衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十一年一月二十六日受領
答弁第一号

  内閣衆質一四四第一号
    平成十一年一月二十六日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員保坂展人君提出死刑執行と法務省に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出死刑執行と法務省に関する質問に対する答弁書



一の(1)及び(2)について

 平成十年十一月十九日午後一時ごろ、法務大臣官房秘書課広報室職員が、法務省内において、新聞社等の記者に対し、「本日、死刑確定者三名に対して、死刑の執行をしました。」旨記載したメモを配布するなどして、死刑執行の事実を発表した。
 調査した範囲では、法務省が、死刑執行の当日に執行者数を発表したのは、このときが初めてである。

一の(3)について

 これまで死刑執行に関し、その事実を公表してこなかった理由は、国家の刑罰権の作用は、本来、刑の執行そのものに限られるのであって、それを超えて、国家機関が刑の執行の事実を殊更に公表して、刑の執行を受けた者やその関係者に不利益や精神的苦痛を与えることは相当でないこと、個々具体的な死刑執行の事実の公表は、死刑を執行された者の遺族の感情、他の死刑確定者の心情の安定等を損なう結果を招きかねないこと等の問題があるためであり、その基本的な考え方自体は現在も変わっていない。
 しかしながら、他方で、情報を公開することにより、刑罰権行使が適正に行われていることについて国民の理解を得るとの要請もあるので、前記の基本的考え方は変えることなく、可能な範囲で情報を公開することとし、死刑執行後に執行の事実及び執行を受けた者の人数に限って公表したものである。

一の(4)について

 死刑の執行を受けた者の氏名については、一の(3)についてでお答えしたとおりの理由から、答弁を差し控えたい。
 死刑の執行に際しては、法務大臣は、省内関係部局をして判決及び確定記録の内容を十分精査せしめ、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等について慎重に検討し、これらの事由等が存在しないことが確認された場合に、死刑執行命令を発しており、平成十年十一月十九日の執行に際しても所要の精査及び検討を遂げたものである。

一の(5)について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。
 なお、一般的な取扱いとして、死刑の執行の告知は、当日、執行に先立ち行っている。

一の(6)から(9)までについて

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。

一の(10)について

 死刑制度などに関する質問に対する答弁書(平成十年八月二十一日内閣衆質一四二第六四号)五の(9)についてでお答えしたとおり、刑務官の心情の安定を期するための特別の措置はないが、同答弁書五の(5)についてでお答えしたとおり、死刑執行に当たる職員の心情等については、十分耳を傾けなければならないものと考えているところであり、本件においても同様の姿勢で臨んだものである。

一の(11)について

 御指摘のような職員個人の心境については、お答えする立場にはない。

一の(12)並びに四の(5)及び(6)について

 御指摘の著作は、小説であり、事実を記録したものではないと承知している。

一の(13)について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。

一の(14)について

 平成十年十一月十九日に死刑の執行を受けた者の氏名を報道する新聞等があったことは承知しているが、法務省が、その報道に対して訂正の申入れや抗議を行った事実はない。
 なお、死刑の執行を受けた者の氏名に関する報道内容に誤りがあったか否かについては、一の(3)についてでお答えしたとおりの理由から、答弁を差し控えたい。

二の(1)について

 平成十年六月二十五日、三名の死刑確定者に対して死刑の執行をした。
 右死刑の執行を受けた者の氏名や執行場所については、一の(3)についてでお答えしたとおりの理由から、答弁を差し控えたい。

二の(2)について

 平成十年六月二十五日の死刑の執行に際しても、一の(4)についてでお答えしたとおりの所要の精査及び検討を遂げたものである。

二の(3)について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。
 なお、一般的な取扱いは、一の(5)についてでお答えしたとおりである。

