については、正確な記録が見当たらない。
 ただし、中華人民共和国においては、国防部軍法処戦犯処理組が戦争罪犯審判録として公開していたものと思われるが、詳細については承知していない。

三の(9)について

 戦争犯罪人の接見や信書の発受についても、正確な記録が見当たらない。
 戦争犯罪人との面会方法については、毎月の面会数、一回当たりの面会者数、一日の総面会者数等を一定程度制限していた模様である。
 外地にある戦争犯罪人の信書の発受については、基本的に連合国軍最高司令官総司令部及び終戦連絡中央事務局等を経由して行われていたと承知している。

三の(10)について

 死刑確定者の心情の安定については、様々な資料等が参考とされてきている。

三の(11)について

 法務省が保管しているいわゆるBC級戦争犯罪裁判に関する資料のほとんどは、我が国が当該裁判国から公式に入手したものではなく、戦争犯罪裁判の被告人、その遺族、弁護人等の関係者が所持していた戦争犯罪裁判に関係する資料を昭和三十年四月以降法務省が引き継いで保管するに至ったというものである。したがって、その中に含まれている裁判関係書類の写しと思われる資料も、原資料との同一性が確認されたものではなく、内容の正確性についての保証が十分ではない。このことに加え、これらの資料は、裁判関係者やその遺族のプライバシーに深くかかわるものでもあるので、現時点においては公開すべきではないと考えている。

三の(12)について

 憲法前文第一段中の御指摘の部分は、先の大戦に対する反省と再び戦争を繰り返すまいとする決意を示したものであり、そのうちの「戦争の惨禍」とは、死傷者の発生等戦争によって引き起こされる痛ましい災難をいうものと解される。
 また、憲法前文第二段中の御指摘の部分は、我が国が平和主義の立場に立つことを宣明したものであり、そのうちの「人間相互の関係を支配する崇高な理想」とは、友愛、信頼、協調というような、民主的社会の存立のために欠くことのできない、人間と人間との関係を規律する最高の道徳律をいうものと解される。

三の(13)について

 日本国民が「人間相互の関係を支配する崇高な理想」を深く自覚するものであることは、我が国が平和主義の立場に立つ理由の一つとして述べられているものであると考えている。
 我が国の刑事司法において罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者を対象として死刑制度を存続させることは、平和主義の理念とは関係がなく、また、憲法前文にいう「人間相互の関係を支配する崇高な理想」に反するものでもないと考えている。

三の(14)について

 憲法前文第二段中の御指摘の部分は、我が国が平和主義の立場に立つことを宣明したものである。したがって、死刑の存廃や死刑に関する情報公開の具体的程度についての我が国の態度は、御指摘の部分の趣旨とは関係がないものと考えている。

三の(15)について

 最高裁判所は、死刑が憲法の採用する平和主義(前文及び第九条)等に違反するとの上告趣意に対し、平成五年十二月十日同裁判所第三小法廷判決において、「憲法前文、九条、一三条、三一条、三六条違反をいう点は、現行の死刑制度が憲法の右各規定に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和二二年(れ)第一一九号同二三年三月一二日大法廷判決・刑集二巻三号一九一頁)の趣旨とするところであるから、所論は理由がなく」と判示し、また、平成六年一月十七日同裁判所第一小法廷判決において、「死刑に関して憲法前文、九条、一三条、一八条、二五条、三一条、三六条違反をいう点は、死刑及びその執行方法を含む死刑制度がこれら憲法の各規定に違反しないことは当裁判所の大法廷判例(最高裁昭和二二年(れ)第一一九号同二三年三月一二日判決・刑集二巻三号一九一頁、最高裁昭和二四年新(れ)第三三五号同二六年四月一八日判決・刑集五巻五号九二三頁、最高裁昭和三二年(あ)第二二四七号同三六年七月一九日判決・刑集一五巻七号一一〇六頁)及びその趣旨に照らして明らかであるから、所論は理由がなく」と判示している。
 したがって、政府としては、最高裁判所は我が国の死刑制度が憲法前文に違反するものではないとの判断を示しているものと理解している。

三の(16)について

 一般に、戦争において用いられる害敵手段には戦闘員を殺傷する行為も含まれ、また、戦争を遂行する組織に属する一定の者については、右の行為が命令される場合があるものと考えられる。

三の(17)について

 法律の定めるところに従って特定の公務員がその職務上武器を使用することが許され、必要やむを得ず人を死に致すような行為を行う場合があり、それが上位の者の命令によって行われることもあり得ると考えられる。
 他方、死刑は、憲法を頂点とする現行法制の下で法律の定めるところに従い、裁判所による慎重な審理を経て宣告される判決において、国家の刑罰権の行使として罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対して科されるものである。

四の(1)について

 刑法第十一条第一項は、「死刑は、監獄内において、絞首して執行する。」と規定しており、この規定に従って絞首を死刑の執行方法としているところである。
 また、昭和三十年四月六日最高裁判所大法廷判決は、「現在我が国の採用している絞首方法が他の方法に比して特に人道上残虐であるとする理由は認められない。従って絞首刑は憲法三六条に違反するとの論旨は理由がない。」と判示しており、政府も同様に考えているところである。

四の(2)について

 絞首刑は、多数の国において採用されてきた死刑の執行方法であると承知している。

四の(3)について

 お尋ねの事実のうち、ドイツ連邦共和国では、千九百二十三年(昭和八年)三月に制定された法律により、一定の重罪についての死刑の執行方法として絞首によることができるものとされたことは承知しており、また、文献には、千九百四十四年(昭和十九年)七月のヒトラー暗殺計画事件に関し、二百名以上が死刑に処せられ、その一部の者につき絞首刑に処せられた旨を記載したものがあるが、その余の事実は承知していない。

四の(4)について

 刑事裁判の公判においてお尋ねのような弁論がなされた例は承知していない。
 絞首刑が憲法に違反するものではないとした昭和三十年四月六日最高裁判所大法廷判決は、「現在各国において採用している死刑執行方法は、絞殺、斬殺、銃殺、電気殺、瓦斯殺等であるが、これらの比較考量において一長一短の批判があるけれども、現在我が国の採用している絞首方法が他の方法に比して特に人道上残虐であるとする理由は認められない。」と判示しており、各国において採用している絞首刑等の死刑執行方法の比較検討を踏まえて判断したものであると考えている。

四の(5)について

 御指摘のような事例は承知していない。

四の(6)について

 アメリカ合衆国において死刑制度がある三十八州のうち、死刑の執行方法として絞首を採用している州は四州であると承知しており、これは、右三十八州の約十・五パーセントに当たる。
 死刑の執行方法として絞首を採用していない州のうち、十四州は薬物注射を、四州は薬物注射と電気殺を、一州は薬物注射、電気殺と銃殺を、七州は薬物注射とガス殺を、二州は薬物注射と銃殺を、六州は電気殺をそれぞれ死刑の執行方法として採用していると承知している。これらの州がそのような死刑の執行方法を採用した理由については、承知していない。

四の(7)について

 国際連合に加盟する合計百八十五か国のうち、死刑制度において絞首刑を採用している国の数及びその理由については、承知していない。

五の(1)について

 矯正施設職員の採用に当たり作成するパンフレットは、死刑について記載していない。

五の(2)について

 関係職員には、必要の都度、執行方法等について教示している。

五の(3)について

 お尋ねに係るアンケートや面接等による調査を組織的に実施したことはないが、折に触れて職員からその心情が述べられることはある。

五の(4)について

 御指摘のような事例は承知していない。

五の(5)について

 死刑執行に当たる職員の心情等については、十分耳を傾けなければならないものと考えている。
 他方、死刑執行は、裁判の執行すなわち職務として行っているものであり、その職務は、犯罪である殺人又は殺人需助行為とは厳に区別されるべきものであると考えている。

五の(6)について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。

五の(7)について

 法務省内において、自由な議論を封じている事実はない。

五の(8)について

 御指摘の死刑確定者の「更生」については、死刑執行に直面することによって、自己の罪責を深く自覚し、悔悟する側面もあることは否定できないと考えている。

五の(9)について

 刑務官の心情の安定を期するための特別の措置はない。

五の(10)について

 死刑の執行を担当する者についてお答えすると、次のとおりである。
 死刑の執行方法について、刑法第十一条第一項は、「死刑は、監獄内において、絞首して執行する。」と規定し、監獄法第七十一条第一項は、「死刑ノ執行ハ監獄内ノ刑場ニ於テ之ヲ為ス」と規定している。また、死刑執行の手続について、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)は、「裁判の執行は(中略)検察官がこれを指揮する。」(第四百七十二条第一項)、「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」(第四百七十五条第一項)と規定し、法務大臣の命令及び検察官の執行指揮が必要であるとしているところ、この検察官の指揮の相手方は監獄の長であり、執行事務規程(平成六年法務省訓令法務省刑総訓第二百二十八号)も「法務大臣から死刑執行の命令があったときは、検察官は、死刑執行指揮書により監獄の長に対し死刑の執行を指揮する。」(第十条)と定め、指揮の相手方が監獄の長であることを明確にしている。
 このように、監獄の長は、死刑執行の権限を有しているところ、所属の職員の職務上の上位の者として指揮監督権限が付与されており(刑務所、少年刑務所及び拘置所組織規程(平成五年法務省令第十三号)第三条第二項)、また、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第九十八条第一項には、「職員は(中略)上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」と定められている。これらの規定により、監獄の長は所属の職員に対し死刑の執行を命じ、職員は右命令に従い当該職務の執行に従事しているところである。