二の(4)について

 法務省刑事局総務課長の正規の勤務時間については、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成六年法律第三十三号)等に定められており、月曜日から金曜日までの午前九時三十分から午後零時三十分まで及び午後零時四十五分から午後五時四十五分までとされている。
 正規の勤務時間以外の時間における勤務については、正規の勤務時間における勤務を終了した後においても、更に勤務の必要が生じた場合には、同法律等の定めるところにより勤務を行うことがある。

二の(5)について

 一般に、法務省の職員は、勤務時間終了後、速やかに退庁しているものと承知しているが、職員個々の事情により、勤務時間終了後、即時に退庁していないケースもある。

二の(6)について

 御質問の会同としては、「矯正管区長、刑務所長、少年刑務所長及び拘置所長会同」、「矯正管区長、少年院長及び婦人補導院長会同」及び「矯正管区長、少年鑑別所長会同」がある。

二の(7)について

 通例、御質問のような懇親会が開催されているが、御指摘の職員は、出席していないと承知している。

二の(8)について

 御質問の日には「矯正管区長、少年鑑別所長会同」が開催されている。

二の(9)及び(10)について

 勤務時間終了後の職員のプライバシーにかかわる事項については、お答えする立場になく、また、法務省刑事局総務課長の行動を調査し、その処分を検討するつもりはない。

三の(1)について

 憲法第四十一条は、国会は国権の最高機関である旨定めている。

三の(2)について

 死刑問題に関して様々な議論があることは承知しているが、現在、我が国においては死刑制度があり、憲法第七十三条第一号は、法律を誠実に執行することを内閣の事務として定めているので、政府としては、国会によって制定された法律の誠実な執行の一環として死刑執行を行っているものである。

三の(3)について

 法務省においては、平成十年十一月五日、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号。以下「規約」という。)に基づき設置された人権委員会が、規約に基づく日本政府第四回報告に対する審査の結果を踏まえて、死刑に関し、我が国に対して、死刑の廃止に向けた措置を講ずること及びそれまでの間死刑の適用が規約第六条2に従い最も重大な犯罪に限定されるべきこと並びに死刑確定者の拘禁状態が規約第七条、第十条1に従い人道的なものとされることを勧告する旨の最終見解を採択したことを承知している。

三の(4)について

 規約に基づき設置された人権委員会が我が国に対して行った死刑の廃止に向けた措置等に関する勧告については、死刑制度の存廃をめぐる様々な意見の一つとして謙虚に受け止めている。
 しかし、死刑制度の存廃の問題については、基本的には各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、それぞれの国において独自に決定すべきものである。我が国においては、死刑制度の存廃は、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等種々の観点から慎重に検討すべき問題であるところ、国民世論の多数が極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人、誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等にかんがみると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ず、死刑を廃止することは適当でないと考えている。
 また、我が国では、個別の事件における死刑の選択は、昭和五十八年七月八日最高裁判所第二小法廷判決において示された判断を踏まえて、極めて厳格かつ慎重に行われており、死刑は、罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対してのみ科されていると考えている。
 他方、同委員会が我が国に対して行った死刑確定者の拘禁状態に関する勧告についても、同様に一つの意見として謙虚に受け止めており、引き続き、死刑確定者に対し適正な処遇を行ってまいりたい。
 しかしながら、死刑確定者については、心情の安定に配慮しつつその身柄を確保するという収容の目的等にかんがみ、面会や信書の発受に一定の制約を設け、あるいは執行前ではなく、執行後速やかに家族等に連絡する取扱いは、規約第七条及び第十条1に違反するものではないと考えている。

三の(5)及び(6)について

 我が国においては、令状主義及び厳格な証拠法則が採用され、三審制が保障されるなど、捜査公判を通じて慎重な手続により有罪が確定されている上、再審制度が保障されており、有罪を認定することについては、適正な判断がなされているものと考えている。加えて、死刑は、その言渡しを受けた者の生命を断つ極刑であり、一度執行されれば回復し難いこととなるのであるから、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等について慎重に検討するために、判決及び確定記録の内容を十分精査せしめているので、死刑を執行した者の中には誤判による無実の者が含まれていることはないと確信している。
 なお、御指摘の法務省矯正局長通達は、昭和三十八年三月十五日付け法務省矯正局長依命通達「死刑確定者の接見及び信書の発受について」を指すものと思われるが、死刑制度などに関する質問に対する答弁書一の(14)についてでお答えしたとおり、同通達においても、再審弁護人との外部交通は禁じておらず、死刑確定者が再審のために弁護士と接見し、及び信書を発受することは、制約されていない。

三の(7)について

 死刑の執行に際しては、個々の事案に応じて、判決及び確定記録の内容を十分な時間をかけて精査するとともに、所要の調査を遂げ、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等について慎重に検討しているところである。

四の(1)について

 法務省においては、平成八年十二月二十七日、綱紀粛正について法務省職員倫理規程(平成八年法務省人訓第二千九百八十三号大臣訓令)を定めるとともに、会同、会議、研修等の機会を利用して注意を喚起するなどして、その周知徹底を図っている。

四の(2)について

 平成十年五月一日、御指摘の法務省関係者の自宅郵便受け内にナイフ及び脅迫状が、同月二十五日、同自宅玄関先に火炎瓶及びマッチが、それぞれ置かれているのが発見されており、現在、警視庁において所要の捜査を行っているものと承知している。

四の(3)について

 御指摘の件は事実である。
 当該検察事務官については、刑事処分として、平成十年十一月十日、窃盗の罪の容疑により前橋地方裁判所に起訴した。
 また、同年十一月四日、同検察事務官に対し、免職の懲戒処分を行った。
 さらに、監督者らに対しては、俸給月額の百分の五の減給一月間の懲戒処分等を行っているほか、このような事件の再発防止のため、改めて各種会同及び協議会において綱紀の保持に万全を期すよう指示等を行っている。

四の(4)について

 御指摘の件は事実である。
 当該検察事務官については、刑事処分として、平成十年四月二十二日、秋田県青少年の健全育成と環境浄化に関する条例(昭和五十三年秋田県条例第三十三号)違反の罪の容疑により秋田簡易裁判所に起訴し、同日同裁判所により罰金五十万円の略式命令が発せられた。
 また、同日、同検察事務官に対し、停職二月間の懲戒処分を行った。
 なお、監督者に対する処分は行っていないが、このような事件の再発防止のため、改めて各種会同及び協議会において綱紀の保持に万全を期すよう指示等を行っている。

四の(7)について

 法務省においては、かねてから、適材適所に配慮した公平な人事管理を行っている。
 法務本省の局長及び部長以上については、計十一名のうち、現在、検事でない者は二名である。

四の(8)について

 御質問のようなケースがあったとは承知していない。

四の(9)について

 平成八年から平成十年までの間、法務省及び検察庁職員が逮捕されかつ起訴された事件については、次のとおり、六件把握している。
 1 検察事務官が、刑事事件の証拠品である現金合計百六十八万六千円を窃取した事実で公判請求され、第一審で懲役一年、第二審で懲役一年、四年間執行猶予の有罪判決の言渡しを受け、同事件については、本人が懲戒免職の処分を受けたほか、当時の監督者らが訓告の処分を受けている。
 2 拘置所職員が、未決勾留中の被告人に逃走用に供する金切り鋸一丁等を手渡し、同人を逃走させようとしたが未遂に終わった事実で公判請求され、第一審で懲役二年六月に処せられ、同事件については、本人が懲戒免職の処分を受けたほか、当時の監督者らが戒告等の処分を受けている。
 3 検察事務官が、十八歳未満の少女に対しみだらな性行為をした事実で略式請求され、罰金五十万円に処せられ、同事件については、本人が停職二月間の処分を受け、その後辞職している。
 4 法務省本省職員が、地下鉄電車内で女性乗客に対しいわゆる痴漢行為に及んだ事実で略式請求され、罰金五万円に処せられ、同事件については、本人が俸給月額の百分の十の減給一月間の処分を受け、その後辞職している。
 5 検察事務官が、刑事事件の証拠品である現金合計八百八十万円を窃取した事実で公判請求され、現在公判係属中であり、同事件については、本人が懲戒免職の処分を受けたほか、当時の監督者らが俸給月額の百分の五の減給一月間等の処分を受けている。
 6 少年院職員が、十八歳の女性に対し、電話により、同女の身体に危害を加えかねない気勢を示したり、同女との性交渉の場面の写真を公開する旨告知するなどして脅迫した事実で公判請求され、現在公判係属中であり、同事件については、本人が懲戒免職の処分を受けている。