五の(11)について

 現行法令の趣旨は、五の(10)についてでお答えしたとおりであり、「国に法秩序の維持」に責任が持てると考えている。

五の(12)について

 人の生命は、法秩序の中にあって最大限尊重されるべきものであることは当然であるが、他方、現在の我が国においては、国民の多数が極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人、誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等にかんがみると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ないと考えている。

五の(13)について

 刑法第十一条第一項及び監獄法第七十一条第一項が死刑を監獄内で執行する旨定めていること、刑事訴訟法第四百七十二条第一項により検察官は裁判の執行指揮を行う者であること、同法第四百七十七条第一項は検察官及び検察事務官が死刑執行に立ち会うことを定めていること等から、現行法上、死刑は行刑施設の職員が執行するものであり、検察官又は検察事務官がこれを行うことはできないと考えられる。

五の(14)について

 調査した範囲では、検察事務官募集用パンフレットにおいて、刑の執行に関与する旨記載しているものはあるが、死刑の執行の立会い及び執行始末書の作成について記載したものは見当たらなかった。

五の(15)について

 検察事務官に対しては刑の執行に関する研修が行われている。

五の(16)及び(17)について

 御指摘のような事例は承知していない。

六の(1)について

 明治以来のすべての記録が現存しているわけではないが、戦後、死刑判決がなされ、上級審でこれが破棄され、又は再審開始決定がなされて、無罪判決が確定した事件としては、いわゆる八海事件、山中事件、免田事件、財田川事件、松山事件及び島田事件の例を承知している。
 八海事件は、昭和二十六年一月二十四日、山口県熊毛郡麻郷村内において、二人が殺害された事件で、阿藤周平氏外四名が犯人として検挙されて強盗殺人罪で起訴され、第一審の山口地方裁判所岩国支部が阿藤氏に死刑を言い渡し、第一次控訴審が阿藤氏の控訴を棄却する判決をしたが、その後、第一次上告審による右第一次控訴審判決の破棄、差戻し判決、これを受けた第二次控訴審による右第一審判決の破棄、無罪の自判判決、第二次上告審による右第二次控訴審判決の破棄、差戻し判決、これを受けた第三次控訴審による右第一審判決の破棄、再度の死刑の自判判決を経て、最終的に第三次上告審が右第三次控訴審判決を破棄して阿藤氏に無罪の判決を言い渡し、同判決が確定したものである。
 山中事件は、昭和四十七年五月十一日、石川県江沼郡山中町内において、一人が殺害された事件等で、霜上則男氏が犯人として検挙されて殺人、死体遺棄、強盗殺人未遂の罪で起訴され、第一審の金沢地方裁判所が同人に死刑を言い渡し、第一次控訴審が控訴を棄却する判決をしたが、上告審による右第一次控訴審の破棄、差戻し判決を受けて、第二次控訴審が右第一審判決を破棄して、殺人、死体遺棄の罪につき無罪、強盗殺人未遂罪につき有罪として懲役八年の判決を言い渡し、同判決が確定したものである。
 免田事件は、昭和二十三年十二月二十九日、熊本県人吉郡人吉町内において、一家四人のうち、二人が殺害され、二人が傷害を負った事件等で、免田榮氏が犯人として検挙されて住居侵入、強盗殺人、同未遂、窃盗の罪で起訴され、第一審の熊本地方裁判所八代支部が同人に死刑を言い渡し、控訴審が控訴を棄却し、上告審が上告を棄却して、死刑判決が確定したものである。その後、福岡高等裁判所が再審開始決定をし、同決定が確定したのを受けて、熊本地方裁判所八代支部が再審を行い、住居侵入、強盗殺人、同未遂の罪につき無罪、窃盗罪につき有罪として懲役六月、一年間執行猶予の判決を言い渡し、同判決が確定したものである。
 財田川事件は、昭和二十五年二月二十八日、香川県三豊郡財田村において、一人が殺害された事件で、谷口繁義氏が犯人として検挙されて強盗殺人罪で起訴され、第一審の高松地方裁判所丸亀支部が同人に死刑を言い渡し、控訴審が控訴を棄却し、上告審が上告を棄却して、死刑判決が確定したものである。その後、高松地方裁判所が再審開始決定をし、同決定が確定したのを受けて、同裁判所が、再審を行い、無罪の判決を言い渡し、同判決が確定したものである。
 松山事件は、昭和三十年十月十八日、宮城県志田郡松山町内において、一家四名が殺害されて家屋が放火された事件で、斉藤幸夫氏が犯人として検挙され強盗殺人、非現住建造物放火の罪で起訴され、第一審の仙台地方裁判所古川支部が同人に死刑を言い渡し、控訴審が控訴を棄却し、上告審が上告を棄却して、死刑判決が確定したものである。その後、仙台地方裁判所が再審開始決定をし、同決定が確定したのを受けて、同裁判所が、再審を行い、無罪の判決を言い渡し、同判決が確定したものである。
 島田事件は、昭和二十九年三月十日、静岡県榛原郡初倉村内において、当時六歳の女児が強姦されて殺害された事件で、赤堀政夫氏が犯人として検挙されて強姦致傷、殺人の罪で起訴され、第一審の静岡地方裁判所が同人に死刑を言い渡し、その後、控訴審が控訴を棄却し、上告審が上告を棄却して、死刑判決が確定したものである。その後、静岡地方裁判所が再審開始決定をし、同決定が確定したのを受けて、同裁判所が、再審を行い、無罪の判決を言い渡し、同判決が確定したものである。
 各事件における無罪の判決の理由については、各裁判所において個別事件の証拠関係に即して詳細な理由を述べているところであり、政府において答弁書でこれを要約して記載することは適切ではないので、公表されている各判決を参照されたい。

六の(2)について

 御指摘のような事例は承知していない。

六の(3)について

 死刑の必要性、情報公開などに関する再質問に対する答弁書(平成十年三月二十四日内閣衆質一四二第一〇号。以下「平成十年三月答弁書」という。)六の(3)について又は平成十年五月答弁書六の(3)についてでお答えしたとおり、検察当局においては、死刑確定者が再審で無罪となった事件の無罪判決において、捜査又は公判にかかわる問題点が指摘されていることを深刻に受け止め、これらの問題点を踏まえて、信用性のある供述の確保とその裏付け捜査の徹底、証拠物やその鑑定等の客観的な証拠の十分な収集、検討等に一層の意を用い、事件の適正な捜査処理に努めている。

六の(4)について

 我が国においては、令状主義及び厳格な証拠法則が採用され、三審制が保障されるなど、捜査公判を通じて慎重な手続により有罪が確定されている上、再審制度が保障されており、有罪を認定することについては、適正な判断がなされているものと考えている。加えて、死刑は、その言渡しを受けた者の生命を断つ極刑であり、一度執行されれば回復し難いこととなるものであるから、死刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無等について慎重に検討するために、判決及び確定記録の内容を十分精査せしめているので、死刑を執行した者の中には誤判による無実の者が含まれていることはないものと確信しているものである。

六の(5)について

 御指摘のような非常上告をした例は承知していない。

六の(6)について

 検察当局においては、平成十年五月答弁書六の(3)についてでお答えしたとおり、信用性のある供述の確保とその裏付け捜査の徹底、証拠物やその鑑定等の客観的な証拠の十分な収集、検討等に一層の意を用い、事件の適正な捜査処理に努めているとともに、公判においても、法が定めるところに従い、適正な訴訟活動に努めている。

六の(7)について

 刑事訴訟法第二百九十九条第一項本文によれば、検察官は、公判において取調べを請求する予定の証拠書類又は証拠物については、被告人又は弁護人にこれを閲覧する機会を与えなければならないとされており、また、裁判所は、証拠調べの段階に入った後、弁護人による具体的必要性を示した申し出がなされた場合、諸般の事情を勘案し、その閲覧が被告人の防御のために特に重要であり、かつ、これにより罪証隠滅、証人威迫等の弊害を招来するおそれがなく、相当と認めるときは、その訴訟指揮権に基づき、検察官に対し、その所持する一定の証拠書類又は証拠物を弁護人に閲覧させるよう命じることができると解されているところであり、新たに検察官に証拠開示を義務付ける法律を制定する必要はないと考えている。

六の(8)について

 我が国においては、刑事訴訟法第三百五十一条第一項は、検察官に対し、公益の代表者の立場から上訴する権限を与えているところである。政府としては、そのことに問題があるとは考えておらず、御指摘のような制度を採用することは相当ではないと考えている。