四の(10)について

 平成八年、同九年及び同十年に国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)上の懲戒処分を受けた法務省及び検察庁職員数は、それぞれ百十二人、九十人及び七十九人(平成十年については、十二月一日現在)である。その内容は、一般服務関係、通常業務処理関係、公金官物取扱関係、横領等関係、収賄・供応関係、交通事故・交通法規違反関係、公務外非行関係、監督責任関係の各事実である。

五の(1)及び(2)について

 御指摘の職員に対し、処分や口頭による注意は行っていない。

五の(3)及び(4)について

 御指摘のとおり、国民の官庁に対する信頼を醸成するには、その官庁の仕事全体への評価を高めるとともに、官庁の窓口職員の対応にも十分気を配ることが必要であり、被害者やその遺族等から事件の処理結果等について照会があった場合には、被害者等の心情にも十分に配慮し、誠実に対応してまいりたい。
 なお、東京地方検察庁においては、五の(1)及び(2)についてでお答えしたとおり、御指摘の職員に対し、処分は行っていないが、平成十年八月三日から被害者等通知制度を実施するとともにその旨職員に周知徹底させるなどして、被害者等から事件の処理結果等の照会を受けた場合に適切に対応しているところである。

五の(5)について

 東京地方検察庁次席検事は、御質問の事件の公訴提起に際し、報道機関に対し、「再捜査の結果新たな証拠を収集し得たのであるから、結果的に言えば、捜査が不十分であったわけで、先の業務上過失致死事件の不起訴処分は誤りであったと言わざるを得ない。これを反省の契機として、一層被害者の立場に配慮した検察権行使に努めたい。」旨表明している。

五の(6)について

 東京地方検察庁次席検事が、御質問のようなコメントをした事実はない。

五の(7)について

 御指摘の件について、担当検察官、監督者いずれに対しても処分は行っていない。

五の(8)について

 政府としては、歩行者の交通事故を防止するため、今後とも、車両の運転者に対する交通安全思想の普及の徹底に努めるとともに、交通安全施設等整備事業の推進等により道路交通環境の整備に努めてまいりたい。

五の(9)について

 政府としては、歩行者の交通事故を防止するため、今後とも、交通の安全と円滑を総合的に勘案した上で、人と車の交通を分離するための各種の施策を必要に応じて推進してまいりたい。

六の(1)から(3)までについて

 職員の過誤については、法務省においても、その内容、結果の重大性、当該職員の責任の程度等の諸事情を勘案して、処分の要否を検討し、所要の措置を講じているところである。
 また、法務省においては、その所掌事務を行うに当たり、国民の意見等に謙虚に耳を傾け、可能な限り行政に反映させているところであり、こうした観点から、例えば、国民の間で関心が高まっている犯罪被害者に対する通知につき、一層の充実を図っている。
 さらに、公務員は、国民全体の奉仕者であり、法務省職員は、そのような自覚の下で、その職務を誠実に執行しているところである。

六の(4)について

 御質問のような事実はない。

六の(5)について

 法務省においては、その所掌事務を法令に従い誠実に執行しているところである。

六の(6)について

 御質問のような事実はない。





経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.