六の(9)について

 下級審の無罪判決に対し、検察官が上訴することは、憲法第三十九条に違反しないというのは、最高裁判所の確定した判例(昭和二十五年九月二十七日最高裁判所大法廷判決)であり、無罪判決があった場合に上訴するか否かは、検察官において、個々の具体的事件ごとに、法と証拠に基づき、個別に判断すべき事柄である。
 検察官は、事案の真相を解明し、刑罰法令を適正に適用実現すべき職責を負っているのであり、検察官においては、このような職責を踏まえ、無罪判決についても、刑事訴訟法に定める上訴理由の有無を慎重に検討して上訴の要否を決定しているものと承知している。

六の(10)について

 六の(4)についてでお答えしたとおりであり、御指摘のような事態は起きないものと考えている。

七の(1)について

 国際連合に加盟する合計百八十五か国のうち、通常犯罪につき死刑を廃止したすべての国について、死刑廃止決定時に世論調査が行われたか否か及びその結果がどのようなものであったかを把握することは困難であると考えている。
 なお、イギリスにおいては、干九百六十九年(昭和四十四年)十二月、通常犯罪につき死刑が廃止されたが、その当時の民間の世論調査には、死刑の存続に賛成する意見が八十五パーセントを占めたものがあり、また、フランス共和国においては、千九百八十一年(昭和五十六年)十月、死刑制度が廃止されたが、その当時の民間の世論調査には、死刑の存続に賛成する意見が六十ニパーセントを占めたものがあることを承知している。

七の(2)について

 組織犯罪対策法案と死刑に関する再質問に対する答弁書(平成十年六月三十日内閣衆質一四二第四〇号)五の(3)についてでお答えしたとおりである。

七の(3)について

 被害者やその遺族が犯人の処罰についていかなる心情を有しているかについては、検察官において、個別具体的な事件ごとに、被害者等からの告訴の受理やその取調べ等を通じてその把握に努め、それが適切に裁判結果に反映されるように努めている。

七の(4)及び(5)について

 御指摘の調査結果が新聞に掲載されたことは承知している。
 国会議員の間で死刑制度の存廃に関する意見が分かれていることは承知しており、その意見について謙虚に受け止めたいと考えている。
 他方、死刑の存廃は、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等種々の観点から慎重に検討すべき問題であると考えている。平成十年三月答弁書一の(2)についてでお答えした昭和三十一年四月から平成元年六月までの間に五回にわたり行われた総理府世論調査の結果に加え、御指摘の調査の約三か月後である平成六年九月に実施された総理府世論調査の結果でも、死刑制度の存廃について、「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えた者の割合が七十三・八パーセントであったことから、国民世論の多数が極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えていると判断している。このような国民世論や、多数の者に対する殺人、誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等にかんがみると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ないと考えている。

八の(1)について

 御指摘の写真の掲載については、どのような経緯で取材されたかについては記録がなく、承知していない。
 なお、刑場の写真撮影は、刑場が死刑という最も重く厳粛な刑を執行する場であり、その性質上、本来公開になじまない場所である上、死刑確定者及びその家族等の名誉や心情に対する配慮等を考慮すると、認めるのは相当でないものと思料される。

八の(2)について

 死刑制度の存廃は、我が国の刑事司法制度の根幹にかかわる重要な問題であり、国民世論の動向にも十分に配慮すべきものであるから、この問題をめぐって、国民の間で多角的観点からの冷静な議論が行われることは望ましいものと考えている。
 この問題に関しては、今後とも、新聞等による報道、各種出版物等を通じて、死刑判決が言い渡された個々の事件の内容等はもとより、様々な議論、諸外国の動向等が伝えられ、国民においても、これを受けて理解及び論議が深まるものと考えている。

八の(3)について

 学校における教育課程の基準である学習指導要領では、中学校社会科の公民的分野や高等学校公民科の「現代社会」及び「政治・経済」において基本的人権や裁判等について扱うこととしており、教科書においては、これらに関して、死刑制度の是非についての議論や諸外国の状況等を取り上げているものがある。
 各学校においては、これらを踏まえ、生徒の発達段階等に応じ、適切な配慮の下に指導を行うこととされているところである。

八の(4)について

 死刑に関する情報公開の程度と死刑に関する論議との関係については、判断が困難な問題であると考えている。

八の(5)について

 御指摘の「行政機関の保有する情報の公開に関する法律案」が成立した後、政府としては、同法を誠実に履行していくことになるが、その結果、死刑に関する情報公開に及ぼす影響は、現段階では予測し難い。

八の(6)について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。





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